『ウルフウォーカー』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『ウルフウォーカー』(2020)を紹介&解説。


映画『ウルフウォーカー』概要

映画『ウルフウォーカー』は、『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続く、トム・ムーア監督の“ケルト三部作”を締めくくる長編アニメーション。17世紀のアイルランドを舞台に、オオカミ狩りを命じられた父と暮らす少女ロビンが、眠ると魂がオオカミになる“ウルフウォーカー”の少女メーヴと出会う。共同監督はロス・スチュアート。カートゥーン・サルーンならではの手描き表現を通して、異なる文化を知ること、自然との共存、支配や偏見に抗う勇気を描いたファンタジー・アドベンチャーである。

作品情報

日本版タイトル 『ウルフウォーカー』
原題 Wolfwalkers
製作年 2020年
本国公開日 2020年12月2日(アイルランド先行上映)
日本公開日 2020年10月30日
ジャンル アニメーションファンタジー/アドベンチャー
製作国 アイルランド/ルクセンブルク
原作
上映時間 103分
監督・原案 トム・ムーア/ロス・スチュアート
脚本 ウィル・コリンズ
製作 ポール・ヤング/ノラ・トゥーミー/トム・ムーア/ステファン・ローランツ
製作総指揮 ジェリー・シーレン/ファビアン・レネリ/チャン・シュオ/ヤン・イン/ディディエ・ブリュネール/ダミアン・ブリュネール/エリック・ベックマン/デヴィッド・ジェステッド
プロダクションデザイン ロス・スチュアート/トム・ムーア/マリア・パレハ
編集 リッチー・コーディ/ダレン・T・ホームズ/ダラ・バーン
作曲 ブリュノ・クーレ/キーラ
歌曲 オーロラ「Running with the Wolves(WolfWalkers Version)」
声の出演 オナー・ニーフシー/エヴァ・ウィッテカー/ショーン・ビーン/マリア・ドイル・ケネディ/サイモン・マクバーニー/トミー・ティアナン
日本語吹き替え 新津ちせ/池下リリコ/井浦新
製作 カートゥーン・サルーン/メリュジーヌ・プロダクションズ
配給 ワイルドカード・ディストリビューション(アイルランド)/チャイルド・フィルム(日本)

あらすじ

1650年、イングランドの支配下にあるアイルランドの町キルケニー。ハンターのビル・グッドフェローは、森に生息する最後のオオカミの群れを退治するよう護国卿から命じられ、娘のロビンとともに町へ移り住む。

父のようなハンターになることを夢見るロビンは、外出を禁じられていた町を抜け出し、森の中で自由奔放な少女メーヴと出会う。メーヴは、眠ると魂が肉体を離れ、オオカミの姿となって森を駆ける“ウルフウォーカー”だった。

行方不明になったメーヴの母モルを探すうちに、ロビンは森とオオカミをめぐる秘密を知っていく。しかし、それは父が果たさなければならない使命と真っ向から対立するものだった。やがてロビン自身にも異変が起こり、彼女は父への愛とメーヴとの友情、町の掟と自らが信じる道の間で重大な選択を迫られる。

主な登場人物(キャスト)

ロビン・グッドフェロー(オナー・ニーフシー/日本語吹き替え:新津ちせ):父とともにイングランドからキルケニーへ移住してきた少女。優れた弓の腕を持ち、父のようなハンターになることを夢見ている。好奇心から森へ足を踏み入れ、メーヴと出会ったことで自分の生き方を問い直していく。

メーヴ・オグ・マクティーレ(エヴァ・ウィッテカー/日本語吹き替え:池下リリコ):森でオオカミの群れと暮らす自由奔放な少女。眠っている間に魂がオオカミの姿となる“ウルフウォーカー”であり、傷を癒やす不思議な力も持つ。行方不明になった母モルの帰りを待っている。

