映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』完成報告会が“廃墟”と化した丸の内TOEIで開催された。
『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊、台湾の名女優グイ・ルンメイ、そして『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也監督がタッグを組んだ日台米合作映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』。その完成報告会見が、7月に閉館したばかりの丸の内TOEIにて開催された。廃墟を研究する主人公を描いた本作の世界観とリンクするかのような場で、3人は作品への想いを語り合った。
閉館直後の劇場で完成報告会見-廃墟を舞台に作品世界と共鳴
本作『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の完成報告会見は、8月5日(火)、営業終了から間もない“廃墟”と化した丸の内TOEIにて実施された。登壇したのは、主演を務めた西島秀俊、台湾から来日したグイ・ルンメイ、そして監督・脚本を手がけた真利子哲也の3名。会場となった丸の内TOEIは、7月27日に惜しまれつつ閉館しており、主人公が“廃墟”を研究対象とする本作のテーマと重なる選定が話題を呼んだ。

西島秀俊、『Dear Stranger』会見にて ©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
舞台に登場した西島は、「力強い作品が完成しました」と挨拶。真利子監督も「西島さんとルンメイさんと日本でこうして舞台に立てることが嬉しい」と語り、喜びをにじませた。さらに、ルンメイは「みなさんこんにちは、私はルンメイです、どうぞよろしくお願いします」と流暢な日本語で挨拶し、観客を驚かせた。
国境を越えたコラボと脚本への共鳴-出演の決め手とは
会見ではまず、本作への出演を決めた理由について語られた。西島秀俊は「真利子監督のファンだったのでとにかくご一緒したいと思いました」と語りつつ、脚本に込められたテーマについても言及。「文化の衝突や家族の関係の難しさという、今社会が直面している問題、だけど解決方法が見つかっていないというテーマが多く含まれていて、自分自身もこの作品と向き合ってみたいという思いが生まれました」と振り返った。

グイ・ルンメイ、『Dear Stranger』会見にて ©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
一方、グイ・ルンメイも「監督からオファーがあった時に光栄に思いました」と感謝の意を示しつつ、「今回の脚本には、廃墟というモチーフや、人形を用いて登場人物たちの内面を特別な方法で表現しようとしている素晴らしさを感じました」と独特の世界観に惹かれたと明かす。「二人は国籍も言葉も違うけれども愛があるから結ばれた。しかしそこには隔たりがあって、どう向き合っていくのか、乗り越えていくのかというところにとても心惹かれてこの作品に参加したいと思いました」と語り、作品に込められた愛と葛藤の物語に深く共感したことをうかがわせた。
現場で生まれた絆-演技と演出の化学反応
本作で初めて顔を合わせた西島秀俊、グイ・ルンメイ、真利子哲也監督の三人。現場では、言語や文化の違いを超えて深い信頼関係が育まれた様子が語られた。

真利子哲也監督、『Dear Stranger』会見にて ©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
真利子監督は西島について「映画に対する愛情がすごく強いという印象で、信頼できる方だと感じていました」と明かし、「ボロボロになる役が似合う印象があって、言語が何であっても、言葉に頼らず役を生き抜いてくれる印象がありました」と称賛。ルンメイに対しても、「繊細なことができる女優さんであり、強さも持っていらっしゃる」と俳優としての力量を評価し、「全てのことに献身的で全力でやってくれる、何もかも空っぽで挑んでくれるすごい俳優さんです」と敬意を込めた。
西島も、ルンメイの俳優としての姿勢に感銘を受けた様子で、「1ヶ月半の撮影期間中、休みの日も含めて準備を丁寧にやっていらっしゃっていました」「改めて自分がどういう演技が、どういう俳優が理想だったのかということを、見つめ直す機会を与えてくださった」と振り返り、「本当にすばらしい俳優さんです」と称えた。
それを受けたルンメイは「西島さんはとても落ち着いていて冷静なのですが、心の中には無尽の情熱が渦巻いていると思うんです」と語り、「西島さんは大きな木で、その下で私は思う存分遊ぶことができる」と例えながら、共演者としての信頼と感謝を口にした。
英語での演技とNYロケ-言葉と文化を超えて

『Dear Stranger』会見にて ©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
全編ニューヨークロケで撮影された本作は、俳優たちにとっても多国籍チームとの国際共同制作という新たな挑戦となった。西島秀俊は、「雪が降っているシーンは本当に降っていて、寒さが想像以上でした」と当時の過酷な状況を振り返りつつ、「人がかつて生きていた、これからは忘れ去られていくであろう場所でロケをしていたのは非常に印象深い」と撮影地に込められた物語性について語った。
一方、グイ・ルンメイは、ニューヨークという街に対して「るつぼのような街。なんでも受け入れるような街だと思いました」と印象を語りながら、「その反面、人間一人一人が孤独なんだと思います。この夫婦ふたりもそうなんだなと思いました」と作品と街の空気の共鳴について触れた。
また、全編ほぼ英語で進行する本作について、真利子哲也監督は「第三ヶ国語を入れることによって、夫婦間の少しのすれ違いを描くのに有効でした」と意図を説明。西島は「現場に入った瞬間に不安はなくなりました。内面に集中してその後に言語がついてくる感じになりました」と語り、映画という“共通言語”による一体感を強調した。
さらに、ルンメイは「日本語はニュアンスや行間の表現を重んじる言語。監督の本当に言いたかった内容をキャッチして、英語の中に溶け込むようにさせていたと思います」と、脚本の言葉を深く理解し、演技に生かしたプロセスを明かした。
ラストは“震える映画”-観客へのメッセージ

『Dear Stranger』会見にて ©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
完成報告会見の終盤では、3人が本作に込めたメッセージや観客への想いを語った。真利子哲也監督は、物語の着想について「コロナ禍になって世界が一変して、全てが失われて変わった経験をみなさんされていると思うんです。それをきっかけに夫婦を通して『愛』を描きたいと思った」と明かす。その象徴として登場する“廃墟”と“人形劇”の要素についても、「滞在時に大きな人形で演じる大人向けの人形劇がカルチャーショックでした。身体的な表現がすばらしいルンメイさんなので、ぜひ取り入れてみたいと思ったんです」と背景を語った。
物語のクライマックスについて、監督は「観る人の立場によって印象が変わる映画なので、観た人と一緒に語り合ってくれると嬉しいです。自分の中でもラストが震える映画になっていますのでどうぞお楽しみください」と呼びかけた。
グイ・ルンメイは「本作での二人の関係性において様々な課題、問題を提起して崩れても、結局は愛がある。それぞれの立場から見て感じ取っていただけたらと思います」と語り、観客の視点によって多様な解釈ができる作品であることを強調した。
最後に西島秀俊は、「過去に囚われてなかなか抜け出せない人、自分が生きていくうえでかけがえのないものが周りから理解されない人、やりたいことと実際の生活のバランスが取れない人。今、懸命に生きている人にぜひ観ていただきたいです」と語り、「ある人には希望の光に見えるかもしれないし、ある人には何も解決しないように見えるかもしれないけれど、ラストは不思議な爽快感がある映画」と締めくくった。
『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は9月12日(金)TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー。
作品情報
作品タイトル:『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』
公開日:9月12日(金)
出演:西島秀俊 グイ・ルンメイ
監督・脚本:真利子哲也
配給:東映
©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
