映画『アン・リー/はじまりの物語』(2025)を紹介&解説。
映画『アン・リー/はじまりの物語』概要
映画『アン・リー/はじまりの物語』は、18世紀に“シェーカー教団”と呼ばれる信仰共同体を築いた実在の女性宗教指導者アン・リーの人生を描く伝記ミュージカルドラマ。性別や人種を超えた平等を説き、自らをキリストの女性的化身と信じたアンが、迫害を受けながらも信徒たちとアメリカへ渡り、理想の共同体を求めていく姿を映し出す。監督はモナ・ファストヴォールド(『ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明け』)。主演はアマンダ・サイフリッド、共演にルイス・プルマン、トーマシン・マッケンジー、ステイシー・マーティン、ティム・ブレイク・ネルソン、クリストファー・アボットら。
作品情報
日本版タイトル:『アン・リー/はじまりの物語』
原題:The Testament of Ann Lee
製作年:2025年
本国公開日:2025年12月25日(北米)
日本公開日:2026年6月5日
ジャンル:伝記/ドラマ/ミュージカル
製作国:イギリス/アメリカ
原作:無(実在の人物アン・リーの人生を基にした作品)
上映時間:137分
監督:モナ・ファストヴォールド
脚本:モナ・ファストヴォールド/ブラディ・コーベット
製作:アンドリュー・モリソン/ジョシュア・ホースフィールド/ヴィクトリア・ペトラーニ/モナ・ファストヴォールド/ブラディ・コーベット/グレゴリー・ジャンキレヴィッチ/クラウディア・シミェヤ=ロストヴォロフスカ/リリアン・ラサール/マーク・ランパート
撮影:ウィリアム・レクサー
編集:ソフィア・スベルカソー
作曲:ダニエル・ブルームバーグ
振付:セリア・ロールソン=ホール
出演:アマンダ・サイフリッド/ルイス・プルマン/トーマシン・マッケンジー/ステイシー・マーティン/マシュー・ビアード/スコット・ハンディ/ヴィオラ・プレッティジョン/ジェイミー・ボーギョ/デヴィッド・ケイル/ティム・ブレイク・ネルソン/クリストファー・アボット
製作:アナプルナ・ピクチャーズ/カプラン・モリソン/インテイク・フィルムズ/ミッド・マーチ・メディア/ファーストジェン・コンテンツ/ミゼル・メディア/インタイ・エンターテインメント/アートクラス・フィルムズ/カルト・ブランシュ/パラブル
配給:サーチライト・ピクチャーズ(北米ほか)/ウォルト・ディズニー・ジャパン(日本)
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
あらすじ
18世紀のイギリス。貧しい鍛冶職人の家に生まれたアン・リーは、信仰心の厚い女性として育つ。やがて4人の子どもを授かるも、全員を幼くして失うという深い悲しみを経験。その苦しみの中で、アンは自らが“キリストの女性の姿の生まれ変わり”であるという啓示を得る。性別や人種を超えた平等を説く彼女の信仰は人々を引き寄せる一方、社会や宗教的権威からの反感も呼び、アンと信徒たちは苛烈な迫害にさらされていく。やがてアンは少数の信徒とともにアメリカへ渡り、信仰と平等に基づく理想の共同体を築こうとする。
主な登場人物(キャスト)
アン・リー(アマンダ・サイフリッド):シェーカー教団の指導者となる実在の女性。子どもを失う悲痛な経験を経て啓示を受け、自らをキリストの女性的化身と信じるようになる。性別や人種の平等を説き、迫害に耐えながら理想の共同体を求めていく。
ウィリアム・リー(ルイス・プルマン):アンの兄弟。アンの信仰と人生の旅路に深く関わる人物であり、彼女がイギリスからアメリカへと向かう過程でも重要な存在となる。
ストラップメアリー・パーティントン(トーマシン・マッケンジー):アンに近しい信徒であり、物語の語り手となる人物。アンの信仰、苦難、共同体の歩みを見つめ、彼女の“証言”を観客へ伝える役割を担う。
ジェーン・ウォードリー(ステイシー・マーティン):アンが身を置く信仰共同体に関わる女性。身体を揺らし、歌い、踊る礼拝の在り方を通じて、シェーカーの信仰表現を象徴する存在のひとりとなる。
エイブラハム・スタンダリン(クリストファー・アボット):アンの夫。
リューベン・ライト牧師(ティム・ブレイク・ネルソン):アンたちを取り巻く宗教的・社会的圧力を象徴する人物。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、実在の宗教指導者アン・リーの人生を、単なる伝記映画ではなく、音楽と身体表現を伴うミュージカルドラマとして描いている点にある。シェーカー教団は、歌や踊りを信仰の表現として重視した集団であり、本作では伝統的なシェーカー讃美歌を再構築しながら、信仰の高揚、苦痛、共同体の熱を視覚と音で表現している。
主演のアマンダ・サイフリッドにとっても、アン・リー役は歌唱力と演技力の双方が問われる役柄である。『マンマ・ミーア!』シリーズなどで知られる彼女が、明るいミュージカル的な歌唱とは異なる方向で、祈りや叫びに近い歌を通してアンの内面を表現する点は、本作の重要な見どころとなる。
また、モナ・ファストヴォールドとブラディ・コーベットによる脚本は、信仰、女性の身体、共同体、迫害、理想郷といった重層的なテーマを扱う。アンを英雄として単純化するのではなく、時代に抗いながらも強烈な信念に突き動かされる人物として描くことで、彼女の先進性と危うさの両面を浮かび上がらせている。
さらに、18世紀のイギリスからアメリカへと広がる時代設定、共同体の形成、儀式的なダンス、讃美歌の再解釈など、映像面・音楽面の要素も濃い。歴史映画、宗教ドラマ、ミュージカル、女性の伝記映画といった複数のジャンルが交差する作品として、一般的な伝記映画とは異なる強い個性を持った一本である。
