映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)を紹介&解説。
映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』概要
映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は、J・K・ローリングの同名小説を原作とする映画「ハリー・ポッター」シリーズ第4作。ホグワーツ魔法魔術学校の4年生になったハリーが、17歳未満は出場できないはずの“3大魔法学校対抗試合”に、なぜか4人目の代表選手として選ばれてしまう。華やかな魔法競技、思春期の友情と恋、そして闇の帝王ヴォルデモートの復活へ向かう不穏な陰謀が交錯する、シリーズの転換点となるファンタジー大作。監督はマイク・ニューウェル、出演はダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ブレンダン・グリーソン、ロバート・パティンソン、レイフ・ファインズら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 |
|---|---|
| 原題 | Harry Potter and the Goblet of Fire |
| 製作年 | 2005年 |
| 本国公開日 | 2005年11月18日 |
| 日本公開日 | 2005年11月26日 |
| ジャンル | ファンタジー/アドベンチャー/ファミリー |
| 製作国 | イギリス/アメリカ |
| 原作 | J・K・ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(小説) |
| 上映時間 | 157分 |
| 前作 | 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004) |
| 次作 | 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007) |
| 監督 | マイク・ニューウェル |
|---|---|
| 脚本 | スティーヴ・クローヴス |
| 製作 | デヴィッド・ヘイマン |
| 製作総指揮 | デヴィッド・バロン/ターニャ・セガッチアン |
| 撮影 | ロジャー・プラット |
| 美術 | スチュアート・クレイグ |
| 衣装 | ジェイニー・ティーマイム |
| 編集 | ミック・オーズリー |
| 音楽 | パトリック・ドイル |
| 出演 | ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/ブレンダン・グリーソン/ロバート・パティンソン/マイケル・ガンボン/マギー・スミス/アラン・リックマン/ロビー・コルトレーン/ゲイリー・オールドマン/トム・フェルトン/レイフ・ファインズ |
| 製作 | ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ/ヘイデイ・フィルムズ/パタレックスIVプロダクションズ |
| 配給 | ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ |
あらすじ
クィディッチ・ワールドカップを訪れたハリー・ポッターは、そこで不吉な事件と“闇の印”を目撃する。やがてホグワーツでは、ダームストラング専門学校、ボーバトン魔法アカデミーを迎え、およそ100年ぶりに3大魔法学校対抗試合が開催されることになる。
代表選手は本来、17歳以上の生徒から炎のゴブレットによって選ばれるはずだった。しかし、ホグワーツ代表のセドリック・ディゴリー、ダームストラング代表のビクトール・クラム、ボーバトン代表のフラー・デラクールに続き、出場資格のない14歳のハリーの名前が炎のゴブレットから現れる。
なぜハリーが選ばれたのか。誰が彼を危険な試合に巻き込んだのか。ハリーはドラゴン、水中、迷路という過酷な課題に挑みながら、友情の亀裂、淡い恋、そしてヴォルデモート復活をめぐる陰謀へと近づいていく。
