映画『ソウ4』(2007)を紹介&解説。
映画『ソウ4』概要
映画『ソウ4』は、猟奇的な“ゲーム”を仕掛ける殺人鬼ジグソウをめぐる『ソウ』シリーズの第4作。『ソウ2』『ソウ3』に続きダーレン・リン・バウズマンが監督を務め、ジグソウの死後に始まる新たなゲームと、彼の過去に隠された因縁を交錯させながら描くホラー/ミステリー/スリラーである。出演はトビン・ベル、リリク・ベント、スコット・パターソン、コスタス・マンディロア、ベッツィ・ラッセルら。
作品情報
日本版タイトル:『ソウ4』
原題:Saw IV
製作年:2007年
本国公開日:2007年10月26日
日本公開日:2007年11月17日
ジャンル:ホラー/スリラー/ミステリー
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:93分
前作:『ソウ3』(2006)
次作:『ソウ5』(2008)
監督:ダーレン・リン・バウズマン
脚本:パトリック・メルトン/マーカス・ダンスタン
原案:パトリック・メルトン/マーカス・ダンスタン/トーマス・フェントン
製作:マーク・バーグ/オーレン・クールズ/グレッグ・ホフマン
製作総指揮:リー・ワネル/ジェームズ・ワン/ステイシー・テストロ/ダニエル・J・ヘフナー/ジェイソン・コンスタンティン/ピーター・ブロック
撮影:デイビッド・A・アームストロング
編集:ケヴィン・グルタート/ブレット・サリヴァン
作曲:チャーリー・クロウザー
出演:トビン・ベル/スコット・パターソン/ベッツィ・ラッセル/コスタス・マンディロア/リリク・ベント/アスィナ・カーカニス/ジャスティン・ルイス/ドニー・ウォールバーグ
製作:ツイステッド・ピクチャーズ
配給:ライオンズゲート/アスミック・エース(日本)
あらすじ
ジグソウことジョン・クレイマーの死後、彼の遺体を解剖していた検視官は、胃の中から蝋で包まれたカセットテープを発見する。そこには、ジグソウの死をもってしてもゲームは終わらないことを告げるメッセージが残されていた。やがてSWAT隊長ダニエル・リッグは、行方不明となった同僚を救うため、90分という制限時間の中で複数の試練に向き合うことになる。一方、FBI捜査官ピーター・ストラムとリンジー・ペレーズは事件の背後を追い、ジグソウの過去と周囲の人物関係へ踏み込んでいく。
主な登場人物(キャスト)
ジグソウ/ジョン・クレイマー(トビン・ベル):人間の生への執着を試す残酷なゲームを仕掛けてきた連続殺人犯。死後もなお、録音テープや過去の因縁を通じて事件に影を落とす。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ダニエル・リッグ(リリク・ベント):ジグソウ事件を追ってきたSWAT隊長。仲間を救いたいという強い思いを抱えるが、その執着を試されるように新たなゲームへ巻き込まれていく。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ピーター・ストラム(スコット・パターソン):ジグソウ事件の捜査に加わるFBI捜査官。リッグの行動や事件現場に残された痕跡を追いながら、複雑に絡み合う事件の構造を探っていく。
リンジー・ペレーズ(アスィナ・カーカニス):ストラムとともに捜査を進めるFBI捜査官。ジグソウの死後も続くゲームの謎に迫り、事件の背後にいる人物を追う。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
マーク・ホフマン(コスタス・マンディロア):ジグソウ事件に関わる刑事。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ジル・タック(ベッツィ・ラッセル):ジョン・クレイマーの元妻。ジグソウ誕生の背景に関わる人物であり、本作ではジョンの過去を知る鍵として物語に深く関わっていく。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
