『聖なるイチジクの種』カンヌ受賞監督が明かす命懸けの撮影秘話-「この映画は完成しない」覚悟で製作に臨む![インタビュー動画あり]

『聖なるイチジクの種』©Films Boutique NEWS
『聖なるイチジクの種』©Films Boutique

イラン反体制派の名匠が語る命懸けの映画作り-『聖なるイチジクの種』が描く現代イランの真実

第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第97回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた『聖なるイチジクの種』。現代イランを舞台に、警察による家宅捜索の標的とされる家族の姿を鮮烈に描き出したモハマド・ラスロフ監督が、撮影時の過酷な状況を語るインタビュー映像が公開された。

反体制的な作品を製作したとして、これまでにも逮捕・投獄を経験してきたラスロフ監督。本作の撮影においても、警察の手が及ぶことを恐れ、自身は撮影現場に足を踏み入れることができず、オンラインでの指揮を余儀なくされた。その後、懲役8年、鞭打ち、財産没収の実刑判決を受けた監督は、2024年にイラン国外への脱出を決意。28日間かけてカンヌ国際映画祭にたどり着き、本作のプレミア上映と受賞という快挙を成し遂げている。

『聖なるイチジクの種』©Films Boutique

『聖なるイチジクの種』©Films Boutique

オンラインで指揮する異例の撮影現場

「この映画が完成することはないだろう、と自分に言い聞かせていました」。インタビュー映像でラスロフ監督は当時を振り返る。撮影中は常に警察の手が及ぶ可能性があり、スタッフやキャストの身の安全も脅かされる状況下で、監督自身が現場に入ることは極めて困難だった。そのため、近くの別の場所からオンラインで撮影を見守り、指示を出すという異例の手法で映画製作を進めることを余儀なくされた。

【動画】『聖なるイチジクの種』モハマド・ラスロフ監督インタビュー

制約の中で見出した表現の自由

このような特殊な状況は、脚本執筆の段階から作品に大きな影響を与えていた。ラスロフ監督は、脚本を書く際にも常に撮影時の制約を考慮しながらストーリーを構築。その中でも、ある”家”のセットには意図的に”独房”のような空間を作り込んだという。「国境を越え、さまざまなジャンルを融合させることを意識しました。批評家から非難されるかもしれないと思いながらも、私はそれを大いに楽しみました。この自由さが私には楽しかった」と、制約の中でこそ見出せた表現の可能性について語っている。

2022年の社会問題を背景に描く現代イラン

本作は2022年に実際に起きた、ある若い女性の不審死をきっかけに発生した市民による政府抗議運動が激化するイランを舞台としている。国家公務に従事する主人公が反政府デモの逮捕者に不当な刑罰を課す役割を担わされる中、家庭内から銃が消失するという事件をきっかけに、家族それぞれの秘密が浮き彫りになっていく。現代イランの社会状況を色濃く反映した物語は、サスペンススリラーとしても高い評価を受けている。

亡命を経て実現したカンヌでの快挙

本作の撮影後、ラスロフ監督は懲役8年、鞭打ち刑、そして財産没収という厳しい実刑判決を受けることとなった。しかし、監督は2024年、命懸けのイラン国外脱出を決意。28日間に及ぶ困難な逃避行の末、第77回カンヌ国際映画祭にたどり着き、本作のプレミア上映に立ち会うことに成功。そしてその場で審査員特別賞を受賞するという劇的な展開を迎えた。さらに2025年に入り、本作は第97回アカデミー賞において国際長編映画賞にノミネートされ、世界的な評価を確固たるものとしている。

作品情報

<STORY>
“ある日、家庭内で1丁の銃が消えた――。”国家公務に従事する一家の主・イマンは20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ夢にまで見た予審判事に昇進。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。しかしある日、家庭内から銃が消えた――。最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、次第に疑いの目は、妻・ナジメ、姉のレズワン、妹・サナの3人に向けられる。誰が?何のために?捜索が進むにつれ互いの疑心暗鬼が家庭を支配する。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす―――。

タイトル:『聖なるイチジクの種』
原題:The Sacred Fig
監督:モハマド・ラスロフ
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ
日本公開:2025年2月14日
2024年|フランス・ドイツ・イラン|167分
©Films Boutique
配給:ギャガ

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む