映画『13日の金曜日』(1980)を紹介&解説。
映画『13日の金曜日』概要
映画『13日の金曜日』は、ショーン・S・カニンガム監督が、閉鎖されていたキャンプ場の再開準備に集まった若者たちが正体不明の殺人者に次々と襲われていく恐怖を描いたスラッシャーホラー。
『ハロウィン』(1978)の成功に影響を受けて企画され、キャンプ場という隔絶された舞台、若者たち、正体の見えない殺人者、さまざまな方法で描かれる惨殺シーンなど、その後のスラッシャー映画に広く定着する要素を組み合わせた代表的作品となった。
出演はベッツィ・パーマー、エイドリアン・キング、ハリー・クロスビー、ローリー・バートラム、ケヴィン・ベーコンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『13日の金曜日』 |
|---|---|
| 原題 | Friday the 13th |
| 製作年 | 1980年 |
| 本国公開日 | 1980年5月9日 |
| 日本公開日 | 1980年8月15日 |
| ジャンル | ホラー/サスペンス |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 95分 |
| 監督・製作 | ショーン・S・カニンガム |
|---|---|
| 脚本 | ヴィクター・ミラー |
| 製作総指揮 | アルヴィン・ゲイラー |
| 撮影 | バリー・エイブラムス |
| 編集 | ビル・フレダ |
| 作曲 | ハリー・マンフレディーニ |
| 出演 | ベッツィ・パーマー/エイドリアン・キング/ハリー・クロスビー/ローリー・バートラム/マーク・ネルソン/ジャニーヌ・テイラー/ロビー・モーガン/ケヴィン・ベーコン/アリ・レーマンほか |
| 製作 | ジョージタウン・プロダクションズ |
| 配給 | パラマウント・ピクチャーズ(米国)/ワーナー・ブラザース(日本) |
あらすじ
1958年、クリスタル・レイクのキャンプ場で若い男女が何者かに惨殺される事件が発生する。それから22年後、長年閉鎖されていたキャンプ場を再開するため、オーナーのスティーヴと若い指導員たちが現地へ集まった。
地元では過去の殺人や少年の溺死などから「呪われた場所」と恐れられ、彼らに近づかないよう警告する者もいたが、若者たちは再開準備を進めていく。しかし、森の中では何者かが彼らの行動を密かに監視していた。やがて指導員たちはひとり、またひとりと姿を消し始める。
主な登場人物(キャスト)
アリス(エイドリアン・キング):クリスタル・レイクのキャンプ場再開に携わる若い女性。オーナーのスティーヴとも親しい関係にあり、次々と異変が起こるキャンプ場で物語の中心となっていく。
パメラ・ボーヒーズ夫人(ベッツィ・パーマー):かつてクリスタル・レイクのキャンプ場で働いていた女性。湖で溺れた少年ジェイソンの母親で、キャンプ場の過去を知る重要人物。
ジャック(ケヴィン・ベーコン):キャンプ場再開のために集まった若者のひとり。マーシーと親密な関係にある。
マーシー(ジャニーヌ・テイラー):キャンプ場の若い指導員のひとり。ジャックと行動をともにすることが多い。
ビル(ハリー・クロスビー):キャンプ場再開に参加する若者のひとり。アリスやブレンダらとともに準備を進めている。
ブレンダ(ローリー・バートラム):キャンプ場の若い指導員のひとり。仲間たちと楽しい時間を過ごしていたが、キャンプ場を覆い始めた異変に巻き込まれていく。
ジェイソン・ボーヒーズ(アリ・レーマン):かつてクリスタル・レイクで溺れたとされる少年。後にシリーズを象徴する存在となるが、第1作での登場はごく限られている。
作品の魅力解説・レビュー
キャンプ場スラッシャーの“王道”を決定づけた記念すべき第1作
若者たちが人里離れた場所へ集まり、正体不明の殺人者によってひとりずつ襲われていく――。現在ではあまりにもおなじみとなったスラッシャーホラーのパターンを、圧倒的な商業的成功によって1980年代の映画界へ定着させた代表作のひとつが『13日の金曜日』だ。
もちろん、本作以前にも『サイコ』や『暗闇にベルが鳴る』、そして直接的な影響源となった『ハロウィン』などが存在しており、本作がスラッシャー映画そのものを発明したわけではない。それでも「隔絶されたキャンプ場」「若者たち」「ひとりずつ減っていく登場人物」「殺人者の主観ショット」「次は誰が、どんな方法で殺されるのか」という娯楽性を前面に押し出し、後続作品が繰り返すことになる型を広く浸透させた意味は大きい。
実は“ジェイソン映画”ではない第1作
シリーズを知らない人でも、ホッケーマスクを被った大男ジェイソン・ボーヒーズの姿は見たことがあるかもしれない。ところが記念すべき第1作では、そのイメージ通りのジェイソンはほとんど登場しない。
現在では『13日の金曜日』=ジェイソンという印象が強烈なだけに、初めて第1作を観るとむしろそこが最大級の驚きになる。シリーズを象徴する怪物が完成する以前の物語であり、後の作品を知っているからこそ「最初はこういう映画だったのか」と楽しめる1作でもある。
間延びする部分はあるが、殺人シーンのバリエーションで押し切る
一方、現在のテンポ感で観ると、殺人と殺人の間に挟まれる若者たちの日常描写には退屈さを感じる部分もある。誰が次に犠牲になるのかという“死亡フラグ”もかなり直球で、後世に同じパターンが大量に反復されたこともあって、展開自体は読みやすい。
それでも、ほぼキャンプ場だけという狭い舞台を使いながら、森、湖、キャビン、トイレ、発電設備など場所を変え、さらにナイフ、斧、矢といった異なる殺害方法を繰り出してくるため、惨劇そのものにはしっかり変化がある。
特殊メイクを担当したトム・サヴィーニによる生々しい実践的エフェクトも大きな見どころ。物語の複雑さより、「次は何が起こるのか」という直接的な恐怖とショック描写を積み重ねて観客を引っ張っていくタイプのホラーだ。
「キ、キ、キ……マ、マ、マ……」の正体とは?
