反戦映画『タンク』が、Prime Videoのドイツオリジナル映画として史上最高の配信記録を達成した。
映画『タンク』(原題:Der Tiger)が、Prime Videoのドイツオリジナル映画として史上最高の配信記録を樹立したことが分かった。Amazonの社内データによると、本作は配信開始から7日間で、ドイツ、アメリカ、イギリスを含む28カ国のPrime Video配信地域においてトップの座を獲得。具体的な視聴数などは明らかにされていないものの、その到達範囲の広さが注目を集めている。
Prime Videoドイツ製作映画として異例の広がり
本作は1月2日、世界240の地域に向けてAmazonのストリーミングサービス上で配信が開始された。これに先立ち、ドイツ国内では劇場公開が行われており、Prime Videoドイツ製作映画が劇場公開を経てから配信されるのは、今回が初の試みとなった。
こうした段階的な公開戦略は、通常のストリーミングオリジナル作品とは異なる動きとして業界内でも注目されていた。結果として、本作は複数の主要市場で同時に視聴される形となり、Prime Videoのドイツオリジナル映画史上最高の配信実績につながったとみられている。
第二次世界大戦下で描かれる、極限状態の兵士たちの心理
『タンク』の舞台は、1943年の第二次世界大戦東部戦線。ナチス・ドイツ軍のティーガータンクに乗り込む5人の乗組員が、激戦が続く最前線から遠く離れた場所で極秘任務に就く様子が描かれる。敵地の奥深くへと進む彼らは、次第に外部の脅威だけでなく、自身の内面に潜む恐怖や疑念とも向き合わざるを得なくなっていく。
物語が進行するにつれ、兵士たちの精神状態は不安定さを増していく。国防軍で使用されていたメタンフェタミンによって高揚した意識は、やがて現実感を失い、任務は“生還”を目指す戦いから、精神の深層へと沈み込む旅へと変貌していく。本作は戦闘そのものよりも、極限状況に置かれた人間の心理や崩壊過程に焦点を当てた反戦映画として構築されている。
ナチスを題材に向き合い続けてきた監督の最新作
本作の監督を務めたデニス・ガンゼルは、ナチスや集団心理といった重いテーマに正面から向き合ってきた映画作家として知られている。2004年の『エリート養成機関 ナポラ』では、ヒトラー党の将来の党員を育成するエリート軍事学校を舞台に、若者たちが体制に取り込まれていく過程を描いた。続く2008年の『THE WAVE ウェイヴ』では、現代ドイツを舞台に独裁的な集団が生まれる可能性を描き、社会的な議論を呼んだ。
『タンク』は、そうしたガンゼル監督のフィルモグラフィーに連なる一本として位置づけられる作品だ。歴史的事実や戦争の悲惨さを直接的に描写するのではなく、極限状態に置かれた人間の心理や選択に焦点を当てる手法は、本作においても一貫している。ナチスという題材を扱いながらも、イデオロギーではなく人間そのものを見つめ続ける視線が、本作を単なる戦争映画ではない存在へと押し上げている。
