映画『トワイライト〜初恋〜』(2008)を紹介&解説。
映画『トワイライト〜初恋〜』概要
映画『トワイライト〜初恋〜』は、ステファニー・メイヤーのベストセラー小説を、キャサリン・ハードウィック監督が映画化したロマンス・ファンタジー。雨の多いワシントン州フォークスに引っ越してきた少女ベラ・スワンが、吸血鬼の青年エドワード・カレンと出会い、危険をはらんだ禁断の恋に惹かれていく。主演はクリステン・スチュワートとロバート・パティンソン。後に大ヒットシリーズへ発展する『トワイライト』サーガの第1作。
作品情報
| 日本版タイトル | 『トワイライト〜初恋〜』 |
|---|---|
| 原題 | Twilight |
| 製作年 | 2008年 |
| 本国公開日 | 2008年11月21日 |
| 日本公開日 | 2009年4月4日 |
| ジャンル | 恋愛/ドラマ/ファンタジー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | ステファニー・メイヤー『トワイライト』(小説) |
| 上映時間 | 122分 |
| 監督 | キャサリン・ハードウィック |
|---|---|
| 脚本 | メリッサ・ローゼンバーグ |
| 製作 | ウィク・ゴッドフリー/グレッグ・ムーラディアン/マーク・モーガン |
| 製作総指揮 | カレン・ローゼンフェルト/マーティ・ボーウェン/ガイ・オセアリー/ミシェル・インペラート・スタービル |
| 撮影 | エリオット・デイヴィス |
| 編集 | ナンシー・リチャードソン |
| 作曲 | カーター・バーウェル |
| 出演 | クリステン・スチュワート/ロバート・パティンソン/ビリー・バーク/ピーター・ファシネリ/エリザベス・リーサー/テイラー・ロートナー/アシュリー・グリーン/ニッキー・リード/ジャクソン・ラスボーン/ケラン・ラッツ/カム・ジガンデイ/エディ・ガテギ/レイチェル・レフィブレ/アナ・ケンドリック |
| 製作 | サミット・エンターテインメント/テンプル・ヒル・エンターテインメント/マーベリック・フィルムズ/インプリント・エンターテインメント |
| 配給 | サミット・エンターテインメント(米国)/アスミック・エース、角川エンタテインメント(日本) |
あらすじ
アリゾナ州フェニックスで暮らしていた高校生ベラ・スワンは、母の再婚をきっかけに、父チャーリーが住むワシントン州フォークスへ移り住む。慣れない土地と学校生活の中で、ベラは美しくも謎めいた青年エドワード・カレンと出会う。最初は距離を置こうとするエドワードだったが、ベラは彼の超人的な力と不思議な行動に違和感を覚えていく。
やがてベラは、エドワードが人間ではなく吸血鬼であることを知る。それでも彼女は恐怖よりも強い想いに突き動かされ、エドワードもまた、自らの本能と戦いながらベラを守ろうとする。人間と吸血鬼という越えがたい境界の中で、2人の恋は深まっていくが、ベラの存在は危険な吸血鬼たちを引き寄せ、命を懸けた逃走劇へと発展していく。
主な登場人物(キャスト)
ベラ・スワン(クリステン・スチュワート):アリゾナ州からフォークスへ引っ越してきた高校生。内向的で控えめだが、自分の感情には正直で、エドワードの正体を知った後も彼への想いを止められなくなる。
エドワード・カレン(ロバート・パティンソン):カレン家の一員として人間社会に溶け込む吸血鬼。人間の血を飲まない生き方を選んでいるが、ベラに強く惹かれたことで、愛情と本能の葛藤に苦しむ。
チャーリー・スワン(ビリー・バーク):ベラの父で、フォークスの警察署長。無口で不器用ながら娘を大切に思っており、久しぶりに一緒に暮らすベラを静かに見守る。
カーライル・カレン(ピーター・ファシネリ):カレン家の父親的存在で、医師として働く吸血鬼。人間を傷つけない生き方を家族に示し、エドワードたちの精神的支柱となっている。
エズミ・カレン(エリザベス・リーサー):カレン家の母親的存在。穏やかで包容力があり、エドワードが選んだベラを温かく受け入れようとする。
