映画『デス・フロア』(2017)を紹介&解説。
映画『デス・フロア』概要
映画『デス・フロア』は、エレベーターに閉じ込められた傲慢な実業家が、建物の外で始まったゾンビ・パンデミックに直面するイタリア製ワンシチュエーション・スリラー。ダニエーレ・ミシシチア監督が、ほぼ全編を狭いエレベーターの内部で展開させ、扉の隙間や携帯電話から断片的に伝わる惨劇を描く。主演はアレッサンドロ・ロヤ。『愛と銃弾』などを監督したマネッティ兄弟が製作に名を連ねている。
作品情報
| 日本版タイトル | 『デス・フロア』 |
|---|---|
| 原題 | In un giorno la fine |
| 英題 | The End? |
| 製作年 | 2017年 |
| 本国公開日 | 2018年8月14日 |
| 日本公開日 | 劇場未公開(2018年9月4日DVD発売) |
| ジャンル | ホラー/スリラー/ゾンビ |
| 製作国 | イタリア |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 98分 |
| 監督 | ダニエーレ・ミシシチア |
|---|---|
| 脚本 | ダニエーレ・ミシシチア/クリスティアーノ・シコッティ |
| 製作 | カルロ・マッキテッラ/アントニオ・マネッティ/マルコ・マネッティ |
| 撮影 | アンジェロ・ソレンティーノ |
| 編集 | フェデリコ・マリア・マネスキ |
| 作曲 | イサク・ロイトン |
| 出演 | アレッサンドロ・ロヤ/クラウディオ・カミッリ/エウリディーチェ・アクセン/ベネデッタ・チマッティ/カロリーナ・クレシェンティーニ |
| 製作会社 | モンプラチェム/RAIシネマ |
| 配給 | 01ディストリビューション(イタリア) |
| 発売・販売 | ギャガ(日本) |
あらすじ
ローマで働く実業家クラウディオは、重要な商談へ向かう途中、オフィスビルのエレベーターに閉じ込められてしまう。閉所恐怖症でもある彼は管理会社へ連絡し、自力で扉をこじ開けようとするが、救助は一向に現れない。
やがて、わずかに開いた扉の隙間から女性の悲鳴を聞いたクラウディオは、ビルの中で異常事態が起きていることを知る。謎のウイルスによって人々が凶暴化し、街は急速に崩壊していた。脱出したいクラウディオだったが、いつしか狭いエレベーターこそが最も安全な場所となっていく。
主な登場人物(キャスト)
クラウディオ・ヴェローナ(アレッサンドロ・ロヤ):ローマで働く若く成功した実業家。尊大で自己中心的な態度を取り、周囲の人々をぞんざいに扱っている。重要な商談の直前にエレベーターへ閉じ込められ、外で進行するゾンビ・パンデミックに直面する。
マルチェッロ(クラウディオ・カミッリ):感染者があふれるビル内でクラウディオと遭遇する警察官。エレベーターから出られないクラウディオにとって、数少ない協力者となる。
マルタ(エウリディーチェ・アクセン):クラウディオの部下で、彼と個人的にも複雑な関係を持つ女性。感染が拡大する中、エレベーター付近へ逃げ込んでくる。
ロレーナ(カロリーナ・クレシェンティーニ):クラウディオの妻。姿を直接見せる場面は限られているが、携帯電話を通じてクラウディオと連絡を取り、外の世界で起きている異変を伝える。
作品の魅力解説
エレベーターの中からゾンビ映画を描く発想
本作の最大の特徴は、ゾンビ・パンデミックという大規模な惨事を、ほぼ全編にわたってエレベーターの内部から描いた点にある。主人公と観客に与えられる情報は、わずかに開いた扉の隙間、携帯電話から聞こえる声、廊下に響く悲鳴や物音に限られる。外の状況を直接見せすぎないことで想像力を刺激し、密室スリラーとゾンビ映画を組み合わせたコンセプト自体には面白さがある。
限られた空間が緊迫感と停滞の両方を生む
閉鎖空間を舞台にしたことで、逃げることも隠れることもできない独特の緊張感が生まれている。感染者が扉の向こうへ現れる場面や、細い隙間を介して攻防が繰り広げられる場面には、本作ならではの工夫が見られる。
一方、約100分にわたって同じ場所を中心に物語を展開するため、中盤以降は状況の反復や引き延ばしを感じやすい。魅力的な着想ではあるものの、そのコンセプトだけで長編を最後まで支えるには変化が少なく、より短い上映時間であれば緊張感を維持しやすかったと思われる。
嫌われ者の主人公を生かしきれない人物ドラマ
クラウディオは、運転手や部下を見下し、妻に対しても誠実とはいえない傲慢な人物として登場する。そのため、彼が極限状況で痛い目に遭い、自らの振る舞いを省みる物語を予想させるが、本作は因果応報や人間的成長に焦点を絞っているわけではない。善人も悪人も等しく惨事に巻き込まれるため、クラウディオの性格設定がドラマ上の強いカタルシスへ結びついていない。
追い詰められる中で彼の態度に変化は生まれるものの、その過程は十分に掘り下げられず、人物ドラマとしてはやや中途半端な印象が残る。主人公を応援しにくい設計も、ほぼひとりの視点で進む作品としては大きな弱点となっている。
アイデアを楽しむB級シチュエーションホラー
『デス・フロア』は、物語や人物造形の完成度よりも、「ゾンビが徘徊するビルのエレベーターに閉じ込められたらどうなるか」という発想を楽しむタイプの作品である。大掛かりな都市崩壊を見せるのではなく、限られた予算と空間を利用してジャンル映画を成立させようとする意欲は伝わってくる。
ただし、斬新な設定から期待されるほど展開の種類は多くなく、人物の成長や社会的なテーマも深くは追究されない。ワンシチュエーション映画やイタリア製ゾンビ映画に興味があれば見どころはあるが、総合的にはコンセプトを軸に作られた、まずまずのB級ホラーといったところである。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