アート・ブランク(ジャスティン・ルイス):ジグソウのゲームに巻き込まれる弁護士。
エリック・マシューズ(ドニー・ウォールバーグ):前作までの事件に深く関わってきた刑事。リッグが救おうとする人物のひとりとして、本作のゲームに組み込まれていく。

『ソウ4』より © 2007 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
作品の魅力解説
映画『ソウ4』の大きな魅力は、ジグソウの死を物語の終点ではなく、新たな謎の始まりとして機能させている点にある。通常であれば中心人物の退場はシリーズの勢いを弱める要素になり得るが、本作は“死後もなお続くゲーム”という設定によって、ジグソウの思想や影響力そのものを恐怖の源にしている。
また、本作は単なるトラップ描写だけでなく、捜査劇としての要素を強めている。リッグの試練、FBIによる捜査、ジグソウの過去の回想が並行して進むことで、観客は“誰がゲームを動かしているのか”“ジグソウの後に何が残されたのか”という疑問を追うことになる。
シリーズ第4作として、過去作とのつながりが非常に重要な作品でもある。特に『ソウ3』の直後から物語が動き出すため、前作までの人物関係や出来事を踏まえて観ることで、時系列の仕掛けやラストに向かう構成の面白さがより伝わる。
一方で、残酷なゲームや人体への痛みを伴う描写はシリーズらしく強烈で、R指定作品としての刺激も強い。グロテスクな見せ場だけでなく、“人を救うこと”と“人の命運を支配すること”の境界を問いかける点に、本作ならではの不穏な余韻がある。
ストーリー解説(ネタバレ)
ジグソウの検視から始まる“死後のゲーム”
物語は、前作『ソウ3』で死亡したジグソウことジョン・クレイマーの遺体が検視される場面から始まる。すでに命は尽きているにもかかわらず、彼の存在感は冒頭から強烈だ。検視官が遺体を調べていくと、胃の中から蝋で包まれたカセットテープが発見される。
その場に呼ばれたのは、ジグソウ事件を追ってきた刑事マーク・ホフマン。テープには、ジョンの死をもってしてもゲームは終わらず、むしろ“ゲームは始まったばかり”であることを告げるメッセージが残されていた。この導入によって、本作は「ジグソウが死んだ後の物語」でありながら、彼の計画がまだ終わっていないことを観客に突きつける。
この場面は、物語全体の時系列に関わる重要な仕掛けにもなっている。初見では“ジョンの死後に起きる事件”として受け取られるが、のちに本作の大部分が『ソウ3』の出来事と同時進行していたことが明らかになる。そのため、検視室の場面は単なる冒頭ではなく、時間軸のトリックを含んだ導入部でもある。
霊廟で始まるアートとトレヴァーのトラップ
続いて舞台は霊廟へ移る。そこでは、アートとトレヴァーという2人の男が、首に鎖をつけられた状態で大きな装置に拘束されている。トレヴァーの目は縫い閉じられ、アートの口も縫われており、互いにまともな意思疎通ができない。
装置が作動すると鎖が巻き取られ、ふたりは徐々に中央へ引き寄せられていく。目が見えないトレヴァーは混乱し、アートに襲いかかる。口を塞がれて説明もできないアートは、最終的に自分を守るためにトレヴァーを殺すことになる。
その後、アートはトレヴァーの首輪に取り付けられていた鍵を使って自分の拘束を解く。だが、口を縫われたままの彼は、その傷を裂くようにして声を出す。この場面は、本作における最初の大きなトラップだ。
ケリー刑事の遺体発見と、もうひとりの共犯者の疑い
