映画『スティッチ!ザ・ムービー』(2003)を紹介&解説。
映画『スティッチ!ザ・ムービー』概要
映画『スティッチ!ザ・ムービー』は、ディズニー映画『リロ&スティッチ』のその後を描く、2003年のアニメーション作品。カウアイ島でリロたちと暮らすスティッチが、ジャンバ博士の作った“試作品625体”の存在を知り、新たな仲間たちをめぐる騒動に巻き込まれていく。監督はトニー・クレイグとボブス・ギャナウェイ。声の出演はダヴェイ・チェイス、クリス・サンダース、ティア・カレル、デヴィッド・オグデン・ステイアーズら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『スティッチ!ザ・ムービー』 |
|---|---|
| 原題 | Stitch! The Movie |
| 製作年 | 2003年 |
| 本国公開日 | 2003年8月26日(米国ビデオ発売) |
| 日本公開日 | 劇場未公開(日本DVD発売/レンタル開始:2004年2月20日) |
| ジャンル | アニメーション/ファミリー/SF/コメディ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 63分 |
| 監督 | トニー・クレイグ/ボブス・ギャナウェイ |
|---|---|
| 脚本 | ジェス・ウィンフィールド/ボブス・ギャナウェイ |
| 製作 | トニー・クレイグ/ジェス・ウィンフィールド/ボブス・ギャナウェイ |
| 製作総指揮 | トニー・クレイグ/ジェス・ウィンフィールド/ボブス・ギャナウェイ |
| 編集 | トニー・ミガルスキー |
| 作曲 | マイケル・タヴェラ |
| 出演 | ダヴェイ・チェイス/クリス・サンダース/ティア・カレル/デイヴィッド・オグデン・ステイアーズ/ケヴィン・マクドナルド/ヴィング・レイムズ/ケヴィン・マイケル・リチャードソン/ジェフ・ベネット |
| 製作 | ウォルト・ディズニー・テレビジョン・アニメーション |
| 配給 | ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント/ウォルト・ディズニー・ホーム・エンターテイメント(日本) |
あらすじ
ハワイ・カウアイ島。リロ、ナニ、ジャンバ、プリークリーたちと新しい“オハナ”として暮らしているスティッチは、まだ人間社会に完全にはなじめず、自分と同じ存在はいないのかと孤独を感じていた。そんなある日、ジャンバ博士がかつて作った625体のエイリアン実験体が地球に持ち込まれていたことが判明する。
一方、銀河連邦を追われたガントゥは、悪の科学者ハムスターヴィールの命令を受け、ジャンバと実験体を奪おうと動き出す。リロとスティッチは、電気を操る試作品221号“スパーキー”や、スティッチによく似た試作品625号と出会いながら、実験体たちを守るために奔走する。
主な登場人物(キャスト)
リロ(ダヴェイ・チェイス):ハワイ・カウアイ島で暮らす少女。スティッチを大切な家族“オハナ”として受け入れ、今回も彼と一緒に新たな実験体たちを救おうとする。日本語吹替は山下夏生。
スティッチ(クリス・サンダース):ジャンバ博士によって作られた試作品626号。地球では犬のような姿でリロたちと暮らしているが、自分以外にも多くの“いとこ”が存在することを知る。日本語吹替は山寺宏一。
ナニ(ティア・カレル):リロの姉で、彼女の保護者。リロとスティッチの騒動に振り回されながらも、家族を守ろうとするしっかり者。日本語吹替は田畑智子。
ジャンバ博士(デイヴィッド・オグデン・ステイアーズ):スティッチをはじめとする実験体を作った天才科学者。過去に作った625体の実験体が地球に持ち込まれていたことで、新たな騒動の中心人物となる。日本語吹替は飯塚昭三。
プリークリー(ケヴィン・マクドナルド):ジャンバと共に地球で暮らす異星人。地球文化に強い興味を持ち、リロたちの生活に溶け込もうとしている。日本語吹替は三ツ矢雄二。
ガントゥ(ケヴィン・マイケル・リチャードソン):元銀河連邦の大尉。ハムスターヴィールに協力し、ジャンバと実験体を捕まえようとする。日本語吹替は石塚運昇。
