『ザ・レポート』(2019)とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『ザ・レポート』(2019)を紹介&解説。


映画『ザ・レポート』(2019)概要

映画『ザ・レポート』(2019)は、9・11同時多発テロ後にCIAが実施した拘留・尋問プログラムと、その実態を暴いた米国上院の調査報告書をめぐる実話を描いたポリティカル・スリラー。膨大な機密文書を調べ続けた上院職員ダニエル・J・ジョーンズと、報告書の公表を阻もうとする権力機構の攻防を、抑制された演出で描き出す。監督・脚本は『コンテイジョン』の脚本家スコット・Z・バーンズ。主演はアダム・ドライバー、共演にアネット・ベニング、ジョン・ハム、コリー・ストールら。

映画『ザ・レポート』作品データ

日本版タイトル ザ・レポート
原題 The Report
製作年 2019年
本国公開日 2019年11月15日(米国・劇場公開)
日本公開日 2019年11月29日(Amazon Prime Video配信開始)
ジャンル 社会派ドラマ/ポリティカル・スリラー/戦争
製作国 アメリカ
原作 無(米国上院情報特別委員会によるCIA拘留・尋問プログラム調査報告書を基に映画化)
上映時間 119分

映画『ザ・レポート』スタッフ・キャスト

監督・脚本 スコット・Z・バーンズ
製作 スティーヴン・ソダーバーグ/ジェニファー・フォックス/スコット・Z・バーンズ/ケリー・オレント/マイケル・シュガー/エディ・モレッティ/ダニー・ガバイ
製作総指揮 ナンシー・デュバック/シェーン・スミス/ナタリー・ファーレイ/リラ・ヤコブ/マイケル・ディヴェルディ/ヴィンセント・ランディ/T・J・リノマト
撮影 アイジル・ブリルド
編集 グレッグ・オブライアント
作曲 デヴィッド・ウィンゴ
出演 アダム・ドライバー/アネット・ベニング/ジョン・ハム/テッド・レヴィン/コリー・ストール/モーラ・ティアニー/マイケル・C・ホール/ティム・ブレイク・ネルソン
製作会社 ヴァイス・スタジオズ/アンブランデッド・ピクチャーズ/GLG/マージン・オブ・エラー/トピック・スタジオズ
配給 Amazon Studios(米国)/Amazon Prime Video(日本配信)

映画『ザ・レポート』あらすじ

9・11同時多発テロ後、CIAはテロ容疑者を拘留し、「強化尋問」と呼ばれる過酷な尋問プログラムを実施していた。米国上院情報特別委員会の職員ダニエル・J・ジョーンズは、上院議員ダイアン・ファインスタインから、その実態を調査するよう命じられる。

窓のない施設で数百万ページに及ぶ機密文書を調べるうち、ダニエルは尋問の非人道的な実態だけでなく、その有効性についてCIAが政府や議会へ不正確な説明を重ねていた事実に近づいていく。しかし、調査報告書の完成後も、CIAや政府関係者による抵抗が続き、真実を公表するための新たな闘いが始まる。

映画『ザ・レポート』主な登場人物(キャスト)

ダニエル・J・ジョーンズ(アダム・ドライバー):米国上院情報特別委員会の職員。CIAの拘留・尋問プログラムに関する調査責任者となり、数年間にわたって膨大な機密文書を検証する。妨害や法的圧力を受けながらも、調査結果を公表するため粘り強く行動する。

ダイアン・ファインスタイン(アネット・ベニング):米国上院情報特別委員会の委員長。ダニエルにCIAの尋問プログラムの調査を任せる。政治的な駆け引きに直面しながら、議会による監視と報告書の公表を進めようとする。

デニス・マクドノー(ジョン・ハム):オバマ政権の首席補佐官。過去の責任追及よりも政権運営やCIAとの関係維持を優先する立場から、ファインスタインやダニエルと対立する。

ジョン・ブレナン(テッド・レヴィン):CIA長官。上院の調査報告書に強く反発し、CIA側の見解を守ろうとする。報告書の内容や公表方法をめぐり、調査チームと激しく対立する。

サイラス・クリフォード(コリー・ストール):ダニエルの弁護士。CIAから刑事責任を追及される可能性が生じたダニエルに対し、法的な助言を与える。

映画『ザ・レポート』作品の魅力解説

数百万ページの文書から国家の嘘を追った実話

本作が描くのは、銃撃戦や派手な潜入捜査ではなく、機密文書を一つずつ読み解き、権力者たちの説明に潜む矛盾を突き止めていく調査である。ダニエル・J・ジョーンズたちは数百万ページに及ぶCIA資料を検証し、最終的に6700ページを超える報告書を完成させた。

国家権力に挑むことほど恐ろしいものはない。それでも、ほとんど孤独に近い状況で調査を続け、真実を記録に残した人物が実在した。本作は、その仕事自体が映画として記録されるに値するものだったことを、感情的な英雄譚へ寄せすぎることなく示している。

執着と消耗を体現するアダム・ドライバー

ダニエルを演じるアダム・ドライバーは、正義感だけで突き進む単純な英雄ではなく、一つの問題に取りつかれ、自分の時間や生活を削りながら調査へ沈み込んでいく人物として表現している。

膨大な資料と格闘する姿、権力者の論理に怒りを抑えきれなくなる瞬間、周囲の人々が去っても作業をやめられない執念。その演技には、何かに執着するためなら身を削ることさえ厭わない人物を得意とする、アダム・ドライバーならではの切迫感がある。

“何も起きない数年間”を描く抑制された構成

映画としては全体的に淡々としており、政治サスペンスに期待されるような大きな爆発力や、分かりやすいカタルシスは限られている。しかし、その平坦さは欠点であると同時に、調査の本質を伝える重要な表現でもある。

報告書を完成させても、すぐに世界が変わるわけではない。反論、修正要求、黒塗り、責任転嫁といった官僚的な抵抗が何年も繰り返される。劇的な出来事が起こらない時間をダニエルが耐え続けたからこそ、観客もまた、真実を公表するまでの途方もない距離を実感させられる。

拷問と民主主義をめぐる、現在にも通じる警告

本作はCIAが行った拷問の残酷さだけでなく、恐怖に支配された国家が法律や倫理をどのように曲げ、それを後から正当化していくのかを追及する。問題は過去の一機関による不祥事ではなく、安全保障を理由に権力への監視が失われる危険そのものにある。

終盤で示されるのは、敵が良心を捨てたとしても、国家まで同じ地点へ降りてはならないという原則である。それは米国だけでなく、これからの世界を動かすすべての為政者が肝に銘じるべき警告だろう。

Rotten Tomatoesでは批評家スコア83%、Metacriticでは66点を記録。派手さを抑えた構成や情報量の多さについては評価が分かれたものの、アダム・ドライバーとアネット・ベニングの演技、緻密な調査に基づく脚本、国家権力の説明責任を問う姿勢が高く評価されている。

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