一方、警察は行方不明になっていたアリソン・ケリー刑事の遺体を発見する。現場に駆けつけたダニエル・リッグ隊長は、仲間を助けようとして気がはやり、十分な安全確認をせずに現場へ踏み込もうとする。ホフマンはそんなリッグの行動をたしなめ、家族も捜査に取り憑かれた彼に咎めるような視線を送るが、この“自分が人を助けたい”という衝動・強迫観念・固まった正義感こそが、のちにリッグ自身を試すゲームの中心テーマとなっていく。
現場にはFBI捜査官ピーター・ストラムとリンジー・ペレーズも現れる。ふたりはケリーの死を調べる中で、彼女を殺したトラップが脱出不可能な構造だったことに注目する。ジグソウのゲームは、本来ならば被験者に“生き延びる可能性”を残すという建前を持っていた。しかし、ケリーの罠は最初から助からないように作られていた。
さらに、前作でジグソウの後継を目指していたアマンダ・ヤングだけでは、このような装置をひとりで準備するのは難しいと考えられる。そこからストラムとペレーズは、ジグソウにはアマンダ以外にもうひとりの協力者がいたのではないかと推測する。この疑念が、本作全体を貫く“ジグソウの真の後継者は誰なのか”というミステリーにつながっていく。
リッグの拉致と90分のゲーム
その夜、リッグは自宅で何者かに襲われ、目を覚ますと自分自身がジグソウのゲームに巻き込まれていることを知る。ビデオを再生すると、ジグソウ人形(ビリー)は彼の強迫観念に向き合わせると語り、リッグがこれから救うべき対象として、過去作で死んだと思われていたエリック・マシューズ刑事がまだ生きていることも示す。ビデオの映像では、エリックは首を吊られた状態で溶けゆく氷の上に乗せられており、さらに隣にはホフマン刑事も拘束されている。強迫観念と正義感に駆られるリッグは、当然ふたりを救うために動こうと考える。
しかし、ジグソウのゲームが本当に試しているのは、リッグの正義感そのものではない。彼はこれまで、他人を救いたいという思いから危険な現場へ突入し、状況を悪化させることもあった。今回のゲームは、リッグに「すべての人間を自分が救えるわけではない」という現実を突きつけ、自身の範疇を飛び越えて動こうとするリッグの傲慢さを見つめ直させる構造になっている。
最初の試練、ブレンダの救出
リッグが最初に向き合うのは、自宅に拘束されていたブレンダという女性である。彼女は機械式の椅子に固定されており、装置が作動すれば頭部を傷つけられる危険な状態に置かれている。テープはリッグに、彼女をそのままにして立ち去るよう促す。
しかし、リッグは目の前で苦しむ人物を見捨てることができない。警告を無視してブレンダを救おうとし、装置を作動させてしまう。彼は無理やり彼女を助け出すが、直後にブレンダは隠し持っていたナイフでリッグを襲う。リッグは反撃し、結果的に彼女を殺すことになる。
のちに判明するのは、ブレンダ自身も別の指示を受けていたということだ。彼女は売春に関わる犯罪を行っていた人物であり、リッグが自分を逮捕しに来たと信じ込まされていた。つまり、リッグが“助けた”相手は、彼を殺すよう仕向けられていたのである。最初の試練は、彼の救済衝動が必ずしも正しい結果を生まないことを示す構造になっている。
リッグの部屋に残された写真とジル・タックの浮上
リッグが次の場所へ向かった後、ストラムとペレーズは彼の部屋を捜索する。そこには、リッグのゲームに関係する人物たちの写真が残されていた。エリック、ホフマン、ブレンダらの写真に加え、ジョン・クレイマーの元妻であるジル・タックの写真も見つかる。
この発見により、捜査線上にジルの存在が浮上する。ジルはジョンの過去を知る重要人物であり、FBIは彼女に事情聴取することになる。本作はリッグのゲームと並行して、ジョン・クレイマーがどのようにジグソウになったのかを掘り下げていく構成を取っており、ジルの証言はその入口となる。
