映画『パターソン』(2016)を紹介&解説。
映画『パターソン』概要
映画『パターソン』は、ジム・ジャームッシュが監督・脚本を手がけた2016年製作のヒューマンドラマ。ニュージャージー州パターソンに暮らす、街と同じ名前を持つバス運転手の男性パターソンの7日間を、静かなユーモアと詩情で描く。主演はアダム・ドライバー、共演にゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、メソッド・マン、永瀬正敏ら。日々の反復、夫婦の時間、街で交わされる何気ない会話を通して、ありふれた生活の中に宿る美しさを見つめる一作。
作品情報
| 日本版タイトル | 『パターソン』 |
|---|---|
| 原題 | Paterson |
| 製作年 | 2016年 |
| 本国公開日 | 2016年12月28日(米国) |
| 日本公開日 | 2017年8月26日 |
| ジャンル | ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 118分 |
| 監督・脚本 | ジム・ジャームッシュ |
|---|---|
| 製作 | ジョシュア・アストラカン/カーター・ローガン |
| 製作総指揮 | オリバー・ジーモン/ダニエル・バウアー/ロン・ボズマン/ジャン・ラバディ |
| 撮影 | フレデリック・エルムズ |
| 編集 | アフォンソ・ゴンサルヴェス |
| 作曲 | スクワール(SQÜRL) |
| 詩 | ロン・パジェット |
| 出演 | アダム・ドライバー/ゴルシフテ・ファラハニ/バリー・シャバカ・ヘンリー/メソッド・マン/チャステン・ハーモン/ウィリアム・ジャクソン・ハーパー/永瀬正敏/ネリー |
| 製作会社 | インクジェット・プロダクションズ/アニマル・キングダム/K5インターナショナル/ル・パクト |
| 配給 | ブリーカー・ストリート(米国)/ロングライド(日本) |
あらすじ
ニュージャージー州パターソンで暮らすバス運転手のパターソンは、妻ローラと愛犬マーヴィンとともに穏やかな日々を送っている。朝起きて仕事へ向かい、バスを走らせながら街の風景や乗客の会話に耳を澄ませ、心に浮かんだ言葉を秘密のノートに書き留める。帰宅後はローラと過ごし、マーヴィンを散歩させ、バーで1杯だけビールを飲む。変わらないように見える毎日の中で、パターソンは小さな出来事や出会いを詩へと変えていく。
主な登場人物(キャスト)
パターソン(アダム・ドライバー):ニュージャージー州パターソンでバス運転手として働く男性。街と同じ名前を持ち、日々の仕事や生活の中で生まれた言葉をノートに書き留める詩人でもある。大きな成功を求めるより、繰り返される日常の中に静かな美しさを見つけている。
ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ):パターソンの妻。家の中を独自の白黒デザインで彩り、カップケーキ作りやカントリー歌手への夢など、新しいアイデアに次々と向かっていく。パターソンの詩の才能を信じ、作品を外へ出すことを勧める存在。
マーヴィン(ネリー):パターソンとローラが飼っているイングリッシュ・ブルドッグ。パターソンの夜の散歩に付き合いながら、どこか気まぐれでユーモラスな存在感を放つ。演じたネリーは第69回カンヌ国際映画祭でパルム・ドッグ賞を受賞した。
ドク(バリー・シャバカ・ヘンリー):パターソンが毎晩立ち寄るバーの店主。店内に地元ゆかりの人物の写真を飾り、街の小さな歴史を見守っている。
エヴェレット(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー):バーの常連客。恋人マリーへの思いを引きずっており、その感情が時に大げさでコミカルな形で表れる。
マリー(チャステン・ハーモン):エヴェレットの相手となる女性。
日本の詩人(永瀬正敏):パターソンの前に現れる日本人の詩人。ウィリアム・カーロス・ウィリアムズや詩への敬意を共有し、パターソンに静かな刺激を与える。永瀬正敏は『ミステリー・トレイン』以来、ジム・ジャームッシュ作品に参加した。
作品の魅力解説
『パターソン』の大きな魅力は、劇的な事件に頼らず、日常の反復そのものを映画のリズムにしている点にある。朝起きる、仕事に向かう、バスを運転する、詩を書く、犬と散歩する、バーで1杯だけ飲む。その繰り返しは一見単調に見えるが、曜日ごとに少しずつ表情を変え、観客は生活の中に潜む小さな変化に目を向けるようになる。
主人公パターソンの視線も、本作を特別なものにしている。彼は街の風景や乗客の会話、マッチ箱のようなありふれたものから詩を見つける。世界を大げさに変えるのではなく、目の前のものを丁寧に見つめ直すことで、日常が少しだけ豊かに見えてくる。その感覚こそが、本作の静かな余韻につながっている。
アダム・ドライバーの抑制された演技も見どころ。大きな感情表現ではなく、表情や沈黙、歩き方、言葉の間合いによって、パターソンの内面を繊細に伝えている。一方で、ローラは変化と創造のエネルギーに満ちた人物として描かれ、パターソンの静けさと美しい対比を生み出している。
また、街の名前と主人公の名前が同じ「パターソン」であることも重要なポイント。人物、土地、詩、生活がゆるやかに重なり合い、都市そのものが主人公の内面と響き合うように描かれている。ジム・ジャームッシュらしいオフビートなユーモア、愛犬マーヴィンの存在感、永瀬正敏演じる日本の詩人との出会いも含め、静かながら忘れがたい映画体験を残す作品だ。