主な登場人物(キャスト)
ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ):ホグワーツ魔法魔術学校の4年生。出場資格がないにもかかわらず、炎のゴブレットによって3大魔法学校対抗試合の4人目の代表選手に選ばれる。危険な課題に挑む中で、自分を狙う大きな陰謀と向き合うことになる。
ロン・ウィーズリー(ルパート・グリント):ハリーの親友。ハリーが代表選手に選ばれたことで複雑な感情を抱き、友情が揺らぐ場面も。シリーズの中でも、思春期ならではの嫉妬や不器用さが強く描かれる。
ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン):ハリーとロンの親友。知識と判断力でハリーを支える一方、クリスマス・ダンスパーティーを通して、仲間たちが知らなかった新たな一面を見せる。
セドリック・ディゴリー(ロバート・パティンソン):ハッフルパフ寮の生徒で、ホグワーツの正式な代表選手。誠実で人気も高く、ハリーとは競技上のライバルでありながら、互いに助け合う関係を築いていく。
アラスター・“マッド・アイ”・ムーディ(ブレンダン・グリーソン):新たにホグワーツへやって来た闇の魔術に対する防衛術の教師。元闇祓いとして知られ、荒々しく型破りな授業で生徒たちに強烈な印象を与える。
アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン):ホグワーツの校長。3大魔法学校対抗試合の開催を見守る立場だが、ハリーの名前が炎のゴブレットから出たことで、学校内に潜む危険を警戒する。
ビクトール・クラム(スターニスラフ・イワネフスキー):ダームストラング専門学校の代表選手。世界的なクィディッチ選手としても知られ、寡黙ながら強い存在感を放つ。
フラー・デラクール(クレマンス・ポエジー):ボーバトン魔法アカデミーの代表選手。優雅な雰囲気をまといながら、過酷な試合に挑む実力者として登場する。
チョウ・チャン(ケイティー・リューング):レイブンクロー寮の生徒。ハリーが淡い恋心を寄せる相手で、クリスマス・ダンスパーティーをめぐる青春要素にも関わる。
ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ):ハリーの両親を殺した闇の帝王。長らく肉体を失った状態にあったが、本作では彼の復活をめぐる陰謀が物語の核心となっていく。
作品の魅力解説
映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の大きな魅力は、シリーズの“学園ファンタジー”としての楽しさを残しながら、物語の空気を一気にダークな方向へ転換している点にある。前作までの冒険は、まだホグワーツ内の謎解きや成長物語としての色合いが強かったが、本作では3大魔法学校対抗試合という華やかなイベントの裏側で、ヴォルデモート復活の気配が濃くなっていく。
3つの課題も見どころだ。ドラゴンとの対決、水中での救出、迷路での試練という構成は、単なる競技ではなく、ハリーが恐怖、孤独、判断力を試される通過儀礼として機能している。魔法アクションのスケールも大きく、シリーズの中でもアトラクション的な面白さが際立つ1作になっている。
また、本作はハリー、ロン、ハーマイオニーの関係に“思春期”の感情を本格的に持ち込んだ作品でもある。友情のすれ違い、嫉妬、初恋、ダンスパーティーへの戸惑いなど、魔法とは別の意味でコントロールできない感情が描かれ、登場人物たちが子どもから大人へ向かっていく段階が鮮明になる。
さらに、ロバート・パティンソン演じるセドリック・ディゴリー、ブレンダン・グリーソン演じるマッド・アイ・ムーディ、レイフ・ファインズ演じるヴォルデモートなど、新キャラクターの存在感も強い。とくにヴォルデモートが本格的に姿を現すことで、以降のシリーズが“ハリーと闇の帝王の戦い”へ突き進むことを決定づける。