ストラムはジルに対して強い疑いを向け、ジョンとの関係や過去について問い詰める。ジルはすぐにすべてを話すわけではないが、彼女の存在を媒介に、本作はジョンの私生活、喪失、思想の形成へと踏み込んでいく。
氷の上で続いていたエリックの抵抗
エリックは氷の上でただ待っているわけではない。ゲームが始まると、エリックの周囲に置かれたヒーターが作動し、足元の氷は少しずつ溶け始める。首には鎖の輪がかけられており、氷が溶けて足場を失えば、そのまま首を吊られる危険があった。
近くには、電気椅子のような装置に拘束されたホフマンがいる。エリックはホフマンの存在に気づくが、ホフマンは自分も巻き込まれた被害者であるかのように振る舞う。やがてアート・ブランクが部屋に入り、扉のそばのレバーを引いて、エリックの頭上にある仕掛けを起動させる。ホフマンはアートに怒鳴り、解放するよう求めるが、アートはそれに応じず、監視モニターの前に座ってリッグのゲームを見守り始める。
追い詰められたエリックは、ゲームに付き合うことを拒むように、氷の上から飛び降りて自ら首を吊ろうとする。しかし、アートは彼を助け、再び氷の上へ戻す。ここでアートは、エリックが氷から落ちれば、溶けた水がホフマン側へ流れ、ホフマンが感電死する仕組みになっていることを説明する。ホフマンもエリックに思いとどまるよう訴える、エリックは文句を口にしながらも、ひとまず氷の上にとどまる。
アレクサンダー・モーテルでの第2の試練
リッグの次の行き先は、あるモーテルである。そこで彼は、モーテルの管理人アイヴァン・ランズネスに関する音声メッセージを聞く。アイヴァンは性的暴行を繰り返してきた人物であり、過去に法の裁きを逃れてきたとされる。
リッグは、部屋に残された映像や写真によってアイヴァンの罪を知る。怒りに駆られた彼は、ジグソウの指示に従ってアイヴァンをあらかじめ用意されたトラップへ追い込む。この罠では、アイヴァンが制限時間内に自らの両目を傷つければ生き延びる可能性があるが、それができなければ装置によって命を落とす。
アイヴァンは片目を傷つけるところまでは実行するが、もう片方の目までは実行できない。結果として時間切れとなり、装置が作動して死亡する。この場面では、リッグが単に“救う者”ではなく、怒りと正義感によって他者を罰する側にも回っていることが示される。誰の命を救い、誰の命を救わないか……それを決めるリッグの傲慢さを浮き彫りにするジグソウのゲームは、リッグの内面にある危うさを少しずつ露出させていく。
ジルの証言で見えてくるジョン・クレイマーの過去
リッグのゲームが進む一方で、ストラムはジルへの尋問を続ける。ジルはかつて、薬物依存者のための更生施設を運営していた。ジョンとは夫婦であり、彼女はギデオンという名前の男児を妊娠していた。
しかし、施設の患者だったセシル・アダムズが薬物を求めて施設に押し入った際、ジルは腹部を負傷し、子どもを流産してしまう。この出来事は、ジョンとジルの関係を大きく変え、ふたりが離れていくきっかけになった。
小学校での第3の試練、レックスとモーガン
モーテルでの試練を終えたリッグは、次の手がかりに導かれて小学校へ向かう。そこは、かつてリッグが家庭内暴力を疑った男レックスに関わる場所だ。リッグは過去に、レックスが娘に暴力を振るっていると考え、感情的に行動したことがある。
教室でリッグが目にしたのは、レックスと妻モーガンが背中合わせに拘束され、複数の金属の杭で体を貫かれている光景だった。杭の配置は、レックスには致命的な傷を与える一方、モーガンには生存の余地を残すように作られていた。
リッグが到着した時点で、モーガンはすでに多くの杭を抜いており、その結果レックスは死亡している。モーガンは夫の暴力から逃れるために、自分の痛みと引き換えに夫を死なせる選択をしたことになる。リッグはモーガンに鍵を渡し、自力で脱出するよう指示、その場を去る。
