『ラッチョ・ドローム』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『ラッチョ・ドローム』(1993)を紹介&解説。


映画『ラッチョ・ドローム』概要

映画『ラッチョ・ドローム』は、トニー・ガトリフ監督が、インドからエジプト、トルコ、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、フランスを経てスペインへ至るロマの長い旅と歴史を、各地の音楽、歌、踊りによって描いた音楽映画。一般的なドキュメンタリーのようなインタビューや解説をほとんど用いず、土地ごとに受け継がれてきた音楽そのものをロマの記憶として映し出していく。出演はタラフ・ドゥ・ハイドゥークスチャボロ・シュミットドラド・シュミットレメディオス・アマジャ、ラ・カイータら。

作品情報

日本版タイトル 『ラッチョ・ドローム』
原題 Latcho Drom
製作年 1993年
本国公開日 1993年11月3日(フランス劇場公開)
日本公開日 2001年7月7日
ジャンル ドキュメンタリー音楽
製作国 フランス
原作
上映時間 103分
監督・脚本 トニー・ガトリフ
製作 ミシェル・レイ=ガヴラス
撮影 エリック・ギシャール
編集 ニコル・D・V・ベルクマンス
音楽 アラン・ヴェベール
出演 タラフ・ドゥ・ハイドゥークス/ケ・ラン/ザ・ミュージシャンズ・オブ・ナイル/チャボロ・シュミット/ドラド・シュミット/レメディオス・アマジャ/ラ・カイータ
製作 KG Productionsほか
配給 KG Distribution(フランス)/ケイブルホーグ(日本)

あらすじ

インド北西部のラジャスタンから旅は始まる。歌い、踊る人々を追ったカメラは、エジプト、トルコ、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、フランスへと移動し、やがてスペインのアンダルシアへたどり着く。土地によって衣装も言語も音楽の形も変化していく一方、それぞれの歌にはロマの移動、迫害、喪失、家族、喜びの記憶が刻まれている。ナレーションによって歴史を説明するのではなく、各地に生きる人々の歌と踊りをつなぎ合わせることで、千年にわたるロマの旅を描いていく。

主な登場人物

タラフ・ドゥ・ハイドゥークス:ルーマニアのロマ音楽を代表する楽団。演奏を通じ、ロマに伝わる音楽文化と共同体の生命力を体現する。

チャボロ・シュミット:フランスを代表するマヌーシュ・ジャズのギタリスト。フランスへ至ったロマの音楽文化を伝える演奏家の一人として登場する。

ドラド・シュミット:マヌーシュ・ジャズのギタリスト。各地で姿を変えながら受け継がれてきたロマ音楽の一端を演奏によって伝える。

レメディオス・アマジャ:スペインのフラメンコ歌手。ロマの旅がアンダルシアへたどり着いた終盤を、フラメンコの歌声で彩る。

ラ・カイータ:スペインの歌手。長年にわたりロマが受けてきた迫害や差別の記憶を宿した歌を披露し、本作を象徴する存在の一人となっている。

作品の魅力解説

台詞ではなく“音楽そのもの”に歴史を語らせる

『ラッチョ・ドローム』最大の特徴は、歴史を説明するナレーションや専門家へのインタビューにほとんど頼らないこと。ロマの人々自身が歌い、演奏し、踊る姿をつなぎ合わせることで、文字では記録されにくかった彼らの歴史を音楽から浮かび上がらせる。

喜びに満ちた祝祭の歌もあれば、独裁や迫害、アウシュビッツの記憶を伝える歌もある。音楽が娯楽であると同時に、共同体の記憶を次世代へ残す媒体であることが伝わってくる。

インドからスペインまで、土地ごとに変化していくロマ音楽

旅の出発点となるインドから、エジプト、トルコ、東欧、フランス、スペインへ。移動するにつれて、使われる楽器やリズム、歌唱、踊りは大きく変わっていく。

それでも異なる土地の音楽を連続して見ることで、長い移動の歴史の中で現地文化と混ざり合いながら独自の文化を守り続けてきた人々の姿が一本の道としてつながっていく。タイトルの「ラッチョ・ドローム」が意味する「よい旅を」という言葉そのものが、映画全体の構造になっている。

祝祭の生命力と迫害の記憶が同居する

本作を彩るのは圧倒的に力強い歌と踊りだが、その明るさだけを切り取ってロマ文化をエキゾチックに見せる映画ではない。

ルーマニアでは独裁体制の記憶が歌われ、スロバキアではホロコーストを生き延びた女性の歌が響き、スペインでは長く続いた差別への痛みが歌声となる。苦しみを記憶しながら、それでも歌い、踊り、次の世代へ文化を渡していく。その強烈な生命力こそが本作の中心にある。

映画データベースTOPへ

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む