ワーナーの復活、マーベルの苦戦、A24の挑戦の結果-Variety誌が振り返った2025年ハリウッドの勝者と敗者

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2025年のハリウッド映画界を、米『Variety』誌が興行成績を軸に総括した情報をもとに、スタジオごとの明暗と業界の変化を振り返る。


ファミリー映画が観客を呼び込み、ビデオゲーム原作が成功を収める一方で、かつて映画界を席巻したスーパーヒーロー映画は失速した。米『Variety』誌は、2025年のハリウッドを「成績表」という形で振り返り、主要スタジオの成功と失敗を冷静に分析している。

ワーナー・ブラザースの躍進、ディズニーの数字上の強さと内部的な不安、そしてマーベルの苦戦──本稿では、そういった同誌の評価を基に、2025年の映画業界が直面した現実を整理する。

2025年の映画界を貫いた3つの潮流

『Variety』誌の成績表から浮かび上がるのは、2025年のハリウッドを支配した明確な潮流である。

第一に、ファミリー向け作品とアニメーションの強さだ。幅広い世代を劇場に呼び込める作品は依然として安定した興行成績を残し、スタジオにとって最も堅実な柱となった。

第二に、ビデオゲーム原作の存在感である。かつては映画化が難しいとされてきたジャンルが、大規模ヒットを生み出すまでに成熟し、IP活用の新たな成功例となった。

そして第三に、スーパーヒーロー映画の失速が挙げられる。長年ハリウッドの中心にあったジャンルは、作品数の増加と観客の疲労感により勢いを失い、特にマーベル作品はかつての影響力を取り戻せずにいる。

2025年は、どのジャンルが「安全」で、どの成功モデルがもはや通用しないのかを、はっきりと示した一年だった。

ディズニー-数字では圧勝も、マーベル不振が影を落とす

2025年の興行成績だけを見れば、ディズニーは他スタジオを大きく引き離した存在だ。10億ドル(約1566億円)を突破した作品を複数抱え、世界興行収入の合計では60億ドル超(約9395億円)を記録した唯一のスタジオとなった。ファミリー層を確実に取り込む実写版『リロ&スティッチ』『ズートピア2』は、ディズニーのブランド力が依然として健在であることを示している。

『リロ&スティッチ』© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『リロ&スティッチ』© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

しかし『Variety』誌は、その数字の裏側にある不安定さを見逃していない。同スタジオは同時に、大規模な失敗作を他社のほぼ2倍配給しており、実写版『白雪姫』『トロン:アレス』など、高額な製作費に見合わない結果に終わった作品も目立った。

特に深刻なのが、かつてハリウッド最大のヒットメーカーだったマーベル作品の不振である。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』をはじめ、連続する商業的失敗は、フランチャイズ疲れを強く印象づけた。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』© 2025 MARVEL

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』© 2025 MARVEL

また、オリジナル作品の育成という点でも課題は残る。『星つなぎのエリオ』は、ピクサーが新規IPで観客を惹きつける難しさを改めて浮き彫りにした。一方で、過去の成功作やブランドに依存し続ける戦略が、必ずしも安定した成果につながらないことも明らかになった。

Variety誌は、ディズニーの2025年を「称賛に値する成功と、無視できない警鐘が同居した一年」と位置づけている。

『Variety』誌の評価:B

好調作品: 『リロ&スティッチ(実写版)』(製作費1億ドルに対し興収10.3億ドル)、『ズートピア2』(製作費1.5億ドルに対し興収13.1億ドル)、『シャッフル・フライデー』(製作費4200万ドルに対し興収1.53億ドル)、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(製作費2.5億ドル超に対し興収5.06億ドル以上で現在も上映中)