ハムスターヴィール博士(ジェフ・ベネット):ジャンバの実験体を利用しようと企む悪の科学者。小柄な見た目とは裏腹に、実験体をめぐる事件の黒幕として暗躍する。日本語吹替は家中宏。
コブラ・バブルス(ヴィング・レイムズ):元CIAという経歴を持つソーシャルワーカー。リロとナニを見守る立場であり、地球でのスティッチたちの生活にも関わっている。日本語吹替は郷里大輔。
試作品625号(ロブ・ポールセン):スティッチによく似た姿をした実験体。能力はあるものの、やる気に欠けており、サンドイッチ作りが得意というユーモラスなキャラクター。
スパーキー/試作品221号(フランク・ウェルカー):電気を操る能力を持つ実験体。島中に騒動を引き起こす存在だが、リロとスティッチにとって重要な出会いとなる。
作品の魅力解説
『スティッチ!ザ・ムービー』の大きな魅力は、映画『リロ&スティッチ』で描かれた“オハナ=家族”のテーマを、スティッチの“いとこたち”へと広げている点にある。スティッチは自分が孤独な存在ではないと知り、リロと共に新しい家族を見つけていく。前作の感情的なテーマを受け継ぎながら、シリーズ全体の世界観を一気に拡張する作品になっている。
また、本作は後に展開されるテレビシリーズ『リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ』へつながる導入編としても重要な位置にある。625体の実験体という設定は、毎回異なる能力を持つキャラクターが登場するシリーズの土台となっており、スティッチの物語を単発の映画から連続的な冒険へと発展させた。
さらに、スパーキーや試作品625号など、スティッチに近い存在でありながら個性の異なる実験体たちが登場することで、作品にはコミカルなにぎやかさが加わっている。約1時間のコンパクトな作品ながら、アクション、家族愛、SF的な設定、キャラクターの可愛らしさがバランスよく詰め込まれている。
『リロ&スティッチ』本編の余韻を楽しみたい人はもちろん、スティッチというキャラクターがなぜ多くの派生作品へ広がっていったのかを知るうえでも見逃せない一本だ。
ストーリー解説(ネタバレ)
ガントゥ、悪の科学者ハムスターヴィールに雇われる
物語は、前作『リロ・アンド・スティッチ』で銀河連邦の大尉の座を失ったガントゥの場面から始まる。彼は新たな宇宙船に乗っており、そこで小柄な悪の科学者ジャック・フォン・ハムスターヴィール博士から仕事を持ちかけられる。
ハムスターヴィールが狙っているのは、ジャンバ博士がかつて作り出した“625体の試作品”。スティッチは試作品626号であり、その前に作られた実験体たちがまだ存在していることが示される。ガントゥは、ハムスターヴィールの命令を受け、地球にいるジャンバを捕らえ、残された試作品を回収するために動き出す。
この冒頭で、本作が単なるスティッチの後日談ではなく、スティッチと同じルーツを持つ“いとこ”たちをめぐる物語であることが明らかになる。
地球で暮らすスティッチは、まだ居場所を探している
一方、ハワイのカウアイ島では、スティッチがリロたちと一緒に暮らしている。前作で“オハナ”の意味を知り、リロの家族として受け入れられたスティッチだったが、地球での生活に完全になじんでいるわけではない。
スティッチは周囲に混乱を起こしてしまい、自分が本当にこの場所に合っているのか悩んでいる。リロはそんな彼を励まそうとし、「あなたは特別な存在」だと伝える。しかし、その言葉はスティッチにとって必ずしも救いにはならない。むしろ、自分と同じ存在がどこにもいないことを意識させてしまう。
スティッチは、家族を得た後もなお、自分と同じような存在を求めている。ここで描かれる孤独感が、後に登場する試作品たちとの関係につながっていく。
ガントゥがリロの家を襲撃し、ジャンバを連れ去る
リロとスティッチが家で過ごしていると、突然大きな音が響く。階下へ向かったふたりの前に現れたのは、地球に侵入してきたガントゥだった。
ガントゥの目的はジャンバ博士と、彼が隠している試作品だった。スティッチはガントゥに立ち向かうが、相手はかつて銀河連邦で戦っていた巨体の戦士であり、簡単には太刀打ちできない。ガントゥはスティッチを捕らえ、家の中を調べる。
