映画『生き残るヤツ』(1971)を紹介&解説。
映画『生き残るヤツ』概要
映画『生き残るヤツ』は、チェコスロバキア出身のアイヴァン・パッサー監督が、1970年代初頭のニューヨークを舞台に、ヘロイン依存から抜け出せない男の生活を描くクライムドラマ。元美容師で薬物依存のJは、麻薬を手に入れるため窃盗や売人の使い走りを続ける一方、偶然出会った女性パームとの関係を通じて現在の生活から抜け出そうとする。しかし警察と麻薬組織の双方に利用され、さらに追い詰められていく。主演はジョージ・シーガル。共演にカレン・ブラック、ポーラ・プレンティス、ヘクター・エリゾンドら。若き日のロバート・デ・ニーロも私服刑事ダニー役で出演している。
作品情報
| 日本版タイトル | 『生き残るヤツ』 |
|---|---|
| 原題 | Born to Win |
| 製作年 | 1971年 |
| 本国公開日 | 1971年10月9日(ニューヨーク映画祭ワールドプレミア) |
| 日本公開日 | 1973年2月10日 |
| ジャンル | ドラマ/クライム |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | |
| 上映時間 | 90分 |
| 監督 | アイヴァン・パッサー |
|---|---|
| 脚本 | デヴィッド・スコット・ミルトン/アイヴァン・パッサー |
| 製作 | フィリップ・ラングナー |
| 製作総指揮 | ジェリー・トコフスキー |
| 撮影 | ジャック・プリーストリー/リチャード・クラティナ |
| 編集 | ラルフ・ローゼンブラム |
| 作曲 | ウィリアム・S・フィッシャー |
| 出演 | ジョージ・シーガル/カレン・ブラック/ポーラ・プレンティス/ジェイ・フレッチャー/ヘクター・エリゾンド/ロバート・デ・ニーロ/エド・マドセン/マーシャ・ジーン・カーツほか |
| 製作 | シアター・ギルド・フィルムズ |
| 配給 | ユナイテッド・アーティスツ(米国)/ユナイト(日本) |
あらすじ
ニューヨーク。元美容師のJはヘロイン依存から抜け出せず、麻薬を買う金を得るために窃盗や売人の使い走りを続けていた。ある夜、車を盗もうとしていたJは、その車の持ち主パームと偶然出会う。奇妙な形で意気投合したふたりは関係を深め、Jも現在の生活から抜け出す可能性を考え始める。しかし麻薬売人ギークとの関係に加え、Jを利用して組織を摘発しようとする警察からも圧力をかけられ、彼は次第に逃げ場を失っていく。
主な登場人物(キャスト)
J/ジェローム(ジョージ・シーガル):かつて美容師として働いていた男。現在はヘロイン依存となり、麻薬を手に入れるため窃盗や売人の仕事を繰り返している。
パーム(カレン・ブラック):Jが車を盗もうとしたことをきっかけに知り合う女性。危険な生活を送るJに興味を抱き、次第に親密な関係となる。
ヴェロニカ(ポーラ・プレンティス):Jと別居している妻。麻薬売人ギークのもとで暮らし、彼女自身も薬物に依存している。
ビリー・ダイナマイト(ジェイ・フレッチャー):Jの友人で、同じく薬物に依存している。Jとともに窃盗や麻薬をめぐる危険な行動を繰り返す。
ヴィヴィアン/ギーク(ヘクター・エリゾンド):Jを使い走りとして利用する麻薬売人。Jが抜け出せない犯罪と薬物の世界を象徴する存在。
ダニー(ロバート・デ・ニーロ):Jを追う私服刑事。Jを逮捕するだけではなく、ギークを摘発するための情報提供者として利用しようとする。
作品の魅力解説
1970年代ニューヨークの荒れた空気を捉えたロケーション撮影
本作の大きな特徴は、ニューヨークの街そのものを物語へ取り込んでいる点。路上、安食堂、アパート、麻薬取引の現場などを移動しながら、薬物依存者や売人、警察が入り乱れる都市の裏側を描く。チェコスロバキアからアメリカへ渡ったアイヴァン・パッサーにとって初のアメリカ長編映画であり、外からやってきた映画作家の視線で当時のニューヨークを捉えた作品でもある。
深刻な依存症と軽妙なジョージ・シーガルの奇妙な組み合わせ
主人公Jは薬物に人生を支配され、犯罪と裏切りを繰り返す人物だが、ジョージ・シーガルは彼を終始陰鬱な男としては演じない。冗談を飛ばし、女性を口説き、危険な状況でも軽口を叩く。その軽さと、本人が置かれている絶望的な状況との落差が本作独特のトーンを作っている。
一方、このコメディ的な軽さと薬物依存を扱うシリアスな物語が必ずしも完全には噛み合っておらず、展開にも散漫さがある。暗い人間ドラマ、犯罪映画、ブラックコメディの間を揺れ動く作品であり、その不安定さは魅力にも弱点にもなっている。
デ・ニーロ作品としてはあくまで脇役
ロバート・デ・ニーロが演じるダニーは、Jを追い詰めて情報提供を迫る私服刑事。後年の主演作のように作品を牽引する役ではなく、出演時間も限られた脇役となっている。
そのため“デ・ニーロ映画”として期待すると物足りなさはあるが、『ミーン・ストリート』で注目を集める以前のキャリアを追ううえでは興味深い一本。作品自体も完成度の高い麻薬映画というより、1970年代初頭のニューヨークと、その底辺でもがく人々を捉えた時代の断片として見るほうが特徴をつかみやすい。
