「仕事を降りろ」と言われても──ジョン・リスゴーが語る、ドラマ版“ハリポタ”ダンブルドア役を引き受けた理由と葛藤

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ジョン・リスゴーがドラマ版『ハリー・ポッター』でダンブルドア役を演じる決断と、J・K・ローリングのトランス問題への考えを語った。


ジョン・リスゴーが、ロッテルダム国際映画祭で上映された最新作『Jimpa(原題)』の場で、今後配信予定のドラマシリーズ版『ハリー・ポッター』でダンブルドア役を演じることについて語った。
同シリーズを巡っては、原作者J・K・ローリングのトランスジェンダーを巡る発言が長年議論を呼んでおり、リスゴー自身にもその是非について質問が向けられた。賛否を承知のうえで役を引き受けたという彼の発言は、会場内外で大きな反響を呼ぶこととなった。

J・K・ローリングの発言と作品世界への見方

J・K・ローリングのトランス問題に関する発言について問われると、リスゴーは「僕はこの問題を極めて真剣に受け止めているよ」と前置きしたうえで、彼女が生み出してきた作品群の影響力に言及した。
彼女は若者たちのためにすばらしい作品群を生み出したし、それは社会の意識に深く根付いた。善と悪、優しさと残酷さの対立構図を描いているんだ」と語りつつも、個人としての見解については「彼女の見解は皮肉的で理解しがたいと感じている」と距離を置いた姿勢を示した。

一方で、ローリング本人とは面識がなく、今回のドラマ制作にも「彼女はこの製作にほとんど関わっていない」と説明。「でも(作品の制作に)関わっている人たちはすばらしいよ」と、現場のクリエイターたちへの信頼を強調した。

反対の声と、それでも役を引き受けた理由

リスゴーは、自身がドラマ版『ハリー・ポッター』に関わることに反対する人々がいる現実についても率直に語った。「僕がこの作品に関わることに反対する人たちがいると、心が痛むんだ」と述べ、批判の存在を認識していることを明かしている。

それでも彼は、作品世界そのものに差別的な感性は見出せないと考えているという。「でも『ポッター』の世界には、トランスフォビア的な感性の痕跡は一切見られない。彼女は優しさと受容についての物語を書いたんだ」と語り、原作が描いてきた価値観と、ローリングのプライベートにおける主張、そしてリスゴー自身の出演判断を切り分けて捉えている姿勢を示した。

出演を受けるかどうかは簡単な決断ではなかったとも明かしている。「難しい決断だった。人々が仕事を降りろと強く言ってきて、不快で不幸な気持ちになった」と振り返りつつ、「でも僕はそうしないことを選んだんだ」と、自らの選択を言葉にした。
リスゴーにとってダンブルドアという役は、「美しい役」であり、その価値を信じたことが最終的な判断につながったという。

80歳での長期契約と、ダンブルドア役への覚悟

重い議論が続く中で、リスゴーは年齢を交えた冗談も交えながら、ダンブルドア役への覚悟を語った。「僕はこの会場にいる全員の中で最年長で、つい最近80歳になったんだ」と笑いを誘いつつも、「それなのに契約書にサインしちゃった――今後8年間ダンブルドアを演じるってね!」と、長期出演契約を結んだことを明かした。

さらに、「絶対に続けなきゃいけない。『おっと……ということは88歳まで生きるってことじゃないか!』って思ったよ。それが書面に残ってるんだ」と語り、軽妙な口調の中に責任の重さものぞかせた。高齢での挑戦であることを自覚しながらも、その役を引き受けた事実は、彼がこのシリーズと役柄に対して抱く覚悟の強さを物語っている。

会場で起きた抗議と、避けられなかった議論

リスゴーの発言は、会場の全員に受け入れられたわけではなかった。ある観客は、彼の決断に対して失望を表明し、「こういうことは何の助けにもならない」と言い残して抗議の意思を示し、会場を後にしたという。

この行動をきっかけに、会場では激しい議論が起こり、ロッテルダムでプレミア上映されたリスゴーの最新作『Jimpa(原題)』についての話題は、次第にかすんでいったと伝えられている。映画祭という場で、ひとりの俳優の選択が大きな論争へと発展した形だ。

こうした反応について、リスゴー自身は冷静に受け止めている。「意見の衝突には完全に覚悟ができているよ。理解しているんだ」と語り、対立や批判が起こることを想定したうえで発言していたことを明かした。

『Jimpa(原題)』で描かれる親子の再会と創作現場

議論の渦中にありながらも、リスゴーはロッテルダム国際映画祭で上映された最新作『Jimpa(原題)』についても語っている。本作では、オリヴィア・コールマンと共演し、後年カミングアウトした父親と再会する娘の物語が描かれる。娘ハンナをコールマンが演じ、父親役をリスゴーが務めた。

コールマンについて、リスゴーは「オリヴィアは自分自身の感情生活に驚くほどアクセスできる人で、とても純粋なんだ」と評し、「彼女にとってそれはとてもリアルなんだよ。彼女は相手と同じ感情の波長に保ってくれる。なんてすばらしい俳優なんだろう」と、その演技力を称賛した。

ソフィー・ハイド監督による本作は、現在アムステルダムに暮らす父親と娘の再会を軸に展開する。リスゴーは、オランダのスタッフと働いた経験についても触れ、「世界で最も温かく迎え入れてくれる人たちだよ」と振り返る。「全体の経験が一つの大きなパーティーみたいだった。僕はストレートなスタッフの1パーセントで、すばらしい時間を過ごしたよ」と語り、現場の空気を生き生きと伝えた。

また、ハイド監督についても「彼女のストーリー、芸術的・感情的な直感は……」と評価し、自身が父親役に選ばれた背景として、映画『人生は小説よりも奇なり』での演技が参考にされたことを明かしている。


ドラマ版『ハリー・ポッター』への出演を巡る発言は、大きな議論を呼んだ一方で、リスゴーが自らの選択と向き合い続けていることも浮き彫りにした。賛否が交錯する状況にあっても、「意見の衝突には完全に覚悟ができている」と語る彼の姿勢は、映画祭という場において強い印象を残した。

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