アリアナ・グランデが『ウィキッド』で演技に捧げた献身と、演技を最優先とする現在地を語った。
『ウィキッド ふたりの魔女』(2024年)のグリンダ役でアカデミー賞ノミネートという評価を受け、『ウィキッド 永遠の約束』にも続投するアリアナ・グランデ。
彼女は米『Variety』誌のインタビューで、この役に「すべてを捧げた」と語り、現時点では音楽以上に演技を活動の最優先に置いていることを明かした。
長年ポップスターとして注目を浴び続けてきた彼女が、なぜ今、俳優としての道に深く身を委ねているのか。その理由は、仕事への向き合い方そのものの変化にあった。
演技は「人の心の地図」を知るための仕事
「本当にこの仕事が好きなんだ」とグランデは語る。彼女にとって演技とは、表面的な感情表現ではなく、「人の心の地図みたいなものを知っていく作業」だという。何がその人物を動かし、何が引き金になるのか。たとえ「それが映画には映らないことだとしても」、その内側に想像力を巡らせること自体に価値があると彼女は説明している。
幼少期から注目を集め、常に評価と懐疑の目にさらされてきたグランデにとって、演技は自己主張の場ではない。むしろ、自分自身を一歩引かせ、他者の人生を理解しようとする行為こそが、この仕事の核心なのだと語っている。
音楽は告白、演技は「誰か別の人の物語」
グランデは、音楽と演技の違いを明確に言語化している。「音楽はとても自己中心的なもの。告白なんだよ」と語る一方で、演技については「キャラクターを通じた告白」だと説明する。
どちらも心と魂を使う表現であることに変わりはない。しかし演技の場合、それは「誰か別の人のストーリーに敬意を払っている」行為であり、そこには「自分自身を保護する層がある」という。
「誰か別の人に飛び込んで、その人のストーリーを語れるのはすばらしい経験だよ」と、自らの実体験を直接差し出す音楽とは異なり、演技は他者の人生に身を委ねることで成立する表現だという見方をグランデは語っている。
自分を前面に押し出すのではなく、「自分を取り除いて、アンサンブルの一部になること」。
それは「何百、何千という創造的な手による巨大なパズルの小さなピースになること」であり、彼女はそこに「美しいことなんだ」と価値を見出している。
この感覚こそが、彼女が今、演技を人生の中心に据えている理由でもある。アルバム制作の合間に立ち寄る場所ではなく、他者と共に物語を形づくる場として、演技は彼女の中で確かな優先順位を占めるようになっていた。
『ウィキッド』が要求した、感情と精神の同時進行
『ウィキッド 永遠の約束』におけるグランデのグリンダは、表面的には明るく快活な存在として描かれている。しかしその内側には、自身の魔法の力が過大評価されていることについての疑念と不安が織り込まれている。
この役は、感情的にも、音楽的にも、精神的にも高い機敏さを求められるものであり、それらが「同じ息の中で」要求される場面も少なくなかった。
「毎日がビッグな日だったよ」とグランデは振り返る。多くの日は、「一日で二本の映画を撮影しているような感覚だった」というほど、密度の高い撮影が続いた。演技と歌唱、感情の起伏を瞬時に切り替えながら成立させる現場は、彼女にとってこれまで経験してきた表現活動とは質の異なる負荷を伴っていた。
撮影は順不同で行われ、感情的に重いシーンが連続する日もあったという。「そういう日は、家に帰る時には抜け殻みたいな気分だった」。リハーサルを重ね、準備を尽くし、「キャラクターと共に生きる」一方で、カメラが回る瞬間には「何も予測できない」。その不確かさの中で、「毎回同じように傷つかなければならない」ことが、彼女にとってこの役を引き受けるという行為そのものだった。
こうした内面的な作業の積み重ねこそが、彼女にとって『ウィキッド』という作品の核心であり、演技を一時的な挑戦ではなく、人生の主軸として捉える決定打となっていた。
否定の声から距離を取るという選択
グリンダ役のキャスティングが発表された直後から、グランデは再び懐疑的な視線にさらされた。知名度の高さが真剣さを損なうのではないか、ひとつの分野での成功が別の分野での正当性を奪うのではないか。そうした見方は、彼女にとって決して新しいものではなかった。
それでも彼女は、そうした声と対峙する道を選ばなかった。「早い段階で、それをシャットアウトしなければならないって学んだよ」と語るように、彼女が選んだのは距離を取ることだった。
「私には無理だとか、適任じゃないって言う声がたくさんあった」。しかし同時に、彼女には「やるべき仕事があった――本当に大きな仕事がね」。
その仕事を引き受けるために必要だったのは、証明ではなく没入だった。グランデはこの役を「勝ち取った」と語り、そのうえで「自分の人生とすべての存在を捧げる必要があった」と振り返っている。外部の評価に反応するのではなく、役と作品に集中するための環境を自ら整えること。それが彼女にとっての自己防衛であり、同時に創作への誠実さでもあった。
否定の声を遮断するという選択は、決して無関心を意味しない。むしろそれは、演じるべき物語と、そこに注ぐべきエネルギーを見誤らないための、意識的な判断だった。
静かな時間が支えた、役を生き抜く日々
過酷な撮影の日々、一日の終わりに彼女を支えたのは、ロンドンの夜遅くの車での移動や、母親への電話だった。暗闇の中で、その日演じた感情や出来事を反芻する時間は、「神聖に感じられた」という。
それは誰かに評価されるための時間ではなく、「ただ静かに自分を誇りに思うこと」が許される、私的な瞬間だったそうだ。
華やかな成功の陰で育まれたその静かな肯定こそが、彼女を次の一日に向かわせていた。
演技はもう「合間」ではない
『ウィキッド 永遠の約束』が公開を迎え、グランデは再び賞レースの只中にいる。近年ではActor Awardsで2年連続のノミネートを果たすなど、俳優としての評価も確実に積み重ねられてきた。だが、彼女が見つめているのは結果ではなく、その先にある時間だ。
音楽について問われると、彼女は「音楽は戻ってくるだろうな――いずれはね」と答えた。しかし同時に、演技はもはやアルバム制作の合間に訪れるものではなくなったことも、はっきりと語っている。
「俳優が大好きなんだ」。演技について語ること、自分のプロセスがどう変化していくのかを学び続けること。そのすべてが、今の彼女にとって欠かせない営みだという。「それを当たり前だと思うことは決してないよ」。
そして次の役について尋ねられると、彼女は微笑みながらこう付け加えた。「とても楽しみにしている」役が、すでに控えているのだと。「すぐにもっと詳しく伝えられるよ」と約束しながら。