アリス・カレン(アシュリー・グリーン):カレン家の一員で、未来を予知する能力を持つ吸血鬼。明るく社交的な性格で、ベラにも親しげに接する。
ロザリー・ヘイル(ニッキー・リード):カレン家の一員。人間であるベラが家族に関わることに警戒心を抱き、当初は冷たい態度を見せる。
ジャスパー・ヘイル(ジャクソン・ラスボーン):カレン家の一員で、感情を操る能力を持つ吸血鬼。人間の血への誘惑をまだ強く感じており、ベラの存在に緊張を見せる。
エメット・カレン(ケラン・ラッツ):カレン家の一員で、力強く陽気な性格の吸血鬼。
ジェイコブ・ブラック(テイラー・ロートナー):ベラの幼なじみ的な存在で、クウィラユーテ族の少年。カレン家にまつわる伝承をベラに語り、彼女がエドワードの正体へ近づくきっかけを作る。
ジェームズ(カム・ジガンデイ):ベラを標的にする流浪の吸血鬼。獲物を追い詰めることに執着する危険な存在で、ベラとカレン家を命懸けの危機へ追い込む。
ヴィクトリア(レイチェル・レフィブレ):ジェームズと行動を共にする吸血鬼。
ローラン(エディ・ガテギ):ジェームズ、ヴィクトリアと共に現れる吸血鬼。
作品の魅力解説
『トワイライト〜初恋〜』の大きな魅力は、人間と吸血鬼という古典的な題材を、ティーンの初恋の高揚感と結びつけた点にある。エドワードは危険な存在でありながら、ベラを傷つけないために自制し続ける。恋愛のときめきと、相手に近づくほど命の危険も増していく緊張感が、作品全体をロマンチックかつサスペンスフルにしている。
舞台となるフォークスの雨、森、薄暗い空気も本作の印象を決定づけている。青みがかった映像や静かな学校生活の描写は、ベラの孤独やエドワードの異質さを際立たせ、派手なファンタジーではなく、現実のすぐ隣に吸血鬼がいるようなムードを生み出している。
また、クリステン・スチュワートとロバート・パティンソンの存在感も重要だ。ベラの不安定で繊細なまなざし、エドワードの近寄りがたさと切実さが、物語の中心にある“危うい純愛”を支えている。2人のスター性は本作をきっかけに世界的な注目を集め、シリーズ全体の人気を牽引していった。
さらに本作は、2000年代後半以降のヤングアダルト原作映画ブームを語るうえでも欠かせない作品。吸血鬼もの、学園ロマンス、家族ドラマ、ファンタジーの要素を組み合わせ、熱狂的なファンコミュニティを生み出した点で、単なる恋愛映画を超えたカルチャー現象としての意味も持っている。
ストーリー解説(ネタバレ)
母の再婚をきっかけに、ベラは雨の町フォークスへ
物語は、アリゾナ州フェニックスで暮らしていた17歳の少女ベラ・スワンが、母レネのもとを離れるところから始まる。母はマイナーリーグの野球選手フィルと再婚しており、ベラは母が新しい夫と自由に過ごせるように、自分から父チャーリーの住むワシントン州フォークスへ移ることを選ぶ。
フォークスは、フェニックスとは対照的に雨が多く、空は曇り、森に囲まれた小さな町。ベラにとっては、明るく乾いたアリゾナとはまったく違う場所であり、物語の空気もここから一気に湿度を帯びていく。
父チャーリーはフォークスの警察署長で、娘を大切に思ってはいるものの、感情表現は不器用。久しぶりに一緒に暮らすことになった親子の間には、どこかぎこちなさが残っている。それでもチャーリーは、ベラのために車を用意し、新生活を支えようとする。
その車は、チャーリーの友人ビリー・ブラックを通じて用意された古いピックアップトラックだった。ベラはそこで、ビリーの息子ジェイコブ・ブラックとも再会する。ジェイコブは明るく人懐っこい少年で、ベラにとってフォークスで数少ない、昔から顔を知っている存在となる。
転校初日、ベラは謎めいたカレン家に目を奪われる
フォークス高校に転入したベラは、すぐに周囲の注目を集める。小さな町では転校生は珍しく、クラスメイトたちはベラに興味津々だった。ジェシカ、アンジェラ、エリック、マイクたちは彼女を歓迎し、ベラは戸惑いながらも学校生活に入っていく。
しかし、ベラが最も強く意識することになるのは、クラスメイトたちではなく、食堂に現れたカレン家の若者たちだった。ロザリー、エメット、アリス、ジャスパー、そしてエドワード・カレン。彼らは全員が驚くほど整った容姿を持ち、どこか人間離れした雰囲気をまとっている。
