『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~』ショーランナーのジョン・ボーケンキャンプにインタビュー。
Apple TVにてドラマシリーズ『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~』が配信開始となった。ショーランナーとして本作を率いたのが、ジョン・ボーケンキャンプだ。今回culaはジョン・ボーケンキャンプにオンラインインタビューを敢行。作品に込めた思いや極寒のアラスカでの撮影エピソード、お気に入りのシーンを聞いた。(取材/文:ヨダセア)

一番左がボーケンキャンプ。『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~ 』NYプレミアにて 画像提供:Apple
『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~』あらすじ
本作は、静寂に包まれたアラスカの荒野を守る、地域で唯一の連邦保安官フランク・レムニック(ジェイソン・クラーク)を主人公とする物語。
この人里離れた荒れ地に刑務所の輸送機が墜落し、数十人の凶暴な受刑者が解き放たれたことにより、レムニックの管轄区域の状況は一変。町の安全を守り抜くと誓ったレムニックは、やがて輸送機の墜落が単なる事故ではなく、綿密に練られた計画の始まりにすぎず、破滅的な結果が待ち受けているのではないかと疑い始める――。
【動画】『ラスト・フロンティア ~最果てのアラスカ~』予告編
ジョン・ボーケンキャンプ インタビュー
本作を企画した発端・原動力は何でしたか。
ジョン・ボーケンキャンプ(以下、ボーケンキャンプ):まず初めに、シンプルに楽しいコンセプトだと思ったんだ。囚人を乗せた飛行機が人里離れた場所に墜落して、たった一人の連邦保安官が彼らを追い詰めていくっていう発想。純粋に楽しいコンセプトとして、僕はそこにすごく惹かれたし、これにはエンジンがあるって感じたんだ。
ボーケンキャンプ:毎週少しずつ物語を紐解いていって、囚人たちについてもっと知っていく、彼らがどうつながっているのかを明らかにしていく。最初はそのイメージやコンセプトへの興味から始まったんだけど、すぐに主人公のフランクに焦点が移っていったんだ。彼が何者なのか、人生で何と格闘しているのか、そしてこの追跡劇が彼自身、彼の家族、コミュニティの人々、大切な人たちに何をもたらすのか、ってね。
アラスカという僻地を舞台にしたのはなぜでしょうか。自然環境や孤立感を使った世界観設計について教えてください。
ボーケンキャンプ:もちろん!まずアラスカは美しい場所だけど、テレビではあまり描かれきれていないと感じていたんだ。ユニークで特別で、ある意味手つかずの純粋さがある。囚人たちを放り込み、突然カオスを展開させるには最高の場所だと思ったよ。
ボーケンキャンプ:同時に、アラスカは信じられないほど過酷で荒々しくて危険な場所でもある。その危険さは囚人たち全員が直面するいい試練だし、保安官たちが追跡を行う上でも格闘しなきゃいけない要素になるんだよね。興味深いのは、この過酷さがフランクやコミュニティの人々に互いに頼り合うことを強いるってことなんだ。極めて隔絶された小さな町という設定が、コミュニティとそれが互いにとってどれだけ重要かを際立たせるのに本当に役立ってると思う。
アラスカは本当に美しかったですが、現実問題、自然環境は過酷でしたよね。制作中に何か困難はありましたか。ロケ地の確保や、気象条件への対応など…
ボーケンキャンプ:ああ、あったね。天候は両極端で悩まされたよ。雪が多すぎたり、足りなかったりね。撮影にはたしか2月の真冬から8月までかかったんだ。だから時期によっては、特に夜は信じられないくらい寒い気温に対処しなきゃいけなかった。ある温度を下回ると保険会社が「もう外では撮影できません。カメラ機材が動かなくなります。撮影中止です」って言ってくることになっていて、そこまでは至らなかったけど、かなりギリギリのところまでは行ったな(笑)