ビル・グッドフェロー(ショーン・ビーン/日本語吹き替え:井浦新):ロビンの父であるウルフハンター。妻を亡くしており、娘を危険から守ることを何よりも優先している。護国卿からオオカミの群れを退治するよう命じられるが、任務と娘への愛情の間で追い詰められていく。

モル・マクティーレ(マリア・ドイル・ケネディ):メーヴの母であり、強い治癒能力を持つウルフウォーカー。オオカミの姿で森を離れたまま行方不明になっている。

護国卿(サイモン・マクバーニー):キルケニーの町を支配する権力者。敬虔なピューリタンであり、自らの使命と秩序を絶対視している。森を切り開き、オオカミを根絶することで、自然を人間の支配下に置こうとする。

作品の魅力解説

カートゥーン・サルーンの画風が到達した圧倒的な映像世界

『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』で培われた、カートゥーン・サルーン独自の手描きアニメーションは、本作でさらに洗練されている。

線をあえて消し切らず、下描きのような筆致や大胆なデフォルメを画面に残す表現は、一歩間違えれば粗雑にも見えかねない。しかし、その絶妙な線引きを成立させ、唯一無二の世界観へ昇華している点に作り手の非凡な技術が表れている。

城壁に囲まれた町は、四角形や直線を基調とする窮屈な構図で描かれる。一方、オオカミたちが暮らす森には曲線や円形があふれ、色彩も動きも解放されている。背景や構図そのものが、規律に支配された人間社会と自由な自然界の違いを語るのである。

名作アニメーションの系譜と響き合う物語

人間による自然の征服と、森を守ろうとする者たちの対立は、『もののけ姫』をはじめとする数々の名作アニメーションを思い起こさせる。宗教的権威と古い伝承の衝突という構図には、同じトム・ムーア監督の『ブレンダンとケルズの秘密』との連続性も見いだせる。

護国卿は、未知なる存在への恐怖を利用して民衆を従わせ、自らが信じる秩序に合わないものを排除しようとする。その姿には、『ポカホンタス』のラトクリフ総督が持つ征服者としての傲慢さと、『ノートルダムの鐘』のフロロー判事に見られる宗教的独善を重ねることができる。恐怖が集団の攻撃性へ変わっていく展開は、『美女と野獣』でガストンに扇動される群衆にも通じるものがある。

ただし、本作は過去の名作を模倣するだけではない。アイルランドの歴史と民間伝承を土台とすることで、自然対文明という普遍的な構図に、支配する側とされる側、移住者と先住者、親の価値観と子どもの意思という複数の葛藤を重ねている。

“和解”すら望めない者たちの切実さ

物語の早い段階でウルフウォーカーたちに示されるのは、人間との和解ではなく、住み慣れた森を捨てて逃げるという選択である。圧倒的な権力と武力を前にした彼らには、対等な話し合いを求める余地すら残されていない。

児童向けのファンタジーとして親しみやすい物語でありながら、力を持たない者が抱く諦観や、故郷から追放される者の悲しみまで描いている点は切実だ。ロビンとメーヴの友情は、単なる立場の違いを超えた交流ではなく、あらかじめ排除する側に置かれていた少女が、未知の存在を自分の目で知り、受け継いだ偏見から離れていく過程として描かれる。

AURORAの歌声が解放の瞬間を彩る

音楽は、トム・ムーア監督作品の常連であるブリュノ・クーレと、アイルランドの民族音楽グループ、キーラが担当。さらに、『アナと雪の女王2』で謎めいた“声”を担当したノルウェー出身の歌手オーロラによる「Running with the Wolves」が使用されている。

同曲はもともと2015年に発表された楽曲だが、本作ではアイルランドの民族楽器を取り入れた「WolfWalkers Version」として再構成された。オーロラの透き通った歌声と野性的な高揚感が、ロビンとメーヴがオオカミとして森を駆ける解放の瞬間を鮮烈に彩る。北欧を思わせる神秘的な声とアイルランド音楽が溶け合い、本作の幻想的な雰囲気をいっそう強めている。

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