映画『the moment/ザ・モーメント』(2026)を紹介&解説。
映画『the moment/ザ・モーメント』概要
映画『the moment/ザ・モーメント』は、世界的ミュージシャンのチャーリーxcxが原案・主演・製作を務め、ショービジネスの裏側をフェイクドキュメンタリー形式で描く音楽ブラックコメディ。アルバム『brat(ブラット)』の成功で時代のアイコンとなったポップスターが、業界関係者やブランド戦略、ライブ演出の圧力に巻き込まれながら、自分らしさとスター像の狭間で揺れていく。監督はビリー・アイリッシュらのミュージックビデオを手がけてきたエイダン・ザミリ。共演にアレクサンダー・スカルスガルド、ロザンナ・アークエット、カイリー・ジェンナー、レイチェル・セノットら。
作品情報
日本版タイトル:『the moment/ザ・モーメント』
原題:The Moment
製作年:2026年
本国公開日:2026年1月30日
日本公開日:2026年6月5日
ジャンル:ドラマ/コメディ/音楽
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:103分
監督:エイダン・ザミリ
脚本:エイダン・ザミリ/バーティ・ブランデス
原案:チャーリーxcx
製作:チャーリーxcx/ダビド・イノホサ
製作総指揮:ザック・ナットマン/ブランドン・クリード/ミッキー・シュワルツ=ライト/ヨハン・クノーベル
撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ
美術:フランチェスカ・ディ・モットラ
衣装:テイラー・マクニール
編集:ビリー・スネドン/ニール・ファーマー
音楽:エー・ジー・クック
キャスティング:ジェニファー・ベンディッティ
出演:チャーリーxcx/アレクサンダー・スカルスガルド/ロザンナ・アークエット/ケイト・バーラント/ジェイミー・デメトリウ/ヘイリー・ベントン・ゲイツ/アイザック・パウエル/カイリー・ジェンナー/レイチェル・セノット
製作:A24/スタジオ365/2AM
配給:A24(アメリカ)/ハピネットファントム・スタジオ(日本)
あらすじ
2024年、アルバム『brat(ブラット)』で世界的な注目を集め、“ブラット・サマー”と呼ばれる社会現象を巻き起こしたポップスター、チャーリーxcx。大胆で媚びない表現を貫いてきた彼女だったが、マネージャー、SNS担当者、音楽レーベルは“ブラット・サマー・フォーエバー”を合言葉に、その熱狂を無理やり延命させようとする。さらにAmazonの出資を背景にしたライブ映像配信プロジェクトが動き出し、派手な演出や大規模キャンペーンがチャーリーを“ベタなスター像”へと押し込めていく。ライブ本番を目前にした彼女は、混乱する現場を離れてイビサ島へ向かい、事態はさらに予測不能な方向へ進んでいく。
主な登場人物(キャスト)
チャーリーxcx(チャーリーxcx):『brat(ブラット)』の成功で時代のアイコンとなったポップスター。自身の表現を守ろうとしながらも、業界の期待や商業的な圧力に飲み込まれていく。
ジョハネス(アレクサンダー・スカルスガルド):ライブ演出家。チャーリーの個性や音楽性を十分に理解しないまま、派手で分かりやすいステージ演出を提案し、彼女を典型的なスター像へ近づけようとする。
タミー(ロザンナ・アークエット):音楽レーベル側の責任者。『brat(ブラット)』のブームを商業的に拡大しようとする立場にあり、チャーリーの周囲で進むプロモーション戦略に大きく関わる。
モリー(ケイト・バーラント):チャーリーの周辺にいる業界関係者のひとり。スターを取り巻く過剰な言葉や空気を体現し、ショービジネスの滑稽さを浮かび上がらせる存在。
ティム(ジェイミー・デメトリウ):チャーリーのマネージャー。現場で起こる問題に対応しようとする一方で、アーティスト本人の不安や本音を受け止めきれず、混乱を深めていく。
セレステ(ヘイリー・ベントン・ゲイツ):クリエイティブ面でチャーリーの表現に関わる人物。商業的な方向へ傾いていくプロジェクトの中で、彼女の本来の美学や感覚を象徴する存在として描かれる。
ロイド(アイザック・パウエル):SNSやプロモーション周辺に関わる人物。ポップスターの存在が、音楽だけでなくコメント、拡散、イメージ管理にまで分解されていく状況を示す役割を担う。
カイリー・ジェンナー(カイリー・ジェンナー):セレブ仲間として登場。現実のポップカルチャーと虚構の物語を交差させ、本作のメタ的な面白さを強めている。
レイチェル・セノット(レイチェル・セノット):セレブ仲間として登場。チャーリーを取り巻く華やかで過剰な人間関係の一部として、作品の風刺性を支える。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、チャーリー・エックス・シー・エックス自身のキャリアと、ポップスターを取り巻く現代的な圧力を、虚構と現実の境界が曖昧なフェイクドキュメンタリーとして描いている点にある。『brat(ブラット)』が生んだ熱狂を題材にしながら、作品は単なる成功譚やライブ映画には向かわず、ブームを維持しようとする業界の欲望、企業タイアップ、SNS的な消費、スター本人の疲弊をブラックユーモアで切り取っていく。
また、A24作品らしい尖った企画性も見どころである。ポップカルチャーの中心にいる本人が、自分自身のイメージを誇張して演じることで、観客は“本当のチャーリー”を見ているようで、同時に強烈に作り込まれたフィクションを目撃することになる。アレクサンダー・スカルスガルドやロザンナ・アークエット、カイリー・ジェンナーらの起用も、スター文化を内側から風刺する本作のメタ構造を際立たせている。
さらに、音楽をエー・ジー・クックが担当している点も重要だ。チャーリー・エックス・シー・エックスの音楽性と深く結びついたサウンドが、物語の不穏さや高揚感を支え、単なる音楽映画ではない独自のテンションを生み出している。華やかなショービジネスの裏側にある孤独、混乱、自己演出の苦しさを、笑いと皮肉を交えて見せる作品だ。
