映画『Mr.ノーバディ』(2021)を紹介&解説。
映画『Mr.ノーバディ』概要
映画『Mr.ノーバディ』は、家族からも軽く見られていた平凡な中年男が、封印していた戦闘能力を解放し、ロシアン・マフィアとの壮絶な抗争へ身を投じていくバイオレンスアクション。イリヤ・ナイシュラー(『ハードコア』)が監督を務め、デレク・コルスタッド(『ジョン・ウィック』)が脚本、デヴィッド・リーチが製作を担当した。主演は『ベター・コール・ソウル』のボブ・オデンカーク。共演にコニー・ニールセン、アレクセイ・セレブリャコフ、RZA(リザ)、クリストファー・ロイドら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『Mr.ノーバディ』 |
|---|---|
| 原題 | Nobody |
| 製作年 | 2021年 |
| 本国公開日 | 2021年3月26日 |
| 日本公開日 | 2021年6月11日 |
| ジャンル | アクション/クライム/スリラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 92分 |
| 次作 | 『Mr. ノーバディ2』(2025) |
| 監督 | イリヤ・ナイシュラー |
|---|---|
| 脚本 | デレク・コルスタッド |
| 製作 | ケリー・マコーミック/デヴィッド・リーチ/ブレイデン・アフターグッド/ボブ・オデンカーク/マーク・プロビッシエロ |
| 製作総指揮 | デレク・コルスタッド/マーク・S・フィッシャー/アニー・マーター/トビー・マグワイア |
| 撮影 | パベウ・ポゴジェルスキ |
| 編集 | ウィリアム・イェー/エバン・シフ |
| 作曲 | デヴィッド・バックリー |
| 出演 | ボブ・オデンカーク/コニー・ニールセン/アレクセイ・セレブリャコフ/RZA(リザ)/クリストファー・ロイド/マイケル・アイアンサイド/コリン・サーモン |
| 製作 | 87ノース・プロダクションズ/エイティー・トゥー・フィルムズ/オデンカーク・プロヴィシエロ・エンターテインメント |
| 配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ/東宝東和(日本) |
あらすじ
妻ベッカとふたりの子どもと暮らすハッチ・マンセルは、義父が経営する金型工場で働きながら、代わり映えのしない毎日を送っていた。職場では軽く扱われ、家庭でも妻との間に距離が生まれ、息子から尊敬されることもない。世間から見れば、どこにでもいる“何者でもない男”だった。
ある夜、ハッチの自宅へふたり組の強盗が押し入る。反撃できる状況にありながら暴力を避けたハッチは、家族や周囲から臆病者と見なされてしまう。しかし、事件をきっかけに長年抑え込んできた彼の怒りと本能が目を覚ます。
路線バスでチンピラたちと遭遇したハッチは、ついに鬱憤を爆発させ、凄まじい戦闘能力を解放する。ところが、その中のひとりはロシアン・マフィアのボス、ユリアン・クズネツォフの身内だった。ハッチと家族は犯罪組織の標的となり、彼が封印していた過去も次第に明らかになっていく。
主な登場人物(キャスト)
ハッチ・マンセル(ボブ・オデンカーク):義父の金型工場で会計士として働く、冴えない中年男性。職場でも家庭でも軽く見られているが、家族にさえ明かしていない危険な過去と、並外れた戦闘能力を隠している。
ベッカ・マンセル(コニー・ニールセン):ハッチの妻。不動産関係の仕事で成功している一方、夫との間には長年にわたって距離が生じている。ハッチが隠してきた素顔をほとんど知らない。
ユリアン・クズネツォフ(アレクセイ・セレブリャコフ):ロシアン・マフィアを率いる冷酷な犯罪者。莫大な資金を管理する一方、派手なショーや歌を好む風変わりな一面を持つ。身内を傷つけたハッチに報復を仕掛ける。
ハリー・マンセル(RZA/リザ):ハッチの弟。無線を通して兄と連絡を取り合い、彼の過去や本当の能力を知る数少ない人物。ハッチへたびたび警告を送る。
デヴィッド・マンセル(クリストファー・ロイド):老人ホームで暮らしているハッチの父。一見すると穏やかな高齢者だが、息子と同じく只者ではない雰囲気を漂わせている。
作品の魅力解説
冴えない中年男が豹変する“ギャップ萌え”
最大の魅力は、冴えない中年男と凄腕の戦闘員という、ハッチの強烈なギャップにある。家族からも軽く扱われ、ゴミ出しにさえ間に合わない男が、ひとたび本能を解放すると屈強な男たちを次々と叩きのめしていく。その落差を、ボブ・オデンカークが哀愁とユーモアを交えて体現している。
ただし、ハッチの戦い方は『ジョン・ウィック』のように最初から完璧で研ぎ澄まされているわけではない。殴られ、投げ飛ばされ、息を切らしながらも執念深く立ち上がる。無骨で少し不器用、それでいてウィットに富んでいてスタイリッシュというバランスにより、単に格好いいだけでなく、どこか可愛らしく親しみやすいアクションヒーローが誕生した。
痛々しさと爽快感が同居するアクション
『ジョン・ウィック』の脚本家デレク・コルスタッドと製作のデヴィッド・リーチが参加しているだけあり、格闘の動きや攻撃の流れを最も楽しく見せるカメラワークは安定している。特に路線バスで繰り広げられる乱闘は、狭い車内を生かしながら、ハッチの強さだけでなくブランクや不器用さまで伝える本作屈指の場面だ。
敵を倒すたびに無傷で済むのではなく、ハッチ自身も容赦なく殴られ、切られ、投げ飛ばされる。痛みを伴う肉弾戦だからこそ、一発ごとの重さと、長年抑圧されてきた男が解放されていくカタルシスが際立っている。
“バイオレンス版ホーム・アローン”の遊び心
物語が進むほど、ハッチは銃火器や身の回りの道具、建物の構造まで駆使して敵を迎え撃つ。その姿は、さながら殺傷力を極端に高めた『ホーム・アローン』。あの手この手で敵を仕留めていく終盤は、凄惨でありながら、登場人物たちが妙に生き生きとしているため、ブラックコメディーとしての楽しさも強い。
複数の敵を一直線に射抜く“貫通ショット”や、工場の無事故記録を利用した小ネタなど、アクションの合間に挟まれる悪趣味なユーモアも印象的だ。残酷描写を深刻一辺倒にせず、観客が笑って楽しめる見せ場へ変える演出が、本作ならではの軽快なテンポを生み出している。
クリストファー・ロイドら脇役の存在感
クリストファー・ロイド演じる父デヴィッドも、作品の楽しさを大きく底上げしている。老人ホームで静かに暮らす高齢者という外見からは想像できない一面を見せ、ハッチ以上のギャップで物語を盛り上げる。
さらに、RZA演じる弟ハリー、歌と派手なショーを愛するユリアンなど、脇役にもひと癖ある人物がそろう。格好よさ、可愛らしさ、痛々しい暴力、ブラックユーモアが絶妙に混ざり合った、肩の力を抜いて楽しめるバイオレンスアクションである。
