映画『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』(1985)を紹介&解説。
映画『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』概要
映画『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』は、夢の中から若者を襲う殺人鬼フレディ・クルーガーを描いたホラー映画『エルム街の悪夢』の続編。前作から5年後、ナンシーが暮らしていた家へ引っ越してきた高校生ジェシーが、フレディに肉体を乗っ取られていく恐怖を描く。夢の中で標的を殺す前作とは異なり、フレディが人間を器として現実世界へ進出する“憑依ホラー”の要素を強めた、シリーズでも異色の一作。監督はジャック・ショルダー、出演はマーク・パットン、キム・マイヤーズ、ロバート・ラスラー、ロバート・イングランドら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』 |
|---|---|
| 原題 | A Nightmare on Elm Street Part 2: Freddy’s Revenge |
| 製作年 | 1985年 |
| 本国公開日 | 1985年11月1日 |
| 日本公開日 | 1987年1月24日 |
| ジャンル | スラッシャーホラー/スーパーナチュラル |
| 製作国 | アメリカ |
| 原案 | ウェス・クレイヴン(キャラクター創作) |
| 上映時間 | 87分 |
| 監督 | ジャック・ショルダー |
|---|---|
| 脚本 | デヴィッド・チャスキン |
| 製作 | ロバート・シェイ |
| 製作総指揮 | スティーヴン・ディーナー/スタンリー・ダデルソン |
| 共同製作 | サラ・リッシャー |
| 撮影 | ジャック・ヘイトキン |
| 編集 | ボブ・ブレイディ/アーライン・ガーソン |
| 美術 | クリフォード・サーシー |
| 作曲 | クリストファー・ヤング |
| 特殊効果 | マーク・ショストロム/ケヴィン・イェーガーほか |
| 出演 | マーク・パットン/キム・マイヤーズ/ロバート・ラスラー/クルー・ギャラガー/ホープ・ラング/マーシャル・ベル/ロバート・イングランド |
| 製作会社 | ニュー・ライン・シネマ/ヘロン・コミュニケーションズ/スマート・エッグ・ピクチャーズ |
| 配給 | ニュー・ライン・シネマ/ワーナー映画(日本) |
あらすじ
ナンシーとフレディ・クルーガーの戦いから5年後。高校生ジェシー・ウォルシュは、家族とともにエルム街の古い一軒家へ引っ越してくる。やがてジェシーは、焼けただれた顔と指先の刃を持つ男が現れる悪夢に苦しめられるようになった。
部屋から以前の住人ナンシーが残した日記が見つかり、ジェシーの友人リサは、この家で起きた恐ろしい事件について調べ始める。一方、フレディはジェシーの内側へ少しずつ入り込み、その肉体を利用して現実世界へ戻ろうとしていた。自分の中に芽生える暴力的な衝動を抑えられなくなったジェシーは、心と身体をフレディに奪われていく。
主な登場人物(キャスト)
ジェシー・ウォルシュ(マーク・パットン):家族とともにエルム街へ引っ越してきた高校生。悪夢の中でフレディと遭遇し、次第に自分の身体を支配されていく。助けを求めながらも、内側からあふれ出す暴力的な衝動に苦しむ。
リサ・ウェッバー(キム・マイヤーズ):ジェシーの同級生で恋人。ナンシーが残した日記を発見し、ジェシーを襲っている怪現象の正体を調べる。恐怖に屈せず、フレディに支配されたジェシーを取り戻そうとする。
ロン・グレイディ(ロバート・ラスラー):ジェシーの同級生。当初はジェシーと衝突するが、やがて親しい友人となる。フレディに身体を乗っ取られそうになったジェシーから助けを求められる。
フレディ・クルーガー(ロバート・イングランド):焼けただれた顔と刃の付いた手袋を持つ殺人鬼。本作ではジェシーを新たな器として選び、その身体を利用して現実世界で殺人を重ねようとする。
ケン・ウォルシュ(クルー・ギャラガー):ジェシーの父親。格安で購入した家にさまざまな問題が発生する中、息子の異変にも戸惑う。
シュナイダー・コーチ(マーシャル・ベル):ジェシーとグレイディが通う高校の体育教師。生徒に厳しい指導を行っており、ジェシーの中で目覚めたフレディの標的となる。
作品の魅力解説
“夢の殺人鬼”を憑依ホラーへ変えた異色の続編
