映画『プリズン・サバイブ』(2008)を紹介&解説。
映画『プリズン・サバイブ』概要
映画『プリズン・サバイブ』は、リック・ローマン・ウォー監督が、穏やかな生活を送っていた家庭人が刑務所へ収監され、暴力と腐敗に支配された閉鎖社会で生き残ろうとする姿を描く監獄クライム・ドラマ。正当防衛と過剰防衛の境界、刑務所内の権力構造、極限状態で失われていく人間性を、容赦のないアクションと家族の物語を交えて映し出す。主演はスティーヴン・ドーフ、共演にヴァル・キルマー、ハロルド・ペリノー、マリソル・ニコルス、サム・シェパードら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『プリズン・サバイブ』 |
|---|---|
| 原題 | Felon |
| 製作年 | 2008年 |
| 本国公開日 | 2008年7月18日(アメリカ・限定公開) |
| 日本公開日 | 劇場未公開(DVD:2009年1月28日) |
| ジャンル | クライム/ドラマ/アクション/スリラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 104分 |
| 監督・脚本 | リック・ローマン・ウォー |
|---|---|
| 製作 | タッカー・トゥーリー/ダン・ケストン |
| 共同製作 | クリストファー・ウィルヘム/ライアン・ブリーン |
| 製作総指揮 | スティーヴン・ドーフ/ヴィンセント・ニューマン/デヴィッド・ピーターズ |
| 撮影 | ダナ・ゴンザレス |
| 編集 | ジョナサン・チブナル |
| 作曲 | ゲルハルト・ダウム |
| 出演 | スティーヴン・ドーフ/ヴァル・キルマー/ハロルド・ペリノー/マリソル・ニコルス/アン・アーチャー/サム・シェパード |
| 製作 | レラティビティ・メディア/トゥーリー・プロダクションズ/パントリー・フィルムズ/ステージ6フィルムズ |
| 配給 | ステージ6フィルムズ/ソニー・ピクチャーズ(日本) |
あらすじ
建設業を営むウェイド・ポーターは、恋人ローラと幼い息子マイケルに囲まれ、ささやかながらも幸せな生活を送っていた。事業を拡大するための融資も決まり、ローラとの結婚を目前に控えた彼の人生は、順調に進んでいるように見えた。
ところがある晩、自宅に強盗が侵入する。家族を守ろうとしたウェイドは、逃走する犯人を追いかけ、野球のバットで殴って死亡させてしまう。正当防衛は認められず、過失致死罪で3年間の服役を言い渡されたウェイドは、重警備刑務所へ送られる。
さらに囚人移送中の殺傷事件に巻き込まれ、凶器を隠し持っていたとの疑いをかけられたウェイドは、特別警備棟・SHUへ収容される。そこでは凶悪な囚人たちだけでなく、ジャクソン副看守長を中心とする看守たちが、囚人同士を戦わせる残酷な行為を繰り返していた。
暴力が支配する環境で追い詰められていくウェイド。そんな彼は、同房となった終身刑囚ジョン・スミスから、刑務所で生き抜くための知恵を教えられる。家族のもとへ帰るという希望を失わないため、ウェイドは自らの人間性を守りながら過酷な日々に立ち向かっていく。
主な登場人物(キャスト)
ウェイド・ポーター(スティーヴン・ドーフ):建設業を営み、恋人ローラと息子マイケルを大切にする家庭人。自宅に侵入した強盗を誤って死亡させ、過失致死罪で刑務所へ送られる。囚人移送中の事件に巻き込まれたことで、暴力と腐敗に支配された特別警備棟へ収容される。
ジョン・スミス(ヴァル・キルマー):仮釈放なしの終身刑に服している悪名高い囚人。家族を奪った者たちに復讐した過去を持ち、刑務所内でも恐れられている。ウェイドの同房者となり、冷徹に見える態度の裏にある知性と経験を生かして、彼に生き残る方法を教える。
