『マンダロリアン』『THE LAST OF US』『ゲーム・オブ・スローンズ』──これらの話題作を通じて、いまや“静かなカリスマ”として確固たる地位を築いた俳優ペドロ・パスカル。2025年7月25日(金)に日米同時公開となるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』では主人公リード・リチャーズ役を演じ、次期アベンジャーズの顔としての期待も高まっている。
本記事では、そんな彼のキャリアを彩る代表作の数々を振り返りながら、パスカルの魅力と軌跡を紐解いていく。
- 『クモ男の復讐』(2001)-数秒だけの“ゴスな彼”から始まった
- 『ゲーム・オブ・スローンズ』(パスカルの出演は2014年)-わずか7話で爪痕を残した“赤い毒蛇”
- 『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)-西部のスパイ、華麗にして危険なエージェント・ウイスキー
- 『マンダロリアン』(2019〜)-顔なきヒーローに宿る静かな父性
- 『ワンダーウーマン 1984』(2020)-カオスと人間味を宿すヴィラン像
- 『THE LAST OF US』(2023〜)-壊れた父が見せた“愛の選択”
- 『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024)-戦場に立つ知性と苦悩のアンチヒーロー
- 『野生の島のロズ』(2024)-声だけで魅せる“ずる賢くも心優しい”キツネの存在感
- 『Materialists』(2025)-“心あるミリオネア”を体現するペドロ・パスカルの繊細な演技
- 『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』-知性と父性で挑む“新たなミスター・ファンタスティック”
『クモ男の復讐』(2001)-数秒だけの“ゴスな彼”から始まった
2001年のテレビ映画『クモ男の復讐(Earth vs. the Spider)』は、ペドロ・パスカルにとって記録上の長編映画デビュー作。演じたのは「Goth Guy」(ゴシックな男性)というクレジット名のみの端役で、画面には数秒しか映らない“ゴス風の若者”として登場する。セリフはほとんどなく、映像内でもほぼ背景扱いだが、IMDbやLetterboxdでは「彼の原点を探るコアファンの間で語られる一瞬」として知られている。

『クモ男の復讐』より
米大手掲示板サイトRedditでは「この出演に気づいたときの喜びがすべて」「一時停止して“いた!”と叫んだ」など、俳優としての出発点を愛でる声があり、パスカルが現在の国際的スターとなった今、“過去のカメオを見つける楽しさ”の対象となっている。作品自体はB級ホラーとして酷評されがちだが、この“目立たない出演”こそ、後に『マンダロリアン』『THE LAST OF US』へと続くキャリアの、ほんのわずかな足跡のひとつとして記憶されている。
『ゲーム・オブ・スローンズ』(パスカルの出演は2014年)-わずか7話で爪痕を残した“赤い毒蛇”
ペドロ・パスカルが世界的な注目を浴びるきっかけとなったのが、HBOの人気シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン4に登場するオベリン・マーテル役だ。異名は“ドーンの赤い毒蛇<レッド・ヴァイパー>”。復讐に燃える王子であり、戦士としての強さと奔放な性愛、そして家族への深い愛情を併せ持つ、シリーズ屈指の魅力的なキャラクターだ。

『ゲーム・オブ・スローンズ』より © 2011–2019 Home Box Office, Inc.
ショーランナーのベニオフ&ワイスは、「危険でセクシーで、情熱に突き動かされる役にふさわしい俳優」としてパスカルを抜擢。わずか7話の登場ながら、彼の演技はファンの記憶に強く残り、「ジューシーな役だった」と称賛されている。
特に話題となったのは第8話での決闘シーン。カリスマ性と戦闘美学が融合した壮絶な一戦は、シリーズ屈指の名場面として語り継がれており、Rotten Tomatoesでも97%の高評価を記録した。パスカルはこの役を「人生を変えた」と語っており、愛と怒り、哀しみを体現する複雑な人物像を、わずかな出演時間で鮮烈に刻み込んだ。まさにキャリアの転機となる圧巻のパフォーマンスだった。
『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)-西部のスパイ、華麗にして危険なエージェント・ウイスキー
スパイアクションの続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年)で、ペドロ・パスカルが演じたのはアメリカ組織「ステイツマン」のエージェント、ウイスキーことジャック・ダニエルズ。鞭と銃を駆使するカウボーイ風のスパイで、英国紳士とは対照的な豪快なスタイルで観客を魅了した。Collider紙は「肉弾戦に情熱を燃やす“クールなカウボーイ”」と称し、彼の遊び心とスタイリッシュな動きが作品の見どころのひとつだと紹介している。

