『ジョジョ・ラビット』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『ジョジョ・ラビット』(2019)を紹介&解説。


映画『ジョジョ・ラビット』概要

映画『ジョジョ・ラビット』は、タイカ・ワイティティ監督(『マイティ・ソー バトルロイヤル』)が、第二次世界大戦末期のナチス・ドイツを10歳の少年の視点から描いた風刺的ヒューマンドラマ。ナチスの思想を信奉する少年ジョジョが、自宅にかくまわれていたユダヤ人少女と出会い、偏見から解放されていく過程をユーモアと悲劇を交えて描く。クリスティン・ルーネンズの小説『Caging Skies』を原作とし、第44回トロント国際映画祭で観客賞を受賞。第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、タイカ・ワイティティが脚色賞を受賞した。

作品情報

日本版タイトル 『ジョジョ・ラビット』
原題 Jojo Rabbit
製作年 2019年
本国公開日 2019年10月18日
日本公開日 2020年1月17日
ジャンル ドラマコメディ戦争
製作国 アメリカ
原作 クリスティン・ルーネンズ『Caging Skies(原題)』
上映時間 109分
監督・脚本 タイカ・ワイティティ
製作 カーシュー・ニール/タイカ・ワイティティ/チェルシー・ウィンスタンリー
製作総指揮 ケヴァン・ヴァン・トンプソン
撮影 ミハイ・マライメア・Jr.
編集 トム・イーグルス
作曲 マイケル・ジアッキーノ
出演 ローマン・グリフィン・デイヴィス/トーマシン・マッケンジー/スカーレット・ヨハンソン/タイカ・ワイティティ/サム・ロックウェル/レベル・ウィルソン/スティーヴン・マーチャント/アルフィー・アレン/アーチー・イェーツ
製作 フォックス・サーチライト・ピクチャーズ/TSGエンターテインメント/ディフェンダー・フィルムズ/ピキ・フィルムズ
配給 フォックス・サーチライト・ピクチャーズ/ウォルト・ディズニー・ジャパン(日本)

あらすじ

第二次世界大戦末期のドイツ。10歳の少年ジョジョは、ヒトラーユーゲントの立派な一員になることを夢見ていた。彼の相談相手は、ナチスのプロパガンダから作り出された空想上のアドルフ・ヒトラー。しかし、訓練キャンプでウサギを殺せなかったジョジョは、仲間たちから「ジョジョ・ラビット」と呼ばれ、からかわれてしまう。

やがてジョジョは、母ロージーが自宅の隠し部屋にユダヤ人少女エルサをかくまっていることを知る。ユダヤ人について歪んだ知識しか持たないジョジョは、恐怖と敵意を抱きながらも、秘密を守るためにエルサとの交流を始める。彼女の言葉や母親の生き方に触れるうち、ジョジョが信じてきた世界は少しずつ揺らいでいく。

主な登場人物(キャスト)

ヨハネス・“ジョジョ”・ベッツラー(ローマン・グリフィン・デイヴィス):ナチスの思想を無邪気に信じ、ヒトラーユーゲントに参加している10歳の少年。臆病で心優しい性格を隠そうとしている。自宅でエルサと出会い、自分が教え込まれてきた偏見に疑問を抱き始める。

ロージー・ベッツラー(スカーレット・ヨハンソン):ジョジョをひとりで育てる快活な母親。ユーモアと愛情をもって息子を見守る一方、ナチス政権に抵抗し、危険を承知でエルサを自宅にかくまっている。

エルサ・コール(トーマシン・マッケンジー):ロージーにかくまわれているユダヤ人少女。ナチスの宣伝を信じ込むジョジョを恐れるだけでなく、ときには彼の無知を逆手に取ってからかう。秘密の交流を重ねる中で、ジョジョに人間として向き合うことを教えていく。

空想上のアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ):ジョジョの頭の中にだけ存在する空想の友人。実在したヒトラーそのものではなく、10歳の少年がプロパガンダから作り上げた幼稚で滑稽な人物として描かれる。ジョジョの価値観が変化するにつれて、その振る舞いも不穏さを増していく。

クレンツェンドルフ大尉/キャプテンK(サム・ロックウェル):ヒトラーユーゲントの訓練を担当する将校。酒に溺れた投げやりな人物に見えるが、体制に対する複雑な感情と人間的な良心を内側に抱えている。

