映画『モンスターズ・インク』(2001)を紹介&解説。
映画『モンスターズ・インク』概要
『モンスターズ・インク』は、のちに『カールじいさんの空飛ぶ家』『インサイド・ヘッド』を手がけるピート・ドクター監督が手がけた、モンスターの世界を舞台にしたピクサーの長編アニメーション。人間の子どもの悲鳴をエネルギー源にする会社で働く名コンビが、迷い込んだ少女をきっかけに大騒動に巻き込まれる。声の出演はジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、メアリー・ギブス。
作品情報
日本版タイトル:『モンスターズ・インク』
原題:Monsters, Inc.
製作年:2001年
日本公開日:2002年3月2日
ジャンル:アニメーション/ファンタジー/コメディ
製作国:アメリカ
原作:なし
上映時間:92分
次作:『モンスターズ・ユニバーシティ』
監督:ピート・ドクター
脚本:アンドリュー・スタントン/ダニエル・ガーソン
製作:ダーラ・K・アンダーソン
製作総指揮:ジョン・ラセター/アンドリュー・スタントン
編集:ロバート・グラハムジョーンズ/ジム・スチュワート
作曲:ランディ・ニューマン
出演:ジョン・グッドマン/ビリー・クリスタル/スティーヴ・ブシェミ/ジェームズ・コバーン/ジェニファー・ティリー/メアリー・ギブス
製作:ピクサー・アニメーション・スタジオ
配給:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
あらすじ
モンスターたちが暮らす異世界モンスターシティ。エネルギー会社モンスターズ・インクで、子どもの悲鳴を集める仕事をするサリーと親友マイクは名コンビとして活躍していた。だがある夜、人間の少女が会社の世界に迷い込み、モンスター社会を揺るがす騒動へと発展していく。
主な登場人物(キャスト)
サリー/ジェームズ・P・サリヴァン(ジョン・グッドマン):モンスターズ・インクで働くトップクラスの“怖がらせ屋”。子どもを驚かせて悲鳴を集める仕事のエースで、巨大な青い体と紫の斑点が特徴。人間の少女ブーと出会ったことで、自身の価値観が大きく揺らいでいく。
マイク・ワゾウスキ(ビリー・クリスタル):サリーの親友であり同僚。ひとつ目の小柄なモンスターで、サリーの仕事をサポートする存在。頭の回転が速く、トラブルに巻き込まれながらも事態の収拾に奔走する。
ブー(メアリー・ギブス):モンスターの世界に迷い込んでしまった人間の幼い少女。本名はメアリー。モンスターたちにとって危険な存在とされる人間だが、サリーと心を通わせることで物語の重要な鍵となる。
ランドール・ボッグス(スティーヴ・ブシェミ):モンスターズ・インクのスケアラーのひとりで、サリーのライバル。体色を変えて姿を消す能力を持つ。会社の裏で進められる計画に関わる重要人物。
ヘンリー・J・ウォーターヌース(ジェームズ・コバーン):モンスターズ・インクの社長で、クモのようなモンスター。長年会社を率いる存在で、エネルギー危機に直面するモンスター社会を守ろうとする中で、ある決断を下す。
セリア・メイ(ジェニファー・ティリー):モンスターズ・インクの受付係で、マイクの恋人。蛇のような髪を持つモンスターで、会社で起きた騒動の中でマイクと関わることになる。
ロズ(ボブ・ピーターソン):モンスターズ・インクの書類管理担当で、ナメクジのようなモンスター。規則に厳しい無愛想な職員。
簡易レビュー・解説
『モンスターズ・インク』は、子どもの悲鳴をエネルギーに変えるという奇抜な発想を軸にしながら、異質な存在との出会いが価値観を更新していく過程を描いたピクサー作品である。コメディの表層の下には、恐怖よりも思いやりや笑いのほうが大きな力になり得るという主題が通っている。
また、本作はモンスター社会の“労働”や“会社組織”を舞台装置に取り込み、子ども向けアニメでありながら社会風刺や企業ドラマのような面白さも備えている。サリーとブーの関係性は物語の感情的な核となっており、笑いと冒険の中に、他者へのまなざしが変化していく温かさをにじませる。主題歌「If I Didn’t Have You」はアカデミー賞歌曲賞を受賞し、作品の印象を象徴する要素となった。
『モンスターズ・インク』内容(ネタバレ)
モンスター社会と“悲鳴エネルギー”
物語の舞台は、モンスターたちが暮らす都市モンストロポリス。ここでは人間の子どもの悲鳴が都市を支えるエネルギー源となっており、会社「モンスターズ・インク」で働く“怖がらせ屋(スケアラー)”たちが子ども部屋のクローゼットにつながるドアを通じて人間界へ行き、子どもを驚かせて悲鳴を集めている。だが近年は子どもがなかなか怖がらなくなり、社会はエネルギー不足に悩まされていた。
