『降霊 KOUREI』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『降霊 KOUREI』(1999)を紹介&解説。


映画『降霊 KOUREI』概要

映画『降霊 KOUREI』は、黒沢清監督(『CURE』『回路』)が、霊能力を持つ妻と音響効果技師の夫を襲う破滅を描いた心理ホラー。マーク・マクシェーンの小説『雨の午後の降霊術』を、黒沢清と大石哲也が日本を舞台に翻案した。テレビ映画として1999年に放送された後、2001年に劇場公開。主演は役所広司風吹ジュン、共演に草彅剛きたろう岸部一徳ら。

作品情報

日本版タイトル 『降霊 KOUREI』
英題 Séance
製作年 1999年
日本初放送日 1999年9月28日
日本劇場公開日 2001年5月19日
ジャンル ホラーサスペンスドラマ
製作国 日本
原作 マーク・マクシェーン『雨の午後の降霊術』(Séance on a Wet Afternoon)
上映時間 97分
監督 黒沢清
脚本 大石哲也/黒沢清
企画 植村泰之/神野智
プロデューサー 田中猛彦/下田淳行
撮影 柴主高秀
編集 大永昌弘
作曲 ゲイリー芦屋
出演 役所広司/風吹ジュン/草彅剛/きたろう/石田ひかり/岸部一徳/大杉漣/哀川翔/磯部詩織
製作 関西テレビ放送/ツインズジャパン
配給 スローラーナー

あらすじ

音響効果技師の佐藤克彦と、霊を見る力を持つ妻・純子は、郊外の一軒家で静かに暮らしている。ある日、誘拐犯から逃げ出した少女が、偶然にも克彦の仕事道具を入れたケースへ身を隠し、そのまま佐藤家まで運ばれてくる。警察から少女捜索への協力を求められていた純子は、自分の霊能力で居場所を突き止めたことにしようと考える。夫婦が正直に通報する機会を逃していく中、小さな虚栄心と不運が取り返しのつかない事態へつながっていく。

主な登場人物(キャスト)

佐藤克彦(役所広司):テレビ局で働く音響効果技師。偶然、自分の機材ケースに潜んでいた誘拐被害者の少女を自宅へ運んでしまい、妻の計画に巻き込まれる。

佐藤純子(風吹ジュン):霊を見ることのできる克彦の妻。能力を世間に認めさせたいという願望から、少女の発見を自らの手柄に見せようとする。

早坂文雄(草彅剛):純子の霊能力に関心を寄せる大学院生。警察と純子をつなぎ、行方不明になった少女の捜索協力を依頼する。

柏原刑事(きたろう):誘拐事件を捜査する刑事。早坂を介して純子の力を借りる一方、やがて佐藤夫妻の言動に疑念を抱く。

少女(磯部詩織):誘拐犯のもとから逃げ出した少女。偶然の巡り合わせによって佐藤家へ運ばれ、夫婦の運命を大きく変える。

作品の魅力解説

何も起きていない画面まで怖くする構図

黒沢清の演出は、幽霊を大写しにするより、廊下の奥、窓の外、人物の背後といった空間を長く見せることで恐怖を生む。カメラの位置とゆっくりした動きが絶妙に「何か起きそう」という予感を掻き立てるため、実際に何かが現れても現れなくても緊張が途切れない。観客は画面の隅を警戒し続け、日常的な室内そのものが不穏な場所へ変わっていく。

音響効果技師を主人公にした、音と沈黙の恐怖

克彦の職業が音響効果技師であることは、作品の恐怖設計と直結している。風、木々のざわめき、物が触れるかすかな音、突然訪れる沈黙が、目に見えない存在の気配を増幅する。音の正体を探す仕事に就く人物が、説明できない音と存在に追い詰められる構図も皮肉であり、視覚だけに頼らない恐怖を成立させている。

怪異より苦い「正直に生きなかった」夫婦の転落

発端は夫婦による計画的な誘拐ではなく、少女とのあまりに不運な巡り合わせである。しかし、すぐ警察へ知らせれば戻れたはずの地点から、純子の承認欲求と克彦の逡巡によって一歩ずつ遠ざかっていく。何かをやらかしたときに正直でいることの重要さを、超自然的な罰以上に生々しいサスペンスとして突きつける。善良に見える人間が小さな嘘を守るため、さらに大きな過ちを重ねる過程が怖い。

穏やかさの内側に不気味さを宿す風吹ジュン

風吹ジュンは、柔らかな話し方を保ちながら、純子の焦り、虚栄心、現実からずれていく感覚をにじませる。普段どおりの穏やかな口調が、状況の異常さと噛み合わないことでかえって不気味に響く。役所広司もまた、妻を守ろうとする優しさと保身が分けられなくなる夫を抑制的に演じ、怪談と夫婦の心理劇を結びつけている。

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