『ぼくらの居場所』シャシャ・ナカイ&リッチ・ウィリアムソン両監督にインタビュー。
11月7日(金)より、映画『ぼくらの居場所』が日本公開となる。culaでは本作の監督コンビであるシャシャ・ナカイ監督とリッチ・ウィリアムソン監督に単独オンラインインタビューを実施。ドキュメンタリー出身の両名がフィクション作品である本作にどのように向き合ったのか、濃厚な話を聞くことができた。(取材・文:cula編集長 ヨダセア)
『ぼくらの居場所』あらすじ
多様な文化を持つ人々が多く暮らす、カナダ・トロント東部に位置するスカボロー。そこに暮らす3人の子供たち。精神疾患を抱えた父親の暴力から逃げるようにスカボローにやって来たフィリピン人のビン。家族4人でシェルターに暮らす先住民の血を引くシルヴィー。そしてネグレクトされ両親に翻弄され続けるローラ。
そんな彼らが安心して過ごせる場所は、ソーシャルワーカーのヒナが責任者を務める教育センターだった。厳しい環境下で生きながらも、ささやかなきずなを育んでいく3人だったのだが…。
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シャシャ・ナカイ&リッチ・ウィリアムソン 監督インタビュー
おふたりはこれまで主にドキュメンタリー映画に携わってこられましたが、フィクションのヒューマンドラマに取り組むことは、どのような感覚でしたか?また、これまでの作品とはどのように違って感じられましたか?
シャシャ・ナカイ監督(以下、ナカイ):この映画の制作を最初に依頼されたとき、私たちは少し不安でした。というのも、フィクション作品の資金調達の仕方がわからず、フィクションの世界での人脈も経験もあまりなかったからです。しかし、書籍の著者であるキャサリン・エルナンデスは、“自身の住む街、自身の故郷である場所を題材にしているため、ドキュメンタリー作家と一緒に仕事をしたい”と強く望んでいました。彼女は周囲の環境に敏感な人たちと働きたかったのです。だから最初は挑戦でしたが、それは大きな学びの連続でした。
ナカイ:もちろん、これは私たちにとって初めての長編かつ初のフィクション作品です。最初はフィクション映画作家のように振る舞おうとしてみましたが、時間が経つにつれて、柔軟で俊敏、そして適応力のあるドキュメンタリー制作の方法をベースにしたハイブリッドなアプローチが必要だと気づいたんです。制作方法は、俳優一人ひとりや撮影場所によって変わっていきます。
リッチ・ウィリアムソン監督(以下、ウィリアムソン):これもひとつの挑戦でした。ドキュメンタリーはある意味、とても即興的で、起きている出来事を追いかける形ですが、フィクション映画、つまり脚本に基づく映画は非常にシステマティックに計画され、すべてが台本通りに進みます。そのため、ドキュメンタリーの美学をそこにうまくはめ込み、ドキュメンタリーらしいエネルギーを引き出すためにある程度自由さを持たせるのは確かに難しいのです。しかし、それは時間をかけて取り組んだことで、撮影が進むうちにキャストをリラックスさせて自然な演技にする方法を見つけることができました。
ナカイ:特に子どもたちの場合、真にコントロールすることはできません。彼らのやりたいことにただ従うしかないのです。だから私たちは、まるでドキュメンタリーの撮影チームのように動く方法を学ばなければなりませんでした。

『ぼくらの居場所』 © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
タイトル(原題)「Scarborough」のとおり、本作では街そのものが映画の中で象徴的な存在のように感じさせます。カナダにあまり詳しくないかもしれない日本の映画ファンの皆さんのために、スカボローがどんな場所で、どんなイメージや評判を持っているのか教えていただけますか?
