映画『タロット 死を告げるカード』(2024)を紹介&解説。
映画『タロット 死を告げるカード』概要
映画『タロット 死を告げるカード』は、スペンサー・コーエン&アンナ・ハルバーグが手がけた、呪われたタロットカードが死を招く恐怖を描くアメリカ製ホラー。仲間と訪れた屋敷で禁じられた占いをした若者たちが、予言された運命から逃れようとするなか、不可解な死の連鎖に追い詰められていく。出演はハリエット・スレイター、ジェイコブ・バタロン(『スパイダーマン』シリーズ)、アヴァンティカら。
作品情報
日本版タイトル:『タロット 死を告げるカード』
原題:Tarot
製作年:2024年
日本公開日:2024年9月18日
ジャンル:ホラー
製作国:アメリカ
原作:ニコラス・アダムス『Horrorscope(原題)』(小説)
上映時間:92分
監督:スペンサー・コーエン/アンナ・ハルバーグ
脚本:スペンサー・コーエン/アンナ・ハルバーグ
製作:レスリー・モーゲンスタイン/スコット・グラスゴールド/エリサ・コプロヴィッツ・ダットン
製作総指揮:スコット・ストラウス/スペンサー・コーエン/アナ・ハルバーグ/アンドリュー・フェファー
撮影:エリー・スモルキン
編集:トム・エルキンス/ジョシュ・スガルラタ
作曲:ジョセフ・ビシャラ
出演:ハリエット・スレイター/アデイン・ブラッドリー/ジェイコブ・バタロン/アヴァンティカ/ハンバリー・ゴンザレス/ヴォルフガング・ノヴォグラッツ/ラーセン・トンプソン/オルウェン・フエレ
製作:スクリーン・ジェムズ/アロイ・エンターテインメント/グラウンド・コントロール
配給:ソニー・ピクチャーズ・リリーシング
あらすじ
現代のアメリカ。大学生の友人グループは休暇で訪れた屋敷で、禁じられたタロットカードを使い占いを行う。だが本来のルールを破ったことで、カードに秘められた呪いが解き放たれ、占いの結果通りに死が迫り始める。逃れられない運命に追い詰められた彼らは、生き延びる術を必死に探していく。
主な登場人物(キャスト)
ヘイリー(ハリエット・スレイター):タロットに詳しい大学生。仲間たちに占いを行ったことで呪いの発端を生み出すが、運命に抗いながら生存を目指す物語の中心人物。
グラント(アデイン・ブラッドリー):ヘイリーの元恋人で現実主義的な青年。占いを信じない立場から次第に恐怖の現実を受け入れていく。
パクストン(ジェイコブ・バタロン):陽気で軽口を叩くムードメーカー。軽率な行動が目立つ一方で、呪いの恐怖を体現する存在として追い詰められていく。
ペイジ(アヴァンティカ):友人たちの旅行を手配するまとめ役。理性的で面倒見がよいが、占いに関わったことで呪いに巻き込まれる。
マデリン(ハンバリー・ゴンザレス):感情の揺れが大きく、不安を抱えやすい学生。呪いの進行にいち早く恐怖を感じる“被害者視点”を担う。
ルーカス(ヴォルフガング・ノヴォグラッツ):行動力のある青年。仲間思いの一面を持つが、呪いのルールを示す犠牲者として運命に翻弄される。
エリーズ(ラーセン・トンプソン):誕生日旅行の主役で明るい性格の女性。彼女がタロット占いを促したことが惨劇の引き金となる。
アルマ(オルウェン・フエレ):タロットの呪いに詳しい女性。過去に同様の出来事を経験した人物で、若者たちにルールと危険性を語る案内役。
作品解説|魅力&テーマ
“カード=死の設計図”として機能する明快なホラー構造
本作の最大の特徴は、タロットカードが単なる小道具ではなく“死のシナリオ”そのものとして機能する点にある。若者たちはそれぞれ異なるカードを引き、その内容に対応した怪異に順々に襲われていく。物語の設計は「占い=予言」ではなく、「占い=実行される運命」だ。この構造によって観客は、誰がどのカードを引いたのかを手がかりに、次なる死を予測しながら物語を追うことになる。逃げれば逃げるほど運命に引き寄せられていくという皮肉を内包しつつ、本作は“回避不能な死”を軸としたホラーの系譜を現代的にアップデートした一作といえる。
タロットの象徴が“怪異”として具現化するビジュアルホラー
本作の醍醐味のひとつは、タロットカードに描かれた象徴がそのまま“怪異”として具現化し、登場人物に牙を剥く点にある。「女教皇」や「魔術師」といった抽象的なイメージが、それぞれ固有の姿と動きを持つ存在として立ち現れ、観念的だった恐怖を生々しい視覚体験へと変換していく。カードの意味や象徴性が死の演出へと直結するこの構造は、占いという文化的モチーフをホラー表現として昇華した試みだ。各怪異のデザインや登場シーンには“カードごとの個性”がしっかりと刻み込まれており、単なる驚かしに終わらない、視覚的にも記憶に残る恐怖を生み出している。
“運命は変えられるのか”を問うサバイバルドラマ
本作の核にあるのは、タロットによって示された“死の運命”は本当に覆せないのかという問いだ。占いの結果が次々と現実のものとなっていくなかで、登場人物たちは恐怖に追い詰められながらも、その連鎖を断ち切る術を模索し続ける。彼らが単に逃げ惑うだけでなく、ルールを読み解き、自らの選択によって未来を変えようとする点が物語に一定の厚みをもたらしている。あらかじめ定められた運命と、それに抗おうとする意志の対立——その構図が、本作をただのジャンプスケア頼みのホラーとの差別化を図っている。
「人は運命を受け入れるしかないのか、それとも書き換えられるのか」という問いは普遍的であり、恐怖体験の外側にもう一枚の層を加えている。ただ、展開は総じて読みやすく、王道ホラーの文法から大きく逸脱するわけではない。独自性がコンセプトの段階にとどまり、物語の肉付けまで十分に行き届いていない点は否めない。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
