『突撃』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ【スタンリー・キューブリック】

映画『突撃』(1957)を紹介&解説。


映画『突撃』概要

映画『突撃』は、スタンリー・キューブリック監督が第一次世界大戦下のフランス軍を舞台に、無謀な作戦と理不尽な軍法会議を通して戦争と組織の不条理を描いた反戦ドラマ。ハンフリー・コッブが1935年に発表した小説『栄光への小径』を原作に、自らの出世を優先する将軍たちと、兵士の命を守ろうとする連隊長の対立を映し出す。主演はカーク・ダグラス。若きキューブリックの緊張感あふれる映像と、人間性を問いかける物語によって、戦争映画史に残る一本となった。

作品情報

日本版タイトル 『突撃』
原題 Paths of Glory
製作年 1957年
本国公開日 1957年12月20日
日本公開日 1958年2月19日
ジャンル 戦争ドラマ
製作国 アメリカ
原作 ハンフリー・コッブ『栄光への小径』(小説)
上映時間 88分
監督 スタンリー・キューブリック
脚本 スタンリー・キューブリック/カルダー・ウィリンガム/ジム・トンプスン
製作 ジェームズ・B・ハリス
製作総指揮 カーク・ダグラス
撮影 ゲオルク・クラウゼ
編集 エヴァ・クロール
作曲 ジェラルド・フリード
出演 カーク・ダグラス/ラルフ・ミーカー/アドルフ・マンジュー/ジョージ・マクレディ/ウェイン・モリス/リチャード・アンダーソン/ティモシー・ケリー/ジョー・ターケル
製作 ブライナ・プロダクションズ/ハリス=キューブリック・ピクチャーズ
配給 ユナイテッド・アーティスツ/松竹(日本)

あらすじ

1916年、第一次世界大戦下のフランス軍。前線では、フランス軍とドイツ軍による長期の塹壕戦が続いていた。師団長のミロー将軍は、上官であるブルラール将軍から、ドイツ軍の堅固な陣地“アント・ヒル”を攻略するよう命じられる。当初は不可能だと反対するものの、昇進の可能性をほのめかされたことで作戦を引き受ける。

兵士たちの置かれた状況を知る連隊長ダックス大佐は、作戦が自殺行為に等しいと訴えるが、命令を覆すことはできない。ダックス自身が先頭に立って攻撃を開始するものの、部隊はドイツ軍の激しい砲火にさらされ、多くの犠牲者を出して退却する。作戦の失敗を認めようとしないミローは、兵士たちを臆病者と決めつけ、見せしめとして3人を軍法会議にかける。民間では刑事事件を扱う弁護士だったダックスは、選ばれた兵士たちを救うため、軍という巨大な組織を相手に法廷で戦う。

主な登場人物(キャスト)

ダックス大佐(カーク・ダグラス):フランス軍第701連隊を率いる連隊長。民間では優秀な刑事弁護士として知られていた。軍人として命令に従いながらも部下の命を重んじ、無謀な作戦の責任を押しつけられた3人の兵士を軍法会議で弁護する。

ジョルジュ・ブルラール将軍(アドルフ・マンジュー):ミローの上官にあたる軍司令官。穏やかで洗練された態度を見せる一方、軍の体面と権力関係を優先する。昇進をほのめかしてミローに困難な攻撃を引き受けさせる。

ポール・ミロー将軍(ジョージ・マクレディ):ダックスの直属の上官である師団長。出世への欲望から、攻略不可能に近い“アント・ヒル”への攻撃を決断する。作戦が失敗すると自らの責任を認めず、兵士たちを臆病罪で処罰しようとする。

フィリップ・パリ伍長(ラルフ・ミーカー):軍法会議にかけられる3人の兵士のひとり。偵察任務中にロジェ中尉が起こした重大な過失を目撃しており、その事実を隠したいロジェによって代表者に選ばれる。

ロジェ中尉(ウェイン・モリス):パリ伍長らを率いて夜間偵察を行った将校。恐怖と混乱から部下を死なせる失態を犯すが、その責任を隠そうとする。軍法会議に送る兵士の選出を命じられ、パリを指名する。

フェロール二等兵(ティモシー・ケリー):軍法会議にかけられる兵士のひとり。上官から「社会的に好ましくない人物」と見なされていたことを理由に選ばれる。感情をあらわにしながら、自らに迫る理不尽な運命と向き合う。

アルノー二等兵(ジョー・ターケル):軍法会議にかけられる兵士のひとり。過去に勇敢な行動で勲章を授与されているが、くじ引きによって無作為に選ばれる。軍が掲げる名誉と実際の処遇の矛盾を体現する存在。

作品の魅力解説

戦場と法廷で描かれる2つの戦い

本作は、前半の塹壕戦と後半の軍法会議という異なる戦いによって構成されている。兵士たちは戦場ではドイツ軍の銃弾にさらされ、生還した後には味方であるフランス軍の論理によって追い詰められる。敵味方という単純な対立ではなく、人命よりも組織の威信を優先する軍そのものを問題として描いている点が特徴だ。

塹壕と宮殿を対比するキューブリックの映像

兵士たちが暮らす狭く泥だらけの塹壕と、将軍たちが作戦を話し合う広大で豪華な宮殿が鮮烈に対比される。特にダックスが塹壕内を歩く姿を追う移動撮影や、爆発が連続する突撃場面には、後年の作品にも通じるキューブリックの緻密な構図と演出が表れている。空間の違いだけで、命令を出す側と実際に命を危険にさらす側の隔たりが伝わってくる。

正義が通用しない組織の恐ろしさ

ダックスは論理と証拠を用いて兵士たちを救おうとするが、軍法会議は結論が先に決められた形式的な手続きとして進んでいく。本作が描くのは、ひとりの悪人だけではなく、責任逃れや保身を許す組織全体の構造だ。戦争を題材にしながら、現代の組織や権力にも通じる普遍的な恐ろしさを浮き彫りにしている。

人間性を取り戻すラストシーン

冷酷な命令や理不尽な裁判を描き続けた物語は、兵士たちがひとりのドイツ人女性の歌に耳を傾ける場面へと行き着く。敵国の人間を前に騒いでいた兵士たちの態度が少しずつ変わり、それぞれが故郷や失われた日常を思い出していく。国籍や軍服の下にある共通の人間性を静かに示す、強い余韻を残す場面となっている。

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