キリアン・マーフィー主演『決断するとき』3月公開決定-実話が問いかける「助けるか、見過ごすか」

『決断するとき』 © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED. NEWS
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キリアン・マーフィー主演作『決断するとき』が、実話を背景にした人間ドラマとして3月20日より公開されることが決定した。


キリアン・マーフィー主演映画『決断するとき』が、3月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開されることが決定した。本作は、アイルランドの作家クレア・キーガンによるベストセラー小説「ほんのささやかなこと」を原作とした映画で、原題は『Small Things Like These』。日本公開決定にあわせて、日本版メインビジュアルと場面写真10点も解禁されている。

第96回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した『オッペンハイマー』(2023年)に続く次作として、マーフィーが選んだ本作は、アイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”の人権問題を背景に、ひとりの男が下す「決断」を静かに描く人間ドラマである。

『オッペンハイマー』後に選ばれた、キリアン・マーフィーの次なる挑戦

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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『オッペンハイマー』で世界的な評価を確立したキリアン・マーフィーが、次なる挑戦として選んだのが本作『決断するとき』だ。原作小説「ほんのささやかなこと」に深く惚れ込んだマーフィー自身が映画化を希望し、企画は動き出したという。

『オッペンハイマー』の撮影中、マーフィーはマット・デイモンに本作の構想を持ちかけ、ベン・アフレックも製作陣として参加。さらに、マーフィーが主演を務めたドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」で監督を務めたティム・ミーランツがメガホンを取り、映画化が実現した。

本作でマーフィーは、主演に加えプロデューサーとしても名を連ねており、キャスティングにも関与している。言葉数を抑え、沈黙や内面の揺らぎを重視した演技によって、これまでとは異なる表現領域に踏み込んだ点も、本作が“次なる挑戦”と位置づけられる理由のひとつだ。

実在した“マグダレン洗濯所”を背景に描く、沈黙と良心の物語

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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本作の舞台は、1985年のアイルランドの小さな町。炭鉱商人として生計を立て、家族と慎ましく暮らしている主人公ビル・ファーロングは、クリスマスを目前に控えたある日、炭を届けに訪れた修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。
物語の背景にあるのは、アイルランドに実在した“マグダレン洗濯所”と呼ばれる施設だ。長年にわたり、若い女性たちが社会から隔離され、過酷な環境に置かれてきたこの場所は、当時の社会に黙認され続けてきた人権問題の象徴でもある。

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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修道院で出会った少女から「ここから出してほしい」と懇願されたビルは、その現実を知ってしまったひとりの人間として、見て見ぬふりをすることが果たして正しいのか、自らに問い続けることになる。周囲の沈黙や社会の空気を理解しながらも、良心の呵責に苛まれる姿が、本作では抑制された演出と静かな語り口で描かれていく。

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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社会の側ではなく、声を上げることもできない弱者の視点に寄り添いながら、「知ってしまった個人はどう振る舞うべきなのか」という問いを観客に投げかける本作。大きな事件や劇的な展開ではなく、日常の延長線上にある選択として描かれる“決断”が、深い余韻を残す人間ドラマとなっている。

エミリー・ワトソンが体現する“静かな権力”-国際映画祭での評価

本作で修道院の院長シスター・メアリーを演じるエミリー・ワトソンは、第74回ベルリン国際映画祭にて助演俳優賞を獲得し、その演技が高く評価された。彼女が演じるシスター・メアリーは、マグダレン洗濯所という施設を長年運営してきた側の人間であり、若い女性たちに対する抑圧的な体制を正当化する存在として描かれる。

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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声を荒らげることもなく、感情を露わにすることもないシスター・メアリーの姿は、むしろ穏やかで秩序立っている。しかし、その静けさの裏には、「見て見ぬふり」を許容し続けてきた社会の論理が凝縮されており、ワトソンは抑制された表情と所作によって、その“静かな権力”を体現している。

『決断するとき』より © 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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主人公ビル・ファーロングが良心と沈黙の間で揺れ動く一方で、何事もなかったかのように日常を維持し続ける修道院の側の存在。その対比によって浮かび上がるのは、個人の決断だけでなく、社会全体が長く黙認してきた構造そのものだ。ベルリン国際映画祭での評価は、そうした本作の主題とワトソンの演技が、国際的にも強く受け止められたことを示している。

“助けるべきか、見過ごすべきか”-ビジュアルが語る葛藤

あわせて解禁された日本版メインビジュアルは、本国版のデザインを踏襲し、主人公ビル・ファーロングの顔を大きく捉えた構図となっている。遠くを見つめる硬い表情と、その視線の先にあるものを想像させる余白が印象的だ。中央に配置されたコピー「助けるべきか、見過ごすべきか。」は、本作が描く物語の核心を端的に示している。

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派手な色彩や強いアクションを用いず、あくまで表情と問いによって観る者に語りかけるこのビジュアルは、作品全体のトーンとも呼応している。沈黙の中で揺れる内面や、言葉にされない葛藤を重視する本作の姿勢が、ポスターからも読み取れる。

場面写真には、主人公ビルを中心に、家族との日常や修道院での出来事、そして物語の重要な要素となる幼少期の記憶が切り取られている。穏やかな生活の風景と、修道院という閉ざされた空間の対比によって、ビルが直面する現実の重さが静かに浮かび上がる構成だ。映像表現においても、本作は説明よりも「感じ取らせる」ことを選び、観客に判断を委ねる姿勢を貫いている。

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社会が長く黙認してきた現実と、そこに向き合ってしまったひとりの個人。その選択を静かに、しかし確かな重さをもって描く『決断するとき』は、観る者に判断を委ねる作品である。沈黙と葛藤のあいだで下される“決断”が、どのような余韻を残すのか注目したい。

作品情報

作品名:決断するとき
原題:Small Things Like These
公開日:2026年3月20日
出演:キリアン・マーフィー、アイリーン・ウォルシュ、ミシェル・フェアリー、クレア・ダン、ヘレン・ビーハン、エミリー・ワトソン
監督:ティム・ミーランツ
脚本:エンダ・ウォルシュ
原作:クレア・キーガン「ほんのささやかなこと」(鴻巣友季子 訳/早川書房 刊)
製作:マット・デイモン、キリアン・マーフィー、アラン・モロニー、キャサリン・マギー、ドリュー・ビントン
製作総指揮:ベン・アフレック、マイケル・ジョー、ケヴィン・ハローラン
上映時間:98分
製作国:アイルランド
配給:アンプラグド
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