不調作品: 『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(製作費1.8億ドルに対し興収4.15億ドル)、『白雪姫』(実写版)(製作費2.5億ドルに対し興収2.05億ドル)、『星つなぎのエリオ』(製作費1.5億ドルに対し興収1.54億ドル)、『トロン:アレス』(製作費1.8億ドルに対し興収1.42億ドル)、『プレデター:バッドランド』(製作費1.05億ドルに対し興収1.81億ドル)、『Ella McCay(原題)』(製作費3500万ドルに対し興収400万ドル)

パラマウント-トム・クルーズでも救えなかった苦境の一年

2025年のパラマウントは、苦しい一年だったと言わざるを得ない。最大の賭けとなった『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は、世界興行収入こそ6億ドル近く(約939億円)に達したものの、4億ドル(約626億円)という巨額の製作費を考えれば、成功とは言い難い結果に終わった。『Variety』誌は、トム・クルーズという絶対的スターをもってしても、スタジオ全体を立て直すには至らなかった点を厳しく指摘している。

背景には、スカイダンスへの売却を巡る不透明な状況があった。政府規制当局の承認待ちという宙ぶらりんの状態が続き、スタジオ幹部の多くは、自らの去就を意識せざるを得なかった。この停滞が、長期的な戦略判断や作品ラインアップの構築に影響を与えたことは否めない。

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』©2025 PARAMOUNT PICTURES

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』©2025 PARAMOUNT PICTURES

一方で、低予算作品には一定の成果も見られた。『劇場版スマーフ/おどるキノコ村の時空大冒険』『The Naked Gun(原題)』など、費用対効果の高いヒットは存在した。しかし、それらはいずれもスタジオの将来を左右するほどの規模ではなく、歴史ある大手スタジオとして期待される水準には届かなかった。

『Variety』誌は、次なる経営体制の下で、パラマウントがより明確な方向性を打ち出せるかどうかが今後の鍵になると結論づけている。

『Variety』誌の評価:C

好調作品: 『劇場版スマーフ/おどるキノコ村の時空大冒険』(製作費5800万ドルに対し興収1.24億ドル)、『The Naked Gun(原題)』(製作費4200万ドルに対し興収1.02億ドル)、『Regretting You(原題)』(製作費3000万ドルに対し興収9040万ドル)

不調作品: 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(製作費4億ドルに対し興収5.98億ドル)、『Roofman(原題)』(製作費2000万ドルに対し興収3300万ドル)、『ランニング・マン』(製作費1.05億ドルに対し興収6800万ドル)

ソニー-大勝ちはないが、着実に成果を積み重ねた一年

2025年のソニーは、派手な成功こそなかったものの、安定した成績を残したスタジオとして評価されている。『Variety』誌は「ホームランはなかったが、三振もしなかった」と表現し、堅実な作品展開が功を奏した一年だったと総括した。

特に存在感を示したのが米国に配給された日本アニメ作品である。クランチロールが配給した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』はいずれも好調な興行成績を記録し、北米市場におけるマンガ原作作品への需要の高さを改めて証明した。日本発のIPがグローバル市場で確実な集客力を持つことを示した点は、ソニーにとって大きな収穫と言える。

また、実写映画においても中規模作品を中心に成果を挙げた。キキ・パーマーとSZAが主演したコメディ『立ち退き回避のススメ』は劇場公開作品として健闘し、A24製作のロマンティック・ドラマ『マテリアリスト 結婚の条件』も国際的ヒットへと導いた。一方で、『ベスト・キッド:レジェンズ』『ラストサマー:リターンズ』といった続編作品は必要性を疑問視されつつも、一定の興行収入を確保している。

『マテリアリスト 結婚の条件』より Copyright 2025 © Adore Rights LLC. All Rights Reserved

『マテリアリスト 結婚の条件』より Copyright 2025 © Adore Rights LLC. All Rights Reserved

その反面、スターの存在だけでは成功を保証できない現実も浮き彫りになった。マーゴット・ロビーとコリン・ファレルが主演した『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は、厳しいレビューを覆すことができず、期待を下回る結果に終わった。『Variety』誌はこの点について、「スター・パワーが観客を劇場に呼び込めるのは、作品そのものが評価されている場合に限られる」と指摘している。