トップスケアラーのサリーと相棒マイク
モンスターズ・インクのエースは、巨大な青い体を持つサリー。親友で助手のマイク・ワゾウスキとともに、会社のトップ成績を誇るコンビである。一方、姿を自在に消せるスケアラーのランドールはサリーに強い対抗心を抱いており、社内では成績争いが続いていた。
迷い込んだ人間の少女“ブー”
ある夜、仕事場に残されたドアを確認したサリーは、人間の幼い少女を誤ってモンスターの世界へ入り込ませてしまう。人間の子どもは危険な存在だと信じられているため、会社は大騒ぎとなり、子ども検出局が出動する事態に発展。サリーとマイクは少女を隠しながら元の世界へ戻そうと奔走する。
背後で進む不穏な計画
少女に“ブー”という愛称をつけたサリーは、彼女と心を通わせていく。一方、ライバルのランドールは子どもの悲鳴を強制的に取り出す装置を開発し、より多くのエネルギーを得ようと企てていた。やがてその計画がサリーとマイクを巻き込み、モンスター社会を揺るがす事件へとつながっていく。
ランドールの陰謀が明らかになる
ブーを人間界へ戻そうとするサリーとマイクだったが、少女の存在は社内で問題となり、やがてランドールの計画に巻き込まれていく。ランドールは子どもの悲鳴を無理やり吸い取る装置を開発し、より効率的にエネルギーを得ようとしていた。サリーはその装置がブーに使われる現場を目撃し、少女を守るためにランドールと対立する。
社長ウォーターヌースの真意
しかし、この計画の背後には会社社長ウォーターヌースも関わっていた。エネルギー不足に苦しむモンスター社会を守るため、彼はランドールの方法を黙認していたのである。計画を知ったサリーとマイクはブーを救おうとするが、ウォーターヌースにより雪山の人間界へ追放されてしまう。
ドア倉庫での追跡劇
モンスターズ・インクへ戻ったサリーとマイクは、ブーを救うため巨大なドア倉庫へ向かう。そこでは無数の子ども部屋のドアがレールに乗って移動しており、サリーとランドールはドアからドアへ飛び移りながら激しい追跡劇を繰り広げる。最終的にランドールは人間界へ落とされ、計画は失敗に終わる。
陰謀の暴露とモンスター社会の変化
その後、サリーとマイクはウォーターヌースが子どもを危険にさらそうとしていた事実を録音によって明らかにし、彼は逮捕される。ブーは無事に人間界へ帰され、サリーは彼女のドアを破壊して別れを受け入れる。
笑いが生む新しいエネルギー
事件後、モンスターズ・インクは新たな方法でエネルギーを集める会社へと変わる。サリーが新社長となり、子どもを驚かせるのではなく笑わせることでエネルギーを得る仕組みが導入される。笑いは悲鳴よりも強いエネルギーを生み出すことが判明し、モンスター社会は新しい時代へ進んでいく。
ブーとの再会
物語の最後、マイクは壊されたはずのブーのドアを破片から修復する。サリーがドアを開けると、画面外からブーの声が聞こえ、再会を示唆する形で物語は静かに幕を閉じる。
作品トリビア
企画は『トイ・ストーリー』制作中の雑談から生まれた
本作のアイデアは1994年、『トイ・ストーリー』制作中にピクサーのスタッフが昼食中に行ったブレインストーミングから生まれた企画のひとつだった。ここでは後に『ファインディング・ニモ』や『ウォーリー』につながる企画も同時に議論されていたという。
初期の主人公はサリーではなかった
開発初期のストーリーでは、サリーの原型となるキャラクターは「ジョンソン」という名前のモンスターで、設定や物語も現在のものとは大きく異なっていた。制作過程でストーリーは何度も書き直され、現在のサリーとマイクのバディ物語へと変化していった。
サリーの毛は約230万本で表現されている
サリーの体は約230万本以上の毛で構成されており、1本1本をCGで動かす必要があった。これは当時のCGアニメーションとして非常に高度な技術で、制作チームにとって大きな挑戦となった。
終盤のドア倉庫シーンは当時最大級のCG処理
終盤のドア倉庫のシーンでは膨大な数のドアが同時に処理されるため、制作では数千台規模のプロセッサを使ったレンダリングシステムが使用された。これは当時のピクサー作品でも最大級の計算処理だった。
スケアラーのランキングはスタッフの名前
作中で表示されるスケアラーランキングのモンスターの名前の多くは、ピクサーのスタッフの名字が使われている。制作チームへの遊び心あるオマージュのひとつとされている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
