映画『Everytime(原題)』(2026)を紹介&解説。
映画『Everytime(原題)』概要
映画『Everytime(原題)』は、オーストリア出身のサンドラ・ウォルナー監督が、喪失、罪悪感、赦し、記憶の揺らぎを描く心理ドラマ。娘を失った母と幼い妹、そしてその死に関わったと周囲から見なされる少年が、実現しなかった家族旅行の地テネリフェへ向かう。強い陽光の下で過去と現在が静かに重なり合っていく物語で、2026年カンヌ映画祭「ある視点」部門に出品され、同部門賞を受賞した。出演はビルギット・ミニヒマイアー、トリスタン・ロペス、ロッテ・シリン・カイリング、カーラ・ヒュッターマンら。
作品情報
日本版タイトル:未定(2026年5月時点)
原題:Everytime
製作年:2026年
世界初上映日:2026年5月18日
日本公開日:未定(2026年5月時点)
ジャンル:心理ドラマ/ドラマ
製作国:オーストリア/ドイツ
原作:無
上映時間:121分
監督:サンドラ・ウォルナー
脚本:サンドラ・ウォルナー
製作:リクシ・フランク/ヴィクトリア・シュトルペ/デヴィッド・ボーン
撮影:グレゴリー・オーク
編集:ハネス・ブルーン
作曲:デヴィッド・シュヴァイクハルト
美術:ユリア・リビゼラー/ゲラルト・フライムート
録音:ヨハネス・シュメルツァー=ツィリンガー
出演:ビルギット・ミニヒマイアー/トリスタン・ロペス/ロッテ・シリン・カイリング/カーラ・ヒュッターマン/ナオミ・エリア・リチャード
製作:パナマ・フィルム/ザ・バリケーズ
海外セールス:シャラード
あらすじ
ジェシーを失ってから1年。母エラと妹メリは、日常の中でかろうじて平静を保ちながら暮らしていた。そこへ、ジェシーの死に関わったと周囲から見なされている恋人ルクスが再び現れる。エラは彼を責める気持ちを抱え、ルクスは赦しを求めながらも、自分の感情を言葉にできずにいる。
やがて3人は、かつて実現しなかった家族旅行の目的地であるテネリフェへ向かう。太陽の光が降り注ぐリゾート地で、彼らの前には過去の記憶と現在の現実が混ざり合うような出来事が起こり始める。喪失を受け入れられない者たちの時間が、静かに、そして不穏に揺らいでいく。
主な登場人物(キャスト)
エラ(ビルギット・ミニヒマイアー):娘ジェシーを失った母親。幼い娘メリとともに日常を続けようとしているが、心の奥では深い悲しみと怒りを抱えている。ルクスの再登場によって、封じ込めていた感情と向き合うことになる。
ルクス(トリスタン・ロペス):ジェシーの恋人だった少年。ジェシーの死の夜に彼女と一緒にいたことから、周囲から責任を背負わされる存在となっている。赦しを求めながらも、自分自身も罪悪感に押しつぶされかけている。
メリ(ロッテ・シリン・カイリング):エラの幼い娘で、ジェシーの妹。姉の死をまだ十分に理解しきれないまま、母とルクスの間に漂う緊張や悲しみを感じ取っている。テネリフェへの旅を通して、家族の記憶と喪失に触れていく。
ジェシー(カーラ・ヒュッターマン):エラの娘で、メリの姉。物語の中心にある不在の存在であり、彼女の死がエラ、メリ、ルクスの関係を大きく変えている。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、喪失を単なる悲しみとして描くのではなく、日常の中で抑え込まれた怒り、罪悪感、赦しへの渇望として立ち上げている点にある。大きな感情を説明的に見せるのではなく、沈黙や視線、人物同士の距離感によって、心の奥に沈んだ痛みを浮かび上がらせる作品だ。
また、物語の舞台となるテネリフェの明るい陽光も重要な要素となっている。リゾート地の開放感と、登場人物たちが抱える喪失の重さが対照的に配置されることで、現実と記憶、現在と過去の境界が曖昧になっていく。美しい風景の中に不穏さがにじむ点も、本作ならではの印象を生んでいる。
サンドラ・ウォルナー監督は、過去作でも現実の認識や人間の存在感を揺さぶる作風で知られる。本作でも、家族ドラマの枠組みを保ちながら、観客に「もし失った時間へ戻れるなら」という不可能な願いを体験させるような構成をとっている。2026年カンヌ映画祭「ある視点」部門賞を受賞したことからも、作家性と映画的完成度の両面で注目される一本といえる。