華やかな競技、青春の揺らぎ、そして避けられない死と闇の到来。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は、シリーズ前半の集大成であり、後半のシリアスな戦いへ橋渡しする重要作といえる。
ストーリー解説(ネタバレ)
不吉な夢と、ヴォルデモート復活の気配
物語は、ハリー・ポッターが見る不吉な夢から始まる。夢の中でハリーは、リドル家の屋敷にいるヴォルデモート卿、ピーター・ペティグリュー、そして正体のわからない男の姿を目撃する。屋敷に迷い込んだマグルのフランク・ブライスは、そこで交わされる不穏な会話を聞いてしまい、ヴォルデモートによって命を奪われる。
現実に目を覚ましたハリーは、自分の額の傷が痛むことに気づく。ヴォルデモートが力を取り戻しつつあるのではないかという不安が、ここで早くも示される。
クィディッチ・ワールドカップと、束の間の祝祭
夏休み中のハリーは、ロン・ウィーズリー一家、ハーマイオニー・グレンジャーと合流し、クィディッチ・ワールドカップを観戦する。魔法界最大級のスポーツイベントということもあり、会場には世界中の魔法使いたちが集まり、にぎやかな祝祭の空気に包まれている。
ハリーたちは、アイルランド代表とブルガリア代表の試合を観戦する。ブルガリア代表には、世界的な人気を誇るシーカー、ビクトール・クラムが所属しており、彼の存在は後にホグワーツでの物語にも関わってくる。試合そのものは華やかで、ハリーたちにとっても魔法界の広がりを感じさせる出来事となる。
しかし、その明るい雰囲気は長く続かない。試合後、会場にデス・イーターたちが現れ、テントを破壊し、人々を恐怖に陥れる。さらに空には、ヴォルデモートの印である“闇の印”が浮かび上がる。魔法界ではヴォルデモートの名前を口にすることさえ恐れられているが、その象徴が公然と現れたことで、かつての恐怖が戻りつつあることが明確になる。
ホグワーツに訪れる新たな年と、マッド・アイ・ムーディ
新学期を迎え、ハリーたちはホグワーツ魔法魔術学校に戻る。そこで新たに“闇の魔術に対する防衛術”の教師として紹介されるのが、アラスター・“マッド・アイ”・ムーディである。ムーディは元闇祓いで、体のあちこちに戦いの傷を残した異様な風貌の持ち主。義眼の“魔法の目”は周囲を不気味に見渡し、生徒たちに強烈な印象を与える。
ムーディは授業で、3つの許されざる呪文について教える。磔の呪文“クルーシオ”、服従の呪文“インペリオ”、そして死の呪文“アバダ・ケダブラ”。ハリーの両親を殺した呪文が実演されることで、教室の空気は一気に重くなる。ムーディの授業は荒っぽく、危険を直視させるものだが、同時にハリーにとっては、闇の魔術の現実を知る機会にもなる。
3大魔法学校対抗試合の開催
ホグワーツでは、長らく中止されていた“3大魔法学校対抗試合”が復活することが発表される。これはホグワーツ、ダームストラング専門学校、ボーバトン魔法アカデミーの3校から代表選手を選び、危険な課題に挑ませる伝統的な競技である。かつては死者も出たため中止されていたが、今回は安全対策を講じたうえで再開されることになった。
ダームストラングの生徒たちは力強く、荒々しい雰囲気をまとって登場し、その中にはクィディッチ・ワールドカップで注目されたビクトール・クラムもいる。一方、ボーバトンの生徒たちは優雅で華やかな雰囲気を放ち、フラー・デラクールがひときわ目を引く存在として描かれる。
代表選手は、魔法のアイテム“炎のゴブレット”によって選ばれる。出場できるのは17歳以上の生徒だけであり、ハリーたち4年生は本来なら参加資格がない。ロンの兄であるフレッドとジョージは年齢制限を破ろうとするが、失敗してしまう。こうしたやりとりを通して、対抗試合が生徒たちにとって大きな憧れの場であることが示される。
炎のゴブレットが選んだ“4人目の代表”
代表選手の発表の日、炎のゴブレットからまずダームストラング代表としてビクトール・クラム、ボーバトン代表としてフラー・デラクール、ホグワーツ代表としてセドリック・ディゴリーの名前が出る。セドリックはハッフルパフ寮の人気者で、誠実で優秀な生徒として知られている。ホグワーツ中が彼の選出を祝福する。