『キングスマン:ゴールデン・サークル』より ©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
ファンの間でも、「戦闘シーンが抜群にかっこいい」「彼の登場シーンが毎回楽しみ」といった声が相次ぎ、“セクシーなスパイ”というキャラクター像が高く評価された。一方で、「もっと背景が掘り下げられていれば」との意見もあり、強い存在感ゆえの物足りなさを感じた視聴者も少なくない。
とはいえ、限られた出番のなかでウィスキーというキャラクターにカリスマと軽妙さを刻んだパスカルの演技は、作品にユニークな彩りを添える存在として際立っていた。アクションとユーモア、そして裏切りのドラマを併せ持つその役どころは、彼のフィルモグラフィーにおいても異彩を放つ一本である。
『マンダロリアン』(2019〜)-顔なきヒーローに宿る静かな父性
ディズニープラスの大ヒットシリーズ『マンダロリアン』で、ペドロ・パスカルはディン・ジャリン(通称“マンダロリアン”)という孤高の賞金稼ぎを演じている。顔を覆うマスクと重厚なアーマーに身を包みながら、「The Way(我らの道)」という信念を貫く姿は、現代の“フェイスレス・ヒーロー”像として高く評価されている。
【動画】『マンダロリアン』予告編
パスカルは2018年にジョン・ファブローから声をかけられ、台本も役名も伏せられた状態でミーティングに参加。そこで自身が主人公を演じることを知り、驚きとともに喜びを語った。撮影ではスタントチームとの緻密な連携を重ねつつ、「声」「姿勢」「仕草」といった最小限の要素で、深い内面と情感を表現してきた。とりわけベビーヨーダことグローグーとの関係は、守る者と守られる者の境界が揺らぐ“逆転する父性”として描かれ、物語の核心を成している。
マスクを外す場面では、観客の記憶に強く刻まれる静かな表情を披露。「素顔が見える瞬間こそ、彼が誰であるかがわかる」とパスカル自身も語っている。視聴者からは「声だけでも感情が伝わる」「彼が演じているからこそ共感できる」という声が多く、マスクという制約を力に変えるその演技力は、現代ドラマにおける新たなヒーロー像を切り拓いたと言えるだろう。
『ワンダーウーマン 1984』(2020)-カオスと人間味を宿すヴィラン像
ペドロ・パスカルが世界的に注目を集めた作品のひとつが、DC映画『ワンダーウーマン 1984』(2020年)で演じたヴィラン、マックスだ。破綻寸前の石油会社を率いる野心家でありながら、“願いを叶える石”を手にし、世界の均衡を脅かす存在へと変貌していく複雑なキャラクターを演じた。監督パティ・ジェンキンスは「ワンダーウーマンを最も追い詰める存在」と位置づけ、あえて“仕切り屋”である彼を強敵として描いたという。

『ワンダーウーマン 1984』より ©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC Comics
演技にあたってパスカルは、ニコラス・ケイジの怪演が光る『バンパイア・キッス』(88年)を参考に“混沌としたエネルギー”を注入。誇張された表情や狂気すれすれの芝居を通じて、観客に強烈な印象を残した。また、終盤には息子への愛と葛藤が交差する場面もあり、単なる悪役ではなく「人間味あるヴィラン」としての深みを持たせている。Redditでは「彼が出ていなければ最後まで観なかった」という声も多く、批評面でも“作品を救った存在”としてしばしば挙げられている。パスカルの持つカリスマ性と演技の緩急が、作品の浮き沈みを越えて輝きを放った象徴的な役と言えるだろう。
『THE LAST OF US』(2023〜)-壊れた父が見せた“愛の選択”
HBOドラマ『THE LAST OF US』で、ペドロ・パスカルが演じたのは、パンデミック後の荒廃した世界を生き抜くジョエル・ミラー。娘を失った過去を背負いながら、少女エリーと心を通わせていく過程を描いた本作で、パスカルは「冷徹さと父性」を両立させるアンチヒーロー像を作り上げた。ゲーム版に忠実でありながらも、あえて“模倣”を避け、共演者や脚本との対話を通じてキャラクターを再構築したと語っている。

『THE LAST OF US』より © 2023 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved.
第1話から注目を集めたのは、セリフの少ない中での感情表現。目線、姿勢、息遣いだけで「喪失と再生」のドラマを描き出し、多くの批評家が「キャリア最高の演技」と評価。とりわけ第6話では、無言の苦悩と愛の選択が高く評価され、Rotten Tomatoesで100%評価を獲得した。
彼のジョエルは、“世界よりもひとりの少女を選んだ男”として、現代ドラマの象徴的なキャラクターとなった。パスカルは『マンダロリアン』のマスク越しの演技とは真逆に、素顔と感情をさらけ出すことで、父性と脆さの共存を見事に体現している。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024)-戦場に立つ知性と苦悩のアンチヒーロー
ペドロ・パスカルが『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で演じたのは、ローマ帝国の将軍マルクス・アカシウス。前作の英雄マキシマスに師事した過去を持ち、皇帝一族と結婚しながらも、戦争に失望し反旗を翻すという複雑な立場にある人物だ。リドリー・スコット監督作品への初参加となる本作で、パスカルは「これまでで最もフィジカルに厳しい撮影だった」と語っており、モロッコやマルタでの剣術訓練や戦闘シーンに全身全霊を注いだ。

