【映画レビュー『モアナと伝説の海』実写版】今あえてリメイクする意義は? CGアニメから実写版へ、モアナと旅路【予習は不要】

モアナ Film Review
モアナ(キャサリン・ラガアイア)、実写版『モアナと伝説の海』より © 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 新作映画『モアナと伝説の海(2026)』 を紹介&解説するレビュー。


実写版『モアナと伝説の海』が7月31日(金)、日本公開を迎える。“リメイクの意義”という物差しを当てるなら、本作はディズニーの実写化群のなかでも弱い部類に属する——それが率直な評価だ。だが、この作品には、それでも実写で撮られねばならなかった理由が確かに存在する。それは物語の側にではなく、画面に立つ俳優たちの身体の側にある。

「実写化する意味があるのか」——最初に立った疑問

正直に言えば、実写リメイクのニュースを最初に耳にしたとき、“リメイクする意味があるのか”という疑問が先に立った。2016年の『モアナと伝説の海』は、精緻なCGとすばらしいオリジナリティによって、すでに一個の作品として完成の域に達していたからだ。とりわけ海や草花の描写は、実写と見紛うほどの美しさを備えていた。それをわざわざ実写へ置き換える必要があるのか——そう身構えるのが自然な反応だろう。

『美女と野獣』や『アラジン』であれば、平面のアニメーションを実写へ移し替えるという明確な落差があり、リメイクの意義も測りやすい。だが『モアナと伝説の海』の場合、アニメ版と実写とのあいだに横たわるギャップが、そもそもあまりに小さかったのではないか。

アニメ版を知らないなら、「予習しない」という手も!

蓋を開けてみても、その印象は大きくは覆らなかった。“リメイクの意義”という一点において、本作はこれまでのディズニー実写リメイクのなかでも弱い部類に属するとは感じる。元が完成度の高いCG作品ゆえに、少し想像力を働かせれば思い描ける「あれを実写にすればこうなるだろう」という予想の範疇に、そのほとんどが収まってしまうからだ。アニメ版と同じ箇所で心を動かされ、同じ歌にグッときて、同じ箇所で笑う。文字通りの“実写化”であり、本作にどれだけの制作意義を見出すかは、観る者に左右されるだろう。

良くも悪くも、ほぼアニメ版に忠実である。明確に変わったと言えるのは、マウイが歌う「You’re Welcome(俺のおかげさ)」の演出くらいのものだ。アニメ版を知っている観客にとっては、すでに知っているシーンばかりが並ぶことになる。

だが、裏を返せばこうも言える。現時点でアニメ版を未見なら、「予習しない」という選択もひとつの手だ。この実写版でモアナの物語に初めて触れるなら、驚きも感動も、まだ手つかずのまま残されているはずだから。

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モアナ(キャサリン・ラガアイア)とプア、実写版『モアナと伝説の海』より © 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ジョンソンが「生身のマウイ」を演じられるうちに

では、公開からまだ10年ほどしか経っていないCGアニメーションを、なぜ今ディズニーはリメイクしたのか。あえてその理由を考えるなら、答えは“ロック様”ことドウェイン・ジョンソンのマウイ役に尽きるように思う。

アニメ版でマウイを演じたジョンソンの声、そして彼自身の広く知られた容貌とキャラクターは、あまりにもマウイという存在と分かちがたく結びついていた。そして今回の実写化でも、やはりジョンソンが引き受けた。スキンヘッドの印象が定着している彼が長髪のウィッグを被った姿には、本人も当初は笑ったというし、観客としても最初は見慣れない。だが、その違和感が薄れてくる頃には、他に誰が演じられるのかと思わされるほど、彼こそがマウイなのだ。

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実写版『モアナと伝説の海』© 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

裏を返せば、彼が演じられない年齢に達したあとで誰がこの役を継いでも、反発の声は高まっただろう。ジョンソンがマウイを演じる必要があった——だからこそ制作が急がれたのではないか。そう考えてみたくなる。

前述のとおり、マウイの歌唱シーンは実写版で唯一と言っていいオリジナルの見せ場であり、そこにはジョンソンのアイデアが大きく関わっているという。とすれば、「彼が生身でマウイを演じ切った」という一点にこそ、本作の大きな意義があるのではないか。

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マウイ(ドウェイン・ジョンソン)、実写版『モアナと伝説の海』より © 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

さらに、キャサリン・ラガイア(ランガイア)である。

アニメ版のモアナに似ているかと問われれば、正直なところ似てはいない。だが、その演技はモアナという像に見事に嵌まっており、キャスティングとしては極めて優れていたと思う。純朴さ、弱さ、強さ、茶目っ気——それらを併せ持つ、良いモアナがここに立ち上がった。歌唱力も申し分なく、確かな感動を残してくれる。

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実写版『モアナと伝説の海』© 2026 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

文化に命が吹き込まれた瞬間

そしてもう一つ、本作を実写で撮る意義を確かに感じたのは、ポリネシアンのルーツを持つ人々が演じ、彼らの生活風景と文化を丁寧に映像化してみせた点である。ポリネシアンの文化が現に存在することは頭では分かっていても、アニメーションで観ているかぎり、それは「どこかにある物語の島」のように、どうしてもふわりと受け取られてしまう。

今回の実写化では、その生活、衣服、食生活、舞踊、言語といったものが改めてフィーチャーされ、実際にルーツを持つ人々が自らの身体でそれを演じ、表現した。そのことによって、『モアナと伝説の海』が描いてきたポリネシアン文化に命が吹き込まれたように感じられ、そこに強く心を躍らされたのだ。


結局のところ、本作の意義は、俳優たちが生身で担ったものすべてに宿っている。ジョンソンの肉体、ラガイアの声、そしてポリネシアンの文化を自らの身体で表現した人々——彼らがいたからこそ、この実写化は撮られる必要があったのだろう。アニメ版を未見の方はぜひ、予習をせず斬新な気持ちで、大スクリーンでこの大冒険を味わっていただきたい。

実写版『モアナと伝説の海』は、7月31日(金)日本公開。

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