映画『怒れ!憤れ! ステファン・エセルの遺言』(2012)を紹介&解説。
映画『怒れ!憤れ! ステファン・エセルの遺言』概要
映画『怒れ!憤れ! ステファン・エセルの遺言』は、トニー・ガトリフ監督(『ガッジョ・ディーロ』『愛より強い旅』)が、フランスの元外交官・レジスタンス闘士ステファン・エセルの著書『怒れ!憤れ!』に自由な着想を得て手がけたドキュメンタリー/ドラマ。2011年前後のヨーロッパで広がった抗議運動「インディグナドス(怒れる者たち)」の現実の風景と、アフリカからヨーロッパへ渡った若い女性ベティの旅を交錯させながら、格差や排除、不正義に対して声を上げる人々を描く。出演はベティ、イサベル、フィオナ・モンベ、ナウェル・ベン・クレムら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『怒れ!憤れ! ステファン・エセルの遺言』 |
|---|---|
| 原題 | Indignados |
| 製作年 | 2012年 |
| 本国公開日 | 2012年3月7日 |
| 日本公開日 | 2014年3月1日 |
| ジャンル | ドキュメンタリー/ドラマ |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | ステファン・エセル『怒れ!憤れ!』(小冊子・エッセイ) |
| 上映時間 | 88分 |
| 監督・脚本・製作 | トニー・ガトリフ |
|---|---|
| 撮影 | コリン・オウベン/セバスティアン・サドゥン |
| 編集 | ステファニー・ペデラク |
| 作曲 | デルフィーヌ・マントゥーレ/ヴァレンティン・ダマニ |
| 出演 | ベティ/イサベル/フィオナ・モンベ/ノリグ/ナウェル・ベン・クレム/エリック・ゴンサレス・エレロ/カリーヌ・ゴンサレス/マウード・ヴェルディエ/オウレリアン・ル・ゲリネル/アディアトゥ・サコ/リュシー・ロウストリア |
| 製作 | Princes Production/Eurowide Production/Hérodiade/Rhône-Alpes Cinéma |
| 配給 | Les Films du Losange(フランス)/ムヴィオラ(日本) |
あらすじ
よりよい生活を求めてアフリカからヨーロッパへ渡ってきた若い女性ベティ。ギリシャへたどり着いた彼女は、正規の滞在資格を得られず、警察による排除や強制退去にさらされながらヨーロッパ各地を移動していく。
フランスでは社会からこぼれ落ちた移民たちの現実を目の当たりにし、さらにスペインへ向かったベティは、経済格差や政治、社会的不公正に抗議する若者たちと出会う。彼女の旅はやがて、ヨーロッパ各地に広がっていた「怒れる者たち」の運動と重なっていく。
主な登場人物(キャスト)
ベティ(ベティ):アフリカからヨーロッパへ渡ってきた若い女性。滞在資格を持たない移民として各地を転々としながら、ヨーロッパ社会の格差や排除、そしてそれに抗議する人々の姿を目撃していく。
作品の魅力解説
現実の抗議運動とひとりの移民女性の旅を重ねる
本作の大きな特徴は、通常の社会派ドキュメンタリーのように出来事を整理して説明するのではなく、現実に起きていた抗議運動の映像と、ベティというひとりの女性の旅を組み合わせていることにある。
スペインの15M運動など、経済格差や社会的不公正に抗議して立ち上がった人々の姿を、移民として社会の周縁を移動するベティの視点と接続。抽象的になりやすい政治や社会制度の問題を、ひとりの人間が実際に味わう排除や孤独として描いていく。
「怒り」を暴力ではなく行動へ変えるというテーマ
作品の根底にあるのは、ステファン・エセルが『怒れ!憤れ!』で訴えた、社会の不正義に無関心であってはならないという思想。
ここで語られる「怒り」は、単なる憎悪や破壊衝動ではない。目の前で起きている不正や差別に気づき、声を上げ、非暴力によって社会へ働きかけるための出発点として提示されている。
政治的テーマを音と身体で伝えるガトリフらしい映像
トニー・ガトリフ作品らしく、メッセージのすべてを言葉で説明するのではなく、音楽、街頭のざわめき、人々の身体や群衆の動きを通して感情を伝えていくのも特徴。
ドキュメンタリーとフィクションの境界を行き来しながら、社会運動を単なるニュース映像としてではなく、そこで生きている人々の怒りや希望を伴った感覚的な映像体験へと変えている。