ナカイ:スカボローは地図上はトロント地域の一部ですが、ダウンタウンからは公共交通機関で約2時間、車の場合は約1時間かかり、かなり距離があります。この地域の住民は人種的に多様で、新しくカナダに移住した人々や低所得者層、さらに多くの先住民族も暮らしています。トロントの中でも非常に多様性に富んだ地域ですが、交通アクセスが難しいことが、住民にとってはひとつの障壁となっています。
この映画をスカボローの地元住民向けに上映したそうですね。ご覧になったコミュニティの方々からどのような感想がありましたか。
ウィリアムソン:スカボローで作品を観たとき、私が一番楽しかったのは、後ろの列から、自分に馴染みのある場所を指差して楽しんでいる観客の様子を見られたことです。人々がスクリーンの中に自分たちを見つけるのは本当に素敵なことですね。そして、スカボローで実際に撮影を行ったことや、その正確な描写について多くの好評をいただきました。似たような場所が多い近くの別の地域で撮影したほうが楽だったかもしれませんが、私たちは本物の場所で撮影することに強くこだわりました。その正確さを人々は評価してくれたのだと思います。
ナカイ:ええ、とても面白かったですね。私たちが映画を観ていた時、最前列に座っていた男性が画面の何かを見つけるたびに「あ、普段乗ってるバスだ!」「あ、あのレストランだ」と言ってすごく興奮していたんです。ここが映画に出るのは初めてで、地元の人たちにとっては大きなことだったんですよね。
ナカイ:それから、ジョニー役のフェリックスの隣に座って映画を観たこともとても楽しかったです。実は彼のために、一部の暴力シーンをカットした子ども向けバージョンも作ったんです。でも彼の両親が「大丈夫、彼に劇場で(通常版を)観させていいよ」と言ってくれたので、私たちは「じゃあそうしよう」と。映画を観ている間、彼はずっとおしゃべりしていて、リッチに「あれは僕だよ」なんて話していて、その様子が本当に可愛かった。
ウィリアムソン:特に、多くの人は俳優ではないので、自分自身がスクリーンに映るのを見るのは初めての経験です。そうした場面に関わったり、映画出演の実現を手助けできたこと、すごく嬉しく思います。
街のリアルな雰囲気や実際の姿を撮影する際、特に困難だったことや、こだわった点はありましたか。
ナカイ:この映画を作る際に、私たちは原作とその物語に敬意を表したいと強く思っていました。物語に登場する多くの場所は実際の場所から着想を得ているため、著者のキャサリンとともに現地で多くの時間を過ごし、彼女がインスピレーションを受けた場所をしっかり理解することに努めました。しかし、書籍のモデルとなった正確な場所を実際に撮影することは難しく、例えばモデルとなった学校での撮影は実現できず、それに関するほとんどのシーンは周辺地域で撮影したのですが、本作の撮影をとても誇りに思っています。
ナカイ:とはいえ、映画作品という性質上、地理的な配置は必ずしも現実通りではありません。観客からは「この店はあそこから1時間も離れているのでは?」といった面白い感想もいただきます。撮影許可を得られた場所を組み合わせて撮影したためで、限られた予算の中での小さなプロジェクトだったため、資金や資源が限られており、許可をもらえた場所で撮影を進めるしかありませんでした。
教育センターの現状や活動を描くにあたり、どのような調査をされ、教育センターのどの部分を映画で特に伝えたいと考えましたか。
ナカイ:この件についてはかなりリサーチを行いました。物語のモデルとなった実際のドロップインセンターにも足を運びました。というのも、著者のキャサリン・エルナンデスはかつて家庭内保育をしており、子どもたちをドロップインプログラムに連れて行っていたからです。そこで私たちも実際のセンターを訪れ、どんなおもちゃがあるのかといった部屋の様子や、利用者の特徴をじっくり観察しました。これはオンタリオ州に実在するプログラムで、とても大きな影響を受けました。
ナカイ:また、自閉症の子どもに関しては特に時間をかけて丁寧に取り組みました。正確に描きたかったので、自閉症の子どもとその家族をサポートする団体と協力し、撮影現場にも来てもらい、遊びのアイデアを考えてもらったり、「ここはリアルに見えないので、こうしてみましょう」といったアドバイスを受けました。そのため、その部分にもかなりの時間を費やしたと思います。