カレン家の子どもたちは、地元の医師カーライル・カレンと妻エズミに引き取られた養子たちとして知られている。だが、彼らは他の生徒たちとはあまり交わらず、まるで自分たちだけの世界にいるように見える。
なかでもベラが強く惹きつけられるのが、エドワードだった。端正な顔立ちと近寄りがたい雰囲気を持つ彼は、ベラの視線を一瞬で奪う。だが、2人が生物の授業で隣同士になったとき、エドワードはベラを見て明らかに動揺し、まるで彼女を避けるような態度を取る。
ベラにとっては、初対面でなぜそこまで嫌悪されるのか理解できない。エドワードは顔をこわばらせ、授業中も苦しそうにしている。ベラは自分が何かしたのかと戸惑うが、理由はまったくわからないままだ。
突然消えたエドワード、そして再会
生物の授業での奇妙な態度のあと、エドワードはしばらく学校に姿を見せなくなる。ベラは自分が原因なのではないかと気にするが、周囲は詳しい事情を知らない。やがてエドワードは何事もなかったかのように戻ってくる。
再会したエドワードは、以前のような露骨な拒絶を見せず、ベラに話しかける。最初の態度とはまるで違い、彼は穏やかで知的、そしてどこか挑発的でもある。ベラは戸惑いながらも、彼との会話に引き込まれていく。
エドワードはベラの考えていることを読み取れないことに興味を示す。彼には人の心を読む能力があるが、なぜかベラの心だけは読めない。この特異性が、エドワードにとってベラを特別な存在にしていく。
一方、ベラもまたエドワードに対して強い疑問を抱き始める。彼は普通の高校生とは思えないほど美しく、冷たく、そしてどこか危険な気配をまとっている。ベラは恐れよりも好奇心を強め、彼の正体へと少しずつ近づいていく。
事故現場で見せた、ありえない力
ベラがエドワードの異常さを決定的に意識するのは、学校の駐車場で起きた事故だった。凍った路面でコントロールを失った車が、ベラに向かって突っ込んでくる。逃げる間もなく、彼女は命の危険にさらされる。
その瞬間、離れた場所にいたはずのエドワードが一瞬でベラの前に現れ、車を素手で止める。車体は大きくへこみ、ベラは助かるが、彼がどうやってあの距離を一瞬で移動したのか、どうして素手で車を止められたのか、説明はつかない。
ベラはエドワードに問い詰めるが、彼は明確な答えを避ける。周囲には事故の混乱が広がり、エドワードはまるで何もなかったかのように振る舞う。だが、ベラは自分が見たものを忘れられない。
病院では、カーライル・カレンが医師として登場する。カーライルは落ち着いた態度でベラの状態を確認し、カレン家が町の中で信頼される存在であることも示される。一方で、ベラの中ではカレン家全体への疑問が深まっていく。
エドワードはベラに、自分と関わらないほうがいいと忠告する。しかしその言葉は、ベラを遠ざけるどころか、彼女の好奇心と関心をさらに強めていく。
ラ・プッシュで語られる、カレン家の伝承
ベラは友人たちとともに、海辺のラ・プッシュを訪れる。そこはクウィラユーテ族の土地であり、ジェイコブ・ブラックの暮らす場所でもある。海辺の場面では、フォークス高校の生徒たちの何気ない青春の空気と、物語の奥に潜む異質な伝承が重なっていく。
ベラはジェイコブと会話する中で、カレン家にまつわる古い言い伝えを聞く。ジェイコブは、クウィラユーテ族とカレン家の間にある因縁、そしてカレン家が“冷たい者たち”と呼ばれる存在に関係していることを語る。
この話は、ベラにとってエドワードの正体に近づく大きな手がかりとなる。もちろんジェイコブ自身がどこまで本気で語っているのか、映画のこの時点では軽い伝承話のようにも見える。だが、ベラはそれを単なる昔話として片づけられない。
エドワードの異常な速さ、車を止めた力、冷たい肌、日差しを避けるような行動。断片的だった違和感が、ジェイコブの語る伝承と結びつき始める。
ポートエンジェルスで再びベラを救うエドワード
ベラは友人たちとドレス選びのため、ポートエンジェルスへ出かける。友人たちが買い物を楽しむ一方で、ベラはひとり本を探しに行き、帰り道で不穏な男たちに囲まれそうになる。