その中でガントゥは、番号“625”が記された青いカプセルを発見する。さらにジャンバ博士を連れ去り、ハムスターヴィールのもとへ向かう。ジャンバは、自分が隠してきた過去の実験体をめぐって、再び宇宙規模の騒動に巻き込まれることになる。
リロとスティッチ、宇宙船でガントゥを追う
ジャンバが連れ去られたことを知ったリロとスティッチは、黙って見ていることができない。ふたりはジャンバの宇宙船を使い、ガントゥを追って宇宙へ飛び出す。
しかし、相手は戦闘に慣れたガントゥ。リロとスティッチは宇宙空間で追跡を試みるものの、戦いでは不利な状況に追い込まれる。ガントゥを止めることはできず、ふたりは敗れて地球へ落下する。
この場面では、リロとスティッチの無鉄砲さと勇敢さが同時に描かれる。ジャンバを助けたいという思いで動くふたりだが、敵の目的や試作品の危険性をまだ十分には理解していない。
ジャンバの秘密――625体の試作品カプセルが見つかる
地球に戻ったリロ、スティッチ、プリークリーは、ジャンバが隠していた容器を見つける。中に入っていたのは、乾燥状態で保存された多数の試作品のカプセルだった。
プリークリーは、それがジャンバの作った“他の625体の実験体”だと気づく。スティッチが試作品626号である以上、その前には625体の“兄弟”とも呼べる存在がいたということになる。
ただし、それらは危険な存在でもあった。プリークリーは、絶対に水をかけてはいけない、誰にも知らせてはいけないと警告する。カプセル状の試作品は、水に触れることで起動してしまうからだ。
しかし、スティッチにとってそれは、初めて自分と同じ存在に出会えるかもしれない希望でもあった。リロもまた、スティッチに“いとこ”を見つけてあげたいと考える。
リロとスティッチ、試作品221号を起動させてしまう
プリークリーの警告にもかかわらず、リロとスティッチは試作品の容器を持ち出す。そして、カプセルのひとつを水で戻してしまう。
目覚めたのは、試作品221号。後に“スパーキー”と名づけられる実験体である。221号は電気を操る能力を持っており、起動するとすぐに逃げ出してしまう。
リロとスティッチは、自分たちの行動が新たな問題を引き起こしたことに気づく。試作品221号は、ただの可愛い仲間ではなく、強力な能力を持つ危険な存在でもあった。ふたりは、逃げた221号を探し出さなければならなくなる。
ハムスターヴィール、試作品625号を起動させる
その頃、ジャンバはハムスターヴィールの宇宙船で捕らえられていた。ハムスターヴィールは、ジャンバが作った実験体を自分のものにしようとしている。彼にとって試作品たちは、家族でも仲間でもなく、支配や利用のための道具でしかない。
ハムスターヴィールは、ガントゥが持ち帰った試作品625号を起動させる。625号は、スティッチに近い能力を持つ実験体だった。高い知能を持ち、言葉も話すことができる。
しかし、625号はスティッチのような行動力や凶暴性を見せるというより、怠け者で臆病な性格をしていた。特にサンドイッチ作りに強い関心を示し、ハムスターヴィールの期待する“恐るべき兵器”としては扱いにくい存在であることがわかる。
この場面によって、スティッチの“同型”に近い存在であっても、性格や行動はまったく異なることが示される。
ハムスターヴィールが身代金を要求する
地球側では、プリークリーがハムスターヴィールの宇宙船と連絡を取る。ハムスターヴィールは、ジャンバを返してほしければ、残りの試作品をすべて引き渡すよう要求する。
ジャンバの命を取引材料にされ、リロたちは難しい選択を迫られる。試作品たちは危険な存在であり、ハムスターヴィールに渡せば悪用される可能性が高い。一方で、ジャンバを救うためには、何らかの形で交渉に応じなければならない。
ナニは事態の深刻さを受け止め、コブラ・バブルスに助けを求める。かつてCIAに所属していた経歴を持つコブラは、ただのソーシャルワーカーではなく、こうした異常事態にも対応できる人物として関わっていく。
リロとスティッチ、逃げた221号を追う