『ぼくらの居場所』シャシャ・ナカイ&リッチ・ウィリアムソン監督 © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
この映画に登場する大人も子どもも、それぞれ異なる個性や問題を抱えながら、自分なりの幸福や人生の道を追い求めています。さまざまな親子関係や子ども同士の関係性が描いた映画ですが、これらの関係を表現する際、どのようなアプローチや理念を持って取り組まれましたか。
ナカイ:私たちは原作に非常に忠実であろうと努めましたが、子どもたちに関しては、自分らしさを持ち寄って自由に表現することも許しました。また、親御さんたちも、俳優たちも皆それぞれの個人的な経験や物語を持ち寄りました。彼らは「本の中で起きたこの出来事にとても共感しているので、自分なりに加えたい」と言い、それに基づいて私たちは一緒にキャラクターを練り上げ、より深みを持たせ、その人に合うようにしていったんです。
ウィリアムソン:キャサリンのすばらしいところは、作家として非常に柔軟性がある点です。彼女は演劇のバックグラウンドを持っていて、さまざまなアーティストと協力し、それぞれの解釈に触れることに慣れています。彼女がキャラクターにとらわれすぎずに自由に表現させてくれるので、とても楽しい経験になりました。
ウィリアムソン:「このキャラクターはこうあるべきだ」という決まりがあっても、もし俳優にとってリアルに感じられなければ話し合いを重ね、本物に感じられる方法を一緒に模索しました。なぜなら、画面の上で本当に伝わるのは、人々が自分のセリフや行動を心から信じているときだと思うからです。それが本物として映るのです。
ナカイ:そうですね、なので一部の登場人物は本の描写とは少し異なっています。しかし、それも映画制作の過程の一部なんです。準備期間や俳優との撮影中、さらに編集作業の間に脚本が書き直されるので。作品の中には本に非常に近い部分もあれば、少し違う部分もあります。
社会的に求められる教育と、各家庭の教育方針を尊重することのバランスを取ることは、教育機関にとって非常に難しい課題だと思います。同様に、子どもたち一人ひとりの特性に合った教育を提供しつつ、できる限り平等な教育水準を保証することも、親にとって大きな挑戦でしょう。この映画は、そうした現実に真正面から向き合っていると感じました。このテーマについてはどうお考えですか?
ナカイ:それぞれの状況やコミュニティ、個々の人、それぞれに合わせてニーズを調整しなければなりませんでした。
ナカイ:最初に気づいたのは、すべての子どもを同じように扱うことはできないということです。中には他よりも多くの障壁を抱えている子もいれば、何かに少し苦労している子、または親のサポートがより充実している子もいます。だからこそ、この映画を作っている過程で私たちが学んだのは、教育者や介護者、ケアワーカーとしてそれぞれの子供や人と関わる際には、全体的に状況を捉えることが非常に重要だということでした。私たち自身も時には(劇中の)ヒナのような気分になることもありましたよ(笑)
この映画には、さまざまなバックグラウンドを持つ子役たちが出演しましたね。ドキュメンタリー映画を主に手がけてきたおふたりにとって、子役の演技を指導し共に作業する経験はいかがでしたか。このプロセスで特に難しかったことや楽しかったことを教えてください。
ウィリアムソン:映画を作るときの課題はやはり、制約があり、時間に常に追われているということだと思います。しかし子どもというものは、とても自由で明るく、楽しく遊ぶのが好きなんです。だから彼らとうまく向き合い、それぞれの楽しさのエネルギーを見つけてベストパフォーマンスを引き出そうとするのは難しいと同時に楽しかったです。
ナカイ:非常にシリアスなテーマを描く作品なので、キャスティングも大きな挑戦でした。キャスティングの過程で親役も丁寧に選ぶ必要がありました。なぜなら、そのシーンについて親役が子役俳優たちにどう接するか、オープンな姿勢でしっかりコミュニケーションをとれるか、演技の時間と現実の世界の違いをどう伝えるか、それを見極めたかったからです。