危険が迫る中、エドワードが車で現れ、ベラを救い出す。彼は怒りを抑えきれない様子で、ベラを車に乗せ、その場から離れる。ここでもエドワードは、ベラが危険に巻き込まれる瞬間をまるで察知していたかのように現れる。
その後、2人はレストランで向き合う。エドワードは、周囲の人間の考えが読めることをほのめかす一方で、ベラの心だけは読めないと明かす。ベラはエドワードが普通の人間ではないという確信を深めていく。
この場面で、2人の関係は一段階進む。エドワードはベラを避けたいと思いながらも、彼女が危険にさらされれば放っておけない。ベラもまた、彼が危険な存在かもしれないと感じながら、その危うさに惹かれていく。
ベラはエドワードの正体にたどり着く
ポートエンジェルスでの出来事の後、ベラは本格的にエドワードの正体を調べ始める。彼の特徴や行動、ジェイコブから聞いた伝承、インターネットや書物で得た知識を照らし合わせ、ある結論にたどり着く。
エドワードは吸血鬼なのではないか。
ベラは森の中でエドワードと向き合い、自分の考えを彼にぶつける。エドワードは否定せず、自分が人間ではないことを認める。彼は吸血鬼であり、驚異的な力と速さを持ち、人の心を読む能力も備えている。
ただし、カレン家は人間の血を飲まない。彼らは動物の血だけで生きる道を選んでおり、自分たちなりの倫理を守りながら人間社会の中で暮らしている。エドワードは自分たちを“普通の吸血鬼”とは違う存在として説明する。
同時に、エドワードはベラの匂いが自分にとって特別に抗いがたいものであることも明かす。最初の生物の授業で彼が苦しげにしていたのは、ベラを嫌悪していたからではなく、彼女の血の匂いに強烈に引き寄せられ、自制するために必死だったからだった。
この告白によって、冒頭から続いていたエドワードの不可解な態度の意味が明らかになる。彼はベラに惹かれていたが、それ以上に彼女を傷つけてしまうことを恐れていた。
危険を知っても、ベラはエドワードから離れない
エドワードはベラに、自分がどれほど危険な存在なのかを理解させようとする。彼は自分の力を見せ、普通の人間とは比較にならない存在であることを示す。森の中を高速で移動し、圧倒的な身体能力を見せることで、ベラとの間にある決定的な違いを突きつける。
だが、ベラは逃げない。彼女はエドワードが吸血鬼だと知っても、彼を恐れて距離を置くことはしない。むしろ、これまで以上に彼の孤独や苦悩を理解しようとする。
エドワードもまた、ベラを遠ざけなければならないと分かっていながら、彼女への想いを抑えられなくなっていく。2人の関係はここから、単なる好奇心や憧れではなく、互いに危険を承知で近づいていく禁断の恋へと変わっていく。
本作のロマンスは、この“惹かれてはいけない相手に惹かれる”構図によって強い緊張感を帯びる。ベラにとってエドワードは、自分を守ってくれる存在であると同時に、いつ自分を傷つけてもおかしくない存在でもある。その二面性が、2人の関係を甘くも危ういものにしている。
カレン家の一員たちと、ベラの受け入れ
ベラとエドワードの関係が深まるにつれ、ベラはカレン家の存在にも踏み込んでいく。エドワードはベラを家に連れて行き、家族に紹介する。
カレン家の屋敷は、森の中に建つ開放的で美しい家。吸血鬼の住まいという古典的なイメージとは異なり、明るく洗練された空間として描かれている。この演出によって、カレン家が“人間社会から完全に隔絶された怪物”ではなく、人間の生活様式に寄り添おうとしている存在であることが強調される。
カーライルとエズミは、ベラを比較的穏やかに迎え入れる。アリスもベラに親しげで、彼女を歓迎する姿勢を見せる。エメットも陽気に接し、場を和ませる存在として描かれる。
一方で、ロザリーはベラの存在に強い不快感を示す。人間であるベラがカレン家の秘密に近づくことは危険であり、家族全体を危機にさらす可能性があるからだ。ジャスパーもまた、人間の血への誘惑を完全には抑えきれていないため、ベラの存在に緊張を見せる。