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』© 2024 PARAMOUNT PICTURES.
演技面では、表に出過ぎない抑制された芝居と、内面に葛藤を抱えたアンチヒーロー像が高く評価されている。特にScreen RantやEWでは「静かに燃えるような存在感」「政治と戦場の間で揺れる知的なカリスマ」といった描写が目立つ一方で、「物語上の掘り下げがやや不足していた」との声もある。実際、redditでは「もっと出番が欲しかった」という意見や、「彼の存在が映画に陰影を与えた」という賛辞が並んでいる。
主人公ルキウスを演じるポール・メスカルを中心に据えた構成の中で、パスカルは“主役ではないが作品に厚みを与える男”として印象的な役割を担っている。マキシマスの意志を継ぐでも壊すでもなく、新たな時代の矛盾を体現する将軍として、彼の姿は記憶に残る存在となった。
『野生の島のロズ』(2024)-声だけで魅せる“ずる賢くも心優しい”キツネの存在感
ドリームワークスのアニメーション映画『野生の島のロズ』で、ペドロ・パスカルが声を務めたのは、キツネのチャッカリ(Fink)。ずる賢く臆病でありながら、本質的には優しく、ロボットのロズや雁の子キラリと共に“擬似家族”の一員として物語を支える重要なキャラクターだ。監督のクリス・サンダースは「パスカルの遊び心とユーモアがチャッカリに命を吹き込んだ」と語り、彼の声の演技が作品に温かみとユーモアを加えたと評価している。
【動画】『野生の島のロズ』予告編
批評家からも「ずる賢さと大きな心の同居」「表現力豊かな声に心を射抜かれた」と称賛の声が多く、RedditやLetterboxdでも「画面を独占する魅力」との声が上がっている。主役ではないながらも、チャッカリの存在が作品に厚みを加え、家族愛や成長の物語をより感情豊かに描き出す要素として機能している。パスカルの演技は、“声だけ”という制約を逆手に取った繊細で躍動感あるパフォーマンスで、観客の記憶に強く残るキャラクターを創り上げた。
『Materialists』(2025)-“心あるミリオネア”を体現するペドロ・パスカルの繊細な演技
セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)とA24による恋愛ドラマ『Materialists』でペドロ・パスカルはダコタ・ジョンソン、クリス・エヴァンスと共演。パスカルは富・品格・情緒のバランスを兼ね備えた理想的存在、ハリーを演じた。

『Materialists』より © A24
表層的には完璧な男性だが、自己の弱さを受け入れる繊細さも描かれる。Latina MediaやEsquireをはじめとする各種レビューでは「静かなカリスマ」「感情の軸」としてパスカルの起用が高く評価されており、作品全体に温もりと信頼感をもたらす。
華やかさではなく、抑制された演技で魅せる“成熟したロマンスの器”としてのハリー像は、まさにパスカルならではの到達点といえる。
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』-知性と父性で挑む“新たなミスター・ファンタスティック”
2025年7月25日(金)に日米同時公開されるMCU最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』で、ペドロ・パスカルが演じるのはリーダーにして知性の象徴、リード・リチャーズ(ミスター・ファンタスティック)。これまでヨアン・グリフィズ(2005年版)やマイルズ・テラー(2015年版)が演じてきた役柄に、今回パスカルが挑むことで、MCUフェーズ6の幕開けを担う“新たな顔”として大きな注目が集まっている。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』より、ペドロ・パスカル © 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.
パスカルは「体を伸ばす能力」ではなく、「知性と父性」に重きを置いたキャラクター構築を志向。「タコの知性」にヒントを得たというユニークな演技アプローチも話題だ。監督のマット・シャクマンは「次期アベンジャーズのリーダーにふさわしい」と断言し、その存在は単なるヒーローにとどまらず、“MCUの軸”としての重責を担っている。
過去作におけるリード役とは異なり、今回はより感情的かつ人間的な側面が強調されるという。共演者からは「パスカルが入ったことでチームが“家族”になった」との声もあり、作品全体に漂う温度感の変化も期待される。歴代キャストの系譜を継ぎつつ、まったく新しいミスター・ファンタスティック像を提示できるのか──その答えは7月25日、劇場で明らかになる。
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