イスラエルで上映禁止となったドキュメンタリー『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』が日本で公開決定。
イスラエルで上映が禁止され、ベンヤミン・ネタニヤフ首相自らが公開中止を求めたとして世界的に波紋を呼んだドキュメンタリー『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』が、11月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで日本緊急公開される。
第97回アカデミー賞🄬長編ドキュメンタリー部門ショートリストにも選出された本作は、イスラエル社会を分断し、民主主義を揺るがせた“権力の裏側”を暴く衝撃作だ。解禁された本編映像には、イスラエル元首相らが語るネタニヤフの実像が収められている。
イスラエルで上映禁止となった問題作-暴かれたネタニヤフ政権の“闇”
2017年、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの汚職捜査の過程で、秘密裏に本作の制作チームへリークされた警察尋問映像。そこには、メディアとの癒着や財界からの収賄、利益供与の実態が克明に記録されていた。
本作は、イスラエル史上初めて刑事起訴された現職首相の姿を通して、権力の腐敗と政治の暗部を浮き彫りにする。

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』より ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
製作総指揮は、アカデミー賞🄬受賞作『「闇」へ』などで知られるアレックス・ギブニー。監督を務めたのは、ユダヤ人の父とドイツ人の母の間に生まれたアレクシス・ブルームだ。ギブニーは次のように語る。
「本作の出演者は全員イスラエル人で、1人を除いて全員ユダヤ人です。彼らはネタニヤフに批判的で、世論調査によればイスラエル国民の70%も同様です。ネタニヤフはイスラエルと地域の安全保障を著しく損なってきました。ネタニヤフ批判を反ユダヤ主義と結びつけてはいけません。彼はユダヤ教でもイスラエルそのものでもないのです」

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』より ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
イスラエル元首相オルメルト氏が痛烈批判-「彼はシステムを破壊しようとする」
今回解禁された本編映像には、2006年から2009年までイスラエル首相を務めたエフード・オルメルト氏が登場する。彼はネタニヤフを痛烈に批判し、次のように語っている。
「彼はシステムを破壊しようとする。“私は特別だ。誰も手出しできない。手を出せば陰謀だ”と語るんだ」

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』より ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
このシーンは、イスラエル政治の根底にある「権力と責任」のゆがみを象徴するものだ。オルメルト氏の発言をはじめ、元シンベト(イスラエル保安庁)長官、ネタニヤフの元選挙参謀、子ども時代の友人、官邸スタッフなど、かつて彼の側近だった人物たちが証言者として登場する。
それぞれの視点が交錯し、ネタニヤフ政権の内部に潜む緊張や腐敗の実態が明らかにされていく。
【動画】イスラエル元首相オルメルト氏が語るネタニヤフの実像
彼の発言は単なる個人的批判ではなく、いまも続くガザ紛争やイスラエル社会の分断を理解する上での重要な手がかりとなる。強硬的なリーダーシップの陰で、民主主義の基盤がいかに揺らいできたのか──本作はその実態を鋭く描き出している。
ガザ紛争と重なる“権力の影”-人間はなぜ権力に惹かれるのか
2023年10月7日、ハマスによるイスラエル攻撃を発端に、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を開始した。戦闘はいまなお続き、多くの市民が犠牲となっている。
本作『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』は、この現実の惨状を直接的に描いてはいないものの、その根底に流れる「権力のあり方」と「社会の分断」を深く照射している。

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』より ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
監督を務めたアレクシス・ブルームは、ネタニヤフがいかにして極右勢力と結託し、長期政権の中で民主主義を危機にさらしたかを描き出す。国家のためという名のもとに、個人の欲望や保身がどのように制度を侵食していくのか――それは特定の国や指導者だけの問題ではなく、現代社会全体に向けた問いかけでもある。
また、本作ではネタニヤフと妻サラの警察尋問映像も登場する。報道では見えない私生活の断片を通して、権力者がどのように“特権意識”に溺れていくのかを冷徹に映し出す。彼をかつて支えた人々の証言とともに、政治の中で歪められた信頼や忠誠の構図が浮かび上がる。

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』より ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
『「闇」へ』『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』など、権力と倫理を題材にしてきたアレックス・ギブニーのプロデュースのもと、本作はドキュメンタリーとしての鋭さと映画的構成力を兼ね備えている。
“人間はなぜ権力に惹かれるのか”という普遍的テーマを背景に、いま世界で起きている紛争の根に潜む構造をも映し出す。ネタニヤフという一人の政治家の物語を通して、観る者は“権力と倫理”の問題を自らの社会に引き寄せて考えざるを得なくなるだろう。
本作は、単なる政治ドキュメンタリーではなく、現代を生きる私たちに向けた“問い”の映画である。

『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』 ©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
作品情報
タイトル:『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』
原題:The Bibi Files
監督・製作:アレクシス・ブルーム
製作総指揮:アレックス・ギブニー(『「闇」へ』)
2024年/イスラエル・アメリカ/英語・ヘブライ語・アラビア語/115分/カラー/G/日本語字幕:額賀深雪
©2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
配給:トランスフォーマー
11月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/thebibifiles/