身代金交渉の準備が進む一方で、リロとスティッチは逃げ出した試作品221号を探しに向かう。221号は電気を操るため、放っておけば島のあちこちで騒動を起こしかねない。
ふたりは221号の行方を追い、やがてホテルにたどり着く。そこでも221号は電気の能力を使って混乱を引き起こしていた。リロとスティッチは苦戦しながらも、最終的に221号をガラスの容器に閉じ込めることに成功する。
捕まえた後、リロは221号に“スパーキー”という名前をつける。単なる危険な実験体としてではなく、スティッチの“いとこ”であり、新しいオハナの一員として見ようとするのだ。
スティッチは初めて“いとこ”を見つける
スパーキーとの出会いは、スティッチにとって大きな意味を持つ。これまでスティッチは、自分だけが特別で、同じ存在はどこにもいないと思っていた。だが、試作品221号の存在によって、自分には“いとこ”と呼べる仲間がいることを実感する。
リロもまた、スティッチにとってスパーキーが大切な存在になると理解していく。スパーキーは騒動を起こす危険な実験体ではあるが、それはスティッチがかつてそうだったように、まだ自分の居場所や役割を見つけていないだけでもある。
一方で、ジャンバを救うための身代金交換の時間は迫っていた。リロたちは、スパーキーを“仲間”として守りたい思いと、ジャンバを助けなければならない現実のあいだで、より難しい局面へ進んでいく。
身代金交換の時間が迫る
プリークリーとコブラ・バブルスは、ハムスターヴィールが指定した身代金交換の場所へ向かう。目的は、ジャンバ博士を取り戻すこと。そのために、ジャンバが隠していた試作品カプセルの入った容器を持っていく。
ただし、この時点で容器の中身は完全ではない。リロとスティッチがすでに試作品221号を起動させ、スパーキーとして捕まえているため、ハムスターヴィールが要求した“すべての試作品”のうち、1体が欠けている状態だった。
交換場所に現れたハムスターヴィールは、プリークリーたちから容器を受け取る。しかし、中身を確認した彼は、試作品が1体足りないことに気づく。ジャンバを返すための取引は、ここで再び緊迫する。
リロ、スパーキーを“オハナ”だと宣言する
そこへ、リロとスティッチがスパーキーを連れて現れる。スパーキーはガラス容器の中に閉じ込められているが、リロは彼をただの危険な実験体として扱っていない。
リロは、試作品221号に“スパーキー”という名前をつけたことを明かし、彼もスティッチの“いとこ”であり、自分たちの“オハナ”の一員だと宣言する。スパーキーをハムスターヴィールに渡せばジャンバを救えるかもしれない。しかし、リロにとって、それは家族を差し出すことでもあった。
ハムスターヴィールは、スパーキーを渡さなければジャンバを撃つと脅す。プリークリーやコブラ、ジャンバ自身、そしてハムスターヴィールまでもが、リロに決断を迫る。だがリロは、ジャンバもスパーキーも渡さないという選択をする。
リロとスティッチ、ジャンバを救出する
リロとスティッチはスパーキーを解放し、同時にジャンバを拘束から解こうと動く。取引の場は一気に混乱し、ハムスターヴィールの計画は崩れ始める。
その瞬間、コブラ・バブルスの合図によって、近くの海中から銀河連邦議長の宇宙船が浮上する。宇宙船はハムスターヴィールに照準を合わせ、彼を追い詰める。コブラはすでに銀河連邦側と連携しており、単なる身代金交換ではなく、ハムスターヴィールを捕らえる作戦として動いていたことがわかる。
しかし、問題はまだ残っていた。ハムスターヴィールは、すでに残りの試作品カプセルを手にしている。リロは、彼を攻撃すれば試作品たちも危険にさらされると訴える。
スパーキーの行動でハムスターヴィールが逃走する
リロの言葉を聞いたスパーキーは、試作品たちを守ろうとするように動き出す。彼は自分の電気能力を使い、銀河連邦議長の宇宙船の電力をショートさせる。
この行動によって、議長の宇宙船はハムスターヴィールを攻撃できなくなる。結果的に、ハムスターヴィールとガントゥはその隙に逃走し、試作品カプセルの入った容器を持ったまま宇宙船に乗り込んでしまう。
