アカデミー賞女優とヴェネチア映画祭受賞作で、鬼才が挑む新境地-『あの歌を憶えている』2025年2月全国公開
日本映画界でも高い評価を受けてきたミシェル・フランコ監督が、新たな一歩を踏み出した。これまで暴力的な人間の内面を描いてきた監督が、NY・ブルックリンを舞台に2人の心の傷を温かく抱きしめる新作『あの歌を憶えている』を2025年2月21日(金)より全国公開する。第80回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で主演のピーター・サースガードが男優賞を受賞した本作には、『タミー・フェイの瞳』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェシカ・チャステインが、記憶の苦しみに向き合う女性を演じている。
衝撃の新境地-厳しい目線からの人間ドラマへ
暴力的なまでに人間の内面を抉り出してきたフランコ監督が、本作で新たな一面を見せている。『父の秘密』で描いた家庭内の暴力性、『或る終焉』における死の認識、『母という名の女』で打ち砕いた母性神話、そして『ニューオーダー』で描いた社会秩序の崩壊など、これまでの作品群は人々の複雑な闇を容赦なく映し出してきた。しかし本作では、記憶に翻弄される2人の男女を通じて、人間の持つ優しさにも光を当てている。
豪華キャストが織りなす記憶の物語
主演を務めるジェシカ・チャステインは、ソーシャルワーカーとして13歳の娘と暮らすシルヴィアを演じる。対するピーター・サースガードは、若年性認知症による記憶障害を抱えるソール役で繊細な演技を披露し、ヴェネチア国際映画祭で高い評価を得た。さらに、シルヴィアの妹オリヴィア役にメリット・ウェヴァー、娘アナ役にブルック・ティンバー、母親サマンサ役にジェシカ・ハーパーという実力派キャストが脇を固めている。
その中で、フランコ監督は従来の手法を完全に捨て去ったわけではない。性的暴行、ストーカー行為、アルコール依存症、親子の不信感など、トラウマの連鎖は続く。しかし今回は、それらの暗部を通り抜けた先にある希望の光を、無駄な説明やフラッシュバックを排除しながら、登場人物たちの表情のみで伝えていくのである。
記憶と音楽が紡ぐ心の交差点
作品の重要な要素として、全世界で1000万枚以上のセールスを記録したプロコル・ハルムの「青い影」が物語に深みを与えている。この楽曲は単なる背景音楽ではなく、記憶を失っていく男性と、忘れたい記憶を抱える女性の心情を象徴的に表現している。監督は従来の作風である冷徹な観察眼を保ちながらも、音楽という新たな表現手段を効果的に取り入れることで、より豊かな感情表現を実現している。
メキシコの巨匠が描くNYの人間模様
これまでメキシコを舞台に、人間の闇を描き続けてきたフランコ監督が、初めてニューヨーク・ブルックリンを舞台に選んだことにも大きな意味がある。多様な人種や文化が交錯する街で、孤独を抱えた2人の出会いを描くことで、普遍的な人間ドラマとしての深みを増している。様々な解釈の可能性を残しながら、人間の残酷さと寛容さ、温かさと辛さという相反する要素を同時に映し出すことに成功しているのである。
作品情報
<STORY>
世間を恐れていたふたりの心の殻は、ゆっくりと溶けていくー
ソーシャルワーカーとして働き、13歳の娘とNYで暮らすシルヴィア。若年性認知症による記憶障害を抱えるソール。それまで接点もなかったそんなふたりが、高校の同窓会で出会う。家族に頼まれ、ソールの面倒を見るようになるシルヴィアだったが、穏やかで優しい人柄と、抗えない運命を与えられた哀しみに触れる中で、彼に惹かれていく。だが、彼女もまた過去の傷を秘めていた─。
タイトル:『あの歌を憶えている』
原題:Memory
監督:ミシェル・フランコ
脚本:ミシェル・フランコ
出演:ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード、メリット・ウェヴァー、ブルック・ティンバー、エルシー・フィッシャー、ジェシカ・ハーパー
2025年2月21日(金)より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
2023年|メキシコ・アメリカ合作|英語|100分
©DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.memory-movie-jp.com