ナカイ:特にローラ役のアンナの場合ですね。この役はキャスティング自体がとても難しかったんです。親役の方々も一緒に仕事がしやすい人でなければなりません。フィリピン人の親御さんたちは、このキャラクターがクィアであることを受け入れてくれなければならなかったのです。フィリピン文化はカトリックの影響が強く、(ジェンダーマイノリティに対して)あまり進歩的とは言えません。なので、彼がこの映画で男の子に恋をしていることに対して問題ないかどうか確認するのも苦労しました。いろいろな困難がありましたが、子どもたちと仕事をするのは本当に楽しい経験でした。

『ぼくらの居場所』より © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
ナカイ:それから、撮影現場にたくさんのキャンディを置きすぎないようにすることも学びました。すぐになくなってしまうので(笑)。ある日、なぜ子どもたちがあんなに疲れて見えるのか不思議に思いました。彼らは一つのシーンを撮ると、もうこの日は終わりって感じだったんです。その時、キャンディバーが空っぽになっているのに気付いたんです。だから、無制限にキャンディを置くのはだめだとわかりました。みんな全部食べてしまうんです。そういった細かいことを学びながら、常に工夫し調整していきました。
映画には3組の親子が登場しますが、現場での雰囲気や親役と子役俳優の撮影外での関係はいかがでしたか。特に印象に残っている出来事やエピソードはありますか。
ナカイ:私たちはこの作品を1年以上かけて撮影しました。夕方や週末を使って少しずつ撮影を始めて、終わりの頃には、大人の俳優たちが子役俳優たちにセットでの振る舞いや準備の仕方、セリフの覚え方を教えるなど指導し、子役俳優たちはそれを見て学んでいました。長い時間をかけて一緒にこのプロジェクトを作り上げたので、最終的にはみんながまるで家族のようになっていました。
ナカイ:そして、とても感動的だったのは、撮影の最後の方に行ったステージのシーンの撮影でした。パンデミック(コロナ禍)の影響で半年間撮影を中断していたので、みんなが揃って再会できたことが本当に心温まる思いでした。
ウィリアムソン:短い時間でどれだけ成長したかを実感しました。本当に信じられないほど成長していました。
ナカイ:映画の始まりと終わりで彼らの見た目を比べてみると、きっと分かると思います。ただ、彼らの背がどれほど伸びたかは見せたくなかったので、わからないように工夫しました。
ウィリアムソン:撮影は時系列順に行いましたが、これはとても賢明だったと思います。理論上それが唯一可能な方法でしたし、子役俳優たちは映画の進行とともに年齢を重ねていくからでもあります。
子どもの成長は早いですから、1年以上も撮影していれば、俳優としての技術面でも、また物理的な身体面でも大きな成長があったでしょうね。
ウィリアムソン:まさにそうなんです。彼らはあまりに大きくなってしまっていたので、序盤のシーンの撮影に戻るといったことはできませんでした。しかし、あなたの言う通り、撮影を進める中で彼らが実際に年を取っていく様子を見るのはとても楽しい経験でした。そしてその結果として、彼らの親同士の絆もさらに強くなりました。彼らの人生におけるそれらの瞬間を目の当たりにし、それを映像で捉えることができたのは、非常に面白い経験でした。

『ぼくらの居場所』より © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
ビンの家族の物語に対するあなたの思い入れや、撮影中の印象的なエピソードについてお聞かせいただけますか。
ナカイ:原作での彼らに関するキャサリンの描き方が、私がこの作品に参加した大きな理由の一つでした。私の母はフィリピン人ですが、カナダ映画であのような関係性が描かれているのを見たことがなかったんです。この物語を実現する一員になりたいと本気で思いました。
ナカイ:また、細やかなさりげない描写にも心を動かされました。もちろんリッチと私がそれぞれ違った箇所で、時には予想外の箇所で共感する小さな要素が、すべてのストーリーに散りばめられています。私は特にビンの物語をスクリーンに届けることに参加したいと強く思いました。
ウィリアムソン:自分を表現するという点で、とても内気な少年だった私は、原作を読んでこのキャラクターに強く共感しました。自分を表現したい、自分が本当はどんな人間なのか見せたいという気持ちが、自分と深くつながっていると感じたのです。だから、多くの物語はとても普遍的に感じられました。内容は具体的でありながら、誰もが登場人物の境遇に共感できる普遍性を持っていました。
シルヴィーやローラの家族はいかがですか?