リロ、スティッチ、そしてスパーキーは、試作品たちを取り戻すため、ハムスターヴィールの宇宙船に乗り込む。ここから物語は、地上での追跡劇から宇宙船内での直接対決へと移っていく。
試作品カプセルがハワイ中に散らばる
ハムスターヴィールの宇宙船の中で、リロとスティッチは試作品カプセルの入った容器を奪い返そうとする。ガントゥもそれを阻止しようとし、宇宙船内で激しい争いが起こる。
とスティッチは試作品カプセルの入った容器をその混乱の中で、容器が開いてしまう。乾燥状態の試作品カプセルは宇宙船の外へ放出され、空からハワイの各地へと降り注いでいく。
これにより、ハムスターヴィールが一括して試作品を支配することはできなくなった。しかしとスティッチは試作品カプセルの入った容器をを阻止しようとし、宇宙船内で激しい争いが起こる。
同時に、リロたちも試作品を安全に管理できなくなる。625体の実験体のうち、多くがハワイ中に散らばってしまい、今後それぞれが起動する可能性を残すことになる。
この展開が、後のテレビシリーズ『リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ』の基本構造へとつながっていく。
ハムスターヴィール、スティッチを大量に複製しようとする
リロとスティッチは、最終的にハムスターヴィールに捕まってしまう。ハムスターヴィールは、散らばった試作品の代わりに、スティッチそのものを利用しようと考える。
彼の計画は、スティッチを1000体にクローン化することだった。スティッチは強力な試作品626号であり、彼を量産できれば、ハムスターヴィールにとっては巨大な戦力になる。
スティッチは装置に固定され、持ち上げることのできない重りにつながれる。さらに、クローン化のためのレーザーが迫ってくる。スティッチは必死に逃れようとするが、重りがわずかに彼の力を上回っており、自力では抜け出せない。
リロは宇宙動物園へ送られそうになる
一方、ガントゥはリロを別の装置に入れる。彼女を宇宙の動物園へ転送しようとしていたのだ。
リロはスティッチと引き離され、スティッチもクローン装置にかけられようとしている。ここでふたりは、物理的にも精神的にも最大の危機に追い込まれる。
ハムスターヴィールにとって、リロは邪魔な地球人にすぎない。だが、スティッチにとってリロは、自分を“怪物”ではなく家族として受け入れてくれた存在だった。リロを失うことは、スティッチにとってオハナを失うことを意味していた。
スパーキーがスティッチを救う
スティッチがレーザーで切り刻まれそうになる寸前、スパーキーが行動を起こす。スパーキーは電気能力を使い、クローン装置をショートさせる。
これによって装置は故障し、スティッチは危機を脱する。スパーキーはさらにスティッチの拘束を解き、ふたりは反撃に転じる。
この場面は、スパーキーが単なる“暴走する試作品”ではなく、リロたちのオハナとして変化したことを示している。スティッチがリロによって救われたように、スパーキーもまた、名前を与えられ、家族として見られたことで、自分の力を誰かを傷つけるためではなく、助けるために使うようになる。
ハムスターヴィール、逆に装置にかけられる
スティッチとスパーキーは、ハムスターヴィールに反撃する。ふたりはハムスターヴィールをクローン装置に縛りつけ、彼自身を自分の作った危険な仕掛けにさらす。
その間に、リロも救出される。ハムスターヴィールがリロとスティッチを完全に引き離す前に、スティッチたちは彼女を助け出すことに成功する。
ハムスターヴィールの計画は完全に崩れ、リロ、スティッチ、スパーキーは再び合流する。ここで、スパーキーはスティッチの“いとこ”としてだけでなく、仲間としてもはっきりと認められる存在になる。
ガントゥの宇宙船が墜落する
リロ、スティッチ、スパーキーは、ガントゥの宇宙船にも反撃を仕掛ける。スパーキーの電気能力を使って船の機能を狂わせ、ガントゥと試作品625号が乗る宇宙船は制御を失っていく。
最終的に、ガントゥの宇宙船はカウアイ島の滝の近くに墜落する。ガントゥはまたしても失敗し、屈辱的な形で敗北することになる。
試作品625号は、スティッチと似た能力を持ちながらも、最後まで戦闘よりもサンドイッチ作りを優先するような存在として描かれる。その脱力した個性が、ガントゥの敗北をよりコミカルなものにしている。