カレン家の反応は一枚岩ではない。ベラを受け入れようとする者もいれば、警戒する者もいる。この温度差によって、エドワードとベラの恋が、2人だけの問題では済まないことが示される。
エドワードの部屋で深まる、2人だけの時間
カレン家を訪れたベラは、エドワードの部屋にも入る。そこは、彼の長い時間と孤独を感じさせる空間として描かれる。エドワードは眠る必要がないため、ベッドを持たない。音楽や本に囲まれた部屋は、彼が普通の高校生のように見えて、実際にはまったく違う時間を生きていることを物語っている。
ベラはエドワードの世界を少しずつ知り、エドワードもまた、ベラを自分の内側へ招き入れていく。2人の関係は、学校での視線や会話から、より親密で個人的なものへと変化していく。
ただし、エドワードは常に自制している。ベラに近づきたい気持ちと、近づけば傷つけてしまうかもしれない恐れ。その葛藤は、彼の態度の随所に表れている。
ベラは、エドワードの危険性を理解しながらも、彼が自分を守ろうとしていることを感じ取る。人間と吸血鬼という境界を越えて、2人は急速に惹かれ合っていく。
ベラとエドワードの恋は、周囲にも隠せないものになっていく
学校でも、ベラとエドワードの距離は明らかに変化していく。エドワードはベラを送り迎えし、2人は周囲の視線を集めるようになる。これまで他の生徒たちと距離を置いてきたエドワードが、ベラにだけ特別な態度を見せることは、学校内でも目立つ出来事だった。
ベラに好意を寄せていたマイクたちは、その変化に戸惑う。友人たちも、ベラとエドワードの関係を意識せざるを得なくなる。ベラはフォークスに来たばかりの転校生だったが、エドワードとの接近によって、彼女は町の中の“普通ではない世界”に深く関わっていく。
一方、父チャーリーもベラの変化に気づいていく。チャーリーは娘の恋愛に不器用ながらも関心を示し、エドワードに対して父親らしい警戒心をのぞかせる。彼はカレン家を町の名家として知ってはいるが、ベラとエドワードの関係の本当の危うさまでは知らない。
この時点で、ベラの日常はすでに大きく変わっている。フォークスでの新生活は、単なる転校生活ではなく、吸血鬼の世界へと足を踏み入れる物語へ変貌している。
雷雨の中の野球と、流浪の吸血鬼たちの出現
物語の中盤、ベラはカレン家の特異な日常をさらに知ることになる。エドワードたちは、雷雨の夜に野球をする。普通の野球ではなく、吸血鬼の超人的な力を前提にした、異様なまでにスケールの大きい野球だ。
彼らが雷の鳴る日に野球をするのは、打球音があまりにも大きいため、雷鳴に紛れさせる必要があるからである。この場面は、カレン家が人間社会の中で目立たないように暮らしながらも、本質的には人間とはまったく違う身体能力を持つ存在であることを、遊びの形で見せる印象的なシーンになっている。
ベラはこの光景を通して、カレン家の“家族らしさ”と“異形性”を同時に見る。彼らは笑い合い、チームで遊び、互いを大切にしている。しかしその一挙手一投足は、人間の常識を超えている。
だが、その穏やかな時間は長く続かない。そこへ、カレン家とは別の吸血鬼たちが現れる。ジェームズ、ヴィクトリア、ローランの3人である。彼らはカレン家のように人間社会に溶け込んで暮らしているわけではなく、各地を渡り歩く流浪の吸血鬼として描かれる。
カレン家は表面上は冷静に応対するが、空気は一気に緊迫する。カーライルは彼らと穏便に接しようとし、カレン家が人間を襲わずに生きていることを示す。一方で、ジェームズたちは明らかに別種の危険をまとっており、ベラの存在がその場にいる全員にとって致命的な弱点になり得ることが徐々に見えてくる。
決定的なのは、風向きが変わった瞬間だった。ジェームズはベラが人間であることに気づく。ベラの匂いを嗅ぎ取った彼は、彼女に強い関心を示す。カレン家はすぐにベラを守る体勢に入るが、その反応は逆に、ジェームズの狩猟本能を刺激してしまう。
ジェームズにとってベラは、ただの獲物ではない。カレン家、とりわけエドワードが必死に守ろうとする存在だからこそ、彼女を狩ることは特別な“ゲーム”になる。ここから物語は、恋の危うさだけでなく、実際に命を狙われる追跡劇へと大きく転じていく。
ジェームズの執着と、カレン家の防衛策