『13日の金曜日』を象徴するもうひとつの存在が、作曲家ハリー・マンフレディーニによる不気味な音響だ。
「キ、キ、キ、キ……ハ、ハ、ハ、ハ……」のような吐息にも聞こえる有名な音だが、実際には「ki ki ki……ma ma ma……」。
マンフレディーニ本人によれば、終盤でボーヒーズ夫人の頭の中にジェイソンの「kill her, mommy(殺して、ママ)」という声が響く描写から発想し、“kill”の「ki」と“mommy”の「ma」を自らマイクに吹き込み、エコー処理して作ったという。
さらにこの音は単なる印象的なBGMではなく、姿の見えない殺人者の視点であることを観客に知らせるためのサインとして使用された。殺人者そのものを画面に映さず、音によってその存在を感じさせるという、本作の恐怖演出を支える重要なアイデアになっている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:呪われたキャンプ場、クリスタル・レイク
1958年、クリスタル・レイク・キャンプ場で指導員のバリーとクローデットが何者かに殺害される。それから20年以上後、閉鎖されていたキャンプ場を再開するため、経営者スティーヴのもとにアリス、ビル、ジャック、マーシー、ブレンダ、ネッドら若いスタッフが集まる。
一方、新人スタッフのアニーはキャンプ場へ向かう途中、地元住民から「クリスタル・レイクには近づくな」と警告される。過去には少年の溺死や殺人事件などが起きていたという。それでも向かおうとしたアニーは、途中で乗せてもらった車の運転手に襲われ、森へ逃げるものの喉を切られて死亡する。
承①:若者たちが一人ずつ消えていく
キャンプ場ではアニーの死を知らないスタッフたちが、修繕作業をしながら泳いだり恋愛を楽しんだりしていた。ジャックとマーシーは恋人同士で、ネッドは周囲をからかう陽気な存在だった。
やがて雨が降り始め、それぞれが別行動を取るようになる。ネッドは何者かの姿を追って建物へ入り、喉を切られて殺害される。
その死体が隠されているとも知らず、ジャックとマーシーは同じ部屋でセックスする。マーシーが部屋を離れると、ジャックはベッドの下から頭を押さえつけられ、喉を矢で突き上げられて死亡。続いてトイレへ向かったマーシーも、顔面に斧を叩き込まれて殺される。
承②:生存者が減り、アリスに危機が迫る
ブレンダは雨の中から聞こえてきた子供の助けを求めるような声を追い、射撃場へ向かう。そこで何者かに襲われ、殺害される。
町へ出ていたスティーヴもキャンプへ戻る途中で犯人と遭遇する。彼は相手を知っている様子で警戒せず近づくが、そのまま刺されて死亡する。
残されたアリスとビルは、仲間たちが戻ってこないことや電話が通じないことから異変に気づき始める。ビルが様子を見に行ったまま戻らず、アリスが探しに行くと、彼は矢などで扉に磔にされた状態で死亡していた。
さらに小屋へ戻ったアリスの前にブレンダの死体が窓から投げ込まれ、仲間たちが皆殺しにされていることが明らかになる。
転:犯人はジェイソンではなく、その母親
恐怖に怯えるアリスの前に車が現れ、中年女性のパメラ・ボーヒーズが姿を見せる。助けが来たと安心するアリスだったが、パメラはかつてこの湖で息子ジェイソンが溺死したことを語り始める。
ジェイソンは泳げなかったにもかかわらず、監視するはずのキャンプ指導員たちはセックスに夢中になっていた。そのため息子は死んだのだとパメラは考えていた。
そして彼女こそ、現在のスタッフたちだけでなく、1958年に殺されたバリーとクローデットまで殺害した犯人だったことが判明する。キャンプ場を二度と再開させないため、若い指導員たちを次々と殺していたのだ。
パメラはジェイソンの声を自ら演じるように「殺して、ママ」と呟きながら、アリスにも襲いかかる。
結:パメラとの死闘、そして湖から現れるジェイソン
アリスとパメラはキャンプ場を舞台に激しい死闘を繰り広げる。何度倒しても立ち上がってくるパメラだったが、最後は湖畔でアリスがマチェーテを手にし、その首を切断。ついに殺人事件は終わったかに思われる。
疲れ果てたアリスはカヌーで湖へ出て、そのまま眠り込む。翌朝、警察が岸へ到着し、すべてが終わったと思われた瞬間、水中から腐敗した少年ジェイソンが飛び出し、アリスを湖へ引きずり込む。
しかしアリスは病院で目を覚ます。彼女が「湖から出てきた男の子は?」と尋ねると、警官は「男の子なんて見つかっていない」と答える。
アリスは「じゃあ、まだそこにいるのね……」と呟き、静かなクリスタル・レイクの湖面が映し出されて物語は幕を閉じる。