ボーケンキャンプ:環境はたしかに闘わなきゃいけない相手だった。何度か撮影クルーが機材やマイクをソリで運び込んでるのを見たのは面白かったよ。俳優たちはスノーモービルで連れてきてね。ロケ地にたどり着くまでの段階だけで本当にクールだったんだ。すばらしい場所で撮影できたな。
このシリーズにどんなメッセージや問いを込めたいとお考えでしたか。
ボーケンキャンプ:物語の核心にあるのは、主人公フランクについての問いだと思う。彼が何を象徴しているのか、何を信じているのか。そして彼は試練に耐えられるのか、彼はコミュニティと家族をまとめ続けられるのか、それともこの惨事でバラバラになってしまうのか、ってね。フランクは物語の最初、ちょっとナイーブな視点を持っていて、信念は少し古風で、もしかしたら時代遅れな人物かもしれない。でもシリーズをとおして彼は変化していく。終盤にはもう少しグレーな視点で世界を見るようになっていると思う。
脚本から撮影、編集を通じて、「これは絶対に変えたくない」と思ったシーンはありましたか? そのシーンがなぜそこまで重要だったのでしょうか。
ボーケンキャンプ:いくつかはあったと思うんだけど、基本的に私はいつも「よし、脚本の何ページに何と書いてあるかな?それを実現させるぞ」って考える傾向があるんだ。でも現場に着くと必然的に、監督たちもキャストも異なるアイデアを持ってるし、ロケ地の状態や環境も思ったとおりにはいかなかったりする。僕はそれを受け入れて、その変化を歓迎することを本当に学んだよ。
ボーケンキャンプ:例えば冒頭の飛行機墜落シーンとか、最後の方の犬ぞりで移動するシーンなんかは僕のお気に入りなんだけど、アイデアは僕のものとはいえ、それが視覚的にどう解釈されて、最終的にスクリーンにどう映し出されるかは、たくさんの人々の考えが入ってきてハンコを押して作り上げられた結果なんだよね。だから制作プロセスの中で最高の部分の一つは、脚本がどう解釈されていくかを眺めることなんだ。僕も頭の中で何度も想像するけど、音楽や編集者、みんなが一緒になって、少しずつ違いつつ基本的に同じアイデアのものを作り上げていくと、ほとんどの場合、ページに書かれていたものより良くなるんだよ。
音楽は非常に印象的で美しかったですね。カントリーミュージックのようでもあって……シリーズの音楽的な世界観づくりについてはいかがでしたか。
ボーケンキャンプ:いい質問だね!この番組の音楽が大好きなんだ。作曲家のアリエル・マークスがすばらしい仕事をしてくれた。彼女は少しウエスタンっぽい、アコースティックなサウンドに寄せて、先住民の声も取り入れながら、できる限り音楽をアラスカに根ざしたものにしようとしてくれたんだ。
ボーケンキャンプ:それに加えて、音楽監督のカイラ・エルヴィスと一緒に、“番組の声”を見つけようと懸命に努力したんだ。ジャンルとしてはアウトロー・カントリーが多いかな。僕の祖父が聴いてた音楽で、子どもの頃いつも聴いていたんだ。ウィリー・ネルソンとかウェイロン・ジェニングスとか、ああいう古いカントリー。ちょっと荒々しくて、少し粗削りで、ほら、たぶんちょっと主人公のフランクっぽいんだよ。
ボーケンキャンプ:いつも興味深くて楽しいのは、音楽が映像をどう変えるかを観察することなんだ。映像は一つのことを語るけど、音楽がそのシーンの空気を誘導できるし、音楽の選択次第ですごく違った感覚になるんだ。音楽のおかげで、番組の中に本当に楽しい瞬間がいくつか生まれたよ。
撮影中の印象的なエピソードや、特に印象に残った場所や瞬間はありますか。
ボーケンキャンプ:エピソード6の、飛行機の着陸シーンが印象的だな。あれは撮影の終わり頃だったんだけど、トラックやバスをたくさん置いて、人里離れた場所で飛行機を着陸させるために滑走路を照らそうとしたんだ。
