【映画レビュー『MaXXXine マキシーン』】三部作ついに完結! 80年代ハリウッドの野心と狂気、女性の活躍をミア・ゴスら豪華キャストで過激に描く

『MaXXXine マキシーン』© 2024 Starmaker Rights LLC. All Right Reserved. REVIEWS
『MaXXXine マキシーン』© 2024 Starmaker Rights LLC. All Right Reserved.

『X エックス』『Pearl パール』から続く、A24×タイ・ウェスト監督×ミア・ゴス主演による「X三部作」がついに6月6日公開の『MaXXXine マキシーン』で完結を迎えた。

あらすじ

1985年、ハリウッド。巨大な撮影スタジオに現れたブロンドの女、その名はマキシーン。ポルノ女優として人気の頂点にいた彼女は、新作ホラー映画『ピューリタンII』のオーディションに参加していた。 “本物のスター”になるために。その頃のLAは、連日連夜ニュースで報道される連続殺人鬼ナイト・ストーカーの恐怖に包まれていた。マキシーンの周りでも、次々とヒルズのパーティーに呼ばれた女優仲間が殺される謎の事件が起きる。騒動の中、オーディションで主演の座を射止め、ようやくスターダムへ上りはじめたマキシーンの前に、6年前マキシーンの身に起こった猟奇的殺人事件のトラウマ知る謎の存在「何者」かが近づく…。

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80年代ハリウッドへの愛溢れるオマージュ

シリーズを通じて一貫して描かれてきた「成功への狂気じみた執念」と「衝撃的なゴア描写」という二つの柱は、この最終章においてより洗練された形で結実している。舞台を1980年代のハリウッドに移した本作は、映画への愛情が溢れ出る演出を随所に配し、ネオンサインが彩る黄金時代の空気感を見事に捉えている。自らの運命を切り開こうとするマキシーンの姿を通して描かれる本作は、現代の映画作家が挑む「1980年代映画へのオマージュ」として、非常に高い完成度を誇っていると言えるだろう。

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映画・映画史への深い愛情と敬意が画面から溢れ出し、特に「映画の中の映画セットの映画セットで映画のような構図になる」といったメタ的な演出は観ていて笑顔がこぼれた。

進化し続けるミア・ゴスの演技

本作で最も印象深いのは、マキシーンという人物の内面へと深く分け入り、その野心を育んだ牧師である父親との屈折した関係性までをも丹念に描き出したことである。マキシーンは運命に屈服することなく、揺るぎない意志を胸にハリウッドという戦場に身を投じる。ミア・ゴスは、マキシーンが抱く野心とトラウマ、そして成功への飽くなき渇望を見事に体現している。前二作『X』『Pearl』と比較すると、今回のマキシーンはより理性的で、その決意にも一層の深みが感じられる。ゴスはこの人物の変化と成長を、実に説得力をもって演じきっている。

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また、血しぶきの舞う暴力描写においても、量はそこまで多くないとはいえ、単なる「刺す」「撃つ」「殴る」といった表現を超えた衝撃的な演出が随所に散りばめられており、ホラーファンがニヤリとできるシーンが惜しみなく投入されている。その痛々しさに、思わず顔をしかめてしまうシーンもあった​​​​​​​​​​​​。

豪華キャストと当時の女性への敬意

キャスト陣も前2作から一気にスケールアップし、ケヴィン・ベーコン、リリー・コリンズ、エリザベス・デビッキ、ジャンカルロ・エスポジートといった実力派から、ミュージシャンのホールジーまで、豪華な顔ぶれが集結している。彼らはそれぞれが独自の色彩を放ちながらも、物語の世界観に見事に溶け込み、スクリーンに強烈な存在感を刻み付けている。

中でも圧倒的な存在感で作品を支配したのは、威厳と冷酷さを併せ持つ映画監督エリザベス・ベンダーを演じるエリザベス・デビッキである。彼女が演じるこの人物は、マキシーンの才能を見極めて主役に抜擢する重要な役割を担っているが、興味深いことに、デビッキ自身がこの役をタイ・ウェスト監督をモデルにしたと明かしている。実際にミア・ゴスを見出し起用し続けた監督の存在を作品内に投影したこの設定は、映画の持つメタフィクション的な魅力を一層際立たせている。

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このエリザベスと、マキシーンを軸として、本作は単なるホラー映画の領域を越え、1980年代という女性の地位が制約されていた時代のハリウッドで、野心を胸に戦い続けた女性たちへの讃歌としての側面を獲得している。登場する女性キャラクターたちは、狂気的な一面を見せながらも、映画業界における女性の地位向上に道筋をつけた先駆者たちに対する敬意を体現している。こうした多層的な構造が、作品に深い歴史的な奥行きを与えているのである。

『MaXXXine マキシーン』© 2024 Starmaker Rights LLC. All Right Reserved.

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『MaXXXine マキシーン』は、X三部作の完結編として申し分のない作品に仕上がっている。6月6日(金)に日本公開となった本作は、80年代ハリウッドの煌びやかさと闇を見事に描き出し、ミア・ゴスという稀有な才能を持つ女優の魅力を余すところなく引き出している。単なるホラー映画の枠を超えた本作は、映画愛に満ちた演出と深いテーマ性により、観る者の心に長く残る一作となることだろう。タイ・ウェスト監督が紡いだこの三部作の旅路に、ぜひとも劇場で立ち会ってほしい。

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