映画『ミスミソウ』(2017)を紹介&解説。
映画『ミスミソウ』概要
映画『ミスミソウ』は、押切蓮介の漫画『ミスミソウ 完全版』を、内藤瑛亮監督(『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』)が実写化したバイオレンス・サスペンス。閉鎖的な雪国の町へ転校し、執拗ないじめを受ける少女が、家族を襲った悲劇を境に壮絶な復讐へ踏み出す。映画初主演の山田杏奈をはじめ、清水尋也、大谷凜香ら若手俳優が出演。純白の雪、鮮血、赤いコートの色彩対比を用い、思春期の愛情と暴力が暴走する姿を描くR15+指定作品である。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ミスミソウ』 |
|---|---|
| 英題 | Liverleaf |
| 製作年 | 2017年 |
| 本国公開日 | 2018年4月7日 |
| 日本公開日 | 2018年4月7日 |
| ジャンル | サスペンス/ドラマ/ホラー/バイオレンス |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 押切蓮介『ミスミソウ 完全版』(漫画) |
| 上映時間 | 114分 |
| 映倫区分 | R15+ |
| 監督 | 内藤瑛亮 |
|---|---|
| 脚本 | 唯野未歩子 |
| 製作 | 安井邦好/新井重人/岡本東郎/鈴木仁行 |
| プロデューサー | 田坂公章/原田耕治 |
| 撮影 | 四宮秀俊 |
| 照明 | 秋山恵二郎 |
| 美術 | 山岸護 |
| 特殊メイク・造型 | 百武朋 |
| 編集 | 大永昌弘 |
| 音楽 | 有田尚史 |
| 主題歌 | タテタカコ「道程」 |
| 出演 | 山田杏奈/清水尋也/大谷凜香/大塚れな/中田青渚/紺野彩夏/櫻愛里紗/遠藤健慎/大友一生/遠藤真人/森田亜紀/戸田昌宏/片岡礼子/寺田農 |
| 制作プロダクション | レスパスフィルム |
| 企画・製作幹事 | 日本出版販売 |
| 配給 | ティ・ジョイ |
あらすじ
父親の転勤で東京から雪深い田舎町へ移り住んだ中学生・野咲春花は、よそ者として扱われ、クラスの中心人物・小黒妙子らから執拗ないじめを受けていた。卒業まであとわずかだと耐える春花にとって、同じ転校生の相場晄だけが心の支えだった。しかし、いじめの対象は春花だけにとどまらず、彼女の自宅・家族までも巻き込まれる事態へ発展する。ついに春花の心は崩壊。白い雪に閉ざされた町で、加害者たちへの壮絶な復讐が始まる。
主な登場人物(キャスト)
野咲春花(山田杏奈):東京から田舎町へ転校してきた中学生。クラスで壮絶ないじめを受けながら耐えていたが、家族を襲った悲劇を境に復讐へ踏み出す。
相場晄(清水尋也):春花と同じく、別の土地から転校してきた同級生。写真を撮ることが好きで、孤立する春花に寄り添い、彼女の唯一の心の支えとなる。
小黒妙子(大谷凜香):クラスの中心にいる少女。かつては春花と親しくしていたが、晄をめぐる感情や嫉妬をこじらせ、いじめを主導する。
佐山流美(大塚れな):妙子のグループに属する同級生。周囲への攻撃性が強く、いじめをさらに過激なものへ押し進める。
野咲満雄(寺田農):春花と妹・祥子の祖父。家族を襲った事件の後、深い悲しみを抱える春花を支えようとする。
作品の魅力解説
『ミスミソウ』は、いじめを受けた少女が反撃するだけの“痛快な復讐劇”とは到底いえない。観客が想定しうる最悪の展開を超える悲劇を次々と重ね、被害と加害、愛情と支配、救いと執着の境界まで崩していく。展開を知って鑑賞してさえも精神をえぐってくるほどに容赦がなく、復讐による爽快感よりも、誰も元の場所へ戻れない痛みを強く残す。
映像面では、雪に覆われた過疎の町を巨大な白い舞台として使い、赤いコートと鮮血を鮮烈に浮かび上がらせる。画面に広がる雪原は美しいが、逃げ場のない閉塞感も同時に生み、そこで行われる暴力を隠さず観客へ突きつける。厳しい冬を耐えて雪の下から花を咲かせる“三角草”という題名の意味も、春花の姿と残酷な対照を形作る。
(特殊メイクとアクションは痛みを具体的に見せるため、刺激の強い描写が苦手な人には注意が必要である。)
映画初主演となった山田杏奈は、いじめに耐える静けさから、感情が凍りついたような復讐者への変化を抑制して演じる。清水尋也、大谷凜香、大塚れなら若手キャストも、愛情や劣等感を暴力へ変えてしまう未成熟さを強く押し出した。登場人物の言動や演技は意図的に極端で、現実の中学生というより、押切蓮介の漫画世界から抜け出した人物に近い。その誇張が、作品全体を生々しい社会派ドラマではなく、雪上の残酷な寓話として成立させている。
もっとも、警察や大人の介入がほとんど機能せず、事件が都合よく最悪の方向へ運び続けること、台詞がかった演技や漫画的な人物造形にはリアリティ上の無理がある。現実に起こりうる事件として見ると引っかかりやすいが、自分の学校や地域のような閉じたコミュニティで同じ悪意が連鎖したら、と置き換えることで、いたたまれなさは急激に増す。現実味そのものより、逃げ場のない集団で人間関係が暴走する恐怖を誇張して見せる作品である。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
