映画『イノセント・ガーデン』(2013)を紹介。
『イノセント・ガーデン』概要
『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督が、初の英語長編として放つゴシック調の心理スリラー。研ぎ澄まされた感覚を持つ18歳の少女が事故で父を失い、存在すら知らなかった伯父が葬儀に姿を現し屋敷に住み着くことで、閉ざされた日常が不穏に軋み始める。主演はミア・ワシコウスカ、共演にニコール・キッドマン、マシュー・グードら。
作品情報
日本版タイトル:『イノセント・ガーデン』
原題:Stoker
製作年:2013年
ジャンル:サスペンス/スリラー(サイコスリラー)/ゴシックドラマ
製作国:アメリカ/イギリス
原作:無
監督:パク・チャヌク(※本作がハリウッド初監督作品)
脚本:ウェントワース・ミラー
撮影:チョン・ジョンフン
編集:ニコラ・ド・トス
作曲:クリント・マンセル
製作:Scott Free Productions/Indian Paintbrush
配給:FOX サーチライト・ピクチャーズ
『イノセント・ガーデン』あらすじ
18歳の誕生日に父を亡くした少女インディアは、郊外の屋敷で母イヴリンとふたり暮らしを続けている。だが父の葬儀に現れたのは、その存在すら知らされていなかった父の弟チャールズだった。そのまま屋敷に留まると告げるチャールズに、インディアは困惑を隠せない。やがて周囲で失踪や不審な気配が重なるにつれ、少女は伯父が抱える秘密と、自らの内に潜む衝動に否応なく向き合うことになる。

『イノセント・ガーデン』より © 2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
主な登場人物(キャスト)
インディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ):父の死をきっかけに、謎めいた叔父チャールズとの関係に翻弄される18歳の孤高な少女。
イヴリン・ストーカー/エヴィ(ニコール・キッドマン):インディアの不安定な母親で、美しさと弱さを併せ持ちながら娘との距離に苦悩する女性。
チャールズ・ストーカー/チャーリー(マシュー・グード):魅力的だが暗い過去を抱えたインディアの叔父で、家族に近づきつつ不穏な影を落とす存在。
グウェンドリン・ストーカー/ジン(ジャッキー・ウィーヴァー):ストーカー家の大叔母で、叔父チャーリーに不信感を抱きつつ家族の行く末を見守る老嬢。
『イノセント・ガーデン』簡易レビュー
本作はパク・チャヌク監督がハリウッドの豪華キャストと共に手がけた貴重な一作であり、ゴシックでダークで閉鎖的な、怪しげな美しさをたたえた冷ややかな空気感、そして日常から切り離された俗世の外側で展開するドラマが、この監督の作風と見事に噛み合っている。
チャヌク監督の描く家族はやはりどこか毒々しく、一筋縄ではいかない澱んだ関係性をさらけ出す。本来なら安息の場であるはずの家が、決して安心できる空間として機能しないーーその歪んだ環境が主人公インディアを蝕んでいく様は生々しく不穏であり、そうした毒の中で彼女の内に秘めた衝動が少しずつ覚醒していく。

『イノセント・ガーデン』より © 2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
主演のミア・ワシコウスカは、いつもの西洋絵画のような純真さを纏いながら、それが徐々に闇に侵食され本能のままに生き始める変貌を体現しており、まさにハマり役といえる。ミステリアスで得体の知れない伯父を演じたマシュー・グードも、サイコパス的な気配を漂わせる佇まいが一度見たら忘れられない強烈な印象を残す。そして名優ニコール・キッドマンが演じるのは、母性よりも喪失感と他者への依存を滲ませる、問題を抱えた母親。常に自分のことしか考えていないように映るエゴイストの、毒気を帯びた強さをキッドマンは見事に体現してみせた。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
