映画『アトランティス』(1991)を紹介&解説。
映画『アトランティス』概要
映画『アトランティス』は、かつてダイバーを志していたリュック・ベッソン監督(『グラン・ブルー』『レオン』)が、世界各地の海に生きる生物を撮影した海洋ドキュメンタリー。セリフや通常のナレーションに頼らず、海洋生物の姿とエリック・セラの音楽を組み合わせた“海のオペラ”として構成されている。構想には約10年、撮影には38カ月が費やされた。
作品情報
| 日本版タイトル | 『アトランティス』 |
|---|---|
| 原題 | Atlantis |
| 製作年 | 1991年 |
| 本国公開日 | 1991年8月21日 |
| 日本公開日 | 1992年10月3日 |
| ジャンル | ドキュメンタリー |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 80分 |
| 監督・脚本・編集 | リュック・ベッソン |
|---|---|
| 製作 | パトリス・ルドゥー/リュック・ベッソン/マリオ・チェッキ・ゴーリ/ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ |
| 製作総指揮 | クロード・ベッソン |
| 撮影 | リュック・ベッソン/クリスチャン・ペトロン |
| 作曲 | エリック・セラ |
| 製作 | ゴーモン/レ・フィルム・デュ・ルー/チェッキ・ゴーリ・グループ・タイガー・チネマトグラフィカ |
| 配給 | ゴーモン(フランス)/KUZUIエンタープライズ(日本) |
内容
バハマ、ガラパゴス、セイシェル、オーストラリア、ニューカレドニア、タヒチ、紅海など、世界各地の海で撮影された海洋生物の姿を映し出す。巨大なマンタが水中を飛ぶように進み、アザラシたちが踊り、魚が群れを成し、サメが獲物を求めて泳いでいく。
一般的な物語や主人公は存在せず、光、動き、遊び、優美さ、夜、愛情、闘争などを思わせる映像が、エリック・セラの音楽とともに連なっていく。海中に広がる生と死の営みを、ひとつの壮大な舞台作品のように見せる映像ドキュメンタリーである。
作品の魅力解説
言葉を使わずに構成された“海のオペラ”
『アトランティス』は、生態を詳しく説明する一般的な自然ドキュメンタリーとは異なり、セリフや長いナレーションをほとんど使用しない。生物の動き、海中に差し込む光、波や泡の流れを音楽と結び付け、海そのものを壮大な舞台として表現している。
そのため、特定の情報を学ぶ作品というよりも、映像と音によって海中世界を体感する作品に近い。生物の動きがダンスや演技のように編集され、人間のいない世界にも喜びや緊張、愛情、ユーモアが存在するかのように見えてくる。
世界各地の海で捉えた多様な生命
撮影地はガラパゴス、セイシェル、ポリネシア、紅海、ニューカレドニア、フロリダ、タヒチなど広範囲に及ぶ。巨大なマンタの滑空、アザラシの軽やかな動き、魚たちの求愛、サメの捕食といった異なる生態が、ひとつの海中世界の物語としてつなぎ合わされている。
撮影を担当したリュック・ベッソンとクリスチャン・ペトロンは、野生生物を単なる観察対象としてではなく、表情や個性を持った存在として映し出す。クローズアップと広大な水中風景を行き来する映像からは、美しさだけではない海の奇妙さや厳しさも感じられる。
映像の感情を導くエリック・セラの音楽
エリック・セラの音楽は、言葉のない本作における語り手の役割を担っている。穏やかな旋律、神秘的な電子音、リズミカルな楽曲が生物の動きと重なり、同じ海中映像でも場面ごとに遊び、優雅さ、恐怖、孤独といった異なる感情を生み出す。
リュック・ベッソンの海への思いを凝縮
ダイビングインストラクターだった両親のもとで育ったリュック・ベッソンは、自身も若い頃に海洋生物学者やダイバーを志していた。『グラン・ブルー』でも海に魅せられた人間を描いたが、本作では人間を画面の中心から外し、海とそこに暮らす生命そのものへ視線を向けている。物語映画とは異なる形で、ベッソンの原点を確認できる一作だ。
