『エジソンズ・ゲーム』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『エジソンズ・ゲーム』(2019)を紹介&解説。


映画『エジソンズ・ゲーム』概要

映画『エジソンズ・ゲーム』は、19世紀末のアメリカで繰り広げられたトーマス・エジソンとジョージ・ウェスティングハウスによる“電流戦争”を描く伝記ドラマ。アルフォンソ・ゴメス=レホン(『ぼくとアールと彼女のさよなら』)が監督を務め、直流方式を推進するエジソンと交流方式を推進するウェスティングハウス、さらに天才発明家ニコラ・テスラらの競争を描く。出演はベネディクト・カンバーバッチマイケル・シャノンニコラス・ホルトトム・ホランドキャサリン・ウォーターストンら。日本では再編集されたディレクターズカット版が公開された。

作品情報

日本版タイトル 『エジソンズ・ゲーム』
原題 The Current War
製作年 2019年
本国公開日 2019年10月25日
日本公開日 2020年6月19日
ジャンル 伝記/歴史ドラマ
製作国 アメリカ/イギリス/ロシア
原作
上映時間 108分
監督 アルフォンソ・ゴメス=レホン
脚本 マイケル・ミトニック
製作 ティムール・ベクマンベトフ/ベイジル・イヴァニク
製作総指揮 マーティン・スコセッシ/スティーヴン・ザイリアン/ギャレット・バッシュ/マイケル・ミトニック/アン・ロアク/ミシェル・ウォルコフ/ベネディクト・カンバーバッチ/アダム・アクランド/アダム・シッドマンほか
撮影 チョン・ジョンフン
編集 デヴィッド・トラクテンバーグ/ジャスティン・クローン
作曲 ダニー・ベンジ/サンダー・ジュリアンズ
出演 ベネディクト・カンバーバッチ/マイケル・シャノン/トム・ホランドニコラス・ホルト/キャサリン・ウォーターストン/タペンス・ミドルトン/マシュー・マクファディン/スタンリー・タウンゼント
製作 サニーマーチ/フィルム・ライツ/サンダー・ロード・フィルム/バゼレヴスほか
配給 101スタジオ(米国)/KADOKAWA(日本)

あらすじ

19世紀後半のアメリカ。白熱電球の事業化を成功させた発明家トーマス・エジソンは、自らが推進する直流方式によって全米へ電力網を広げようとしていた。

一方、実業家ジョージ・ウェスティングハウスは、直流よりも遠距離へ安価に電力を送ることができる交流方式に可能性を見いだす。ウェスティングハウスが交流送電の実演を成功させると、エジソンは交流の危険性を世論へ訴え、両者の争いは技術競争を超えた激しいビジネス戦争へ発展していく。

そこへ、交流技術に強い可能性を見いだしていた発明家ニコラ・テスラも加わる。発明、資金、宣伝、特許、そして人間同士の意地が入り乱れる中、アメリカの未来を照らす電力方式をめぐる“電流戦争”が繰り広げられる。

主な登場人物(キャスト)

トーマス・エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ):白熱電球の事業化を成功させた著名な発明家。自らが推進する直流方式によって電力網を広げようとするが、ウェスティングハウスの交流方式に脅かされていく。

ジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン):交流送電の可能性に目を付けた実業家。エジソンの直流方式よりも効率的かつ低コストで遠距離送電ができるとして交流方式を推進する。

ニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト):優れた才能を持つ若き発明家。交流電流の可能性を早くから見抜き、エジソンとの関係を経てウェスティングハウス陣営へ接近していく。

サミュエル・インサル(トム・ホランド):エジソンを支える若き秘書兼ビジネスパートナー。電流戦争の渦中でエジソンの活動を間近から支える。

マーガリート・ウェスティングハウス(キャサリン・ウォーターストン):ジョージ・ウェスティングハウスの妻。夫の仕事や決断を支えながら、その人生に大きな影響を与える。

メアリー・エジソン(タペンス・ミドルトン):トーマス・エジソンの妻。仕事へ没頭するエジソンを家庭から支える存在。

J・P・モルガン(マシュー・マクファディン):エジソンの事業を資金面から支える有力投資家。電力産業の行方にも大きく関わっていく。

作品の魅力解説・レビュー

“電流戦争”という史実そのものは非常に面白い

本作の最大の強みは、エジソンとウェスティングハウスが直流と交流をめぐって繰り広げた“電流戦争”という題材そのものにある。

電球を事業化した世界的発明家エジソンと、交流方式の将来性に賭ける実業家ウェスティングハウス。そこへ後に交流技術の発展へ大きく貢献するニコラ・テスラまで加わり、技術論だけではなく、特許、資金、宣伝戦、個人的な意地まで絡んだ巨大な競争へ発展していく。

現在では当たり前のように利用している電気インフラの裏側に、これほど激しい企業間・発明家間の争いが存在していたという事実を知る伝記映画としては興味深い。

史実の面白さと、映画そのものの面白さは別問題

一方で、本作には「題材は面白いが、この映画ならではの面白さが十分に生まれているか」という問題も残る。

ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、ニコラス・ホルト、トム・ホランドという豪華キャストを揃え、撮影や美術にも強い個性を与えているが、人物と出来事を次々に提示していく構成には慌ただしさもある。

歴史上の重要人物や事件が豊富だからこそ情報量は多いものの、それぞれの人物の感情を十分に掘り下げる前に次の出来事へ移ってしまい、史実を追う面白さ以上のドラマが生まれにくい。伝記のおさらいとして興味深くても、映画単体として強烈に惹きつけられる何かを求めると物足りなさが残る作品でもある。

エジソンの焦りを観客自身に体感させる描写が弱い

特に気になるのが、エジソンという人物の原点と、そこから生まれる焦りの描き方だ。

本作では冒頭からすでにエジソンが白熱電球の事業化に成功した人物として物語が進行する。しかし、この争いをエジソン側の執着や恐怖まで含めて描くのであれば、「自らの電球が初めて輝く瞬間」や、それによって未来が変わると確信する体験を観客にも共有させる構成は有効だったはずだ。

自分が作り上げた未来そのものをウェスティングハウスの交流方式に奪われるかもしれない――という感覚がより明確に積み上がっていれば、その後のエジソンの焦りや強引な行動にもドラマとしての説得力が生まれた可能性がある。

映画が人物をやや距離のある位置から捉えているため、エジソンの執念を理解するための前提が十分に観客へ浸透しないまま“電流戦争”が進んでいく印象は否めない。

単純な偉人伝では終わらせない皮肉は興味深い

ただし、歴史上の偉人たちを単純に英雄として称賛する作品ではない点は興味深い。

技術的に正しいものが必ず勝つわけでも、優れた発明をした人物がそのまま成功するわけでもない。発明家、実業家、投資家、それぞれの思惑が交錯し、技術革新の裏側にビジネスと権力の論理が存在することを描いていく。

特に終盤で示される複数の歴史的帰結には皮肉が利いており、「最終的に誰が勝者だったのか」という単純な結論を避けている。

映画としての人物描写や構成には好みが分かれるものの、“電流戦争とは何だったのか”を知る入口としては一定の価値がある。題材自体に興味があれば、その後にエジソン、ウェスティングハウス、テスラについてさらに調べたくなるタイプの伝記作品だ。

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