映画『泣く女/ピンク・ハードボイルド アブノーマル殺人事件』(1971)を紹介&解説。
映画『泣く女/ピンク・ハードボイルド アブノーマル殺人事件』概要
映画『泣く女/ピンク・ハードボイルド アブノーマル殺人事件』は、後に『ロッキー』や『ベスト・キッド』を手がけるジョン・G・アヴィルドセン監督が、マイケル・ブレットの小説『Lie a Little, Die a Little』を映画化したクライム・ミステリー・コメディ。殺人事件の容疑をかけられた大富豪から依頼を受けた私立探偵が、性的なスキャンダルと脅迫が絡む事件の真相を追っていく。
ハードボイルド探偵ものを下敷きにしながら、エロティックな描写やブラックユーモア、悪趣味なギャグを大量に盛り込んだ異色作。主演はアレン・ガーフィールド、共演にマドレーヌ・デ・ラ・ロウ、デヴィン・ゴールデンバーグ、デヴィッド・カーク、ポール・ソルヴィノら。後にトロマ・エンターテインメントからも再公開された。
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作品情報
| 日本版タイトル | 『泣く女/ピンク・ハードボイルド アブノーマル殺人事件』 |
|---|---|
| 原題 | Cry Uncle! |
| 製作年 | 1971年 |
| 本国公開日 | 1971年8月17日 |
| 日本公開日 | 1979年2月17日 |
| ジャンル | コメディ/クライム/ミステリー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | マイケル・ブレット『Lie a Little, Die a Little』(小説) |
| 上映時間 | 87分 |
| 監督・撮影・編集 | ジョン・G・アヴィルドセン |
|---|---|
| 脚本 | デヴィッド・オデル |
| 製作 | デヴィッド・ジェイ・ディシック |
| 製作総指揮 | イアン・メリック |
| 作曲 | ハーパー・マッケイ |
| 出演 | アレン・ガーフィールド/マドレーヌ・デ・ラ・ロウ/デヴィン・ゴールデンバーグ/デヴィッド・カーク/ショーン・ウォルシュ/ポール・ソルヴィノ/パメラ・グルーエン |
| 製作 | Cry Uncle Company |
| 配給 | Cambist Films(米国)/トロマ・エンターテインメント(後年)/グローバル(日本) |
あらすじ
ニューヨークで私立探偵をしているジェイク・マスターズのもとに、大富豪ジェイソン・ドミニクから仕事が舞い込む。ジェイソンは女性ルシル・レイノルズの殺害事件で警察から疑われていたが、自分は犯人ではないと主張。ジェイクに真犯人を捜すよう依頼する。
ジェイソンはルシルらから、自身の性的なスキャンダルを記録した映像を材料に脅迫されていた。ジェイクはジェイソンと関係を持つコーラ・メリルや甥のキースとともに関係者を追い始めるが、その周囲では新たな事件が相次いでいく。
主な登場人物(キャスト)
ジェイク・マスターズ(アレン・ガーフィールド):本作の主人公である私立探偵。大富豪ジェイソンから殺人事件の真犯人を突き止めるよう依頼される。女性に目がなく、ハードボイルドな名探偵像とはかけ離れた冴えない男。
コーラ・メリル(マドレーヌ・デ・ラ・ロウ):ジェイソンと関係を持つ女性。ジェイクの捜査に同行し、事件の関係者を追っていく。
キース(デヴィン・ゴールデンバーグ):ジェイクの若い甥。探偵の仕事を手伝っており、ジェイクやコーラとともに事件へ関わっていく。
ジェイソン・ドミニク(デヴィッド・カーク):殺人事件の容疑をかけられている大富豪。自身の性的なスキャンダルを材料に脅迫されており、真犯人を見つけるためジェイクを雇う。
レネー(パメラ・グルーエン):ジェイクの恋人。物語の序盤でジェイクとともに過ごしているところへ、新たな事件の依頼が舞い込む。
ジーン・スプリッグ(ショーン・ウォルシュ):ジェイソンと事件をめぐる人間関係に関わっている男。ジェイクたちの捜査対象となる。
作品の魅力解説・レビュー
ハードボイルドの皮をかぶった、とことん下世話な探偵映画
日本で付けられた「ピンク・ハードボイルド アブノーマル殺人事件」というタイトルが、笑ってしまうほど作品そのものを言い表している。
一応は私立探偵が殺人事件を追っていくハードボイルド/ミステリーの体裁を取っているものの、主人公ジェイクからして格好いい名探偵とは程遠い。捜査の先々で性的な騒動や奇人変人たちに遭遇し、事件そのものまでどんどん異様な方向へ転がっていく。
探偵映画のクリシェを真面目に再現する気など最初からほとんどなく、ハードボイルドというジャンルを利用して悪趣味なギャグとエロティックな描写を好き放題に詰め込んだような映画だ。
安っぽさまで魅力になる、サイケで奇抜な映像
映像には1970年代らしいサイケデリックな空気が漂い、低予算らしいチープさもかなり目立つ。しかし本作の場合、その安っぽさまで含めて奇妙な味わいになっている。
人間の身体が狭い空間へ密集し、幾重にも重なっている異様なショットなど、「なぜこんな画を撮ろうと思ったのか」と言いたくなる場面が次々と登場。美しいとか洗練されているという方向ではまったくないのだが、そのヘンテコさゆえに妙に目を奪われる。
監督のジョン・G・アヴィルドセンは撮影と編集まで自ら担当しており、後年の『ロッキー』などとはまるで異なる、荒削りで実験的な映画作りを見ることができるのも面白いところだ。
性癖も悪ノリも全部放り込んだような自由さ
本作から伝わってくるのは、とにかく「変なことを映画でやってみよう」という作り手たちの勢いだ。
エロティックな描写、ブラックユーモア、探偵もの、殺人事件、サイケデリックな演出と、まとまりよりも思いつきを優先したような要素が次々に飛び出してくる。その結果としてかなり粗雑で悪趣味な作品になっている一方、映画を作ること自体を楽しんでいるようなエネルギーも感じられる。
もちろん、現在の感覚では笑いとして受け取りにくい性的描写や不快感を伴う場面もあり、万人に勧められる映画ではない。それでも、奇抜でヘンテコなものを徹底的に詰め込んだ70年代のカルト映画として、その無軌道さを楽しめる1作だ。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