ここでもリッグは自身の強迫観念に従い、目の前の人物を助けるために行動した。小学校の試練は、リッグの過去の行動と現在のゲームを結びつける場面でもある。
アート・ブランクにつながる被害者たち
その後ストラムとペレーズは小学校に到着し、モーガンを保護する。捜査の中で、ブレンダ、アイヴァン、レックスといったリッグのゲームに組み込まれた人物たちが、いずれも過去に犯罪を犯しながら、ある弁護士に弁護されていたことがわかっていく。その弁護士こそ、冒頭の霊廟トラップにかけられていたアート・ブランクである。アートは単なる被害者ではなく、ジグソウの計画の中でより大きな役割を担っている可能性が浮上する。
このあたりから本作は、リッグの移動型ゲーム、FBIの捜査、ジョンの過去、そしてアートの存在が同時進行で絡み合う構成になっていく。観客はリッグが次にどこへ向かうのかを追いながら、同時に“誰がこのゲームを動かしているのか”を考えることになる。
ビリー人形の警告とペレーズの重傷
小学校の捜査中、ストラムとペレーズは校長室でジグソウの人形ビリーを発見する。ビリーから流れる音声は、ストラムがまもなく“無実の人間の命を奪う”こと、そしてペレーズの“次の一歩”が重要になることを告げる。
これは明らかな警告だったが、ペレーズはその意味を十分に理解しないまま人形に近づく。直後、ビリーの顔面が爆発し、ペレーズは破片を浴びて重傷を負う。彼女は病院へ搬送されることになり、ストラムは怒りと焦りを募らせる。
この場面は、FBI側の捜査にもジグソウの予告と罠が組み込まれていることを示している。リッグだけでなく、ストラムやペレーズもまた、ジグソウの計画の盤上に置かれていた。
ジョンの自殺未遂と生還、セシルへの復讐
ジルの流産の後、ジョンは末期がんの診断を受け、車での自殺を図るが生還する。死に直面しながらも生き残った経験を経て、彼は“人は本当に生きる価値を理解しているのか”という歪んだ思想へ傾いていく。ジルの証言は、ジグソウという殺人鬼が突然生まれたのではなく、喪失、病、絶望、そして生への執着がねじれた結果として形成されたことを示している。
ジルの回想の中で、ジョンが最初に罠にかけた人物としてセシルが描かれる。セシルは、ジルの流産の原因となった人物であり、ジョンにとっては深い憎しみの対象だった。
ジョンはセシルを拉致し、椅子型の装置に拘束する。そのゲームでは、セシルが顔を刃物に押しつけることで拘束から逃れられる仕組みになっていた。これは、後のジグソウのゲームに通じる“痛みを受け入れれば生き延びられる”という形式の原型になっている。
セシルは大怪我をしながら罠から逃れてジョンに襲いかかるが、身をかわされて有刺鉄線の中へ落ち、命を落とす。この出来事は、ジョンがジグソウとして人を試すようになる出発点として位置づけられている。
リッグとストラムは最終試練の場所-ギデオン食肉工場へ
複数の試練を通過し、エリック・マシューズとマーク・ホフマンを救うために急ぎ続けてきたリッグ。ジルの証言からジョン・クレイマーの過去を知り、ジョンの失われた子どもギデオンの名前から最終試練の舞台を導き出したストラム。ふたりはついに食肉工場へと辿り着く。
部屋の中には、エリック、ホフマン、そしてアート・ブランクがいる。エリックの氷はほぼほぼ限界まで溶けてきており、ホフマンは電気椅子のような装置に拘束されたままだ。アートは背中に装置を取り付けられ、ゲームを見届ける役割を負わされている。
この罠の仕組みは、リッグの行動と時間に直結している。90分の制限時間が終わるまで扉が開かれなければ、アートはボタンを押して3人を解放できる。しかし、時間切れになる前に扉が開けられると、エリックの頭部が2つの氷の塊に挟まれて潰される構造になっている。
