ヴェネツィア国際映画祭でドウェイン・ジョンソンが涙ぐむ-主演作『ザ・スマッシング・マシーン』世界初演と愛の物語

ドウェイン・ジョンソン(Photo Credit: Zuffa, LLC) NEWS
ドウェイン・ジョンソン(Photo Credit: Zuffa, LLC)

ヴェネツィア国際映画祭でドウェイン・ジョンソンが主演作『ザ・スマッシング・マシーン』を語り、感情をあらわにした。

ヴェネツィア国際映画祭に現れたドウェイン・ジョンソン-圧倒的存在感を放った瞬間

2025年のヴェネツィア国際映画祭は、ジョージ・クルーニージュリア・ロバーツジュード・ロウから、ジェイコブ・エロルディエマ・ストーンアヨ・エデビリに至るまで、世代を超えたスターが集結し、華やかな雰囲気に包まれた。そのなかで月曜日に到着したドウェイン・ジョンソンは、新作『ザ・スマッシング・マシーン(原題)』(The Smashing Machine)の世界初演のために姿を見せたが、その瞬間は会場の注目を一身に集める出来事となったようだ。

ジョンソンは記者会見で、今回の挑戦をこう語った。

この変身は本当に私が渇望していたものだったよ

彼は長年にわたりハリウッドの第一線で活躍し、大作やスペクタクル映画を数多く世に送り出してきた。しかし心の奥底では、俳優としての幅を広げたいという思いが常にあったと明かしている。「長年にわたって恵まれたキャリアを積み、作ってきた映画があったけど、心の奥に小さな声があったんだ。『もしもっとできるとしたら、もっとやりたいし、それはどんなものなんだろう』って」。

主演作『ザ・スマッシング・マシーン』-アクション大作からの転換と新たな挑戦

『ザ・スマッシング・マシーン』は、ハリウッド最大級のスターのひとりであるドウェイン・ジョンソンにとって、大胆な転換点となる作品である。これまで見栄えのする大作やスペクタクルを得意としてきた彼が、感情を前面に出したドラマに挑む姿は、従来のイメージと対極にある。

作品はベニー・サフディが脚本・監督を務め、インディー系映画の製作で知られるA24によって制作費4,000万ドルで完成した。ジョンソンが普段出演する超大作に比べれば小規模だが、その分、役者としての力量が前面に問われることになる。映画ファンや批評家からは早くも熱い注目を集め、アワードシーズンにおける受賞候補の可能性さえ取り沙汰されている。

ジョンソンが演じるのは、伝説的なUFCヘビー級王者でありMMA界の象徴的存在でもあるマーク・ケアーだ。物語は1990年代のMMA黎明期を舞台に、ケアーの目覚ましい成功と、リング外で直面した個人的な苦悩を描く。とりわけ鎮痛剤依存症との闘いを含む内面的な葛藤に焦点を当てており、2002年のHBOドキュメンタリー『The Smashing Machine』から着想を得ている。

さらにエミリー・ブラントがケアーの妻ドーン・ステイプルズを演じ、かつて『ジャングル・クルーズ』でジョンソンと共演した際の息の合った関係性を、今回は新たな感情の深みとして映し出す。ブラントは実生活でもジョンソンの親友であり、この作品においては彼とサフディ監督を引き合わせる重要な役割を果たしたと伝えられている。

キャリアの転換点を語るジョンソン-内面の声と仲間の支え

ジョンソンは、ハリウッドのシステムが俳優を型にはめてしまう状況に触れながらも、それを理解し、自らも多くの作品を楽しんできたと率直に語った。
(ハリウッドの構造は)理解していたよ。だからそれらの映画を作ったし、気に入っていた——楽しかった。本当に良くてうまくいったものもあれば、それほどでもなかったものも……

そんな彼を新たな挑戦へと導いたのは、エミリー・ブラントベニー・サフディの存在だった。ジョンソンはブラントを繰り返し「親友」と呼び、次のように振り返っている。

『ジャングル・クルーズ』で一緒に仕事をした時から、彼女は本当に僕を励まして信じてくれて、『子供の頃に経験したすべてのことを置ける場所があるの』って言ってくれたんだ

ブラントの後押しとサフディ監督の賛同によって、ジョンソンは大きな変身を決意した。彼はこうも述べている。

多くの場合、僕たち——少なくとも僕にとって時々——にとって、型にはめられてしまった時に自分が何を能力として持っているかを知るのは難しいんだ……。そして時々、エミリーやベニーのような、愛し尊敬する人たちが『できるよ』と言ってくれることが必要なんだ」。

マーク・ケアーとの出会い-格闘を超えた“愛の物語”

ヴェネツィアの記者会見では、モデルとなったマーク・ケアー本人が会場の前方に座り、ドウェイン・ジョンソンの発言に深く耳を傾けていた。ケアーは時折感情をあらわにし、スクリーン上で自らの人生が語られる瞬間を目の当たりにしていた。

ジョンソンはケアーの人生に込められた意味について、こう語っている。

マークは一時期世界最高の格闘家だったけど、この映画は格闘についての映画ですらないんだ――これは愛の物語なんだよ」。

その“愛”とは、ケアーと妻ドーンとの絆であり、また彼自身が格闘に捧げてきた人生への愛でもあった。ジョンソンは続けてこう強調した。

この関係におけるマークとドーンの愛の物語だし、マークと彼がやっていたこと――リングで結果を出そうとする闘い、彼の挑戦と克服――への愛の物語なんだ。知っているように、マークは2回OD(オーバードーズ)して、生きていられる自体が幸運なんだ――それがこの物語がとても特別である理由の一部なんだよ」。

リング上での勝利だけでなく、依存症や苦悩と闘いながら生き延びた事実そのものが物語の核心となる。ジョンソンはその痛みと再生のプロセスを代弁することに重責を感じつつ、演じる意味を“愛”という言葉で表現した。

ベニー・サフディ監督の視点-“ラディカル・エンパシー”が導く映画作り

『ザ・スマッシング・マシーン』は、ベニー・サフディが兄のジョシュ・サフディと離れて初めて手がけた長編監督作である。サフディ兄弟はこれまで『グッド・タイム』(2017年)や『アンカット・ジェム』(2019年)といった緊張感あふれるスリラーを世に送り出してきたが、本作は新たな挑戦として、実在の人物を題材に“人間の内面”を描き出す。

ヴェネツィアに向かう前、監督は公式声明で作品に込めた思いをこう綴っている。

「“ザ・スマッシング・マシーン”という言葉は視覚的に完璧で、支配と破壊のイメージを簡単に呼び起こす。マーク・ケアーは本当にスマッシング・マシーン(破壊者)だった。彼の強さはリング外にも表れていた。なぜなら彼は自分の感情を説明しようとする独特の能力を持っていたからだ……」。

さらにサフディは、映画制作にあたり大切にした考えを次のように説明している。

ドウェイン、エミリー、そして僕は『本当にマーク・ケアーであるとはどういうことか?本当にドーン・ステイプルズであるとはどういうことか?』といった考えを持ち続けた。僕たちは自分たちの感情のように感じられる方法でこれらのキャラクターに共感したかった。僕はこれを一種のラディカル・エンパシー(根本的共感)と呼ぶことになった」。

サフディにとって、本作は単なる伝記映画ではなく、“共感そのものを体験させる映画”であることが重要だった。その理念は、ジョンソンとブラントという俳優陣の献身によって形となり、観客にとっても記憶に残る作品になることが期待されている。

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