ビル・ジャクソン副看守長(ハロルド・ペリノー):特別警備棟・SHUを支配する看守。囚人を人間として扱わず、運動時間に囚人同士を戦わせるなど、暴力的で腐敗した管理体制を築いている。命令に従わないウェイドを執拗に追い詰めていく。
ローラ・ポーター(マリソル・ニコルス):ウェイドの恋人であり、息子マイケルの母親。ウェイドとの結婚を控えていたが、突然彼が収監されたことで生活が一変する。
マギー(アン・アーチャー):ローラの母親。娘と孫の将来を心配し、ウェイドとの関係に厳しい視線を向ける。
ゴードン・カムローズ(サム・シェパード):ジョンの過去を知る元刑務所関係者。長年にわたってジョンを見守ってきた人物であり、刑務所内の不正を明らかにするうえで重要な役割を果たす。
作品の魅力解説
普通の家庭人が“重罪犯”へ変えられていく恐怖
本作の主人公ウェイドは、物語の冒頭では犯罪社会と無縁の平凡な家庭人として描かれている。しかし、家族を守ろうとした一瞬の行動によって有罪判決を受け、それまで築いてきた仕事や家庭、社会的信用を失ってしまう。
原題の「Felon」は、重罪を犯した者や重罪犯を意味する言葉だ。映画は、ウェイドが法的に“重罪犯”と分類されるだけでなく、刑務所の環境によって暴力的な人間へ作り変えられていく過程を追う。善良な人間であり続けることと、生き残るために暴力を受け入れることの間で揺れる姿が、物語に強い緊張感を与えている。
スティーヴン・ドーフとヴァル・キルマーが築く異色の関係
刑務所での経験を持たないウェイドと、長年服役している終身刑囚ジョン。対照的なふたりが同じ房で生活し、次第に信頼関係を築いていく過程が、本作の大きな見どころとなっている。
スティーヴン・ドーフは、恐怖や怒りによって変貌していくウェイドを肉体的な変化も交えて表現。一方のヴァル・キルマーは、感情を抑えた静かな演技によって、恐ろしい犯罪歴と深い喪失感を併せ持つジョンに複雑な人間性を与えている。単なる師弟関係ではなく、それぞれが失った家族への思いを通じて結ばれていく点も印象的だ。
実在の刑務所を使用した圧迫感のある映像
リック・ローマン・ウォー監督は、刑務所文化や仮釈放制度について長期間にわたる調査を行い、ニューメキシコ州の実在する刑務所や閉鎖された施設で本作を撮影した。刑務所の狭い房、無機質な通路、鉄格子に囲まれた運動場などが、逃げ場のない閉塞感を生み出している。
暴動場面には元受刑者や元ギャングの関係者も参加しており、整然と作り込まれたアクションというよりも、制御不能な暴力が突然発生する恐怖が重視されている。手持ちカメラを生かした接近撮影も、ウェイドと同じ場所に閉じ込められているような臨場感をもたらす。
刑務所アクションと家族ドラマの両立
囚人同士の抗争や看守による暴力が描かれる一方、本作では刑務所の外に残された家族の苦境にも多くの時間が割かれている。ウェイドの収監によって収入を失ったローラは、生活費や息子の精神状態、周囲からの圧力に苦しめられる。
ウェイドだけでなく、ローラとマイケルも別の形で“刑罰”を受けているような構造によって、収監が本人以外の人生にも及ぼす影響が浮かび上がる。暴力的な監獄映画でありながら、家族を守るとは何か、失われた信頼を取り戻せるのかという人間ドラマが物語の中心に置かれている。
個人の悪ではなく腐敗した制度を描く
ウェイドを脅かすのは凶悪な囚人だけではない。囚人を管理する立場の看守たちが暴力を扇動し、報告書や証言を操作することで、ウェイドの刑期と人生を自由に左右していく。
囚人と看守、犯罪者と法の執行者という単純な善悪の構図を崩し、権力を監視する仕組みが失われたときに何が起こるのかを突きつける点が、本作の特徴だ。極限状態のサバイバルを描きながら、刑務所という制度そのものへの問題提起を含んだ作品となっている。