ナカイ:個人的にはあまり共感できる部分は多くなく、カナダでも先住民の物語をあまり見ることはできません。ですが、最近では先住民の語り手が増えてきているのを見かけるようになりました。私自身もそういった物語をあまり見たことがなく、そうした作品づくりに関わりたいと思っていました。
ナカイ:特にシルヴィーのキャラクターの、自由奔放でわんぱくで、お茶目で面白いところに強く惹かれました。さらに、弟ばかり目をかけられて自分がかすんでしまうという状況に彼女がどう立ち向かうのかも描かれていて、そこも印象的でした。
ウィリアムソン:ローラやシルヴィーにも似ていますが、私はオンタリオ州ロンドン、トロントから車で2時間かかる低所得の地域で育ちました。そのため、彼女たちがいたような、いろいろな事情で医者に診てもらおうと来ている人々で混雑したクリニックは、私にもとても身近なものでした。教育センターも同様です。私や友人たちが子どもの頃に利用していたようなプログラムがあったので、これらすべての場所や経験がとても馴染み深く感じられました。

『ぼくらの居場所』より © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
ナカイ:実は私はカナダに住んでおらず、15歳になってからここに引っ越してきたんです。支援のない新しい国に移り住むというエドナの境遇には、すごく共感しました。同時に、ケイシー(原作者キャサリン・エルナンデス)の文章力のすごさを感じました。私は成長過程でこうした教育センターを経験したことはありませんが、それでも内容が理解できて、本当にリアルで誠実に感じられました。それもあって私たちは、この物語が多くの人に響くと確信できたのです。なぜなら、多様な背景を持つ多くの人が、それぞれ違った部分に共感できるので。
リッチ監督はスタンリー・キューブリック監督が特にお好きだと伺いました。ご自身の撮影において、キューブリックの影響を感じる映画制作や映像技法の特徴的なアプローチはありますか?
ウィリアムソン:ゆっくりしたズームが好きで、とても惹かれますね。彼が決して自分の表現を繰り返さなかったところが本当に好きなんです。キューブリック監督作品にはいつも新しいものがあり、何が出てくるか予測できませんでした。なので、もし彼をお手本にしたいとすれば、常に好奇心を持ち、新しいテーマを掘り下げ、たくさんの人々にとって魅力的なものにするという姿勢です。
シャシャ監督はさまざまなジャンルの映画を観てきたと伺いましたが、本作を制作するにあたって、どんな監督や作品から影響を受けましたか。
ナカイ:どの制作段階でのことか正確には思い出しにくいのですが、本作を作る際の参考として、特にアンドレア・アーノルドや(ジャン=ピエール&リュック・)ダルデンヌ兄弟の作品を多く取り入れました。あとは、路上の子供たちを描いた『存在のない子供たち』も観ました。この映画は制作の際にとても役立ちました。
ウィリアムソン:私はいつも、ドキュメンタリーを作っているような気持ちを保ちたくて、フィクション要素にあまり引っ張られすぎないようにしていたのを覚えています。ただ(ダーレン・)アロノフスキー監督の『レスラー』と、デイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』を見直したのは覚えています。カメラの自由な動きがある作品なので、毎日それらを意識して毎日現場に臨んでいました。
ローラ役のアンナ・クレア・ベイテルは、今『スター・トレック』シリーズのような作品にも出演していますね。アンナとの仕事はいかがでしたか。
ナカイ:実は本作がアンナにとって初めての映画で、本作をきっかけに『スター・トレック』の役を獲得したんです。私たちもとても喜びましたよ。でも、この役には幅広くオーディションを行いました。アンナは子供向けの芸術劇場スクールで見つけました。彼女はすでに演劇や演技が大好きで、舞台にもたくさん出演していました。
ナカイ:そして、彼女はただの映画好きだということがわかって……それがとても可愛らしかったんですよ。彼女は「リッチ、このショットはどう?」と言ったり、カットのタイミングも教えてくれたりしました。
