映画『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』(1976)を紹介&解説。
映画『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』概要
映画『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』は、ジョエル・M・リード監督・脚本によるアメリカのエクスプロイテーション・ホラー。ニューヨークの小劇場を舞台に、本物の拷問や殺人を観客には演出と思わせて上演する劇場主サルドゥと、その周囲で繰り広げられる狂気を描く。
1976年に『The Incredible Torture Show』(意訳:驚異の拷問ショー)のタイトルで米国公開された後、トロマ・エンターテインメントが権利を取得。1981年に『Blood Sucking Freaks』へ改題して再公開し、悪趣味なエロ・グロ表現を前面に押し出したトラッシュ・ホラーとしてカルト的に知られるようになった。
主演はシーマス・オブライエン。ヴィジュ・クレム、ナイルズ・マクマスター、ダン・ファウチ、アラン・デレイ、ルイス・デ・ジーザスらが出演する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』(VHS題)/『悪魔のしたたり』(2024年劇場公開題) |
|---|---|
| 原題 | Blood Sucking Freaks(初公開時:The Incredible Torture Show) |
| 製作年 | 1976年 |
| 本国公開日 | 1976年11月3日 |
| 日本公開日 | 2024年8月30日 |
| ジャンル | ホラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 89分 |
| 監督・脚本 | ジョエル・M・リード |
|---|---|
| 製作 | アラン・C・マーゴリン |
| 撮影 | ロン・ドルフマン |
| 編集 | ジョエル・R・ハーソン/ヴィクター・カネフスキー |
| 作曲 | マイケル・サール |
| 出演 | シーマス・オブライエン/ルイス・デ・ジーザス/ヴィジュ・クレム/ナイルズ・マクマスター/ダン・ファウチ/アラン・デレイ/アーニー・ピッシャー |
| 製作 | Alan C. Margolin – Joel M. Reed Productions |
| 配給 | American Film Distributing Corporation(1976年・米国)/トロマ・エンターテインメント(1981年・米国再公開)/キングレコード(日本) |
あらすじ
ニューヨークで小劇場を営むサルドゥは、助手ラルファスとともに女性たちを拷問する過激なショーを上演していた。観客はすべて演出だと思っていたが、舞台上の惨劇は本物。さらに公演を酷評した批評家や有名バレリーナまで標的となり、劇場の裏に隠された狂気へ巻き込まれていく。
主な登場人物(キャスト)
サルドゥ(シーマス・オブライエン):ニューヨークで「怪奇劇場」を運営する劇場主。女性たちへの本物の拷問や殺人を舞台上のショーとして披露し、観客には演出だと思わせている。
ラルファス(ルイス・デ・ジーザス):サルドゥに忠実に仕える助手。劇場の裏側で行われる誘拐や拷問にも加担し、サルドゥとともに数々の残虐な見世物を作り上げる。
ナターシャ・ディ・ナタリー(ヴィジュ・クレム):著名なバレリーナ。サルドゥから新たなショーの出演者として目をつけられ、劇場へ連れ去られる。
トム・マーベリック(ナイルズ・マクマスター):ナターシャの恋人。突然姿を消した彼女を捜し、劇場で起きている異常な事件へ近づいていく。
ジョン・トゥッチ巡査部長(ダン・ファウチ):ナターシャの捜索に関わる警察官。トムとともにサルドゥの劇場へ潜入する。
クリーシー・サイロ(アラン・デレイ):サルドゥのショーを観劇した批評家。公演を酷評したことでサルドゥの怒りを買い、劇場に拉致される。
作品の魅力解説・レビュー
エロ・グロ・ナンセンスを突き詰めた地下世界
『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークス』を端的に表すなら、まさにエロ・グロ・ナンセンス。まともな倫理や常識を劇場の入り口に置き去りにしたかのような、アングラで猟奇的な世界が89分にわたって展開する。
物語の整合性やドラマを丁寧に積み上げるタイプの作品ではない。サルドゥの劇場という閉鎖された空間を舞台に、「次はどんな悪趣味な見世物を出してくるのか」という発想そのものを映画にしているような一本だ。
条理も脈絡も吹き飛ばすサディズムの見世物
本作では、さまざまな形の拷問が舞台上のショーとして次々に登場する。その発想は過激でありながら、特殊効果やセット、俳優たちの悲鳴までどこかチープ。その安っぽさが妙な可笑しさを生み、残酷さとナンセンスな笑いが奇妙に同居している。
高尚な芸術を装いながら実際には猟奇的な欲望を見世物にしているサルドゥの劇場は、まるでサーカスや見世物小屋の暗部を、現実では成立し得ないフィクションならではの過激さまで押し広げたような空間だ。
後のトロマにも通じる、毒々しいトラッシュ感
本作はもともとトロマ製作作品ではなく、1976年に別会社から公開された映画。しかし1981年にトロマ・エンターテインメントが取得し、『Blood Sucking Freaks』として再公開した。
のちのトロマ作品でおなじみとなる悪趣味、低予算、過剰な残酷描写、ブラックユーモアといった毒々しい感覚との相性は抜群。洗練とは正反対の映画だが、あらゆる種類の拷問をとにかく見せようとするホラー映画としての気概と、アングラな見世物に徹する潔さは強烈に残る。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