しかしその後、炎のゴブレットはあり得ない4枚目の紙を吐き出す。そこに書かれていたのは、ハリー・ポッターの名前だった。出場資格のない14歳のハリーが、なぜか4人目の代表選手として選ばれてしまう。
ハリー自身は名前を入れていないと主張するが、周囲の目は冷たい。大会の規則上、一度選ばれた者は出場を拒否できない。ダンブルドア校長や魔法省関係者、各校の関係者も困惑するが、ハリーはそのまま競技に参加させられることになる。
ロンとの亀裂と、孤立するハリー
ハリーが代表選手に選ばれたことで、彼の周囲の人間関係にも大きな変化が起こる。特にロンは、ハリーが自分に黙って名前を入れたのではないかと疑い、ハリーに強い不満をぶつける。これまで固い友情で結ばれていたふたりの間に、初めて本格的な亀裂が入る。
ハリーは本当に何もしていないにもかかわらず、学校中から注目され、時には嫉妬や反感の対象にもなる。セドリックを応援する生徒たちの中には、ハリーを“目立ちたがり”のように見る者もいる。本人の意思とは関係なく危険な舞台に立たされ、さらに親友からも信じてもらえないことで、ハリーは精神的に追い込まれていく。
一方で、ハーマイオニーはハリーを信じ、彼のそばに残る。ロンとの衝突によって、3人の関係が一時的に崩れる一方、ハリーとハーマイオニーの信頼関係が強調される展開となる。
第一の課題、ドラゴンとの対決
3大魔法学校対抗試合の第一の課題では、代表選手たちがドラゴンと対峙することになる。ハリーは事前に課題の内容を知り、セドリックにもその情報を伝える。競争相手でありながら、相手を死なせないために情報を共有するところに、ハリーとセドリックの誠実さが表れている。
ハリーが相手をするのは、ハンガリー・ホーンテールという非常に危険なドラゴン。課題の目的は、ドラゴンが守る金の卵を奪うことだった。ハリーはムーディの助言もあり、自分の得意分野である飛行能力を生かす作戦を選ぶ。呪文で箒を呼び寄せ、空中戦に持ち込むことでドラゴンの攻撃をかわしていく。
ドラゴンは鎖を引きちぎるほどの勢いでハリーを追い、ホグワーツ城の周囲まで激しい追跡が続く。ハリーは危険な状況に陥りながらも、最後には金の卵を手に入れることに成功する。この活躍によって、ハリーが単なる巻き込まれた少年ではなく、代表選手として戦える力を持っていることが示される。
ロンとの和解と、金の卵の謎
第一の課題を乗り越えたことで、ロンはハリーが本当に危険な目に遭っていることを理解する。ハリーが自分から望んで大会に出たのではないと気づき、完全に元通りとまではいかないものの、ふたりは和解する。
第一の課題で手に入れた金の卵は、第二の課題のヒントになっている。しかし卵をそのまま開けると、耳障りな叫び声のような音が響くだけで、ハリーには意味がわからない。次の課題に向けて準備しなければならない一方で、学校ではクリスマス・ダンスパーティー、通称“ユール・ボール”の話題が広がっていく。
ユール・ボールと、思春期のすれ違い
3大魔法学校対抗試合の一環として、ホグワーツではユール・ボールが開催される。代表選手はパートナーを伴って参加する必要があり、ハリーはチョウ・チャンを誘おうとする。しかしチョウはすでにセドリックのパートナーになることが決まっており、ハリーの初々しい恋はうまくいかない。
ロンもまた、ハーマイオニーを当然のように身近な友人として見ていたが、彼女がビクトール・クラムのパートナーとして美しく着飾って現れたことで動揺する。ハーマイオニーは、ロンが自分を一人の女性として見ていなかったことに傷つき、ふたりの間には気まずい空気が流れる。
ユール・ボールは華やかな行事であると同時に、登場人物たちの思春期の不器用さを浮き彫りにする場面でもある。
セドリックの助言と、第二の課題のヒント
第一の課題でハリーから情報をもらったセドリックは、その礼として金の卵の謎を解くための助言を与える。セドリックはハリーに、卵を浴場で開けてみるように伝える。ハリーは監督生用の浴場で卵を水中に沈め、そこで初めて叫び声の正体に気づく。