『Variety』誌の評価:B

好調作品: 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(製作費2000万ドルに対し興収6.64億ドル)、『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』(興収1.53億ドル)、『立ち退き回避のススメ』(製作費1400万ドルに対し興収5100万ドル)、『ベスト・キッド:レジェンズ』(製作費4500万ドルに対し興収1.17億ドル)、『28年後…』(製作費6000万ドルに対し興収1.51億ドル)、『ラストサマー:リターンズ』(製作費1800万ドルに対し興収6480万ドル)、『マテリアリスト 結婚の条件』(海外興収7100万ドル)

不調作品: 『コート・スティーリング』(製作費4000万ドルに対し興収3200万ドル)、『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(製作費4500万ドルに対し興収2000万ドル)

ユニバーサル-続編とリブートで「確実に勝つ」戦略

2025年のユニバーサルは、続編とリブートを軸に安定した成果を挙げたスタジオとして評価された。『Variety』誌は、リスクを抑えた戦略が堅実な興行成績につながった点を指摘している。『ジュラシック・ワールド/復活の大地』実写版『ヒックとドラゴン』は、いずれも大規模な集客に成功し、フランチャイズの強さを改めて示した。

『ジュラシック・ワールド/復活の大地』©2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ジュラシック・ワールド/復活の大地』©2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

特に『ジュラシック・ワールド』シリーズの再始動については、前作からわずか数年でのリブートという判断が一見すると性急に映ったものの、結果的には観客の支持を得た形となった。知名度の高いIPと娯楽性を前面に押し出す手法は、依然として有効であることが証明されたと言える。

また、ホラー分野でも安定感を見せた。『ブラックフォン2』ストラップや『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』は、前作ほどの勢いには及ばない可能性があるものの、製作費を抑えつつ確実に利益を生み出す作品として評価されている。一方で、『ウルフマン』『M3GAN/ミーガン 2.0』など期待を下回った作品も存在したが、いずれも大きな損失には至っていない。

『ブラックフォン 2』より © 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ブラックフォン 2』より © 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.

『Variety』誌は、ユニバーサルの課題として「新たなフランチャイズの創出」を挙げている。既存IPの活用で成果を出し続ける一方、将来を見据えた新規シリーズを生み出せるかどうかが、次の成長段階に進むための鍵になると分析している。

『Variety』誌の評価:B+

好調作品: 『ヒックとドラゴン』(実写版)(製作費1.5億ドルに対し興収6.36億ドル)、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(製作費1.8億ドルに対し興収8.68億ドル)、『ブラックフォン2』(製作費3000万ドルに対し興収1.32億ドル)、『ウィキッド 永遠の約束』(製作費1.5億ドルに対し興収4.88億ドル以上で現在も上映中)、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』(製作費3600万ドルに対し興収2.06億ドル)

不調作品: 『ウルフマン』(製作費2500万ドルに対し興収3400万ドル)、『LOVE HURTS/ラブ・ハーツ』(製作費1800万ドルに対し興収1700万ドル)、『M3GAN/ミーガン 2.0』(製作費2500万ドルに対し興収3900万ドル)、『Him(原題)』(製作費2700万ドルに対し興収2800万ドル)

ワーナー・ブラザース-大胆な賭けが実を結んだ最大の勝者

2025年のハリウッドにおいて、最も鮮やかな復活劇を演じたのがワーナー・ブラザースだった。前年末から年初にかけては高額な失敗作が続き、スタジオの先行きを不安視する声も少なくなかった。しかし『Variety』誌は、その流れが年の途中から大きく反転した点を高く評価している。

『マインクラフト/ザ・ムービー』©2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『マインクラフト/ザ・ムービー』©2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

