映画『スウィング・キッズ』(2018)を紹介&解説。
映画『スウィング・キッズ』(2018)概要
映画『スウィング・キッズ』(2018)は、カン・ヒョンチョル監督(『サニー 永遠の仲間たち』)が、朝鮮戦争下の巨済島捕虜収容所を舞台に描く戦争ミュージカル。収容所のイメージ向上を目的に結成された寄せ集めのタップダンスチームが、国籍や人種、思想の壁を越えて踊る喜びを分かち合っていく。主演はEXOのディオ。共演に、世界的タップダンサーのジャレッド・グライムス、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミンホら。
| 原題 | 스윙키즈 |
|---|---|
| 英題 | Swing Kids |
| 製作年 | 2018年 |
| 製作国 | 韓国 |
| 韓国公開日 | 2018年12月19日 |
| 日本公開日 | 2020年2月21日 |
| 上映時間 | 133分 |
| ジャンル | 戦争/ミュージカル/ドラマ |
| 映倫区分 | PG12 |
映画『スウィング・キッズ』スタッフ・キャスト
| 監督・脚本 | カン・ヒョンチョル |
|---|---|
| 製作 | イ・アンナ |
| プロデューサー | ユ・ソングォン/アン・ヒジン |
| 製作総指揮 | キム・ウテク |
| 撮影 | キム・ジヨン |
| 編集 | ナム・ナヨン |
| 音楽 | キム・ジュンソク |
| 出演 | ディオ(EXO)/ジャレッド・グライムス/パク・ヘス/オ・ジョンセ/キム・ミンホ |
| 製作 | アンナプルナ・フィルム |
| 配給 | ネクスト・エンターテインメント・ワールド(韓国)/クロックワークス(日本) |
映画『スウィング・キッズ』あらすじ
1951年、朝鮮戦争下の巨済島捕虜収容所。新たに赴任した所長は、収容所の対外的なイメージを向上させるため、捕虜たちによるダンスチームを結成し、その姿を宣伝に利用しようと考える。
チームの指導を命じられたのは、ブロードウェイのタップダンサーだった黒人下士官ジャクソン。彼のもとには、4カ国語を操るヤン・パンネ、行方不明の妻を捜す民間人捕虜カン・ビョンサム、天性のダンス能力を持つ中国人捕虜シャオパンが集まる。
そして、米国文化を敵視する朝鮮人民軍の捕虜ロ・ギスも、ジャクソンのタップダンスに心を奪われてしまう。立場も思想も異なる5人は“スウィング・キッズ”を結成し、クリスマス公演に向けて練習を重ねるが、収容所では敵対する思想を掲げた捕虜たちの対立が激しさを増していく。
映画『スウィング・キッズ』登場人物・キャスト
ロ・ギス(ディオ):朝鮮人民軍に所属していた北朝鮮兵で、巨済島捕虜収容所一番の問題児。米国文化を受け入れることは思想的な裏切りになりかねないが、ジャクソンのタップダンスに魅了され、誰にも知られないよう練習を始める。
ジャクソン(ジャレッド・グライムス):捕虜収容所のイメージ向上を目的としたダンスチームの結成を命じられた黒人下士官。軍人になる前はブロードウェイで活躍するタップダンサーだった。人種差別にさらされながらも、個性の異なるメンバーを指導する。
ヤン・パンネ(パク・ヘス):4カ国語を操り、無許可の通訳として働く満州出身の女性。家族を養う金を稼ぐためにダンスチームへ加わる。タップダンスだけでなく、さまざまな踊りを身につけた実力者でもある。
カン・ビョンサム(オ・ジョンセ):戦争に巻き込まれ、捕虜となった朝鮮の民間人。離ればなれになった妻に自分の居場所を知らせるため、公演の写真が新聞などに掲載されることを期待してダンスチームに参加する。
シャオパン(キム・ミンホ):並外れたダンスの才能を持つ中国人捕虜。栄養失調のため長時間踊り続けることができないが、言葉の壁を越え、身体表現によって仲間たちと通じ合っていく。
映画『スウィング・キッズ』ならではの魅力
“魔法の靴”が地獄のような現実を忘れさせる
「魔法の靴を履いている間は、全て忘れられる」。ヤン・パンネが語るこの言葉は、ダンスに救いを求める登場人物だけでなく、本作を観る観客の体験そのものを言い表している。
収容所内には、差別や暴力、思想の違いによる争いが蔓延している。それでもメンバーがダンスシューズを履いている間だけは、国籍や立場から解放され、音楽とタップの高揚感に身を委ねることができる。ミュージックビデオのような映像と小気味よい靴音は自然と口角を上げるが、靴を脱げば、彼らも観客も戦争という現実へ引き戻されてしまう。
音楽と靴音が生み出す圧巻のダンスシーン
本作には、ベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」をはじめ、デヴィッド・ボウイやザ・ビートルズの楽曲が使用されている。1951年という時代設定には存在しない後世の音楽も組み込み、史実の再現より、踊る者たちの解放感や興奮を優先した大胆な演出が特徴だ。
ジャクソン役のジャレッド・グライムスは、ブロードウェイで活躍してきた本職のタップダンサー。その鋭く正確な足さばきを中心に、俳優たちの身体、編集、音楽、靴音が一体となったダンスシーンが作り上げられている。
華やかなミュージカルから戦争映画へ反転する構成
本作の感触を端的に表すなら、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を集団劇へ置き換えたような、“ダンサーズ・イン・ザ・ダーク”である。もっとも、こちらではタップダンスと音楽が、登場人物だけでなく観客にも明確な喜びを与えてくれる。それだけに、「ずっと踊っていてほしい」「どうか踊ることをやめないでほしい」と願わずにはいられない。
しかし、物語の背後では捕虜同士の対立や政治的な思惑が進行している。公演が近づくにつれて不穏さは増し、華やかなダンス映画の装いは、容赦のない戦争映画へと変化していく。この極端なトーンの転換は本作の強烈な個性である一方、批評家の間では評価が分かれた部分でもある。
人の夢を奪う戦争の理不尽さ
『スウィング・キッズ』はダンスを題材にした作品であると同時に、その本質においては戦争映画だ。メンバーは国籍や思想を越えて同じリズムを刻めても、収容所の外側にある政治や戦争から完全に逃れることはできない。
物語自体はフィクションだが、朝鮮戦争をはじめとする戦争が、人々の幸福や夢、築きかけた関係を一方的に奪ってきたことは事実である。ダンスによって天国のような時間を経験させた後、戦争の地獄を突きつけるクライマックスは、単なる“胸糞の悪い展開”では片づけられない。音楽と踊りに救われた分だけ、戦争への嫌悪と悲しみが強く残る作品である。
批評家からの評価
Rotten Tomatoesでは批評家スコア63%を記録。一方、MetacriticのMetascoreは50点となっている。ただし、Metacriticは2媒体のみの集計であり、評価の母数は非常に少ない。
ダンス、コメディー、戦争、政治劇を一本に盛り込んだ意欲やパフォーマンスは評価された一方、133分という上映時間や、陽気なミュージカルから凄惨な戦争劇へ移行する構成については賛否が分かれた。それでも、この落差こそが、踊っている間だけ現実を忘れられる登場人物たちの切実さを際立たせている。