金の卵の音は、水中で聞くことで意味を持つ。第二の課題は、湖の中にいる者たちから“大切なもの”を取り戻す試練であることがわかる。ハリーは水中で長時間呼吸する方法を探す必要に迫られるが、なかなか有効な手段を見つけられない。
ネビルの知識と、エラ昆布
第二の課題当日が近づく中、ハリーは水中で生き延びる方法を見つけられずに焦る。最終的に、ハリーはエラ昆布を使うことになる。エラ昆布を食べると、体に魚のような変化が起こり、水中で呼吸し、泳ぐことができるようになる。
映画では、ネビル・ロングボトムが薬草学の知識を生かしてハリーにエラ昆布を入手させる。ネビルは普段は頼りなさげに見えるが、薬草学に関しては確かな知識を持っており、この場面でハリーを大きく助ける。
第二の課題、湖の底に奪われた“大切な人”
第二の課題では、代表選手たちはホグワーツの湖に潜り、制限時間内に奪われた“大切なもの”を取り戻さなければならない。ハリーが湖の底で見つけたのは、ロン、ハーマイオニー、チョウ、そしてフラーの妹ガブリエルだった。彼らはそれぞれ、代表選手にとって大切な人物として水中に拘束されていた。
ハリーはロンを救えば自分の課題は達成できるが、ほかの人々をそのまま残していくことをためらう。セドリックはチョウを、クラムはハーマイオニーを救い出すが、フラーは途中で脱落してしまう。そのため、フラーの妹ガブリエルが湖底に残される。
ハリーはロンだけでなく、ガブリエルも助けることを選ぶ。課題のルールだけを考えれば、彼が救うべき相手はロンひとりだったが、ハリーは目の前の命を見捨てられない。この判断は、彼の人間性を強く示す場面である。
第二の課題の結果と、ハリーの評価
ハリーは制限時間を超えてしまうが、ロンとガブリエルを救って湖から戻る。競技としては完璧な勝利ではないが、彼の勇気と道徳心は高く評価される。フラーは妹を救ってくれたハリーに感謝し、ハリーの行動は周囲にも強い印象を残す。
ここまでの物語で、ハリーは2つの課題を乗り越えたが、彼がなぜ大会に巻き込まれたのかという根本的な謎はまだ解けていない。
クラウチ親子をめぐる不穏な影
対抗試合の裏側では、魔法省のバーテミウス・クラウチ・シニアの様子にも異変が見え始める。彼は大会運営に関わる重要人物だが、次第に不可解な行動を見せ、やがてホグワーツの敷地内で死体となって見つかる。
また、ハリーが“憂いの篩(ふるい)”を通して過去の裁判の記憶を見る場面では、デス・イーターの裁判に関する情報が示される。そこでは、バーテミウス・クラウチ・ジュニアという人物が、かつてヴォルデモートの支持者として裁かれたことが明らかになる。彼はすでに死んだと考えられているが、この過去の記憶は、現在の事件と何らかのつながりがあることを予感させる。
ハリーはまだ全体像をつかめていない。しかし、クィディッチ・ワールドカップでの闇の印、炎のゴブレットへの不正な名前の投入、クラウチ・シニアの死、クラウチ・ジュニアの過去、そしてヴォルデモート復活の気配が、少しずつ一本の線で結ばれ始めている。
第三の課題、迷路へ向かう代表選手たち
3大魔法学校対抗試合はいよいよ最終課題を迎える。第三の課題の舞台は、ホグワーツの敷地に作られた巨大な迷路。代表選手たちは迷路の中心に置かれた優勝杯を目指し、最も早くそれに触れた者が優勝者となる。
この時点で、ハリーとセドリック・ディゴリーは同じホグワーツの代表として互いを意識しながらもこれまで助け合っており、単なる敵対関係にはなっていない。ふたりの間には、競争相手でありながら相手を尊重する関係が生まれている。
迷路は、中に入った者の精神を揺さぶり、恐怖や焦りを増幅させるような危険な空間として描かれる。観客の声が遠のき、外の世界から切り離されたような状況の中で、代表選手たちはそれぞれ孤独に試練へ挑むことになる。
迷路の中で消えていく選手たち
迷路に入った代表選手たちは、次々と異常な事態に巻き込まれていく。ボーバトン代表のフラー・デラクールは途中で姿を消し、ダームストラング代表のビクトール・クラムも通常とは違う不穏な状態に陥る。クラムは何者かに操られているような様子を見せ、競技そのものが公正な試合ではなく、誰かの計画によって歪められていることが示唆される。
