映画『Riceboy ライスボーイ』(2022)を紹介&解説。
映画『Riceboy ライスボーイ』概要
映画『Riceboy ライスボーイ』は、カナダ移民として生きる韓国人親子の喪失とアイデンティティーを描いたヒューマンドラマ。1990年代、より良い人生を求めて韓国からカナダへ渡ったシングルマザーと息子が、差別や孤独、文化の断絶に向き合いながら絆を育んでいく。監督はアンソニー・シム、主演はチェ・スンユン、イーサン・ファン。
作品情報
日本版タイトル:『Riceboy ライスボーイ』
原題:Riceboy Sleeps
製作年:2022年
日本公開日:2026年4月3日
ジャンル:ドラマ
製作国:カナダ
原作:無
上映時間:117分
監督:アンソニー・シム
脚本:アンソニー・シム
製作:ブライアン・デモア/アンソニー・シム/レベッカ・スティール
製作総指揮:ジュリアナ・ベルトゥッツィ/チャーリー・カー/マット・カー
撮影:クリストファー・ルー
編集:アンソニー・シム
作曲:アンドリュー・ヨンフン・リー
出演:チェ・スンユン/イーサン・ファン/ドヒョン・ノエル・ファン/アンソニー・シム/ハンター・ディロン
製作:ロンサム・ヒーローズ・プロダクションズ/カインド・ストレンジャー・プロダクションズ/ア・ラスティング・ドーズ・プロダクションズ
配給:カルチュラルライフ(日本)
あらすじ
1990年代、恋人を亡くしたソヨンは幼い息子ドンヒョンを連れ、韓国からカナダへ移り住む。異国で言葉や文化の壁、人種差別に直面しながら懸命に暮らすなか、成長した息子の胸には自身のルーツへの思いが募っていく。やがて、ある知らせを機に母子は初めて故郷の韓国へ向かう。
主な登場人物(キャスト)
ソヨン(チェ・スンユン):韓国で家族の悲劇を経験し、幼い息子を連れて1990年代のカナダへ渡るシングルマザー。異国での差別や文化の断絶にさらされながらも、息子により良い人生を与えようと懸命に生きる、本作の中心人物である。
ドンヒョン/デヴィッド(イーサン・ファン):ソヨンの息子。カナダで成長した思春期のドンヒョンは、母から少しずつ距離を取りながら、自分の韓国的ルーツや、母が語ろうとしない亡き父の存在を意識していく。
ドンヒョン(幼少期)(ドヒョン・ノエル・ファン):移住直後の幼いドンヒョン。慣れない土地で母と強く結びつきながら暮らす、物語前半のもうひとりの重要なドンヒョンである。
サイモン(アンソニー・シム):ソヨンがカナダで出会う男性。ソヨンに結婚を望むほどの好意を寄せるが、彼の存在は、母として生きることを最優先してきたソヨンの心情を浮かび上がらせる。
ミソン(ジェリナ・ソン):ソヨンが職場で出会う同じ韓国出身の女性。異国で孤立しがちなソヨンにとって、言葉と文化を共有できる数少ない支えのひとりとなる。
ウォンシク(カン・インソン):ドンヒョンの亡き父として物語の根幹に関わる人物。ソヨンとドンヒョンが韓国の家族や自らのルーツに向き合っていくうえで、その不在が大きな意味を持つ。
祖父(チェ・ジョンリュル):韓国でドンヒョンを迎える父方の祖父。ドンヒョンに家族の歴史や故郷とのつながりを実感させる存在として描かれる。
主な受賞&ノミネート歴
トロント国際映画祭
2022年のトロント国際映画祭で「Platform Prize」を受賞した。
釜山国際映画祭
2022年の釜山国際映画祭で「Flash Forward Audience Award」を受賞した。
バンクーバー国際映画祭
2022年のバンクーバー国際映画祭では「Best Canadian Film」を受賞。あわせて観客賞部門の「Northern Lights Audience Award」も受賞した。
トロント映画批評家協会賞
批評家賞でも高く評価され、トロント映画批評家協会賞の「Rogers Best Canadian Film Award」を受賞した。
カナダ・スクリーン・アワード
2023年カナダ・スクリーン・アワードで作品賞を含む6部門にノミネートされ、アンソニー・シムが脚本賞を受賞した。
『Riceboy ライスボーイ』アンソニー・シム監督インタビューはこちら
4月2日掲載予定。
作品トリビア
アンソニー・シム自身の移民体験が土台になっている
本作は、監督・脚本のアンソニー・シムが8歳で韓国からカナダへ移住した自身の経験に根ざした作品で、本人も複数のインタビューで“半自伝的”だと語っている。
撮影前から「譲れない3条件」を決めていた
シムは製作初期の段階で、①16ミリフィルムで撮ること、②韓国人キャラクターは韓国人俳優が演じること、③韓国の場面は韓国で撮影すること、の3点を“譲れない条件”として決めていたという。予算面では大きな負担だったが、それでも妥協しなかったことが作品の質感につながっている。
画角の変化にも意味がある
本作は16ミリ撮影だけでなく、場面によってアスペクト比も変化する。シムはこの変化について、登場人物が置かれた環境や、世界を受け止める心の開き方をフレームで表したかったと説明している。カナダでの閉塞感と、韓国で少しずつ開かれていく感覚を視覚的に示すための設計だった。
“英語名をつける”場面は監督自身の実体験が下敷き
ドンヒョンが英語名を持つくだりは、シム自身の体験に由来する。インタビューでは、子どものころ自分も発音しやすい名前を求められた経験があり、もし自分で決められたなら“バート・シンプソン”にしたかったと語られている。作品の細部に監督の記憶が息づいている一例である。
監督の家族も撮影に関わっていた
撮影現場にはシムの実際の家族も参加していた。妹は劇中に出てくる料理の準備を担当し、韓国パートでは母親、叔父、いとこたちがケータリングに関わったという。さらに韓国で撮影した町は、監督の母方の祖父が生まれ育った土地でもあり、作品世界と家族の記憶が現場レベルでも重なっている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
