新作映画『ザ・ブライド!』 を紹介&解説するレビュー。
1935年の映画『フランケンシュタインの花嫁』でほぼセリフもなく退場させられた“花嫁”——マギー・ギレンホール監督はその理不尽に怒り、彼女に声を、怒りを、そして物語を与えることを決意した。1818年のメアリー・シェリーの小説と1935年のジェームズ・ホエール監督作にインスパイアされながらも、舞台を1930年代のシカゴに移し、“蘇った女”の解放と反乱を描く怪作——それが、4月3日(金)日本公開の『ザ・ブライド!』だ。ジェシー・バックリー、クリスチャン・ベール、ペネロペ・クルス、アネット・ベニングらが集結した。この野心作を、さっそく見届けてきた。
ジェシー・バックリーという”劇薬”
とにかくまず、ジェシー・バックリーの演技が凄まじい。日本では彼女がアカデミー主演女優賞を受賞した『ハムネット』が1週間後に公開予定で、そちらも傑出した演技だが、それをこの『ザ・ブライド!』の怪演と見比べられると思うと、4月はまさに最高のバックリー月間と呼ぶしかない。本作で見せる圧倒的な存在感と怪演、『ハムネット』での静謐で繊細な演技——この振れ幅の大きさには、ただ圧倒されるばかりだ。

『ザ・ブライド!』メイキング写真 © 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
本作においてバックリー演じるザ・ブライドは、「社会に従順な形へ押し込められることを拒む女性」すべての怒りと怨念をたった一身に担ったかのような、すさまじいエネルギーをスクリーンに解き放つ。
支離滅裂という統一感——マギー・ギレンホールの賭け
やりたい放題のビジュアル、奇妙なシーンを恐れない大胆な演出——好みが分かれるのは間違いないが、その賛否すらもマギー・ギレンホール監督は織り込み済みのように見える。バックリー演じるザ・ブライドの異形の造形、唐突に始まる突拍子もないダンスシーン、わざとらしいほどの逃避行映画へのオマージュ(『俺たちに明日はない』『バッドランズ』系譜の、大仰なクライムロードムービーの空気が終始漂っている)——正直なところ、めちゃくちゃすぎて、せっかく没入した気持ちをスクリーンの外に放り出されることもある。
だがその観客の困惑すらも、マギー・ギレンホールが意図的に楽しんだのではないかと思えるほど、本作には「支離滅裂という統一感」が貫かれている。グレタ・ガーウィグが『バービー』で見せた“フェミニズムコメディ”など生ぬるいとでも言わんばかりに、鮮烈にパンクにやりたい放題を貫いてみせる。

『ザ・ブライド!』より © 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
クリスチャン・ベール演じる新たなフランケンシュタインもまた、リアリティよりも印象深さを優先したような“モンスター感”に満ちている。わざとらしいほどの“悲しき怪物感”は、本作の源流である古典映画の文法をあえてそのまま残したかのような雰囲気を醸し出す。
完成したカオス——これは”勝利”だ
怪物映画、クライムロードムービー、音楽エンタメ、異形の恋愛物語——そのすべてを混ぜ込み、「考えるな、感じろ」とでも言わんばかりの混沌を解き放つ。無謀にも見える作品づくりをやり遂げ、それを“完成したカオス”として成立させてしまった時点で、マギー・ギレンホールの勝利と言っていいのではないか。

『ザ・ブライド!』より © 2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
好みが分かれるのは間違いない。実際、英語圏でも賛否両論だ。だがそれは最初から覚悟の上、いや、狙い澄ましてのことだろう。個人的に言えば……大好きだ。また絶対にこの劇薬映画を浴びたい。
英語圏での評価が割れているのは事実だ。「とっちらかっていて、当惑させられる」という声がある一方、「その混乱ぶりに魅了された」という声も同じくらい存在する。 だがそれこそが、この映画の本質なのかもしれない。かつてセリフ一つ与えられなかった“花嫁”は、2026年、スクリーンの上でついに爆発した。4月3日(金)日本公開の『ザ・ブライド!』——この劇薬、あなたはどう受け止めるか。