ジェームズは、獲物を追い詰めることに執着する吸血鬼として描かれる。標的を見つけると、ただ空腹を満たすためではなく、狩りそのものを楽しむ。ベラを守ろうとするカレン家の緊張は、彼がどれほど危険な存在かを物語っている。
カレン家はすぐに、ベラをフォークスから逃がす作戦を立てる。エドワードはベラを守りたい一心だが、ベラが父チャーリーのもとにいれば、チャーリーも危険に巻き込まれる。そこでベラは、チャーリーを守るためにも、自分がフォークスを去ったように見せかける必要に迫られる。
この場面で、ベラは父にわざと冷たい言葉をぶつける。母のいるフェニックスへ戻りたい、フォークスにはいられないという趣旨の言葉で、チャーリーを傷つけながら家を出る。彼女の本心ではないが、チャーリーに自分を追わせないため、そして彼をジェームズの標的にさせないための苦渋の選択だった。
チャーリーにとっては、突然娘から拒絶されたようにしか見えない。ベラはそれを分かっていながら、彼を守るために嘘をつく。この展開によって、ベラの恋は単なる少女の初恋ではなく、家族を巻き込む危険な決断へと変わっていく。
一方、カレン家は役割を分担する。エドワードたちはジェームズを追い、アリスとジャスパーはベラを安全な場所へ連れていく。だが、ジェームズは非常に狡猾で、彼らの作戦をかいくぐるようにベラへ近づいていく。
ベラはアリスとジャスパーに守られ、フェニックスへ向かう
ベラはアリスとジャスパーに連れられ、フェニックスへ向かう。フォークスを離れればジェームズの追跡を避けられるという判断だったが、彼はベラの過去や弱点を利用し、さらに心理的に追い詰めていく。
この逃避行の中で重要なのは、アリスの予知能力である。アリスは未来の断片を見ることができるが、その未来は選択によって変化する。彼女の能力はベラを守る手がかりになる一方、ジェームズの行動が確定しきらない以上、完全な安全を保証するものではない。
アリスはやがて、鏡張りのバレエスタジオに関するヴィジョンを見る。そこはベラの過去と結びついた場所であり、ジェームズが彼女を誘い出す舞台になることを示している。物語はここで、ベラの個人的な記憶の空間と、吸血鬼の狩りが重なる形へ進んでいく。
アリスとジャスパーはベラを守ろうとするが、ジェームズは直接対決ではなく、ベラの母レネを利用するような罠を仕掛ける。ベラにとって母は最も大切な存在のひとつであり、彼女が危険にさらされたと思えば、ベラは自分の安全より母を優先してしまう。
ジェームズは、その性格を見抜いていた。ベラが自分を犠牲にしてでも母を助けようとすることを利用し、彼女をひとりで呼び出す。
ジェームズの罠、ベラはひとりでバレエスタジオへ
ベラはジェームズからの連絡を受け、母が捕らえられていると思い込む。実際には、ジェームズはベラの母の声を使い、彼女を誘導していた。ベラはアリスとジャスパーに気づかれないように抜け出し、指定された場所へ向かう。
たどり着いたのは、かつてベラが通っていたバレエスタジオだった。鏡に囲まれた空間は、過去の記憶を思わせる場所であると同時に、逃げ場の少ない閉鎖的な舞台でもある。明るく反射する鏡の中で、ベラはジェームズと対峙する。
そこでベラは、母が実際には捕らえられていないことを知る。ジェームズは、ベラを誘い出すために母の声を利用していただけだった。彼の目的は、ベラを殺すことだけでなく、その過程をエドワードに見せつけることでもある。
ジェームズはベラを追い詰め、彼女の恐怖を楽しむ。彼はカメラを使い、ベラを傷つける様子を記録しようとする。これは、エドワードに対する挑発でもある。ベラを守れなかった事実を突きつけ、彼を苦しめるための残酷な演出だった。
ベラは必死に逃げようとするが、人間である彼女が吸血鬼のジェームズに対抗することはできない。ジェームズは彼女を投げ飛ばし、ベラは鏡や床に叩きつけられて重傷を負う。物語の序盤から続いてきた“危険な恋”の比喩は、ここで現実の暴力として噴き出す。
エドワードが駆けつけ、ジェームズとの死闘へ
ベラが絶体絶命の状況に追い込まれたところへ、エドワードが駆けつける。彼はジェームズに襲いかかり、2人の吸血鬼による激しい戦いが始まる。