フロイライン・ラーム(レベル・ウィルソン):ヒトラーユーゲントの女性教官。ナチスへの忠誠心を誇張された言動で表現し、思想教育の異常さを体現する。

ヨーキー(アーチー・イェーツ):ジョジョの親友。おっとりとした性格で、周囲の熱狂とは距離を置きながらジョジョを気遣う。戦争末期の混乱に巻き込まれていく。

作品の魅力解説

子どもの視点から偏見がほどけていく物語

本作が扱うのは、ナチスによるユダヤ人迫害という重く悲惨な歴史である。しかし、物語の中心に置かれているのは、完成された英雄や抵抗運動の闘士ではなく、プロパガンダを無邪気に信じ込んだ10歳の少年だ。

タイカ・ワイティティ監督は、ナチスの思想を正面から威圧的に描くのではなく、空想上のヒトラーを幼稚で滑稽な存在に変えることで、その権威を笑いの対象へと引きずり下ろす。ジョジョとエルサの交流も、少年が突然正義に目覚める単純な展開ではない。恐怖や好奇心、嫉妬、淡い恋心が入り交じる中で、教え込まれた偏見が少しずつ崩れていく。

そのため、重い題材を扱いながらも、作品の大部分を占めるのは子どもらしい可愛らしさと人間的な温かさである。一方で、無邪気な世界のすぐ外側では迫害と戦争が進行しており、その落差が物語の悲しさを際立たせている。

重い題材を支える、温かなキャスト陣

主人公ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイヴィスは、本作が映画初出演とは思えないほど安定した演技を披露する。熱狂的な少年兵を演じるコミカルな表情から、信じていた世界が崩れていく戸惑いや悲しみまでを自然に表現し、大人の俳優たちに囲まれても物語の中心を担い続けている。

母ロージー役のスカーレット・ヨハンソンも印象深い。『アベンジャーズ/エンドゲーム』での覚悟を固めた戦士や、『マリッジ・ストーリー』での張り詰めた妻とは異なり、本作では活力とユーモアにあふれた母親を演じている。息子を一方的に叱るのではなく、明るさと想像力によって正しい方向へ導こうとする姿からは、彼女自身が舞台裏などで見せる親しみやすさも感じられる。

エルサ役のトーマシン・マッケンジーは、悲劇の被害者としてだけではなく、知性とユーモア、たくましさを備えた少女像を作り上げた。サム・ロックウェル演じるキャプテンKにも、投げやりな態度の奥から人間的な温かさがにじみ出る。そしてタイカ・ワイティティ自身が演じる空想上のヒトラーは、ユーモラスな表情や仕草によって独裁者の権威を徹底して矮小化している。

「靴」を繰り返し映す構図が生む伏線

本作では、人物の顔ではなく、足元や靴を子どもの目線に近い低い位置から映す構図が繰り返し用いられる。特にロージーの靴は、彼女の自由な精神や軽やかさを示す視覚的なモチーフとなっている。

序盤では何気ない日常の一部に見えたこの構図が、後半の大きな展開でまったく異なる意味を帯びる。観客は顔を確認するよりも先に、その人物が誰であるかを靴だけで理解することになる。直接的な説明や大げさな演出を加えず、それまで積み重ねてきた画面構成だけで感情を揺さぶる、緻密な視覚的伏線である。

ロージーの自由を表す鮮やかな衣装

第二次世界大戦期を舞台としながら、本作の画面は一般的な戦争映画のような灰色や茶色だけでは構成されていない。衣装デザインを担当したマイエス・C・ルベオは、ジョジョの主観に合わせて鮮やかな色彩や模様を取り入れ、史実を背景とした衣装に童話的な感覚を加えた。

特に目を引くのが、ジョジョとロージー親子の私服である。ロージーの青緑色のコートや柄物の衣服、特徴的なツートーンの靴は、抑圧的な社会の中でも生きる喜びを失わない彼女の象徴となっている。衣装は単に時代を再現するだけでなく、それぞれの人物が体制に従っているのか、内面では自由を守っているのかを伝える役割も果たしている。

ルベオは本作で第92回アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされ、衣装デザイナー組合賞では時代映画部門を受賞した。色彩の美しさと物語上の機能を両立させた衣装は、本作を特徴づける重要な要素である。

温かさと危うさが同居する作風

本作の評価は一枚岩ではない。2026年8月確認時点で、Rotten Tomatoesの批評家スコアは81%である一方、MetacriticのMetascoreは58にとどまっている。演技や反ヘイトのメッセージ、喜劇と悲劇を行き来する大胆さが評価された一方、ホロコーストを背景とした物語としては描写が軽く、感傷的すぎるという批判も受けた。

ナチスの思想を笑いによって無力化し、一般の観客や若年層にも届く成長物語へ置き換えたことは本作の個性である。しかし、その親しみやすさが歴史的な惨事を矮小化しているように見える可能性も否定できない。温かな反戦・反ヘイト映画としての魅力と、重い歴史を寓話化することの危うさを併せ持つ作品である。

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