ハリーは迷路の中でセドリックと再び出会う。ふたりはそれぞれ危険をくぐり抜けながら、中心に置かれた優勝杯へ近づいていく。勝者になれるのは本来ひとりだけだが、ふたりは互いを助け合うような形で最終地点までたどり着く。
セドリックは、自分だけが優勝杯を取ることにためらいを見せる。ハリーもまた、セドリックを押しのけて勝利を独占しようとはしない。ふたりはホグワーツの代表として、同時に優勝杯に触れることを選ぶ。
優勝杯はポートキーだった
ハリーとセドリックが同時に優勝杯に触れた瞬間、ふたりは迷路の中心から別の場所へ飛ばされる。優勝杯は、ただのトロフィーではなく、触れた者を移動させる“ポートキー”に変えられていた。
ふたりがたどり着いたのは、薄暗い墓地だった。そこには、ヴォルデモート=トム・リドルが眠る墓がある。ハリーはすぐに異常事態に気づき、セドリックに逃げるよう促す。しかし、すでに罠は完成していた。
そこへ、弱ったヴォルデモートを抱えたピーター・ペティグリューが現れる。ハリーは身動きを封じられ、“邪魔者”と見なされたセドリックは状況を理解する間もなく、ヴォルデモートの命令によってペティグリューに殺される。
ヴォルデモート復活の儀式
ピーター・ペティグリューは、ヴォルデモートを完全な肉体へ戻すための儀式を始める。その儀式には、骨、しもべの肉、敵の血が必要だった。墓地にあるトム・リドルの墓から骨を取り、ピーター自身が自らの手を差し出し、さらにハリーの血を奪う。
ハリーの血が使われるのは、ヴォルデモートにとって重要な意味を持つ。ハリーは幼いころ、母リリーの愛による保護の魔法によってヴォルデモートの死の呪文から生き残った。彼の血を取り込むことで、ヴォルデモートはハリーに宿る保護の力を突破しようとする。
儀式の末、ヴォルデモートはついに新たな肉体を得て復活する。(レイフ・ファインズ演じる)ヴォルデモートは、白く異様な顔、蛇のような外見、冷たくしなやかな動きで現れ、これまで名前だけで恐れられてきた存在が、初めて本格的に画面の中に立ち上がる。
デス・イーターの再集結
復活したヴォルデモートは、左腕に刻まれた闇の印を使い、かつての配下であるデス・イーターたちを墓地へ呼び寄せる。彼らは恐れながらも主人のもとへ集まり、再び忠誠を示す。ヴォルデモートは、自分が失脚していた間に逃げ隠れしていた者たちを非難し、恐怖によって彼らを支配する。
ここでヴォルデモートは、ハリーをただ殺すのではなく、決闘の形で打ち負かそうとする。彼にとってハリーは、自分を一度破滅させた存在であり、その名声を消し去るためにも、自分の力を誇示する必要があった。
ヴォルデモートはハリーを解放し、杖を取らせ、屈辱的な決闘を強いる。ここから、ハリーとヴォルデモートの直接対決が始まる。
ハリーとヴォルデモートの決闘
墓地での決闘は、ハリーにとって圧倒的に不利な戦いである。ヴォルデモートは完全に復活し、周囲にはデス・イーターたちがいる。ハリーはまだ14歳で、経験も力も大きく劣っている。それでも、彼は逃げるだけではなく、ヴォルデモートに向かって杖を構える。
ふたりが同時に呪文を放つと、ハリーの杖とヴォルデモートの杖が不思議な形でつながる。これは、2本の杖の芯が同じ不死鳥フォークスの尾羽から作られているために起こる現象である。杖同士が反発し合い、まばゆい光が両者を結ぶ。
この現象によって、ヴォルデモートの杖から、過去に彼が殺した者たちの幻影が現れる。そこにはセドリック・ディゴリー、そしてハリーの両親であるジェームズ・ポッターとリリー・ポッターの姿もある。彼らの幻影はハリーを励まし、逃げるための一瞬の時間を与える。
ハリーはその隙をつき、セドリックの遺体を連れて優勝杯へ戻る。彼はセドリックを置き去りにせず、彼の亡骸を抱えたままポートキーに触れる。
ホグワーツへの帰還と、歓声から悲鳴への反転