この戦いは、人間のベラにはほとんど介入できない領域で展開する。エドワードとジェームズは超人的な力でぶつかり合い、バレエスタジオは破壊されていく。ベラは重傷を負ったまま、その戦いを見届けるしかない。
エドワードにとってジェームズは、単なる敵ではない。ベラを狙い、彼女を苦しめ、さらにその死を自分に見せつけようとした相手である。エドワードの怒りは大きいが、同時に彼はベラを救うことを最優先しなければならない。
やがてカレン家の面々も到着し、ジェームズは追い詰められる。カレン家は協力して彼を倒し、吸血鬼の身体を処理する。ジェームズの脅威はここで排除されるが、ベラの危機はまだ終わっていない。
なぜなら、ジェームズはベラを噛んでいたからである。彼女の体には吸血鬼の毒が入り、放置すればベラ自身も吸血鬼へと変わってしまう可能性がある。
毒を吸い出すエドワード、愛と本能の最大の試練
ジェームズとの戦いの後、ベラは命の危機に瀕する。重傷に加え、噛まれた傷から吸血鬼の毒が体内に広がっていく。カーライルは、毒を吸い出さなければベラを救えないと判断する。
しかし、それを実行できるのはエドワードだった。ベラの血の匂いは、エドワードにとって最初から抗いがたい誘惑だった。彼が初対面で苦しんだ理由も、彼女の血に強烈に引き寄せられたからである。そのエドワードが、ベラの血を口にし、なおかつ途中で止めなければならない。
これは、エドワードにとって最大の試練になる。毒を吸い出すためにはベラの血を吸わなければならない。しかし吸い続ければ、彼は彼女を殺してしまう。愛する相手を救う行為が、そのまま彼女を奪う危険と隣り合わせになっている。
エドワードは必死に自制しながら、ベラの体から毒を吸い出す。ベラは意識が遠のき、痛みと混乱の中にいる。カーライルたちはエドワードに止まるよう促し、彼は本能に抗ってベラから離れる。
この場面は、本作の中心にあったテーマを最も直接的に示している。エドワードはベラを欲しているが、その欲望に従えば彼女を破壊してしまう。だからこそ、彼の愛は“触れたいのに触れすぎてはいけない”という自制によって表現される。
ベラは吸血鬼にはならず、人間として命を取り留める。ジェームズの脅威は去り、エドワードはベラを殺さずに救うことに成功する。
病院で目覚めたベラ、母とエドワードの間で
ベラは病院で目を覚ます。表向きには、彼女は階段から落ち、窓を突き破って大けがをしたという説明になっている。吸血鬼をめぐる真実は隠され、周囲には事故として処理される。
母レネも病院に駆けつける。母はベラを心配し、フェニックスで一緒に暮らすことを望む。ベラにとって母は大切な存在であり、フォークスに来た理由も母の新しい生活を尊重するためだった。
しかし、ベラの気持ちはすでにフォークスに残っている。そこには父チャーリーがいて、そして何よりエドワードがいる。ベラは母のもとに戻るのではなく、フォークスで暮らし続けることを選ぶ。
一方のエドワードは、自分がベラの人生に関わったことで彼女を危険にさらしたと感じている。彼は、ベラのためには自分が離れるべきなのではないかと考える。ベラを愛しているからこそ、彼女を人間の安全な人生へ戻すべきだという葛藤を抱えている。
だが、ベラはエドワードから離れることを望まない。彼女はすでに危険を知り、そのうえで彼を選んでいる。病院の場面は、ジェームズとの事件が終わった後も、2人の関係の根本的な問題が解決していないことを示している。
フォークスへ戻り、日常は一見回復する
事件の後、ベラはフォークスへ戻る。表向きには生活が元に戻ったように見えるが、彼女はすでに普通の高校生の日常から大きく踏み出している。エドワードの正体を知り、カレン家の秘密を知り、自分の命が吸血鬼に狙われる経験までしてしまった。
チャーリーはベラを心配し続けるが、真実を知ることはない。彼にとってベラは、恋愛と事故で大きく揺れた娘に見えている。ベラは父を傷つけたことへの負い目を抱えながらも、秘密を守るしかない。
カレン家もまた、ジェームズを倒したことで一応の平穏を取り戻す。しかしヴィクトリアはまだ残っている。ジェームズの仲間だった彼女は、物語のラストに不穏な影を落とす存在として残される。