つまり、リッグが“助けに来る”ことこそが、エリックを死なせる条件になっている。ジグソウのゲームがリッグに求めていたのは、仲間を救うために突入することではなく、相手が自分自身を救う時間を信じて待つことだった。
リッグの行動で複数人の運命が決まる
自分を撃って終わらせてくれと懇願したり、抵抗したりするエリックに対し、アートは、警戒すべき相手は自分ではないと告げる。そして、リッグが試験に合格すれば全員が解放されること、自分もまたジグソウのゲームに組み込まれた被害者であることを示す。さらにアートは、エリックに銃と一発の弾丸を渡す。エリックには、生き延びるために最後まで待つのか、それとも自分の判断で終わらせるのかという選択が与えられる。
やがてアートも、エリックの頭上にある装置と扉が連動していることに気づく。アート、エリック、ホフマンは、リッグが部屋へ入るのを止めなければならなくなる。アートは背中に装着された装置を見せ、自分も命を握られていることを明かす。そして、タイマーがゼロになれば全員を解放できるボタンを押せると説明する。だが、すべてはリッグの行動次第だ。
エリックはリッグを止めようとする
部屋の外からリッグが近づいてくることに気づいたエリックは、必死に彼を止めようとする。彼はリッグに入らないよう叫び、やむを得ず銃でリッグを撃つ。
しかし、リッグは撃たれてもなお止まらず、これまでと同じように、目の前の仲間を救うために扉を破って中へ入る。
その瞬間、罠が作動する。エリックの頭部は氷の塊に挟まれ、彼は命を落とす。リッグの到着は、救出ではなく死の引き金になってしまう。ここで、彼の“助けたい”という衝動が、最も取り返しのつかない結果を生む。
リッグはアートを犯人だと思い込む
エリックの死を目の当たりにしたリッグは、部屋にいたアート・ブランクを黒幕だと思い込む。アートはバッグに手を伸ばすが、リッグはそれを攻撃の動きだと判断し、アートを撃つ。
しかし、アートが手に取ろうとしていたのは武器ではなく、リッグに向けた最後のメッセージを再生するためのテープレコーダーだった。アートはゲームの主導者ではなく、ジグソウの計画に組み込まれていた人物にすぎなかった。
この誤認もまた、リッグの試験の一部として機能している。彼は状況を最後まで見極める前に行動し、相手を救うため、あるいは仲間を守るためだと信じて暴力を選ぶ。その結果、エリックに続き、アートも死ぬことになる。
リッグが“失敗”した本当の理由
アートが持っていたテープには、リッグに向けた最後のメッセージが残されていた。そこで告げられるのは、彼が試験に失敗したという事実である。
リッグの任務は、エリックを救い出すことではなかった。むしろ、エリックが自分自身を救うのを待つことこそが求められていた。ジグソウの思想において、人は他人に救われるのではなく、自らの意思で生きることを選ばなければならない。その考えを理解できなかったリッグは、最後まで“自分が助けなければならない”という思いに従い続けてしまった。
この構造によって、本作のタイトル的なテーマは明確になる。リッグは正義感の強い人物であり、仲間思いでもある。しかし、その制御不能の正義感は時に相手の選択を奪い、事態を悪化させる。ジグソウはリッグの強迫観念そのものを罠に変え、救済と支配の境界を突きつけたのである。
ホフマンが立ち上がり、真の共犯者であることが明かされる
リッグが自分の失敗を悟る中、拘束されていたはずのホフマンが静かに動き出す。彼は電気椅子の装置から自力で脱出し、そこで観客は、ホフマンが最初から本当の被害者ではなかったことを知る。
ホフマンこそが、ジグソウのもうひとりの協力者だった。彼は警察側の人間として事件に関わりながら、実際にはジョン・クレイマーの計画を実行する側にいた。これにより、ケリー刑事の死に関してFBIが抱いていた“アマンダ以外にも協力者がいる”という疑念が回収される。