ボーケンキャンプ:想定では雪が降っていて寒いはずだったんだけど、確かあれは7月の終わりで、ヘッドライトが大量の虫を呼び寄せちゃったんだよ……ライトの前を飛び回る虫だらけで、我々はあそこを「バグ・マウンテン(虫の山)」って呼んだ。地面には偽物の雪を敷いたけど、「やれやれ、これじゃ全然うまくいかないぞ」って思ったよ。でもあれはVFX(視覚効果)に救われた瞬間のひとつになった。見た目を調整して隙間を埋めて、他のシーンと同じくらい寒そうな映像にしてくれたんだ。でも撮影している間は暖かいというか暑くて、番組の映像から感じる感覚とは全然違うからちょっとパニックになったよ。楽しい瞬間じゃなかったけど、間違いなく印象に残ってるよ、バグ・マウンテンは(笑)
ジェイソンは俳優だけでなくエグゼクティブ・プロデューサーでもありましたが、彼との仕事はいかがでしたか。
ボーケンキャンプ:ああ、ジェイソンは最高だよ。彼への尊敬をとおして、こういう番組をやる上ではプロフェッショナルな人とパートナーを組むべきだって学んだよ。
ボーケンキャンプ:彼はその日こなすべき仕事を理解した上で現場に現れる。それってすごく難しいことなんだよ。特に彼は非常に過酷で時には危険な状況にいるわけで、プロフェッショナルでなきゃいけない。彼はカリスマ性と良い態度でリードするだけじゃなくて、問題が起こることを避けて仕事を終わらせるという点ですばらしいパートナーなんだ。だからそれは超エキサイティングじゃないかもしれないけど、僕にとっては安心できるし、そういう人と働けるのはすごく心地いいんだよね。
ありがとうございます。そして視聴者にフランク・レムニックをどう受け取ってほしいですか? 彼は非常に複雑なキャラクターですが。
ボーケンキャンプ:そうだな、世界中の誰もが彼に共感できることを願ってるよ。彼は普通で、ありふれた人間なんだ。ある意味普遍的な人で、高いビルをジャンプで飛び移ったりできない。スーパーヒーローじゃないし、射撃の名手でもない。家族と普通の生活を持つただの男なんだ。この物語に入る人々が、彼の立場に自分を置いて、フランクと一緒にこの旅を追体験してくれることを願ってる。彼の視点を通してこの物語を見てほしい。フランクには共感できる存在であってほしい、それが僕の目標かな。
ヘイリー・ベネット演じるシドニーは非常に複雑な立ち位置のキャラクターとして登場しますね。シドニーというキャラクターと、ヘイリーの演技についてはどう思いますか。
ボーケンキャンプ:シドニーはちょっと謎めいた存在だよね。彼女が何者なのか、何を望んでいるのかを理解するのは難しい。彼女の登場の仕方からして大きな疑問符なんだ。彼女がフランクにある発言をして、ある答えを与えたとして、それが必ずしも正直で真実とも限らない。
ボーケンキャンプ:ヘイリーのすばらしいところの一つは、一言も発さずして多くを表現できることなんだ。彼女には何か内面的で神秘的な魅力があると僕は思う。そして彼女は、この疑問符を体現するような女性に命に吹き込むすばらしい仕事をしてくれた。彼女は何を追い求めてるのか?何が欲しいのか?本当はなぜここにいるのか?それを見事に表現してくれたし、同時に彼女を共感できる存在にもしたと思う。おかしなことに、我々はシドニーについてほとんど理解していないのに、彼女に親近感を覚えられるんだ。彼女は本作をすばらしくドラマチックにしてくれた要素のひとつだと思うよ。
最後に日本でこのシリーズを観る視聴者に向けてメッセージをお願いします。
ボーケンキャンプ:日本の皆さん、そして世界中の皆さんがこの物語を愛してくれて、物語の中に自分自身を見出してくれることを願っているよ。これは辺境の地、非常に隔絶された美しい場所での物語だけど、皆さんがこの物語に飛び込んで、しばらく世界の他のことを忘れてくれたらいいなと思う。ニュースや政治のクレイジーなこと全部を忘れて、この番組によって消し飛ばして、楽しい旅を体験してほしいんだ。
(インタビュー以上/取材・文:ヨダセア)
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。