この時点で、ベラとエドワードの恋は終わらない。むしろ、命の危険を越えたことで、2人の結びつきはさらに強くなっている。ただし、それは安全な恋ではない。人間と吸血鬼という違い、ベラを狙う外部の脅威、そしてベラ自身の望みが、次の物語へつながる火種として残る。
プロムの夜、ベラはエドワードに連れ出される
物語の終盤、エドワードはベラをプロムへ連れて行く。ベラは足をけがしているため、ドレスアップしながらもギプス姿で現れる。序盤の彼女がフォークス高校になじめず、目立つことを避けようとしていたことを思うと、プロムに参加する姿はひとつの変化でもある。
エドワードはベラをエスコートし、2人は会場へ向かう。学校行事という日常的な場面でありながら、彼らの間には普通の高校生カップルとは異なる重さがある。ベラは死にかけ、エドワードは彼女を失いかけた。その経験を経た後のプロムは、単なるロマンチックな締めくくりではなく、2人がまだ一緒にいることの確認でもある。
そこへジェイコブ・ブラックが現れる。彼は父ビリーからの伝言として、ベラにエドワードと別れるよう促す。ジェイコブ自身はこの時点で、カレン家の本質を完全に理解しているわけではないが、クウィラユーテ族の伝承とカレン家への警戒は、今後の物語に関わる重要な要素として示される。
ベラはジェイコブの言葉を受け止めながらも、エドワードを選ぶ姿勢を変えない。ジェイコブの登場は、ベラ、エドワード、ジェイコブの関係がこの先さらに大きな意味を持つことを予感させる。
ベラの願いと、エドワードの拒絶
プロムの夜、ベラはエドワードに、自分も吸血鬼になりたいという願いを示す。ジェームズに噛まれたことで吸血鬼になる可能性があったにもかかわらず、エドワードは毒を吸い出し、彼女を人間として救った。ベラにとってそれは、エドワードと同じ時間を生きる機会を失ったことでもある。
ベラは、エドワードと永遠に一緒にいるためには、自分も吸血鬼になるしかないと考え始めている。彼女の願いは、単なる憧れではなく、人間として年を取り、いつかエドワードと離れてしまうことへの不安にも根ざしている。
しかしエドワードは、ベラを吸血鬼にすることを拒む。彼にとって吸血鬼としての存在は、祝福ではなく呪いに近い。ベラを愛しているからこそ、人間としての人生を奪いたくない。彼女に普通の未来、老いていく時間、家族を持つ可能性を残したいと考えている。
この対立は、2人の恋の根本にある価値観の違いを浮かび上がらせる。ベラは永遠を望み、エドワードは彼女の人間性を守ろうとする。愛し合っているにもかかわらず、同じ未来をどう描くかについては決定的な隔たりがある。
エドワードはベラに噛みつくふりをするように首元へ顔を近づけるが、実際には彼女を吸血鬼にはしない。彼はベラを抱き寄せ、2人はプロムの夜を過ごす。甘美な場面でありながら、その奥には未解決の問題が横たわっている。
ヴィクトリアの視線が示す、終わらない脅威
物語は、ベラとエドワードの関係がひとまず結ばれたように見える形で終わる。ジェームズは倒され、ベラは生き延び、エドワードは彼女のそばにいることを選んだ。プロムの夜は、2人の恋の成就を象徴するロマンチックな幕引きとして機能している。
しかし、完全なハッピーエンドではない。ラストでは、ヴィクトリアの存在が不穏に示される。ジェームズの仲間であった彼女は、まだ生きている。ジェームズを失った彼女が、ベラやカレン家に対してどのような感情を抱くのかは、この時点では明確に語られないが、危険が去っていないことははっきりと示される。
この終わり方によって、本作は第1作としての物語を閉じつつ、シリーズの次なる展開への余韻を残す。ベラとエドワードの恋は成立したが、その恋は多くの敵や問題を呼び込む。吸血鬼の世界に踏み込んだベラは、もう元の何も知らない少女には戻れない。
『トワイライト〜初恋〜』のラストは、禁断の恋の始まりを祝福する一方で、その恋が決して安全なものではないことを最後まで忘れさせない。ベラが選んだのは、普通の青春ではなく、永遠と死の匂いをまとった愛だった。