ハムスターヴィールは逮捕される
リロたちは、ハムスターヴィールの宇宙船を身代金交換の場所へ戻す。ハムスターヴィールは捕らえられ、銀河連邦議長によって逮捕される。
ジャンバも無事に救出され、リロたちのオハナはひとまず危機を乗り越える。だが、問題は完全に解決したわけではない。試作品カプセルの多くはハワイ中に散らばってしまっている。
それでもリロたちは、試作品たちをただ封じ込めたり破壊したりするのではなく、それぞれに合った居場所を見つけてあげたいと考える。スティッチがリロの家族になれたように、他の試作品にも“本当に属する場所”があるはずだと信じるのだ。
スパーキーに新しい居場所が見つかる
スパーキーには、カウアイ島のキラウエア灯台という新しい居場所が与えられる。その灯台は、電力コストの問題で長い間使われていなかった。
電気を操るスパーキーにとって、灯台に電力を供給することは、自分の能力を活かせる役割だった。かつては周囲に混乱を起こしていた力が、今度は人々の役に立つ力へと変わる。
この結末は、本作のテーマを象徴している。試作品たちは、能力だけ見れば危険な存在かもしれない。しかし、それぞれの力には適した使い道があり、居場所を見つけられれば、誰かを傷つける存在ではなく、誰かを助ける存在になれる。
リロたち、残りの試作品を探す役目を引き受ける
リロ、スティッチ、ジャンバ、プリークリーたちは、銀河連邦議長に対して、散らばった試作品たちの扱いについて提案する。彼らは、残りの試作品を見つけ出し、それぞれに合った居場所を探してあげたいと訴える。
銀河連邦議長は、その申し出を認める。これにより、リロとスティッチは、ハワイ中に散らばった試作品たちを探し、改心させ、最適な場所を見つけるという新たな使命を担うことになる。
本作は、ここで明確にテレビシリーズへの導入編として機能する。625体の試作品という設定は、今後さまざまな能力を持つ実験体が登場する物語の土台となる。
ジャンバ、試作品627号の構想を口にする
事件が一段落した後、ジャンバはプリークリーに対し、試作品627号を作る計画があることをほのめかす。これは、ジャンバが懲りていないことを示すコミカルな一幕であり、後のシリーズ展開にもつながる小さな伏線になっている。
ジャンバはスティッチを生み出した張本人であり、数々の試作品を作った科学者でもある。リロたちの家族として暮らすようになっても、彼の科学者としての好奇心や危うさは完全には消えていない。
この場面によって、物語はきれいに終わるだけでなく、さらなる騒動の予感を残して締めくくられる。
複数の試作品が起動し、物語はテレビシリーズへ続く
ラストでは、ハワイの各地に落ちた試作品カプセルの一部が水に触れ、起動していく様子が描かれる。試作品202号、529号、455号、489号、390号など、さまざまな実験体が目覚め始める。
これにより、リロとスティッチの新たな冒険が始まることが示される。彼らの目的は、起動した試作品たちを探し出し、危険な力を制御し、それぞれが本当に必要とされる場所へ導くことになる。
『スティッチ!ザ・ムービー』は、単体の映画としてはスパーキーをめぐる物語でありながら、シリーズ全体にとっては“試作品探し”という基本設定を作る重要な作品でもある。スティッチが孤独な試作品626号ではなく、多くの“いとこ”たちを持つ存在だと明かされたことで、物語の世界は大きく広がっていく。
ポストクレジットでは、ジャンバとプリークリーがまた地球に残される
本編後の短い場面では、ジャンバとプリークリーが銀河連邦議長と一緒に帰れるのではないかと期待する。しかし、結局ふたりはまた地球に取り残されてしまう。
前作に続き、ジャンバとプリークリーはリロたちの家で暮らし続けることになる。本人たちにとっては不本意でも、リロやスティッチにとっては、彼らもまたオハナの一部になっている。
このオチによって、本作は宇宙規模の騒動を描きながらも、最後はやはり“家族”の物語として締めくくられる。スティッチ、スパーキー、そして散らばった試作品たちは、それぞれにふさわしい居場所を探すことになるのだ。