ウィリアムソン:ええ、彼女は可愛らしいと同時に、撮影に関して自分でアイデアを持っていて、年齢以上に賢いませた子でした。そんな子と一緒に仕事ができて本当に楽しかったです。
ナカイ:彼女はキャラクターとはまったく逆なので、とても面白いんです。実生活ではとても明るくて、元気いっぱいでおもしろい子なんです。でも役を演じているときは、本当に真剣に演技していました。
ナカイ:例えば、父親が鍋を投げて彼女に当たりそうになり、パスタソースが顔に飛び散るシーンでは、彼女はすごく楽しんでいました。あのシーンについてはよく「どうやってあのシーンを撮ったの?」と聞かれますが、私は「彼女がただすごく楽しんでいただけ」と答えています。私たちは手ぶれの多いカメラワークを使って色々と隠していて、例えばパスタが顔に飛び散ったシーンでは、コリー役のコナーは部屋にすらいなくて、実際は私が彼女の顔にパスタを乗せていたんです。彼女は本当に一緒に仕事をするにはすばらしく、将来が有望な俳優でしたね。
ウィリアムソン:映画作りにとても熱心に関わっている子供たちと一緒に仕事をするのは楽しいと思います。彼らは映画に強い興味を持っていて、私が映画に興味を持ち始めた頃のことや、そのとき考えていたこと、そして少しだけ裏側を覗き始めた頃の感覚を思い出させてくれるんです。若い頃は、ただ“監督が映画を作っている”と思いがちですが、セットに入ると、多くの人がそれぞれ違う役割を担っていることに気づいていきます。だからこそ、アンナも現場の皆が何をしているのかについてすごく興味を持っていたことをよく覚えています。
ナカイ:彼女は撮影に小道具(プロップ)を持ってきてくれました。「私の役のキャラクターなら、こういう人形を持っていると思います」と彼女が持ってきたので、実際に使わせてもらいました。彼女は映画づくりを本当によく理解していて、とてもクールですよ。
彼女のこれからのキャリアがとても楽しみですね!私はビンの高くて子どもらしい声もとても可愛らしくてほっこりしました。リアム・ディアスとの仕事についてはどう思いますか?
ナカイ:声ね、面白い!……というのも、ホイットニー・ヒューストンのシーンを撮影していた頃には彼の声はすでにだんだん低くなり始めていて、「どうやってホイットニーの高音を出せるんだろう」と心配していました。しかし、舞台経験も豊富な著者のキャサリンが、歌唱や振り付けの部分で彼をしっかりサポートしてくれました。
ナカイ:それにしても、リアムはまさに理想的な俳優でした。非常にプロ意識が高く、いつもセリフを完璧に覚えて現れ、真剣に取り組んでいました。そんな彼の姿はとても可愛らしく、私たちは彼と仕事をするのを心から楽しみました。

『ぼくらの居場所』より © 2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
シルヴィー役のエミール・フォックス(メキヤ・エッセンス・フォックス)はいかがですか?
ナカイ:あの子もとてもエネルギッシュでカオスな存在でした。いつも走り回って楽しんでいて、ついていくのは大変でしたが、一緒に仕事をするのは本当に楽しかったです。実際、子役たち彼らの演技はとても自然で、まるでそのままの自分を表現しているように感じられました。
ウィリアムソン:間違いない!
ありがとうございました!最後に、culaのインタビュー記事を読む日本の映画ファンの皆さんへ、皆さんからメッセージをお願いいたします。
シャシャ・ナカイ:こうして時間を割いて私たちの記事を読んだり、映画を観てくださって本当にありがとうございます。遠い日本の皆さんの心に私たちの映画が響くことは、私たちにとって非常に嬉しいことですし、本当にワクワクしています。改めて、ありがとうございます!
リッチ・ウィリアムソン:右に同じです!日本で上演されていて、皆さんが観て反応し楽しんでくれていることをとても嬉しく思います。夢のようです!本当に心から感謝しています。ありがとうございます。
(インタビュー以上/取材・文:cula編集長 ヨダセア)
映画『ぼくらの居場所』は11月7日(金)日本公開。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