ハリーとセドリックの遺体は、優勝杯のポートキーによってホグワーツへ戻る。観客たちは最初、2人が戻ってきたことを勝利の瞬間として歓声で迎える。しかし、すぐにセドリックが死んでいることが明らかになり、祝祭の空気は一瞬で凍りつく。
セドリックの父エイモス・ディゴリーは、息子の亡骸を見て取り乱す。彼の悲痛な叫びは、この映画の中でも特に重い場面であり、セドリックの死が単なる物語上の出来事ではなく、ひとりの若者の人生と家族の喪失として描かれていることを強く印象づける。
ハリーは泣きながら、ヴォルデモートが戻ってきたと訴える。しかし、その場の多くの人々はまだ事態を理解できていない。ハリーが経験した墓地での出来事は、ホグワーツの安全な空間にいた人々にとって、あまりにも急激で、受け入れがたい現実だった。
ムーディに連れ去られるハリー
混乱の中、アラスター・“マッド・アイ”・ムーディがハリーを連れ出す。ムーディはハリーを落ち着かせるように見えるが、実際には彼の行動には不審な点がある。彼はハリーを自分の部屋へ連れていき、墓地で何が起こったのかを詳しく聞き出そうとする。
やがて、ムーディが本来知るはずのないことを口にしたことで、ハリーは違和感を覚える。ムーディは、自分こそがハリーを対抗試合に導いてきた存在であるかのような発言をする。第一の課題でハリーが箒を使うよう導いたこと、第二の課題で鰓昆布がハリーに渡るよう仕向けたこと、第三の課題でハリーを優勝杯へ向かわせたこと。すべては、ハリーを墓地のヴォルデモートのもとへ届けるためだった。
ムーディはハリーを殺そうとするが、そこへダンブルドア、スネイプ、マクゴナガルが駆けつけ、即座に状況を見抜いたダンブルドアがムーディを制圧する。
マッド・アイ・ムーディの正体
ムーディの正体は、本物のアラスター・ムーディではなかった。彼はポリジュース薬によってムーディに変身していたバーテミウス・クラウチ・ジュニアだった。クラウチ・ジュニアは、かつてデス・イーターとして裁かれ、死んだと思われていた人物である。
本物のムーディは、クラウチ・ジュニアによって監禁されていた。クラウチ・ジュニアは本物のムーディの髪を使い、ポリジュース薬を飲み続けることで、1年間ホグワーツの教師になりすましていた。彼はハリーを助けているように見せかけながら、実際にはハリーを3大魔法学校対抗試合の最後まで生き残らせ、優勝杯に触れさせることを目的としていた。
つまり、ハリーが大会に巻き込まれた理由は、最初からヴォルデモート復活の儀式のためだった。炎のゴブレットにハリーの名前を入れたのも、優勝杯をポートキーに変えたのも、クラウチ・ジュニアである。
ダンブルドアの警告と、魔法界の分断
ヴォルデモートが復活したことを、ハリーは確かに目撃した。セドリックはその犠牲となり、ハリー自身も墓地で命を落としかけた。しかし、魔法界全体がすぐにその事実を受け入れるわけではない。ヴォルデモートの復活は、あまりにも恐ろしく、認めるには重すぎる現実だった。
ダンブルドアは、ハリーの言葉を信じる。彼は生徒たちの前で、セドリックがヴォルデモートによって殺されたこと、そして闇の帝王が戻ってきたことを隠さずに語る。これは、恐怖から目を背けようとする姿勢に対し、真実を直視するべきだというダンブルドアの信念を示している。
本作のラストでは、ヴォルデモート復活という事実をめぐって、魔法界がこれから大きく揺れていくことが予感される。ハリーたちの戦いは、もはや学校内の事件では終わらない。魔法界全体を巻き込む暗い時代が、ここから本格的に始まっていく。
別れの季節と、戻らない日常
学年末を迎え、ダームストラングとボーバトンの生徒たちはホグワーツを去っていく。映画の終盤には、ハリー、ロン、ハーマイオニーが別れの場面を見つめる静かな時間が描かれる。表面的には学校生活が終わり、いつものように夏休みへ向かうようにも見える。
しかし、彼らの日常はもう以前と同じではない。ハリーはヴォルデモートの復活を目撃し、セドリックの死を経験した。ロンとハーマイオニーもまた、ハリーのそばでその重さを受け止めることになる。3人の関係は、子どもの友情から、危機を共に背負う仲間としての関係へ変わり始めている。
