映画『白鯨との闘い』(2015)を紹介&解説。
映画『白鯨との闘い』概要
映画『白鯨との闘い』は、ロン・ハワード監督(『アポロ13』『ビューティフル・マインド』)が、1820年に起きた捕鯨船エセックス号沈没事件を題材に描く歴史アドベンチャー。ナサニエル・フィルブリックによるノンフィクションを原作に、巨大なマッコウクジラの襲撃によって船を失い、太平洋を漂流することになった乗組員たちの過酷な生存競争を描く。この実話はハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』にも影響を与えたことで知られる。主演はクリス・ヘムズワース、共演にベンジャミン・ウォーカー、キリアン・マーフィー、トム・ホランド、ベン・ウィショー、ブレンダン・グリーソンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『白鯨との闘い』 |
|---|---|
| 原題 | In the Heart of the Sea |
| 製作年 | 2015年 |
| 本国公開日 | 2015年12月11日 |
| 日本公開日 | 2016年1月16日 |
| ジャンル | アドベンチャー/歴史/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ/スペイン |
| 原作 | ナサニエル・フィルブリック『復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇』(ノンフィクション) |
| 上映時間 | 122分 |
| 監督 | ロン・ハワード |
|---|---|
| 脚本 | チャールズ・リーヴィット |
| 製作 | ポーラ・ワインスタイン/ジョー・ロス/ウィル・ウォード/ブライアン・グレイザー/ロン・ハワード |
| 製作総指揮 | ブルース・バーマン/スティーヴン・ムニューシン/サラ・ブラッドショウ/パラク・パテル/エリカ・ハギンズ/デヴィッド・バーグスタイン |
| 撮影 | アンソニー・ドッド・マントル |
| 編集 | マイク・ヒル/ダン・ハンリー |
| 作曲 | ロケ・バニョス |
| 出演 | クリス・ヘムズワース/ベンジャミン・ウォーカー/キリアン・マーフィー/トム・ホランド/ベン・ウィショー/ブレンダン・グリーソン/ミシェル・フェアリー/フランク・ディレイン/ポール・アンダーソンほか |
| 製作 | ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ/イマジン・エンターテインメント/ロス・フィルムズ/コット・プロダクションズほか |
| 配給 | ワーナー・ブラザース |
あらすじ
作家ハーマン・メルヴィルは、かつて捕鯨船エセックス号に乗っていたトーマス・ニカーソンを訪ね、長年口を閉ざしてきた遭難事件について聞き出そうとする。
1819年、経験豊富な一等航海士オーウェン・チェイスは、ジョージ・ポラード船長の指揮するエセックス号に乗り込み、鯨油を求めて太平洋へ向かう。航海を続ける一行は、やがて大量のクジラが生息する海域についての情報を得るが、そこで彼らを待っていたのは異常なほど巨大なマッコウクジラだった。
猛烈な攻撃によってエセックス号を失った乗組員たちは、わずかな食料と水を積んだ小舟だけで広大な太平洋に取り残される。飢え、渇き、嵐、仲間との対立に追い詰められながら、生きて陸へ戻るための凄絶な漂流が始まる。
主な登場人物(キャスト)
オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース):エセックス号の一等航海士。豊富な航海経験と捕鯨技術を持つ実力者だが、名門の家柄を持つポラードが船長に任命されたことで、その指揮下に入る。
ジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー):エセックス号の船長。名門捕鯨一家の出身で、経験で勝るチェイスとたびたび衝突しながら船を率いる。
マシュー・ジョイ(キリアン・マーフィー):エセックス号の二等航海士。チェイスと強い信頼関係を持ち、過酷な航海を共にする。
トーマス・ニカーソン(トム・ホランド):少年乗組員としてエセックス号に乗り込む。巨大なクジラの襲撃と、その後の凄惨な漂流を目撃する。
トーマス・ニカーソン(ブレンダン・グリーソン):エセックス号事件を生き延びた数十年後のニカーソン。長く封印していた記憶をハーマン・メルヴィルに語り始める。
ハーマン・メルヴィル(ベン・ウィショー):作家。エセックス号に何が起きたのかを知るためニカーソンを訪ね、その証言を聞き取っていく。
作品の魅力解説
『白鯨』そのものではなく、その源流となった実話を描く
本作の特徴は、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』を直接映画化した作品ではなく、小説に影響を与えた実際の海難事故へと遡っていること。1820年に巨大なマッコウクジラの攻撃を受けて沈没したエセックス号の事件を扱ったナサニエル・フィルブリックのノンフィクションをベースにしている。
メルヴィルが生存者ニカーソンから話を聞くという劇映画としての枠組みを設けることで、「伝説的な物語がどのように生まれたのか」を描く作品にもなっている。
巨大な海と人間の小ささを強調する映像
アカデミー賞撮影賞受賞歴を持つアンソニー・ドッド・マントルが撮影を担当。荒れ狂う海、木造の捕鯨船、巨大なマッコウクジラを組み合わせ、人間が自然の前では極めて小さな存在であることを視覚的に押し出している。
特に物語前半の捕鯨とクジラ襲撃は大作映画らしいスケールで描かれる一方、後半では舞台を小さなボートへと縮小。広大な海の真ん中で食料も水も失っていく乗組員たちの閉塞感へと映画の性格が変化していく。
怪物との戦い以上に過酷な漂流サバイバル
巨大なクジラとの対決は作品の大きな見せ場だが、物語の中心を占めるのは船を失った後のサバイバル。飢えや渇きによって肉体だけでなく倫理観まで追い詰められていく人々を通して、生き残るために人間はどこまで進めるのかという問題を描く。
一方、批評面では高い評価を得た作品とはいえない。Rotten Tomatoesの批評家スコアは42%、MetacriticのMetascoreは47。映像や海洋アクションを評価する声がある一方、壮大な実話に対して人物やドラマの掘り下げが十分ではないという評価も目立った。大規模な海洋映画としての迫力と、人物劇としての物足りなさが同居する作品といえる。
