『ヒルコ 妖怪ハンター』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『ヒルコ 妖怪ハンター』(1991)を紹介&解説。


映画『ヒルコ 妖怪ハンター』概要

映画『ヒルコ 妖怪ハンター』は、諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」を、塚本晋也監督(『鉄男 TETSUO』)が沢田研二主演で実写映画化したSFホラー。妖怪の存在を主張して学界から異端視された考古学者が、義兄と女子生徒の失踪を追って、人けのない中学校とその地下に眠る古墳へ足を踏み入れる。人間の顔と蜘蛛のような脚を持つ異形、猛スピードの追跡劇、コミカルな掛け合いを組み合わせ、夏休みの学校を舞台にした怪奇冒険活劇へ仕上げた。共演は工藤正貴上野めぐみ竹中直人室田日出男ら。

作品情報

日本版タイトル 『ヒルコ 妖怪ハンター』
英題 Hiruko the Goblin
製作年 1991年
日本公開日 1991年5月11日
ジャンル ホラーSF/特撮
製作国 日本
原作 諸星大二郎「妖怪ハンター」
上映時間 90分
監督・脚本 塚本晋也
企画 堤康二
製作 中沢敏明/中村俊安/樋口正道
エグゼクティブ・プロデューサー 長谷川安弘
プロデューサー 越智貞夫/米山紳
撮影 岸本正広
美術 赤塚訓
編集 黒岩義民
音楽 梅垣達志
特殊メイク・ヒルコ造型 織田尚
出演 沢田研二/工藤正貴/上野めぐみ/光石研/趙方豪/朝本千可/辻伊万里/余貴美子/竹中直人/室田日出男
製作 セディック
配給 松竹富士(初公開)/マコトヤ(2021年レストア&リマスター版)

あらすじ

妖怪の存在を唱えたことで学界から異端視されている考古学者・稗田礼二郎のもとへ、義兄で中学校教師の八部高史から、古代人が悪霊を鎮めるために造った古墳を発見したという手紙が届く。自説を証明する好機と考えて村を訪れた稗田だったが、八部は教え子の月島令子とともに失踪していた。八部の息子・まさおと学校を捜索し始めた稗田は、血痕や首のない遺体を発見。やがてふたりの前に、人間の顔を持つ異形の妖怪“ヒルコ”が姿を現す。

主な登場人物(キャスト)

稗田礼二郎(沢田研二):妖怪の存在を主張したことで学界から異端視されている考古学者。義兄から届いた手紙を手がかりに村を訪れ、即席の妖怪退治装置を携えて怪異に立ち向かう。

八部まさお(工藤正貴):失踪した八部高史の息子。父を捜して夏休みの中学校へ入り、そこで出会った稗田と行動をともにする。

月島令子(上野めぐみ):八部高史の教え子で、まさおが思いを寄せる女子生徒。八部と古墳へ向かった後、消息を絶つ。

八部高史(竹中直人):まさおの父で、村の中学校に勤める教師。校内で古墳を発見したと稗田へ知らせるが、調査中に失踪する。

渡辺(室田日出男):中学校の用務員。学校と土地にまつわる秘密を知り、稗田とまさおへ不穏な警告を与える。

作品の魅力解説

猛スピードで迫るヒルコの絶望感

本作の恐怖は、陰湿な気配を長く引き延ばすというより、異形を真正面から突きつけるパワープレイと追跡スリルにある。人間の顔から蜘蛛を思わせる脚が伸びたヒルコは、生理的な不快感と一目で忘れられないインパクトを兼ね備えたクリーチャーだ。しかも動きは予想以上に速く、廊下や調理室を疾走する姿が「逃げ切れないのではないか」という絶望感を生む。低い位置を猛然と移動するカメラも、襲撃の速度を身体感覚へ変えている。

王道の冒険活劇と塚本晋也らしい映像エネルギー

夏休みで人気の消えた学校、地下へ続く古墳、封印された邪悪な存在という舞台設定は、少年向け怪奇冒険譚のような高揚感を持つ。一方で、極端なアングルや高速移動、血と肉体の感触を強調する造形には、『鉄男 TETSUO』で注目を集めた塚本晋也の映像感覚が濃密に刻まれている。分かりやすい危機と退治の物語を軸にしながら、画面の運動量によって独自の熱狂へ押し切るエンターテインメントホラーである。

沢田研二と工藤正貴の凸凹バディ

沢田研二が演じる稗田は、孤高の天才というより、慌て、転び、奇妙な発明品に頼りながら怪異へ挑む愛嬌のある主人公だ。その少しふざけた人物像が恐怖一辺倒になることを防ぎ、父を捜す少年・まさおとの凸凹バディに親しみを与えている。大人が少年を一方的に守るのではなく、ふたりで叫び、逃げ、知恵を出して危機を切り抜けていく関係が、本作のポップな後味につながっている。

不気味さと笑いが同じ画面に存在する

首なし死体や血まみれの惨劇を遠慮なく見せながら、その直後に大げさなリアクションや珍妙な道具を差し込む振れ幅も特徴的だ。怖さを軽く処理しているのではなく、笑いによって観客を一度解放し、次の襲撃で再び緊張させる。この緩急が90分をジェットコースターのように駆け抜けさせ、残酷な怪奇映画でありながら、子どもと大人が挑む夏の冒険物語としても楽しませる。

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