本作は、フレディが夢の中で若者を殺すという前作の基本構造から大きく離れ、ジェシーの肉体を乗っ取って現実世界へ進出する物語を展開する。夢と現実の境界を利用した恐怖よりも、身体と意識を別の存在に支配されていく憑依ホラーとしての性格が強い。
シリーズの設定としては一貫性に欠け、前作ならではの独創性を薄めたという問題も感じる一方で、まだシリーズの定型が固まっていなかった時期だからこそ生まれた、ほかの続編にはない怪作としての面白さも備えた作品ともいえよう。
肉体からフレディが現れる物理的な恐怖
ジェシーの皮膚を突き破り、内側からフレディの身体が現れる変身場面は、本作を象徴する見せ場。マーク・ショストロムによる変身特殊効果や、ケヴィン・イェーガーが手掛けたフレディのメイクによって、精神的な乗っ取りが生々しい肉体変化として表現されている。
ドアごと人体を切り裂く殺害場面など、前作よりも力任せで派手な襲撃も増加。夢の中で獲物を追い詰める怪異というより、実体を持ったスラッシャー映画の殺人鬼としてのフレディが前面に押し出されている。
男性主人公から“ファイナルガール”へ移る役割
前作のナンシーとは異なり、本作では男子高校生のジェシーが主人公となる。学校生活や友情、恋愛を交えた青春ホラーとして始まりながら、ジェシーはフレディと戦う生存者ではなく、その力に侵食されていく存在として描かれる。
終盤で単身フレディのもとへ向かい、ジェシーを救おうとするのはリサである。男性主人公を据えながら、最終的にはリサがスラッシャー映画における“ファイナルガール”の役割を引き受ける構成となっており、主人公と対決者の役割が途中で入れ替わる点も本作の特徴といえる。
大勢を相手に暴れ回るフレディ
終盤のプールパーティーでは、現実世界に姿を現したフレディが、大勢の若者を相手に刃を振るう。標的をひとりずつ孤立させる従来のスラッシャー映画とは異なり、群衆の前で堂々と暴れ回る大立ち回りが展開される。
恐怖の対象でありながら、挑発的な言動を交えて生き生きと若者たちを追い回すロバート・イングランドの存在感も強い。後のシリーズで確立される、残酷でありながらショーマン的でもあるフレディのキャラクターを先取りした場面となっている。
抑圧された欲望をめぐるクィアな読み
ジェシーの身体へ入り込もうとするフレディ、男性同士の緊張を強調した場面、恋人リサとの関係に対する戸惑いなど、本作には抑圧された欲望や性的アイデンティティーの揺らぎを想起させる描写が数多く含まれている。
ただし、こうした象徴性に対して物語の整理が追いついておらず、場面同士のつながりやフレディの能力に曖昧さが残る点は、本作の個性であると同時に弱点でもある。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:エルム街の家へ引っ越してきたジェシー
ナンシーが暮らしていたエルム街の家へ、高校生ジェシー・ウォルシュと家族が引っ越してくる。ジェシーはフレディ・クルーガーに襲われる悪夢を見るようになり、同級生のリサが発見したナンシーの日記から、家の過去とフレディの存在を知る。
承:ジェシーの身体を侵食するフレディ
フレディはジェシーの身体を利用して現実世界へ戻ろうとしていた。ジェシーは次第に自分を制御できなくなり、体育教師シュナイダーが惨殺された際には、その血を浴びた状態で発見される。事情を理解できない家族との溝が深まる一方、リサだけはジェシーを信じ、救う方法を探し続ける。
転:親友を殺し、現実世界へ現れるフレディ
リサのプールパーティーで彼女と親密になりかけたジェシーは、自分の中のフレディが目覚めることを恐れ、親友グレイディの家へ逃げ込む。しかし、フレディはジェシーの肉体を内側から突き破って出現。助けを求められていたグレイディを惨殺すると、ジェシーの肉体を完全に奪ってプールパーティーへ戻り、大勢の若者を相手に暴れ回る。
結:リサの愛と終わらない悪夢
リサはフレディの中にまだジェシーがいると信じ、その後を追って廃工場へ向かう。殺されかけながらもジェシーへ愛を訴え、フレディに口づけると、その身体は炎に包まれて崩壊。焼けた皮膚の内側からジェシーが現れ、リサとの再会を果たす。
翌朝、日常を取り戻したように見えるジェシーとリサはスクールバスへ乗る。ところが、同乗していた少女の胸を突き破ってフレディの腕が出現し、バスは再び制御不能に陥る。フレディが本当に消滅したのか分からないまま、物語は悪夢の再来を告げて終わる。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
