『ビースト・オブ・ノー・ネーション』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(2015)を紹介&解説。


映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』概要

映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』は、ウゾディンマ・イウェアラによる同名小説を、キャリー・ジョージ・フクナガ監督(『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』)が映画化した戦争ドラマ。内戦が続く西アフリカの架空の国を舞台に、家族を奪われた少年アグーが武装勢力に取り込まれ、少年兵へと変えられていく過程を描く。Netflix初のオリジナル長編映画として配信され、アグー役のエイブラハム・アタと、部隊を率いる指揮官役のイドリス・エルバが高い評価を獲得した。

作品情報

日本版タイトル 『ビースト・オブ・ノー・ネーション』
原題 Beasts of No Nation
製作年 2015年
本国公開日 2015年10月16日(劇場限定公開・Netflix配信)
日本公開日 2015年10月16日(Netflix配信開始)
ジャンル 戦争ドラマ
製作国 アメリカ
原作 ウゾディンマ・イウェアラ『Beasts of No Nation』(小説)
上映時間 136分
監督・脚本・撮影 キャリー・ジョージ・フクナガ
製作 エイミー・カウフマン/キャリー・ジョージ・フクナガ/ダニエラ・タプリン・ランドバーグ/リヴァ・マーカー/ダニエル・クラウン/イドリス・エルバ
製作総指揮 ジェフリー・スコール/ジョナサン・キング/ドナ・ジグリオッティ/エリザベス・コック/クリスティナ・ケンダル/ビル・ベネンソン/ローラ・ビックフォード/トッド・コートニー
編集 ミッケル・E・G・ニールセン/ピート・ボドロー
作曲 ダン・ローマー
出演 エイブラハム・アタ/イドリス・エルバ/カート・エジアイアワン/ジュード・アキューダイク/エマニュエル・ニイ・アドム・クェイ/アマ・K・アベブリーズ/コビナ・アミッサ・サム
製作会社 パーティシパント・メディア/レッド・クラウン・プロダクションズ/ニュー・バルーン/プライマリー・プロダクションズ/パーリアメント・オブ・オウルズ
配給 Netflix/ブリーカー・ストリート(アメリカ劇場公開)

あらすじ

内戦が続く西アフリカのとある国。少年アグーは家族とともに比較的穏やかな日々を送っていたが、戦闘が村へ迫ったことで、母親や幼いきょうだいと離れ離れになってしまう。やがて父親と兄も殺され、ひとりで森へ逃げ込んだアグーは、反政府武装勢力の部隊に捕らえられる。

部隊を率いる“指揮官”は、孤独になったアグーへ父親のように接近しながら、服従と殺人を強要する。生き延びるため少年兵となったアグーは、同年代のストライカと心を通わせる一方、薬物や暴力、指揮官による支配を受け、かつての自分から次第に遠ざかっていく。

主な登場人物(キャスト)

アグー(エイブラハム・アタ):内戦によって家族と引き裂かれ、武装勢力の少年兵にされてしまう少年。殺人を強制され、罪悪感と恐怖を抱えながら戦場を生き延びようとする。

指揮官(イドリス・エルバ):反政府武装勢力の部隊を率いるカリスマ的な指揮官。少年兵たちに父親のような態度で接する一方、彼らの孤独や恐怖につけ込み、自らの名誉と欲望のために利用する。

ストライカ(エマニュエル・ニイ・アドム・クェイ):アグーと同じ部隊に所属する、言葉を発しない少年兵。過酷な状況の中でアグーの最も身近な存在となり、ふたりの間には兄弟のような絆が生まれる。

副官/2-I-C(カート・エジアイアワン):指揮官を補佐し、部隊を実務的にまとめる副官。指揮官へ忠実に従いながらも、部隊を私物化していくその振る舞いに複雑な思いを抱く。

最高司令官ダダ・グッドブラッド(ジュード・アキューダイク):武装勢力全体を統率する最高司令官。指揮官の功績を認めつつも、組織の政治的な都合を優先し、彼の立場を揺るがしていく。

アグーの母(アマ・K・アベブリーズ):戦闘が迫る中、幼い子どもたちを連れて避難するアグーの母親。離れ離れになる直前まで息子を案じ続け、その記憶は戦場に置き去りにされたアグーの心を支える。

作品の魅力解説

意に反して支配される者が、今度は他者の意思を踏みにじって支配する。その連鎖が繰り返された末に、すべてを被るのは抵抗する力を持たない子どもたちだ。本作は、家族を奪われるだけでも過酷な状況に置かれた少年が、その孤独と恐怖につけ込まれ、加害者へと作り替えられていく過程を描いている。アグーが犯す行為を免罪するのではなく、被害者と加害者に分けることのできない少年兵の現実を見つめる作品である。

物語は実在する特定の少年兵を再現した実話ではなく、複数の現実を踏まえたフィクションだ。原作者ウゾディンマ・イウェアラは、高校時代にシエラレオネ内戦の少年兵を扱った記事を読んだことから関心を持ち、後にウガンダで兵士にされた経験を持つチナ・ケイテツィと交流したことなどを通じて構想を深めた。キャリー・ジョージ・フクナガ監督も、原作と出会う以前から約5~6年にわたり、シエラレオネ内戦や紛争ダイヤモンド、少年兵について調査していた。

舞台となる国を架空のままにしたことで、本作は悲劇をひとつの国だけに起きた特殊な出来事として切り離さず、各地の紛争で利用されてきた少年兵全体へ視線を向ける。題名はフェラ・クティが1989年に発表した同名アルバムに由来するが、「ノー・ネーション」という言葉は、国籍や国境を越えて繰り返される子どもたちの苦難を描いた本作の構造とも強く響き合っている。

イドリス・エルバが演じる指揮官は、一見すると部下たちを守る頼もしい父親のように映る。しかし、その父性的な振る舞いは少年たちを服従させるための手段であり、実際には自分の名誉や権力、欲望を満たすために子どもを利用する身勝手な人物だ。洗脳を可能にする上辺のよさと、下劣な性的言動や加害に表れる醜悪さを同時に体現したエルバの演技は、指揮官を単純な大声の悪役ではなく、極めて現実的な搾取者として成立させている。

アグー役のエイブラハム・アタも、本作が映画初出演とは思えないほどの存在感を見せる。家族と暮らしていた頃の無邪気さから、恐怖、混乱、罪悪感、感情の麻痺へと移り変わる少年の内面を、表情と視線だけでも伝えている。アタは本作で、第72回ヴェネチア国際映画祭の新人俳優賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。

監督自身が担当した撮影も印象的だ。緑豊かな西アフリカの風景を美しく捉えながら、その中で行われる暴力を生々しく映し出し、戦闘が激化するにつれて映像そのものを悪夢のような色彩へ変えていく。美しい自然と子どもたちが受ける残酷な仕打ちを同じ画面に収めることで、戦争によって奪われるものの大きさを際立たせている。

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