ホフマンは、部屋で瀕死のリッグを残して去っていく。彼の正体が明かされることで、『ソウ4』は単にジグソウの死後を描いた作品ではなく、ジグソウの思想が別の人物に引き継がれていたことを示す物語へと変化する。
ストラムは『ソウ3』の現場へ迷い込む
一方、ギデオン食肉工場に遅れて到着したストラムはリッグを追うように建物内を進むが、その途中で別の部屋へ入り込む。そこは、前作『ソウ3』でジョン・クレイマー、アマンダ・ヤング、リン・デンロンが命を落とした現場だった。
部屋にはジョンとアマンダの遺体があり、そこへジェフ・デンロンが現れる。ジェフは、拉致された娘コルベットの居場所を必死に探しており、ストラムに銃を向ける。ストラムは状況を把握しきれないまま、身を守るためにジェフを撃つ。
これによって、ビリー人形がペレーズに告げていた「ストラムが無実の人間の命を奪う」という予告が現実になる。ストラムにとっては正当防衛に近い行動でも、ジグソウの計画上では“無実の人間を殺した”という結果として処理される。
『ソウ4』と『ソウ3』が同時進行だったことが判明する
ラストの大きな仕掛けは、本作の時間軸にある。観客は冒頭の検視シーンによって、『ソウ4』の物語全体がジョンの死後に進行していると受け取る。しかし、終盤で明らかになるのは、リッグのゲームとストラムの捜査の大部分が、実は『ソウ3』の出来事と同時進行していたという事実である。
つまり、ジョン、アマンダ、リン、ジェフがいた部屋で起きていた『ソウ3』の最終局面と並行して、リッグはギデオン食肉工場の別の場所で試験を受けていた。ストラムが最後にたどり着いた部屋は、『ソウ3』の惨劇が終わった直後の場所だった。
冒頭の検視シーンは、時系列上では物語の最後に位置している。ジョンの遺体からカセットテープが取り出され、ホフマンがそのメッセージを聞く場面は、リッグのゲーム、エリックの死、アートの死、ジェフの死、そしてホフマンの正体が明かされた後に起きていた出来事だった。
ホフマンはストラムを閉じ込め、唯一の生存者のように振る舞う
ジェフを撃った直後、混乱しているストラムは、黒幕ホフマンによって部屋に閉じ込められる。ストラムは、ジョン、アマンダ、リン、ジェフの遺体とともに密室に取り残されることになる。
一方、ホフマンはその場を離れ、事件の生存者として外へ出る。表向きには、ホフマンはジグソウのゲームに巻き込まれた刑事のひとりであり、リッグやエリックたちと同じ被害者のように見える。しかし実際には、彼こそがゲームを動かしていた人物だった。
この展開によって、ホフマンは警察組織の内部に潜むジグソウの後継者として位置づけられる。ジョンが死に、アマンダも死んだことで終わるはずだったゲームは、ホフマンの存在によって継続する余地を残す。
検視室のテープが持つ本当の意味
物語は再び、冒頭の検視室へ戻る。ジョンの遺体から取り出されたカセットテープを、ホフマンが聞く場面である。ここでジョンは、ホフマンに向けて、ゲームはまだ終わっていないと告げる。
このメッセージは、単にジグソウの死後も事件が続くという意味だけではない。ホフマン自身もまた、いずれ試される存在であることを示している。彼はジョンの計画を実行してきた協力者でありながら、ジョンの完全な後継者として認められているわけではない。むしろ、ジョンはホフマンの危うさや暴力性を見抜いたうえで、彼にも試練が訪れることを予告している。
検視室の場面が最後に置かれることで、本作の構造は大きく反転する。冒頭で始まりに見えた場面が、実はすべての出来事の後に位置する結末だったとわかる。そしてホフマンが勝利したように見える一方で、彼もまたジグソウの思想から逃れられない人物として残される。