復活の鍵となったのは、リブートや続編に依存しがちな市場環境の中で、監督の作家性や新しいアイデアに積極的に投資した姿勢だった。『マインクラフト/ザ・ムービー』『F1/エフワン』など多様なジャンルの作品が成功し、7作品連続で国内オープニング興行収入4000万ドル超(約63億円超)を記録するという、前例のない成果を打ち立てた。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』より © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『ワン・バトル・アフター・アナザー』より © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

また、大人向けオリジナル作品『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、製作費1億4000万ドル(約219億円)と高額ながら、興行的な到達点を突破し、賞レースでの評価も視野に入る作品となった。『Variety』誌は、こうした取り組みが単なる数字以上の意味を持つと指摘している。

『Variety』誌の評価:A

好調作品: 『マインクラフト/ザ・ムービー』(製作費1.5億ドルに対し興収9.58億ドル)、『罪人たち』(製作費9000万ドルに対し興収3.67億ドル)、『ファイナル・デッドブラッド』(製作費5000万ドルに対し興収3.15億ドル)、『F1/エフワン』(アップルが資金提供した製作費2.5億ドル超に対し興収6.31億ドル)、『スーパーマン』(製作費2.24億ドルに対し興収6.16億ドル)、『WEAPONS/ウェポンズ』(製作費3800万ドルに対し興収2.68億ドル)

不調作品: 『ミッキー17』(製作費1.18億ドルに対し興収1.33億ドル)、『アルトナイツ』(製作費5000万ドルに対し興収1000万ドル)、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(製作費1.4億ドルに対し興収2.04億ドル)

A24-背伸びの代償と、主流への一歩

2025年のA24は、インディー・スタジオとしての立ち位置を超えようとした1年だった。しかし『Variety』誌は、その挑戦が必ずしも成功ばかりをもたらしたわけではないと指摘している。より大きな製作費を投じた作品で苦戦し、規模拡大の難しさを痛感する結果となった。

『エディントンへようこそ』より © 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

『エディントンへようこそ』より © 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

象徴的だったのが『The Smashing Machine(原題)』だ。製作費5000万ドル(約78億円)規模の作品だったが、期待された評価を得られず、大きな損失を生んだ。同様に、『エディントンへようこそ』も観客の心理と噛み合わず、苦戦を強いられた。

一方で、『マテリアリスト 結婚の条件』は、スター性と親しみやすさを備えた作品として広い支持を獲得し、A24が主流市場に通用する可能性を示した。『Variety』誌は、今後のA24にとって「どの作品に、どこまで投資するのか」という判断の精度がこれまで以上に重要になると結論づけている。

『Variety』誌の評価:B-

好調作品: 『マテリアリスト 結婚の条件』(製作費1800万ドルに対し興収1.04億ドル)、『Bring Her Back(原題)』(製作費1000万ドルに対し興収3900万ドル)、『フレンドシップ』(300万ドルで買い付け後、興収1650万ドル)、『Eternity(原題)』(製作費1200万ドルに対し興収2800万ドル)

不調作品:『The Smashing Machine(原題)』(製作費5000万ドルに対し興収2100万ドル)、『エディントンへようこそ』(製作費2500万ドルに対し興収1300万ドル)、『The Legend of Ochi(原題)』(製作費1000万ドルに対し興収490万ドル)、『ウォーフェア 戦地最前線』(製作費2000万ドルに対し興収3300万ドル)、『Death of a Unicorn(原題)』(製作費1500万ドルに対し興収1500万ドル)

成績表が示した、ハリウッドの現在地

Variety誌の成績表が浮き彫りにしたのは、2025年がハリウッドにとって「何が通用し、何が通用しなくなったのか」が明確になった一年だったという事実である。ファミリー向け作品やアニメーション、そして一部のゲーム原作は依然として観客を劇場に呼び込む力を持つ一方、過度なブランド依存は安定した成功を保証しなくなっている。

巨額の予算や知名度の高いIPであっても、観客の期待と噛み合わなければ結果は伴わない。2025年の成績表は、ハリウッドが次の時代へ進むために、どの戦略を続け、どこを見直すべきかを突きつける通知表だったと言える。

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